43話 荒地
そうして学校のあるこの数日間は、再びエルフェリンデの浅層で売り払ったり作ったりで殆どなくなっていた素材たちを、のんびりと狩りや採取などをして確保していました。
職人都市まではエリア開放をして行きましたが、そこの西にある荒地はまだ確認はしてません。それはまた休みの日にでもしっかりと散策しようと思ってたので、この休みのうちに行くつもりです。
そして今日は休みで学校のない土曜日。私はいつも通り朝の支度をした後に、五十分くらいかけて買い物も済ませてからゲーム世界にログインといきます。
「宮里さんと会うのはお昼ですし、午前中は荒地へ向かいますか!」
今の時刻は八時半くらいですし、会う時間にはまだまだ時間はありますからその間は新しくエリアの散策に行きます。
いざ行かん、と今の第二の街から職人都市に転移をしようとするタイミングで突如フレンドメッセージが届きました。
送り主はどうやらカムイさんのようで、内容は明日の日曜日、午前九時くらいに特訓をしないか、と書いてありました。
なので私はそれに問題ありませんと即座に返します。よし、カムイさんの技術も教わって頑張って強くなりましょう!
「明日はPVもありますし、来週からはテストも始まるので予定が目白押しですね」
日曜日はPVも見て、悠人と勉強会もします。まあ勉強もそこまで出来ないわけではないですし、全て楽しいことでもあるのでいくらでもどんとこいですけどね!
「では、今度こそ行きましょう!」
私は今いる場所から転移をして職人都市へと飛び、早速西の荒地に向かいます。
ちなみに、前よりも育ったステータスがこちらです。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【双銃Lv7】【鑑定士Lv2】【錬金術Lv3】【採取士Lv5】【気配感知Lv7】【隠密Lv6】【鷹の目Lv6】【ATK上昇+Lv7】【AGI上昇+Lv7】【DEX上昇+Lv7】【体術Lv35】【気配希釈Lv6】【採掘Lv17】【INT上昇+Lv4】【第六感Lv2】【跳躍Lv21】【夜目Lv22】【言語学Lv25】【魔力操作Lv26】【魔力察知Lv22】【魔力隠蔽Lv19】【MP上昇Lv17】【HP自動回復Lv15】【MP自動回復Lv15】【栽培Lv3】
ユニークスキル
【時空の姫】
所持SP 30
称号
〈東の森のボスを倒し者〉
〈時空神の加護〉
〈第一回バトルフェス準優勝〉
〈深森の興味〉
〈西の湿地のボスを倒し者〉
〈火霊旅騎士の魔印〉
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【直感】スキルは進化して【第六感】になりました。【第六感】スキルも【直感】スキルと同じで基本はパッシブのスキルなので、特に確認することはありません。
次は称号です。
〈西の湿地のボスを倒し者〉は前に手に入れていた狼の時と同じく記念称号で、特に効果はありません。
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〈火霊旅騎士の魔印〉
火霊旅騎士が認め、尚且つ気に入られた者に与えられる精霊のみがわかる魔法の印。精霊からの印象を良くし、警戒もされづらくなる。
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そして特殊な称号である〈火霊旅騎士の魔印〉。こちらの称号はサルファ君から貰ったものですが、発揮する力は精霊に対する効果のようです。今はまだ行けてませんが、精霊の国に行った時にはハッキリとした効果を実感出来そうですね。
「着きましたね。早速散策と行きますか!」
私は意気揚々と西の荒地を歩いていきます。ここの荒地は植物がかすかにあるくらいで、大体は岩や礫または乾燥した土などの地面がむき出しになっているエリアのようです。それに結構な広さのようで、見渡す限り土に岩、そしてほんの僅かの植物となっています。
それと、ここのエリアの名前は『ストアード荒野』と言うようで、ここで出会うモンスターは基本土属性系や乾燥に強かったりするモンスターなどが主なようです。
このエリアに来てから【気配感知】を使って探しだし、最初に出会ったモンスターは前に兄様たちと倒したことのあるストーンアントでした。どうやら、洞窟ではないここでも生息しているようですね。
