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33話 クラフターフェス3

「魔法薬は兄様の言った通り、ステータス上昇系が主みたいですね」


 兄様たちのお会計を待っている間に、私は棚に置いてある魔法薬を見て回ります。


 私が今見ている魔法薬は、それぞれSTRやDEF上昇の効果が付くと説明には書いてあります。


「前に手に入れた蝶の口吻も、素材に使えばこういうアイテムになるのでしょう」


 前に見た口吻の説明からすると、基本的に魔法薬は薬草などの採取アイテムだけではなく魔物の素材も材料にしているようです。


「レア、待たせたな」


 そう魔法薬を見ながら思考していると、会計を済ませてきた兄様から声をかけられました。


「終わったのですね」

「ああ、じゃあ次に行くか。そろそろいい時間だし、最後にレーナの展示品のところに行くか」

「わかりました」


 そうして私たちは薬屋さんから出て、近くにあった案内板を見て確認をした後に服飾展示店へ向かいます。


 案内板はこのエリアの至る所にあるようで、どこでも今の場所を確認出来たので広さの割に移動はしやすいです。


「レーナさんはどんなアイテムなのでしょうか」

「服なのは間違いないと思うが、どういう物なんだろうな」


 私と兄様はそう話しながら歩いています。あ、今向かってるレーナさんのことはお二人は知っているのですかね?


「そういえば私と兄様は知り合いですが、カムイさんとアリスさんは知っていますか?」


 ふと気になったのでカムイさんとアリスさんにそう聞くと、順番に答えてくれます。


「俺は、今着ている白い服を作ってもらったからフレンドにもなっているし、知ってるな」

「名前は聞いたことがありますが、私は会ってはいないのです」


 カムイさんは知ってますが、アリスさんは知らない、ってことですね。


「アリスさんの服はレーナさんとは違う人に作ってもらったのですか?」


 私はアリスさんの着ている白いワンピースをチラリと見てから、そう聞いてみます。


「実はこのワンピースはユニーク装備なので、誰かに作ってもらったわけではないのです」


 アリスさんのその言葉に、私たちは少し驚きます。


「アリスさんのその装備はユニーク装備だったのですね!」

「それは流石に俺も驚いたな」

「同感だ」


 私たちはそれぞれの感想を口にします。私だけではないとは思ってましたが、やはり意外にユニークアイテムを持っているプレイヤーはいるのですね。


 そんな会話をしながら歩いていると、ふと見知った女性を見つけました。あの人は…


「リブラさん!」


 私がそう声を上げると、その女性はこちらへ振り返ります。その人は私のキャラメイクの時に担当してくれた金髪金眼の美少女、リブラさんです。


「あら、レアさん」

「…そちらの方は、リブラのお知り合いで?」

「ええ、そうよ」


 リブラさんの隣にいた、灰色の髪と瞳をしたクールなおじ様であるカプリコーンさんとそんな言葉を交わしつつ、こちらへ歩いてきます。


「まずはレアさん、準優勝おめでとうございます」

「ありがとうございます!」


 リブラさんからのお祝いの言葉に、私は素直に感謝を述べます。


「それと、そちらはフレンドの方ですか?」

「あ、紹介しますね!こっちの黒髪の男性は私の兄であるゼロです!」

「紹介に与ったゼロです。よろしくお願いします」

「私はこの世界の管理を神様から任せられている、十二星座の一人、天秤のリブラです。よろしくお願いしますね?」

「ついでに私も紹介させていただきます。私は同じく世界の管理を神様から任せられている、十二星座の一人、山羊のカプリコーンです。よろしくお願い致します」


 そしてカムイさんとアリスさんとも挨拶を交わした後、私たちは会話を続けます。


「リブラさんたちもここのエリアにいたのですね」

「はい。まあプレイヤーの皆さんを見学しているくらいなので、そこまで何かあるという訳ではないですけどね」


 そう言って笑うリブラさん。確かに、リブラさんたちを見つけた時も特に何かをしているという訳ではなかったですしね。


「それにしても、レアさんは交友関係が広いですね」

「そうですか?」

「ええ、本戦に出ていたプレイヤーの方は基本そこまでフレンドがいる訳ではないので、こうして集まっているのは珍しいのです」


 そういえばアリスさんも私たちとフレンド交換をする時に、初めてのフレンド、と言ってましたし、そんなものなのですね。


「それと改めて聞かせてもらいますが、レアさん。あなたはこの世界を楽しめていますか?」

「はい!それはとっても!」

 

