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42話 売買

「では、〈錬成陣〉の確認済みましたし、錬金で使う新しい道具を鑑定しましょう!」


 ➖➖➖➖➖

 下級錬金セット ランク F レア度 一般品(コモン)

 錬金を始めた者のための錬金布。下級では三個まで同時に合成出来る。

 ➖➖➖➖➖


 そして鑑定をすると、そのように出ました。なるほど、錬金の場合はどうやら同時に合成出来る数が増えるようですね。


 他の生産スキルの【裁縫】や【鍛冶】などの場合は、さらに上位の素材を扱える様になり、更には効能も上がる効果が付いているらしいです。


 ですが私の使っている【錬金術】スキルの道具には効能を上げる効果はついていないうえにランクも上がらないので、薬を作るなら普通に【調合】スキルのほうが少し手間ですが効能であるランクが上げれるようなので、やはり前にネットで見た通り【錬金】系は使いずらいという評価と同じようです。


「とりあえずは、ランクを上げれればもっと使いやすくなるんですけどね…」


 まあ今はどうすれば上がれるかはわからないので、これについては後回しですね。


 そうしてその後は〈錬成陣〉の確認も済んだので、新しい下級錬金セットでいつも通りに【錬金術】スキルの合成を使用して大蛇との戦い前までに採っていた上薬草と少しの上魔草を使ってポーションたちを作っていきます。


 そうそう、もう一つのアーツである〈ゴーレム錬成〉はいくらこの個室が広いといっても呼び出すゴーレムには狭いほうでしょうし、なんなら街中でやるようなアーツでもないので、そちらはまた今度に試します。


「っと、そろそろ時間ですね」


 一通り合成を済ませたので時間を確認すると、もう六時二十分で一時間が経ちそうになっていました。


「そろそろ降りますか」


 私は広げていたアイテムたちを全てインベントリに仕舞った後、個室から出てカウンターまで向かいます。


「今更ですが、インベントリは凄い便利ですね」


 実は、先程作ったハイウルフの剥製は私くらいの大きさがありましたが、普通にインベントリに入ったのですよね。しかも、時間経過もないので料理や食材などを入れ続けていても問題もないですし、入る量も無制限なので色々とアイテムを拾ったりしていたので、もしなかったら本当に大変でしたでしょう。


「ソロさんが言っていた通り、魔道具でこれを再現するのも納得です」


 そんなことを呟きながらも歩き、カウンター前まで戻ってきました。一時間が経っていましたが、お姉さんはまだそこにいました。それにプレイヤーたちの数はあまり減ってないようなので、またもや視線が集まります。…ちょっとだけ、嫌ですね。


「あ、レアちゃん。どうされましたか?」

「実は作ったものを売りたいのですが、大丈夫ですか?」

「ええ、もちろん大丈夫ですよ。では、こちらで確認いたしますね」


 私がそう聞くと、お姉さんはカウンターから出てから案内をしつつ、一つの扉へと向かいます。


 そして扉を開けて入っていくので、私もそれに続きます。


 中は先程の個室よりもそこそこ広く、ソファやテーブルなどが置かれていて、かつ個室よりも少し豪華になっている感じですがそこまでゴテゴテはしていなく、上品な印象でなかなかオシャレな空間となっています。


「こちらにおかけください」

「はい。…あの、ここは…?」


 豪華になっている部屋に案内されて私は少し緊張しつつも、そう問いかけます。


「こちらは、職人や商人同士で売買を行う場所なのです」

「なるほど、私が売りたいと言ったからですね。ですが、買いたいという人はいないうえに、勝手にここを使ってもいいのですか?」

「実は私、このギルドの副マスターなのですよ。なのでそこは問題ありません。それに、ここの方がレアちゃんが目立たなくて良さそうと思ったので、案内させてもらったのです」


 暗にカウンターでも大丈夫です、と意味を込めて言うと、お姉さんはそう続けました。それは確かにありがたいですね!それにまさかの副マスターだったようです。私のことも気にしてくれるなんて、さすが副マスターです!


「なんだかありがとうございます!」

「ふふ、別にそこまで気にしなくてもいいですよ。では、売り物を確認させてもらってもいいですか?」

「あ、今出しますね」


 私は早速インベントリから先程作ったハイウルフの剥製をテーブルに……置くにはデカいので、その横の地面へと出しました。それと今まで狩ってきたモンスターたちの素材たちも買い取ってもらえるかも聞くと、了承を返されたので、それらも後で売り払うことにします。


「ハイウルフの剥製ですか…」

「これ、売れますかね…?」

「ええ、これはかなり出来の良い剥製なので、結構な額で売れると思います。こちらの代金は……そうですね、30,000Gくらいでどうですか?」

「そんなに高く売れるのですね…!私はそれで問題ありません!」


 ハイウルフの素材にエリアボスの狼の素材だけでこんなに高くなるなんて、なかなか良い稼ぎになりましたね!