洞窟の時と同じで数十と少しの群れで襲ってきましたが、洞窟のように狭くないのと、前よりもスキルが育ってステータスも上がったのも相まってか殆ど苦戦せずに倒せました。ドロップアイテムも前と同じです。
そして次に見つけたのは、茶色をした全長二メートルはある大きなトカゲでした。
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ストーンオオトカゲ ランク F
岩場や乾燥した場所に生息している大蜥蜴。
力強い四肢と尻尾、硬い鱗を生かして獲物を狩る。
状態:正常
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鑑定ではそう出ました。普通の蜥蜴よりも大きいうえに力も強いらしいので、このモンスターの攻撃を受けたら結構なダメージになりそうです。それに鱗が硬いようなので、物理系の攻撃はあまり効きづらそうですね。
私は適度な距離を保ちつつ両手に取り出した銃で撃つと、私の武器は魔法系のダメージだからか簡単にその身体を撃ち抜いて楽にダメージを与えられました。
そのまま攻撃を続けていると大蜥蜴はこちらに気づいて走ってきましたが、そのスピードはそこまで速くはないので後ろにステップしながら攻撃を続け、近づかれる前に倒しました。ドロップアイテムは鱗と牙、尻尾肉でした。…また尻尾の肉が出ましたね。ムニルさんに渡して今度何か料理を作ってもらいましょうかね…?
街の近くでは基本先程の石蟻と大蜥蜴が主なモンスターのようで、それ以外はまだ見かけていません。マップを見るにエリアがかなりの広いようなので、奥に行けば別のモンスターも出るでしょうし、時間まではどんどん行ってみますか!
そうして道中で見つけた石蟻や大蜥蜴を倒しながら歩いていると、【気配感知】に反応がありました。そちらへ視線を向けると、そこには大蜥蜴と似たような茶色をした大きめの蛇が隠れていました。
岩や地面と似た色をしているせいで目では少し見つけずらかったですが、見つけてしまえば丸わかりですね。
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ストーンスネーク ランク F
岩場や乾燥した場所に生息している蛇。
その身体の色で周囲に潜み、近づいてきた獲物を狩る。
状態:正常
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こちらの蛇は鑑定ではそう出ました。森の時と違って岩場のようなところに生息しており、こちらも周りに隠れる効果を持っているみたいですね。
私が街の外のエリアでは常時【気配希釈】と【魔力隠蔽】を使っており、攻撃もしてないせいかまだこちらには気づいていないようです。
「なら、先手必勝ですね!」
私はこちらに気づけていないその蛇目掛けて両手に呼び出した銃で弾丸を撃ち、その弾丸はこちらを感知出来ていなかった蛇の頭を正確に撃ち抜いてポリゴンに変えました。
「あの蛇は隠れるのが強いからか、そこまで耐久はなかったようですね」
それに、先に見つけれたおかげで攻撃をされる前に倒せましたし、苦戦は一切しませんでしたね。
あ、ドロップアイテムについては森の蛇と似ているようで、肉、牙、皮を落としました。ドロップアイテムは殆ど一緒ですが効果は少し変わっていて、牙は僅かな毒性の代わりに鋭さが増し、皮は木々ではなく岩場に隠れるための見た目になっています。そして肉は特に今わかることはないので割愛します。
その後も散策を続けて奥へと進んでいると、今度は土色をしたバッタの群れが飛んでいました。バッタの大きさはおよそ10cmくらいはありそうな大きさで、群れなのも相まってかなり気持ち悪いです…
「…あれは相手にするのは面倒くさいですし、今回は無視しましょう」
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ストーンホッパー ランク F
岩場や乾燥した場所に生息しているバッタ。
無数の群体で固まり、植物や死肉などを食べながら移動する。
状態:正常
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一応鑑定はしましたが、あれには手を出しません。
石蟻のようにある程度の数で大きさもそれなりにあるのなら戦うことは出来ますが、あのくらいの小ささなうえに数百近くはいそうなあのバッタの群れでは倒しきれなさそうですしね。