 私が笑顔でそう答えると、その答えに満足したのかリブラさんも笑みを浮かべて頷きます。


「それならよかったです。では、私たちは他にもプレイヤーたちの見学をしに行くので、この辺で失礼しますね」

「あ、はい!また会いましょう!」

「はい、またです」


 そしてそんな声と共にリブラさんとカプリコーンさんは歩いていきます。


「もしかして、レアのキャラメイクの時の担当はあのリブラさんだったのか?」

「そうなんですよ。だから一応は知り合い?的な感じなのです。そういう兄様は?」

「俺の時は確か、タウロスっていうおっとり美人な人だったはずだな」


 タウロス……牡牛座ですか。兄様はタウロスという人だったのですね。それとリブラさんたちも十二星座と言ってましたから、担当は全員合わせて十二人くらいなのでしょうか?


「じゃあ、そろそろレーナの展示品を見に行こうか」

「そうですね、そろそろ行きますか」


 カムイさんの発した言葉に私たちは頷いた後、再び歩いて服飾展示店へ向かいます。


「こんなところにも、このゲームの管理人さんがいるなんて思わなかったのです」

「だな。まあバトルフェスの時にもいたから、イベントの進行は基本あの人たちがするんだろうな」


 そんな会話をするアリスさんとカムイさん。まだ初めてのイベントですし確実にそうとはいえないでしょうが、その可能性は大きいですね。


「さっきは聞いてませんでしたけど、アリスさんとカムイさんの担当は誰だったのですか?」

「私の時は、アクエリアスという男の人だったのです!」

「俺は確かキャンサーっていう男性だったな」


 アクエリアスとキャンサー……水瓶座と蟹座ですね。ということは、やっぱり全員合わせて十二人で確定そうですね。


 そうしてそんな会話をしながら歩いていると、先程案内板で見た箇所の服飾展示店に着きました。


「じゃあ、入るか」

「はい」


 私たちは兄様を先頭にして、そのお店へと入っていきます。


 中に入ると、そこには多数の洋服や和服、革装備などが飾られています。そしてそれを見ているプレイヤーたちも、他のお店よりも多く感じます。


「思ったよりも広い上にたくさんの装備があるのですね!」


 思わずそう声が漏れるほど、このお店の中は広くて大量の装備が置いてあります。


「さて、レーナの作品はどこかな…」


 そう呟きながら歩いていく兄様の後を追いながら、周囲の装備をキョロキョロと確認していきます。


「レーナさんの作品ではないですが、この服もなかなかオシャレですね…!」


 私が今見つけたそれは白色のフリルブラウスで、なかなかに可愛くて素敵です!


「それ、可愛いですね!」

「ですよね!性能は今の装備よりは強くないですが、欲しくなります!」


 アリスさんもそのブラウスに気づいたのか、こちらへと近づいてきてそう声を上げます。


 とても可愛い見た目でオシャレですが、説明を見る限り特殊な効果もなくて今着ているこのゴスロリワンピースよりも強くないので、オークションに出ても買うのはやめておきますか…


「私はもうこの装備がありますし、オークションで買うのはパスですね…」

「私も今装備しているこれはユニーク装備ですし、お金の余裕もないので買わないのです…」


 そう二人でため息を吐きつつ、他に飾ってある作品を見ていきます。


 そうして徐々に兄様の歩く速度より遅くなって離れていってますが、私とアリスさんはそれに気づかずに二人揃って色々と見ていきます。


 そして見ていて興味が惹かれた物は、赤色をメインに黒色の帯で引き締めたミニ丈の着物や、私の着ている服と似たゴスロリ風のワンピースに迷彩色をしたマント、そしてミニ丈の白いドレスなどなど、とてもオシャレで素敵な物を多く見つけました。