「では、ただいま代金を持って来させますね」


 お姉さんは指に着けていた収納の指輪からベルを取り出して鳴らすと、すぐに扉をノックする音が聞こえてきました。


 そしてお姉さんは入ってきた男性の職員さんに買い取りをするから代金を持ってくるように伝えると、男性職員さんはそれに頷いて部屋を出て行きました。


「それとモンスターの素材ですね。こちらは冒険者ギルドよりかは少し安くなってしまいますが、大丈夫ですか?」

「そうなのですか?まあ、私は問題ありません」


 別にすぐにお金が必要というわけではないですし、ここからまた冒険者ギルドに行って買い取りしてもらうのは面倒くさいので少し安くなってもいいですね。


「ありがとうございます。そちらは剥製の代金をお渡ししてから魔物素材の部屋で鑑定させてもらい、その後に代金を払いますね。それと、あの剥製はどうやって作ったかは教えてもらってもいいですか?」

「良いですよ。あれは【錬金】スキルの〈錬成陣〉というアーツを使って作ったのです」

「なるほど…」


 私が作り方について教えると、お姉さんはなにやら考え事をしています。


「もしかして、知らなかったのですか?」

「はい。実は【錬金】スキル持ちは私たちのギルドにもあまりいないので、【錬金】スキルについてはそこまで詳しくはないのですよね」


 それに【錬金】スキル持ちも作るのは基本魔法薬や薬系ばかりですしね、と続けて説明もしてくれました。


 通りであの剥製は高く売れるのですね。作る人もスキル持ちも少ないのなら、あのようなアイテムを作る人は殆どないでしょうし、珍しさも相まって高いのですかね?


 そんな会話をしつつも待っていると、再び扉がノックされて先程の男性が代金を持って入ってきました。


「では、30,000Gです。お確かめください」

「…はい、大丈夫です」


 お金はインベントリに入れればすぐにわかりますし、すぐに私は確かめるのを終わらせて返事を返します。その間にお姉さんは剥製を指輪に仕舞っていました。…ソロさんも持っていましたが、やはり収納の指輪は結構広まっていて使われているのですね。まあかなり便利でしょうし、それも当然ですか。


「次はモンスター素材の買い取りのために、また別の部屋に向かいますね」

「はい」


 お姉さんと共に買い取りの部屋から出て後を着いていくと、少し歩いた先にあった扉を開いて中へと案内されます。


 今度の部屋は先程の買い取り部屋よりもかなり広く、中央に茶色をした大きなテーブルが置いてあり、一人の男性が暇そうにして椅子に座っていました。


「モルさん、素材の買い取りをして欲しいという人を連れてきましたよ」

「ん?ああ、ミリアの嬢ちゃんか。素材を買いたいならともかく、素材の買い取りをしてもらいたいなんて物珍しい奴もいたもんだな」


 お姉さんがそう声をかけると、座っていた男性、モルさんが椅子から立ってこちらへ歩いてきました。立ち上がったその男性は、スキンヘッドをした身長180cm半ばはありそうな見た目で、言ってはあれですがかなり厳つい顔をしています。なんとなくですが、大剣とかが似合いそうなイメージがしますね。


「で、そっちのちっこい嬢ちゃんが素材を売りに?」

「ち、ちっこいは余計です!」


 その厳つい顔立ちをしたモルさんに私は思わずそう言ってしますが、モルさんはあまり気にしていないようでまあ良いじゃねえか、と笑って返してきました。す、少しくらい気にして欲しいんですけど!


「ええ、ではレアちゃん、出してもらっても良いですか?」

「…わかりました」


 私は一旦その気持ちを抑え込み、お姉さんの言葉通り今まで貯めていた無数の素材をテーブルの上に出し始めます。


 出した素材は、エルフェリンデの浅層に出たモンスターたちとエリアボスだったハイリザードマン、そしてそれ以外のエリアのモンスターなど、実に多種多様です。


「おお、結構あるな。よし、じゃあすぐに査定するから座って待ってろ」


 モアさんはそう言ってたくさんの素材たちを見分けしていきます。そんな中、私とお姉さんは言われた通り椅子に座って待っています。


「お姉さんはミリアさんと言うのですね」


 そんな待ってある間に、私は先程呼ばれていたお姉さんの名前を確認します。


「そういえば紹介はしてませんでしたね。改めて、ミリアと言います。よろしくお願いしますね?」

「はい!こちらこそよろしくお願いします!それと、ミリアさんも一緒に待っていて大丈夫なのですか?」


 副マスターですし忙しいのでは?と思ったのでそう問いかけてみると、ミリアさんはそれに対して返事をくれました。


「今はそこまで人もいないですし、私がいなくてもとくに問題はないのですよ」


 なら別に大丈夫そうですかね?プレイヤーたちはまあまあいましたが、売買などをするわけではなさそうでしたしね。


 そこからさらに少しだけ待っていると、査定が終わったのかモアさんが素材を指輪に入れてからこちらへと歩いてきました。


「終わったぞ」

「もう終わったのですね」

「まあこの仕事は長くてやっているからな。それで買い取り金額だが、素材の量も多くて質も良かったから、ざっと100,000Gだな」

「おお、なかなかの金額なのですね!」


 今まで狩ってきたたくさんのモンスターたちの素材がこんな大金になるなんて、凄いです!