多分、範囲攻撃などを出来る魔法使いのようなプレイヤーなら簡単に蹴散らせるでしょう。
私のユニークスキルは基本バフデバフなどが主で一人で群体相手では結構厳しいので、これからも一人の場合は無視するとは思います。
「素材は少し気になりますが、手を出したら危ないですしね」
そう呟きつつも、私はエリア内を歩いていきます。
さらにテクテクと荒地内を歩いていると、今度は半透明な色をして白色の核が中に見えている、まんまるボディをしたスライムを発見しました。
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ピュアスライム ランク F
様々な環境の場所に稀に生息しているスライム。
様々なものを糧として食べて自身の魔力に変える力を持つが、まだ幼体で食べる以外には特に力はない。
状態:正常
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鑑定をしてみると、このような説明が出ました。説明からすると、このスライムはどうやらレアモンスターのようですね。そのスライムは私がすぐそばに近づいてツンツンと突っついても襲ってくるタイプではないようで、もそもそと地面を這って動いています。
「うーん、なんだか可愛いですね…」
レアモンスターですが、ちょっと倒すのを躊躇ってしまいますが……うん、このスライムを倒すのはやめておきましょう。あ、ついでに何か与えてみますか!鑑定の説明では様々なものを食べると書いてありましたし、とりあえずは薬草とかをあげてみましょうかね。
「ほーら、ご飯ですよ〜」
私はそのスライムへと前に採取していた薬草や魔草を与えてみます。すると、そのスライムはそれをまんまるな身体に吸収して食べて?います。
「こうして見ると結構可愛いですし、ペットとして飼ってみたくなりますね」
その小さな身体で少しずつ吸収しているスライムを見て、そう一人ごちます。
「…そろそろ散策に戻りますか」
名残惜しいですが、私はそのスライムから離れてまた荒地を歩き始めます。
…そんな離れていく私の背後では、そのスライムが食べた薬草と魔草のおかげなのかなにやら光っていたことに私は気づかず、離れて行ってしまいました。
そうしてその後は特に目立ったこともなく、狩りなどをしながら荒地を散策してました。
それと、ここでとれる僅かな植物と鉱物も採取に採掘と確保しました。内訳はこんな感じです。
・薬草×8
・魔草×3
・土の草×11
・土牛蒡×8
・火薬草×7
・石ころ×17
・土の石×8
・銅鉱石×14
・鉄鉱石×9
・クロム鉱石×3
・宝石の原石×1
今までに手に入れたことのないアイテムは四個で、それらは鑑定をしてみます。すると、まず土の草については土属性が僅かに籠った草のようであまり使い道はなさそうです。
次に土牛蒡。こちらも土属性の籠っただけの牛蒡で食材ですね。
続いて火薬草。これは粉末にすると火薬の代わりになるようで、前に屋台で見たような物になると思われます。
銅や鉄の二つとは違う鉱石であるクロム鉱石。これは合金として混ぜると元になったその素材の力を強化できる性質のようで、意外とレアそうです。
そして最後にレアアイテムらしき一つだけ取れた宝石の原石。これはまだ原石ですが、初期の街からいける北の山で手に入れた物とはちがう宝石だとは思います。まあこれはアイザさんに渡しますか。
それと深森の称号のおかげか、採取した植物系の品質が上がっていました。まあ私の【錬金術】スキルでは作った物のランクは上げれないので、そこまで気にすることはありませんが。
「今の時刻は…十一時くらいですね」
もう結構経っているようで、良い時間になっていました。
「そろそろ街に戻って一度ログアウトしますか」
そう決めて私はマップを見ながら職人都市へと向かいます。意外と奥まで進んでいたのでここからでは職人都市が見えないのですよね。
それに、前に悠斗が言ってた通りかなりの広さがあるせいで、マップを見ると次のエリアまではまだまだかかりそうです。
「こっちのエリアも、森と同じように攻略していきたいですね」
取れるアイテムの種類も森とは当然違い、鉱石類が主なのでそれらを必要とするプレイヤーたちはまあまあ来そうです。
