48話 テイム
「まずは職人都市に転移して、そこから荒地ですね!」
そう決め、初期の街の広場から転移を行い、職人都市へ移動します。そして、その足で西側の荒地へと向かいます。
「…あ、そういえば顔を隠すアイテム、買ってませんでした」
レーナさんのところで買おうと思ってましたが、忘れていました…!
「…今はそこら辺で売っているクロークを買って羽織っておきますか」
ちょうどクロークを売っている露店を見つけたので、そこでお金を払って置いてあった焦茶色のクロークを買い、即座に羽織りフードも深く被っておきます。そのクロークの性能については特に言うこともないので、割愛します。
「前にアリスさんが言っていたみたいに、私も顔を隠さないと面倒くさくなりましたね…」
アリスさんの気持ちが今になってわかりました…
ま、まあそれは置いといて、さっさと荒地に行きましょう!
そうして考えを振り払い歩くこと数十分で、街の出口の西門に着きました。
「今はアイザさんのお願いがあるのでクロム鉱石の採掘をしますが、今度は北にあるらしい鉱山にも行きますか」
とりあえず、今日のうちは荒地で採掘と洒落込みます。持っている銅のツルハシはもう少しで壊れそうですが、新しく鉄製のツルハシもくる道中で買ってきましたからずっとしていられますね!
時間も今はまだ五時近くですし、夜ご飯も作り置きをしているので七時までずっとやっていて大丈夫です!
「では、行きましょう!」
そう言って私は荒地をツルハシ片手に歩き始めます。
「ふぅ、結構掘りましたが、やはり大量には出ませんね…」
出会うモンスターたちは【気配希釈】スキルと【魔力隠蔽】スキルを活かして隠れつつ、採掘を続けて数時間。ある程度集め終わったので、そう一息つきます。
「採れたクロム鉱石は十三個ですか。他にも鉄や銅、宝石の原石もたくさん手に入れれたので、なかなかの成果ですね!」
時間をかけただけあって、前に採掘した時よりも多くのクロム鉱石を取れました。これは普通にアイザさんに売るとして、他の鉄や銅はちょうどいいので【錬金術】スキルの変換を試してみましょう!
「…ん、なにやら【気配感知】と【魔力察知】に反応が…」
変換をしてみようと思っていると、隠れているはずなのにこちらに近づいてくる反応がしました。なので私は警戒をしつつ、双銃を取り出してそちらに視線を向けます。
すると、そこには半透明な色をしていますが核の見えないまんまるボディをしたスライムがいました。
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ピュアメタモルスライム ランク F
様々な環境の場所に稀に生息しているスライム。
魔力を使って様々な姿になることが出来るスライムで、その希少性から見つけられると王族や貴族などに狩られたりされている。
状態:正常
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一応として鑑定をしてみると、そのように出ました。もしかして、前にこのエリアで出会ったピュアスライム、ですかね…?
「【第六感】スキルの感じには敵意を感じませんが…」
レアモンスターですが、これはどうしましょうか…?敵意もないですし倒すのは躊躇ってしまいますが…
『ピュアメタモルスライムがテイムを望んでいます。テイムしますか?』
少し考えていると、そんなシステムメッセージが流れてきました。
テイムですか……テイム系のスキルは持っていませんが、大丈夫なのでしょうか?まあとりあえず、テイムをしてみます!
「では、あなたの名前はクリアです!」
半透明な色の身体なので、そう名づけました。するとそのピュアメタモルスライム、クリアが光ったと思ったら、その場からクリアが消えて何やら白色のクリスタルがありました。
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召喚石・クリア ランク C レア度 固有品
耐久度 破壊不可
ピュアメタモルスライムのクリアが宿っている召喚石。呼び出すと契約した対象が出てくる。
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その白色のクリスタルを鑑定すると、そのような情報が出てきました。なるほど、このゲームではテイムを行うとこのような状態になるのですね。呼び出すと出てくると書いてありますし、早速呼んでみますか!
