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46話 カムイとの特訓

 窓からほのかに入ってくる朝日によって目が覚めました。おはようございます、日曜日です。今の時刻は七時のようです。


 私はベッドから起きて、ストレッチと着替えを済ませてからリビングへ降ります。リビングにはまだ兄様はいないようなので、先に自分のすることを済ませます。


 その後はやることを終わらせても未だに降りてこない兄様へ書き置きを置いて、私は自分の部屋に向かってゲーム世界にログインします。


 …明日からテストなのにゲームとはいいご身分ですが、午後からはちゃんとやるので許してください。


 それと書き置きには、先にやることは終わったのでゲームをしています。用事があればメッセージを送っておいてください。っと書きました。




 ゲーム世界にログインすると、そこは昨日ログアウトをした第二の街の北門のすぐそばでした。


「確かカムイさんとの予定は午前九時くらいですし、まだ少し時間がありますね」


 今の時刻はすでに八時となっていますが、まだ予定時刻まで一時間近くあります。


「満腹度も意外と減ってますし、どこかで何か食べて時間を潰しますか」


 そう決めた後、私は第二の街を歩いて食事が出来そうな場所を探してみます。


 そうして街中を歩いていると、ふと一軒のお店を発見しました。そこのお店の外観は周りとは少し違っていて、全体的に焦茶色をした木材と煉瓦を合わせたかのような見た目で、大通りに面している方はガラス張りにもなっています。どうやらここはカフェのようですね。


「いいですね、ここに入りましょう!」


 私は早速とばかりにそのお店の扉を開け、中へと入っていきます。するとチリンチリンというベルの音が聞こえ、奥にいた店員さんらしき髭を蓄えた渋めの男性からも、いらっしゃいませ、という声をかけてきました。


 中は早い時間だからか人がおらず閑散としていましたが、外観通りかなりオシャレで落ち着いた雰囲気を醸し出した店内となっています。


 私はそのままカウンターに座り、置いてあったメニューを開きます。メニューが結構あるので少し迷いますが……うん、これにしましょう。


「たまごサンドとロイヤルミルクティーをお願いします」

「かしこまりました、少々お待ちください」


 コーヒーは苦手なので紅茶にし、今はまだ早いうえに満腹度もそこまで減ってはいないので、注文は軽食に決めました。


「お待たせしました。こちらたまごサンドとロイヤルミルクティーになります」


 そして待つこと少し、人が少ないせいか早く料理が出来て私の元へと運ばれてきました。


「では、いただきます」


 私は手を合わせてそう発し、早速食べ始めます。


「んー!ふわふわ濃厚でとても美味しいですね!」


 卵はいいものを使っているのかとてもトロトロしており、挟んでいる食パンもフカフカで柔らかく卵とも合っています。


 そして食べながら飲んでいるロイヤルミルクティーも、これまた濃厚でかつくどくなく、美味しくてドンドン飲み進めていってしまいます。


「ご馳走様でした!」


 そうしてパクパクと食べ進めていると、いつのまにか食べ終わっていました。


 ここのお店は当たりですね!また今度も来てみましょう!