あ、そういえば前にネットで見た情報では職人都市の北に鉱山もあるようですし、そちらにも行ってみたいですね。
「っと、着きましたね」
そんなことを考えながら歩くこと数十分で都市に戻ってきました。とりあえず、広場に行ってから一度ログアウトしますか。
「美幸は午後はまたやるのか?」
ゲームから落ちてリビングでお昼ご飯を兄様と二人で食べていると、兄様からそう問いかけられました。それに私は食べていたご飯を飲み込んでから答えます。
「そうですね、十二時半から同級生と会う約束をしているのです」
「そうなのか。俺もまたログインするが、また今度にでも俺たちのパーティと一緒に狩りにでも行かないか?」
「いいですよ。でも、この休みの日は予定がありますし、来週の平日もテストがあるからその後ですけど…」
「まあそれは俺もだし、わかっているさ。じゃあその後の空いている日にでも一緒にやろうか」
「はい、その時はまたよろしくお願いします!」
そんな会話も続けながら食べ進め、食べ終わったのである程度の片付けをして、食器洗いは兄様に任せて再びゲーム世界へとログインします。
「今は十二時くらいですし、時間になるまでは広場の近くの屋台で何か食べていますかね」
私はまず職人都市から初期の街へ転移をし、その次に近くの屋台を巡っていきます。
「プレイヤーのやってる屋台もあるのですね……あ、お兄さん、そのクレープ一つお願いします」
「あいよ!」
そんなプレイヤーである男性のやっていた屋台でクレープを買い、食べながら歩いていきます。
それと何故プレイヤーとわかったのかというと、初期装備を装備しているのとマーカーが青だからです。
今までは特に見てなかったうえに今更ですが、この世界では今までのゲームとは違って特にプレイヤーネームは表示されていません。しかしそのプレイヤーによって違う色のマーカーが頭上に浮いているので、それでプレイヤーかNPCかはわかります。
マーカーの色は、通常のプレイヤーが青、NPCが緑、そして軽犯罪をしたプレイヤーが黄、PKや殺人などの重犯罪を起こしたプレイヤーは赤となるので、それでそのプレイヤーの性質などはそれでわかります。
なので、赤色マーカーのプレイヤーを見かけた場合は気をつけた方が良いのです。まあ私はこれからもこういう時にしか見ることはないでしょうけど。
ちゃんと見ようとしない限り、マーカーは見えないようになっているのでわかりませんしね。
「もぐもぐ……それにしても、屋台で売っている素材やアイテムも最初に見た時からは増えていますね」
屋台だけではなく、露店を広げて自作らしい武器やアクセサリーを売っているところも増えています。
「まあ私は特に欲しい武器もアクセサリーもないですけど、こうして見て回るのは楽しいですね!」
そうして屋台や露店を冷やかして見て回っていると、もう少しで約束の時間になるのでそろそろ戻りますか。
私は来た道を引き返して、広場に戻ります。
広場に戻ると、そこにはすでにクオンが立っていました。クオンも本戦に出てはいましたが、初戦敗退だったからかそこまで知名度はそこまでないようであまり目立ってはいないようです。…私は無駄に目立っていますのに…
ま、まあそれはいいとして、見てないで行きますか。
「クオンー!」
「お、レアか」
私がそう声を上げながら呼ぶとこちらに気づいたようで、視線を向けてきます。
「もう来てたのですね」
「ああ、早めに来ておこうと思ってな」
今の時刻は十二時二十分くらいなので、まだ早いですが私とクオンはすでに来たようです。
「クオン、明日の勉強会は午後の一時くらいから私の家でしませんか?」
「わかった。ならそのくらいに向かわせてもらうな」
そこからもMSOについての会話をしていると、時間になる前に一人の女性プレイヤーが近づいてきました。
「月白さんと、深剣さん…で合ってる?」
「はい、そうです。こちらではレアと名乗っています」
「俺はクオンだ。よろしくな」
「よかった、合ってた!遅くなってごめんね。こっちでは私はアオイって言うの!よろしくね!」
そう言って軽く挨拶をしてくる宮里さん改め、アオイさん。こちらでのアオイさんの姿は人間らしき見た目で青色の髪を三つ編みにして横にたらしており、現実と同じくらいの身長150cm後半のようです。
それと装備についてですが、武器の方は出していないのでわかりませんが、防具は軽鎧系の装備をしているのでおそらくは近接系の武器を使うのでしょう。