「クリア、来てください」
私はそれを拾ってからそう声を上げると、手に持つ白色のクリスタルが輝き、私のすぐ前にクリアが出現しました。ですが呼び出しても白色のクリスタルは無くならないようで、今も私の手元にあります。
「……!」
「んー、可愛いですねー!」
足元に擦り寄ってくるクリアを見て、私はインベントリに召喚石を仕舞ってからクリアを抱き上げます。クリアは大体手のひらより少し大きめくらいなので身体もそこまで重くもなく、STRが低そうな私でも簡単に持ち上げれます。
「…クリアをテイムしましたし、それ関係のスキルも取っておいた方が良さそうですね」
私はクリアを肩に乗せてから、メニューを開いてスキル取得の画面を見つめます。肩に乗せてみていますが、そこまでの重さもないのでやはりこちらも問題ないので、呼び出している時の基本はこの状態になるでしょう。
まあそれはいいとして、何か良いスキルなどがあるか見てみますか。
「んー、とりあえずは【調教】スキルと…クリアをずっと持っていても疲れないようにSTRを上げる【STR上昇】スキルですね。あ、それと【料理】スキルも取りますか!」
私は所持していたSPを使ってそれらのスキルを獲得しました。【調教】スキルはテイムしたモンスターのステータスを確認出来たり、パッシブとしてステータスを強化をしてくれる効果のようです。【STR上昇】スキルは他のステータス強化スキルと同じなので特に言うことはありませんね。
そして【料理】スキルはLv1で使えるアーツは〈料理〉というパッシブ効果で料理を出来るという効果です。こちらも特に細かい内容はないので、割愛です。
ついでに今の私のステータスも確認しておきますか。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【双銃Lv8】【鑑定士Lv3】【錬金術Lv3】【採取士Lv6】【気配感知Lv8】【隠密Lv7】【鷹の目Lv7】【ATK上昇+Lv8】【AGI上昇+Lv8】【DEX上昇+Lv8】【体術Lv37】【気配希釈Lv7】【採掘Lv30MAX】【INT上昇+Lv5】【第六感Lv4】【跳躍Lv24】【夜目Lv26】【言語学Lv25】【魔力操作Lv30MAX】【魔力察知Lv26】【魔力隠蔽Lv24】【MP上昇Lv21】【HP自動回復Lv18】【MP自動回復Lv18】【栽培Lv3】【調教Lv1】【STR上昇Lv1】【料理Lv1】
ユニークスキル
【時空の姫】
所持SP 32
称号
〈東の森のボスを倒し者〉
〈時空神の加護〉
〈第一回バトルフェス準優勝〉
〈深森の興味〉
〈西の湿地のボスを倒し者〉
〈火霊旅騎士の魔印〉
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確認してみると【魔力操作】スキルと【採掘】スキルがMAXになっていたので、進化してこうなりました。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【双銃Lv8】【鑑定士Lv3】【錬金術Lv3】【採取士Lv6】【気配感知Lv8】【隠密Lv7】【鷹の目Lv7】【ATK上昇+Lv8】【AGI上昇+Lv8】【DEX上昇+Lv8】【体術Lv37】【気配希釈Lv7】【採掘士Lv1】【INT上昇+Lv5】【第六感Lv4】【跳躍Lv24】【夜目Lv26】【言語学Lv25】【魔力制御Lv1】【魔力察知Lv26】【魔力隠蔽Lv24】【MP上昇Lv21】【HP自動回復Lv18】【MP自動回復Lv18】【栽培Lv3】【調教Lv1】【STR上昇Lv1】【料理Lv1】
ユニークスキル
【時空の姫】
所持SP 28
称号
〈東の森のボスを倒し者〉
〈時空神の加護〉
〈第一回バトルフェス準優勝〉
〈深森の興味〉
〈西の湿地のボスを倒し者〉
〈火霊旅騎士の魔印〉
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【魔力制御】スキルはその前の【魔力操作】よりも自身の使うMP消費を抑える効果が高くなっており、更に強くなったのがわかります。そして【採掘士】スキルは【採取士】スキルと同じで特に変化はないので説明はありません。
他のスキルたちも良い感じに成長していますし、この調子でどんどん強くなりましょう!