 そうこうしていると、すでに時刻は八時半を過ぎていました。私はお会計を済ませてお店を出て、集合場所である初期の街の広場へと向かいます。


「少し早いですが、先に待つとしますか」


 そう呟きつつも私は歩き、第二の街の広場から転移を行って場所についた後はそのまま待機としています。


「もしかして、【時空姫】か…?」


 その状態のまま広場で待っていると、突如そんな風に声をかけられました。そちらを見ると、そこには男性である三人のプレイヤーが立っていました。


「…ちょっと恥ずかしいですけど、多分そうです」


 相変わらず、そんな名前で呼ばれると恥ずかしさがでて顔が赤くなってしまいますね…


「ここにいるってことは暇なのか?」

「なら、俺たちと一緒に狩りにでもいこうぜ!」

「きっと楽しいからさ!な?」


 三人の男性プレイヤーは口々にそう述べてきますが、私は人を待っているのでそれは出来ません。


「すみません、人を待っているので…」

「そんな待たせてるやつなんてほっといて俺たちと行こうぜ!」


 …ちょっとカチンときましたね。私はいいとしても、知り合いをそんな風に言われるのはムッとします。


「おい、何をしている?」


 私が思わず言い返そうとした時、その三人の男性プレイヤーの背後からそのような声が聞こえてきました。


「あん?誰…って【雷帝】!?」

「あ、カムイさん!」

「待たせたな、レア。今来たが、なにかあったのか?」


 金髪青目の青年、カムイさんがここに来たようで、三人の男性プレイヤーはそれに怯んで、文句も言わずにそそくさと去っていきました。


「タイミングがよかったです。ありがとうございます」

「いや、特に俺は何もしてないから別に構わないぞ?」


 …やはり、目立っていたからこんなことになったようですし、なんでもいいから顔などを隠す物が至急必要ですね。


「よし、じゃあ特訓とするか」

「わかりました。特訓のやり方は決闘システムですか?」

「ああ。もしかして、ゼロともやっていたのか?」

「はい、その時に教えてもらいました」


 なるほどな、と言って納得している様子のカムイさん。カムイさんも知っていたようですし、結構基本なシステムなのでしょう。


「よし、申請したから受諾してくれ」

「はい」


 カムイさんのその言葉と共に、決闘の申請が来たので私はもちろん承諾します。すると、兄様の時と同じように身体が光って決闘エリアへの転移が起こりました。




 視界が戻ると、そこは前と同じで広い土で出来た平らな地面のフィールドでした。


「とりあえずは基本のフィールドにしてスキル使用を出来ない状態にしたが、よかったか?」

「大丈夫です。スキルよりは基本の戦闘力を鍛えたいので!」


 兄様との特訓の時はスキルありでしたが、自力をつけたい今の状況ではこれが一番良いですしね。


「それと対戦方式もHP残り50%で決着にしたから、早速始めるか」

「わかりました!」


 カムイさんはシステムを操作して決闘を開始し、カウントダウンが始まります。私たちはその少しの間で武器を手に取り出して準備を済ませます。


『Ready fight!』


 そうして開始の合図がなり、それと同時に私は無数の銃弾を撃ちます。


 それに対してカムイさんはバトルフェスの時と同じように、手に持つ白色の片手剣で弾丸を切り捨てながらこちらへと前進してきます。


「これじゃあ前と同じだぞ!」


 やはり、普通に撃つだけではまずダメージを与えることは出来ませんね…


  なら、兄様との特訓の成果を見せますよ!


 弾丸を切り捨て弾いてとしながら接近してきたカムイさんは、その片手剣を私のお腹辺りへと横長に振るってきます。


 私はそれを深くしゃがんで回避し、そのまま立ち上がる勢いをつけて膝蹴りを放ちますが、それは咄嗟に防御に使った片手剣で防がれ、その勢いで少し後退しています。


「結構な威力だな…」


 カムイさんは思わずと言った感じで声を漏らしてますが、私は即座に手元の双銃で弾丸を続けて撃ちまくります。


 しかしそれらの攻撃も先程と同じように全て片手剣で切り捨て、弾かれています。


 そんな中、カムイさんは再びこちらに一気に踏み込んできて、その片手剣で連続して攻撃を放ってきます。


 かなりの速さかつ鋭さで、袈裟斬り、薙ぎ払い、刺突など次々と攻撃が飛んできますが、それを私はゆらりゆらりとフェイントを混ぜた不規則な動きで回避しつつ、反撃として身体だけではなく回避先も読んでその先に弾丸を置き、身体に対しても無数の弾丸を撃ち返しますが、それらもやはり弾かれたり回避されたりでなかなか攻撃は当たっていません。


 フェイントを混ぜたりもしてるのですが、やはり戦闘の感がいいのか紙一重で回避されています。


 しかし、前とは違ってこちらの動きを読ませないように出来てますし、回避についても上手く出来てます。なのでお互いに一切傷は負っておらず、少しだけ膠着状態に近い感じになっていますね。


 そんな攻防を少しの間続けていると、カムイさんは今度は下から掬い上げるように片手剣を振るってきます。


 私はそれを左手に持つ短銃で逸らし、上方向へと受け流します。


「む…」


 そして今度はそのまま右手の長銃でお返しの弾丸を頭、首、胸に連続で撃ちますが、カムイさんはその剣の軌道に身体を流されず、即座に手元に戻した片手剣でそれらを全て弾き飛ばします。


 ですが、それによって出来た一瞬の隙を見つけ、そのままこちらから踏み込んでそのお腹へと蹴りをいれます。


 それは回避出来なかったようですが、即座に後方へ跳んだせいであまりダメージは与えられませんでした。


「なるほど、ゼロとの特訓のおかげなのか前よりもかなり強くなっているな」

「そうですか?それだと嬉しいですね」


 確かにバトルフェスの頃よりは動きも正確に出来るようになりましたし、言われるほど変わっているのですね。


「じゃあ、続きといくぞ?」

「こちらも、もっと行きますよ!」


 会話もそこそこにして、そこからもしばらくは特訓を何度も行っていきました。




「いい時間だし、この辺で終わりにするか」

「あ、もうそんな時間ですか?」


 そうして指導を受けながらも数時間近くスキルなしの試合を何度も行い、ふと呟いたカムイさんのその言葉に腰にある懐中時計を確認すると、すでに十一時近くになっていました。


「本当ですね!結構経っていたのですか…」

「キリもいいし、特訓はこれで終わりだな」

「はい、今日はありがとうございました!」

「そこまで気にしなくていいぞ?またしたかったらいつでも言ってくれて構わないからな」

「その時はまたよろしくお願いします!」


 カムイさんとの特訓は全てスキル使用禁止のルールでやっていたからか、休憩を挟みながらやっていましたが互いにかすり傷を負おうくらいで致命的なダメージを与えることはなく、本当に動きについての訓練みたいな感じでした。


 しかし、前よりもかなり互角レベルで戦えていて成長が感じました!