「じゃあほい、100,000Gだ。確認してくれ」


 そう言って指輪から出したお金の入った袋を渡してきたので、それをインベントリに入れて確認します。うん、ちゃんとピッタリありますね。


「問題ありません」

「よし、ならミリア、この素材は倉庫の方に持ってっとくぞ」

「お願いします」


 私が確認をした後にお二人は言葉を交わし、モアさんは置いてあった素材たちを指輪を収納して奥にあった扉から倉庫らしき方へ向かって行きました。


「では、私たちも戻りますか」

「わかりました」


 私たちはそう言ってカウンターの方へ戻っていきます。扉を開けて外に出ると、またもやプレイヤーたちの視線がこちらへと向くのが感じ取れました。…クロークは直せていませんし、なんでも良いから隠すものが欲しくなりますね…


「それじゃあ、私はもう行きますね」

「はい、またいつでもいらしてくださいね」


 別れの挨拶をした私は、職人ギルドから出ていきます。


「今は…六時五十分くらいですか。なら、いったん落ちてやることを済ませたらまたログインしますか」


 そう決め、私はメニューからログアウトを押して現実世界へ戻ります。




 現実世界に戻ってきたので、まずはヘッドギアを外してサイドテーブルに置き、まずはストレッチをします。


「んー…よし、降りますか」


 終わらせた後は、いつも通り自分の部屋からリビングに降ります。リビングの中に入ると、まだ兄様はいないようなので、七時くらいまではスマホでMSOの情報でも見てますか。


「そういえば、精霊やワールドクエストについての情報はあるのでしょうか…」


 ふとそのことを思い出したので一度確認してみますが、とくに情報などはありませんでした。


「精霊とワールドクエスト系の情報は私しか知らなさそう、ですかね…?」


 ないものは仕方ないですし、これらは一度放置ですね。


「美幸はもう降りてきてたんだな」

「あ、兄様!」


 その後もスマホを弄っていると、そんな声と共に兄様が降りてきていました。


「じゃあご飯の準備をしますね」

「たのむ」


 そうして私はご飯の用意をして、二人で食べ始めます。




 そうしてご飯や夜のやることなどを済ませた私は、今日はもうゲームはやめて勉強の時間とします。


 そして勉強を続けていると時間になったので、片付けをしてからベッドに横になって就寝とします。




「美幸、知ってたか?来週の土曜日から第二陣のプレイヤーがログインしてくるらしいぞ」


 次の日である木曜日。私はいつも通りのメンバーで学校へと登校し、午前中の授業も終わってお昼の時間になったのでお弁当を食べていると、悠斗からそんな情報を教えてもらいました。


「そうなのですか?」

「ああ、それに今週の日曜日に公式イベントの時のPVも出るみたいだ」


 そう続けて教えてくれる悠斗。新しいプレイヤーも増えるなら、さらにあの世界は賑やかになりそうですね。それに、PVはどんな感じなのでしょうか?


「PVについては少しだけ気になっちゃいますね!」

「多分バトルフェスの映像だろうが、どうなるか…」


 悠斗の言った通り内容はバトルフェスでしょうが、見れるようになるのが待ち遠しいです!


「あ、そういえば昨日兄様との特訓をすると言ってましたが、どうでした?」


 私がそれについて聞いてみると、悠斗は口に入れていたご飯を飲み込んでから答えてくれます


「そうだな、やっぱり玲二さんはかなり強くて全然勝てなかったが、かなり腕前は上がったとは思う」


 だがもう少しは習うつもりだけどな、とさらに続けます。これで悠斗ももっと強くなれそうですね。


「なら、今度私ともやりましょうね!」

「わかった。俺もそれを少し楽しみにしておくな」


 それからも様々な情報を交換していると宮里さんもこちらに寄って来たので、ついでに土曜日の会う日の時間などをどうするかを話して最終的に十二時半くらいに初期の街の広場で会おうと決め、その時は悠斗も一緒に会うようなので合流したら三人で狩りにでも行こうとも決めました。


 私と悠斗、宮里さんの三人はそのままMSOについての会話をしているとチャイムが鳴りました。なのでお二人は自分の席へと戻って行ったので、私も次の授業の準備をして待機しておきます。では、午後の授業も頑張りますか。

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