「さて、確認は済みましたし、今度こそ【錬金術】スキルの変換を試しますか」
私は肩に乗せていたクリアをそのままに、まずは銅鉱石を一つ取り出してから下位の変換を使用します。
すると銅鉱石が光り、その光が収まると何もなくなっていました。
「うーん、銅鉱石の下位変換は何もないから失敗した、ということですかね?」
「……?」
首を傾げた私の真似をしているのか、クリアも身体を曲げるかのような仕草をしています。やはり、凄い可愛いですね!
「銅がダメでしたし鉄もダメだろうとは思いますが、一応試しておきますか」
そんなクリアを横目に、そう呟きつつ今度は鉄鉱石を下位変換しますが、それもやはり光った後に消えました。
まあここまでは予想通りなので、いいです。何も出来ないのなら、鉱石類は基本下位変換の対象はないのでしょう。
「次は上位の変換を試しましょう」
今度は十個の銅鉱石をインベントリから取り出し、上位変換を試します。
先程と同じように光り、それが収まるとそこには一つの銅鉱石が残っていました。
鑑定をしてみると、それは普通の銅鉱石よりも素材としての性能が上がったらしい『上質な銅鉱石』となっていました。
同じく鉄鉱石もやってみると、そちらも銅と同じで『上質な鉄鉱石』に変わりました。
「性能が上がったと言ってもコスパはかなり悪いですし、上位の変換は別にしないで普通に売った方が良さそうですね」
「……!」
クリアも品質が良くなっているのを感じられたのか、はたまた食べたいだけなのか、少し興奮気味に見えますね。クリアはなんでも食べられるようですが、今作った上質な銅と鉄はアイザさんに売りには行くので鉱石類はまた今度作った時に与えるとしましょう。その代わりとして、今は薬草や魔草をクリアに食べさせます。
…薬草とかってそのままで美味しいのでしょうかね?まあ【料理】スキルも取りましたし、また今度に持っている食材でクリアへ薬草などとは別の美味しいご飯でも作りますか。
「あ、それとこの機会にゴブリンの腰布の分解もしてみますか」
そんなことを思いながらも、次にインベントリからゴブリンの腰布を取り出します。取り出して確認したゴブリンの腰布の見た目は薄汚れた灰色の布をしており、少し触るのが嫌な感じですね…
ちょっと触っているのも嫌なので、さっさと分解を使いましょうか。
私はゴブリンの腰布を地面に置き、それへと分解のアーツを使用します。するとその布は淡い光に包まれ、光が弾けたと思ったら小さめの白い布に変わっていました。
それを鑑定すると名前は『綺麗な白布』と言って、どうやら木綿とは違って謎の布素材らしいです。謎素材ではありますが木綿よりは強いようなので、今持っているゴブリンの腰布は全てこれに変えてしまいます。こちらは全部レーナさんにでも渡しに行きましょうか。
「とりあえず、このくらいですね」
「……!」
持っていた大量の腰布を白布に変え、それが済んだのでふと懐中時計を確認すると、すでに六時五十分になっていました。
「ゴーレム錬成も試してみたかったですが、それはまた次回にしますか」
私はそう思考しつつも、ログアウトをするために職人都市まで戻ることにします。ここから職人都市は少し離れているので、軽く走って向かいます。まあ疲れない程度にですけどね。
そして肩に乗せているクリアを落とさないように走ること数十分で職人都市に着いたので、私は西門の近くでログアウトをします。
「お、美幸もログアウトしてきたんだな」
「あ、兄様!」
ログアウトをしてからストレッチなどを済ませてリビングへと降りてくると、すでに兄様が居たようでそのように声をかけてきました。
「すみません、遅くなりました!今ご飯の用意をしますね!」
「いや、俺も来たのは今さっきだから大丈夫だぞ」
私はテテテッとキッチンに向かい、冷蔵庫に仕舞ってあった夜ご飯を取り出してレンジで温めます。今日の夜ご飯は作り置きしておいた焼きそばです。
「ではいただきましょうか」
「だな、いただきます」
温めるのはすぐに終わったので、私たちは早速食べ始めます。
「美幸は降りてくるのがいつもより遅かったが、何かしていたのか?」
兄様は焼きそばを食べながらそう問いかけてきましたが、特に隠すことでもないので私は素直に答えます。