 勝ち負けは決まりませんでしたが、こんな経験を出来ましたし更に強くなれそうで嬉しいです!


「そろそろ元のエリアに戻るか」

「そうですね」


 そう言って私たちはメニューを開いて決闘エリアから元のエリアへと戻ります。


 元のエリアに戻ると、そこは来た時と同じ初期の街の広場でした。


「じゃあ俺は一度落ちるな」

「私も午後はクオンと勉強会をするので落ちます!」

「そうなのか。ならまた今度、一緒に狩りにでもいこうな」

「はい!では!」


 私たちはそんな言葉を交わしてからメニューを開き、ログアウトをします。




 現実世界に戻ってきた私は、いつも通りストレッチなどを済ませてからリビングに降ります。


 リビングにはまだ兄様は降りてきていないようなので、待っている間はスマホでMSOの情報を確認していきます。


 そうして待つこと数十分。扉を開ける音に気が付いて私は下げていた視線を上げると、そこには兄様が入ってくるところでした。


「兄様、降りてきたのですね」

「待たせてしまったか?済まんな」

「いえいえ、そこまで待っていないので大丈夫ですよ。では準備をしますね」


 そう言って私は椅子から立って冷蔵庫に仕舞ってあったカレーを取り出し、レンジで温めてからご飯と一瞬にお皿に盛り付けます。これで準備は終わりですね!


「では、食べましょう」

「ああ、いただきます」


 準備が出来たので私たちは早速食べ始めます。うんうん、一日置いたカレーはコクもあって一味違いますね!


「美幸は今日の午前、何をしていたんだ?」


 モグモグと食べ進めていると兄様からそんなことを聞かれました。


「んぐ、私はカムイさんとの特訓をしていましたね」

「前に頼んでいたやつか」

「そうです。やはり兄様との特訓もしていたおかげで、全然負けそうにはなりませんでした!…まあ勝てもしませんでしたけど」

「カムイもプレイヤーの中で一番最強と言っても違いないくらい強いから、負けないだけでも凄いぞ?」


 最後にボソッとこぼした言葉に、兄様は苦笑しつつもそう返してくれました。確かに、お互いに軽く傷を負うくらいで済んでいましたし、カムイさんにも負けないくらいの強さは手に入れましたかね…?

 これからも鍛え続けて、いつかユニークスキルなどをお互いに使用する本気状態でも勝てるようにはなりたいですね!


「そういう兄様は何をしていたのです?」

「俺はユニークスキルを授けてくれた師匠から出されたユニーククエストをしていたな」


 なんと、兄様もユニーククエストを受注していたようです。というか兄様が師匠と言うなんて、その住人はかなりの強さを持っているのですかね?


「どんな内容から聞いてもいいですか?」

「いいぞ。クエスト内容は、師匠のとこから行ける特殊なエリアで三体のボスを連続で倒す連戦系のクエストなんだ」


 しかも一体一体のボスがかなり強いうえに近々テストもあるから、クリアは遅くなりそうだがな、と続けて言う兄様。まあテストは大事ですし、早くしないとダメではないでしょうからゆっくりとすればいいですよね。


 兄様の受けたユニーククエストはユニークスキルの強化みたいですし、私も強化があるのなら次のイベントまでにはしておきたいですね。


 …今度ソロさんのところに行ってユニークスキルのことについて聞いてみますか。


 そんな会話をしつつも食べ続け、食事も終わったので使い終わった皿などは流しに置いて、洗うのは兄様に任せます。


「今は…十二時くらいですね。悠斗が来るまではまだ時間もありますが、先にしておきますか」


 そう考えて自分の部屋から勉強道具をリビングに持ってきて、先に勉強を始めておきます。


 時間を気にせずに勉強に熱中していると、ふとピンポンとインターホンが鳴ったので玄関へ向かい、扉を開けるとそこには悠斗が立っていました。


「来たのですね」

「ああ、早かったか?」

「いえ、特に待っていないので大丈夫ですよ。それじゃあ中にどうぞ?」

「ああ、お邪魔します」


 そうして悠斗を連れてリビングに向かい、悠斗はリビングに居たらしい兄様へと挨拶をしています。


「とりあえず、ここで勉強会としましょう」

「わかった。あ、それと軽めのお菓子も持ってきたぞ」

「ありがとうございます。それは勉強をしながら食べますか。兄様も勉強ですか?」

「俺もテストがあるし、流石にしておかないとヤバいと思うからな」


 そしてまだリビングに居た兄様へもそう声をかけてみると、そのように返ってきました。


 兄様も私と同じで特に勉強が出来ないわけではないですし、こうしてやっておけばまず間違いなく赤点は取らないと思います。


「では、私たちも始めますか」

「そうだな」

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