「私は前に言っていたレアモンスターの素材をレーナさんに渡して装備を強化してもらうのと、アイザさんに頼まれて荒地で鉱石の採掘をしていたくらいですね。そういう兄様はユニーククエストはクリアしたのですか?」
「いや、まだクリアは出来ていないから、この後もまた行くつもりだ。まあ休みのうちにはクリアできるだろうとは思うがな」
兄様も一応は順調のようですかね…?兄様はかなり強いですし、自分でも言っていた通り明日と明後日の休みのうちに終われるでしょう。
「クリア出来るよう頑張ってください!」
「ああ、ありがとな」
そこからもMSOについてのたわいない会話も続けながら、食事を食べ進めます。
「それと今度一緒に行こうと言ってたが、俺のこのユニーククエストが終わってからでもいいか?」
「全然大丈夫ですよ。それまでは私も自分の用事でまた済ませているので!」
「すまんな」
特に急いでもいないので、そこまですまなそうにしなくても良いのですけどね。
「ご馳走様でした。では、食器洗いはお願いします」
「わかった」
そうしてご飯も食べ終わったので、食器洗いは兄様に任せてから、いつも通りお風呂や洗濯なども済ませてきます。
それらのやることも完了したので、私は兄様に先に戻ってますと一声かけてから自分の部屋へと戻ります。
「今の時刻は、八時十分くらいですね」
寝る時間まではまだ少しありますし、テストも終わって明日は休みなので今日は寝る時間まではゲームでもしてますか!
そう決めてから、私は置いてあったヘッドギアを頭につけてゲーム世界へログインします。
ログインすると、そこは職人都市の西門付近でした。そういえばクリアは召喚したまんまでしたが、私がログアウトしたのと同時に召喚石に戻っていたようです。これならずっと召喚した状態でも特に問題はなさそうですね。
それにテイムについての説明を詳しく見てみると、召喚しているモンスターがもし何かしらにやられたとしても時間が経てばまた生き返るようなので、そこも安心のポイントでした。
そしてログアウト以外でも送還と言うと召喚石に戻せるようなので、しまっておきたいときはそうしましょう。
「この時間は、ゴーレム錬成の試しをしますか」
そんなことを確認し終えると、私はご飯前の時と同じように荒地へと足を動かします。
今からやる〈ゴーレム錬成〉の説明を見る限り結構な広さが必要と感じたので、人がいなさそうな奥なら迷惑もかからないでしょうしね。
「…ここら辺でいいですね」
そうしてさらに奥へと歩くこと数十分。少し開けている場所に着いたので、まず初めにクリアを再び召喚します。
「クリア、来てください」
「……!」
「クリア、今から〈ゴーレム錬成〉というアーツを使うので、また私の肩にいてください」
「……!」
わかった!とでも言うように、軽く跳ねてから私の肩へと跳んできました。いちいち持ち上げなくても自分で乗れるようなので、結構な強さを持っているのですかね?そういえばまだ確認はしてませんでしたし、ついでにクリアのステータスを確認しますか。
➖➖➖➖➖
名前 クリア
種族 ピュアメタモルスライム
性別 無
スキル
【万物食Lv7】【状態異常耐性Lv3】【物理耐性Lv4】【魔法耐性Lv1】【発見Lv2】【魔力操作Lv4】【魔力察知Lv5】【HP上昇Lv2】【MP上昇Lv2】【HP自動回復Lv1】【MP自動回復Lv1】
固有スキル
【変幻自在】
称号
〈レアのテイムモンスター〉
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クリアのステータスは【調教】スキルのおかげで私の時と同じようにメニューから見れるようなので、そこで確認しました。
そして確認する限り、特に戦闘に使えるスキルは見当たらないようです。もしあるとすれば、固有スキルという【変幻自在】ですかね?これは今確認してみますか。
それとスキルでもある【万物食】があるおかげで、クリアはなんでも食べることが出来るのでしょうね。
そんな中クリアが持っている、今まで私が見たことのなかった【発見】というスキルは、今までは分からなかったものなどがわかりやすくなるというちょっとわかりずらい効果らしいですが、街などの散策で生きてきます、かね…?
あ、【物理耐性】に【魔法耐性】、【状態異常耐性】スキルについてはそのまんまの効果なので、特に説明はいりませんね。