 どれも私たちの装備よりも強くはない上にオークションでは高そうなので、先程のブラウスと同じで買うことはなさそうです。


「それに、服系だけではなくてアクセサリー系もここにはあるのですね」


 そう、ここには服飾というだけあり、宝石が嵌ったりしている指輪やネックレス、ピアスにチョーカーなど、こちらも多数の作品がありました。


 まあ私はアクセ枠は殆ど埋まっているので、基本的に買うことはなさそうですが。


「そういえば、アリスさんはアクセサリー装備を何かつけたりしているのですか?」

「私ですか?私は特に手に入れてないので、まだ一切装備してないのです」


 ふと気になったので聞いてみると、そう返ってきました。アリスさんはアクセの装備をしていないのですね…


「あ、でも一つだけ装備しているのはあるのです!」


 会話の途中で思い出したようで、これです、と言ってそれを見せてきます。それは、中心に赤い宝石が嵌っている黒色のチョーカーでした。


「チョーカーを着けていたのですね。気づきませんでした」


 白いワンピースが目立っていたので、首元にチョーカーがあるのは気づきませんでした。


「もしかしてそれもユニークアイテムなのですか?」

「いえ、これは普通にクエストの報酬で貰った装備ななのです!」


 なるほど、普通のアイテムでしたか。流石に私みたくユニークアイテムだらけな訳がありませんか。


「おーい、レア、それとアリス!」


 そうアリスさんと会話をしていると、兄様の呼ぶ声が聞こえたのでそちらに顔を向けると、兄様が手招きをしていました。

 なので、二人で兄様たちの方へ向かいます。


「どうしましたか?」

「レーナの作った作品を見つけたんだ」


 そう言ってその作品へと視線を向けたので、私も同じく兄様の視線の先に目を向けます。


 するとそこには、ミニ丈の白いドレスに灰色で鉄のような見た目の鎧のパーツが無数に付いている、いわゆるドレスアーマーと呼ばれる装備が置いてありました。


「これは、凄いですね…!」


 私は目を輝かせながら、そう声を漏らします。


「これは凄いよな。それに、性能もなかなか強いようなんだ」


 兄様のその言葉を聞いて、私は書いてある説明を読んでみます。するとそこにはこう書いてありました。


「DEF+19にMND+14、ですか。確かにこれは強いと思いますね!」


 このドレスは、レアモンスターの素材を使った私の装備と同じくらいの性能をしているようで、これは間違いなくランキングのトップに行けそうな見た目と性能です!ですが、気になることもあります。


「これに付いている金属らしきパーツって、なんの素材なんでしょうか?鉄ではないですよね?」

「多分それは、虫系の甲殻じゃないか?」

「なるほど、それなら鍛冶じゃなくても使えるのですね」

「おそらくだがな」


 兄様はおそらくと言ってますが、多分合ってるとは思います。それにしても、こんな作品を作れるなんてレーナさんも凄いですね!


「これが、レーナさんという人の作品なのですね!凄いオシャレで素敵なのです!」


 後ろから見てそう感想を述べるアリスさん。私とアリスさんは遠隔戦闘タイプですし、欲しいか欲しくないかでいえば欲しいですが、タイプが合わないのでお金があっても買いはしなさそうです。


「さて、大体見たいものは見たし、いい時間だからこの辺で解散とするか」


 兄様のその言葉に、私は腰元の懐中時計を手に取り今の時刻を確認します。すると、もう七時近くになっていました。


「確かにいい時間ですね」

「私もそろそろ落ちないとご飯になっちゃうのです」

「じゃあ、俺もタイミングがいいし、落ちるとするか」


 各々の言葉を発しつつもお二人を確認すると、アリスさんとカムイさんもちょうどいいようです。


 あ、そうそう、ランキングとオークションについてですが、ランキングは明日の朝の零時から昼の十二時までに気に入った物に五つだけ投票が出来て、午後の五時に結果が出ます。そしてオークションは同じく明日の午後五時からの結果発表後に、ここと同じように行けるイベントエリアから参加出来ます。


「それでは、解散ですね」

「はい、また今度一緒に狩りにでも行きましょう!」

「はい、その時はよろしくお願いしますね」


 アリスさんはそう言ってイベントエリアから退出していきます。


「じゃあ、今度時間がいい時にフレンドメッセージを送るから、その時に近接戦闘を教えるな」

「はい、カムイさんもありがとうございます!」


 じゃあな、と言ってカムイさんもイベントエリアから退出します。


「では、私たちも落ちますか」

「だな」


 そしてお二人に続いて、私たちもイベントエリアから出てメニューからログアウトを選択します。




 視界が現実世界に戻ってきたので、頭につけていたヘッドギアを外した後にストレッチを始めます。


「ん、これでよしですね」


 そうしてストレッチを済ませた後、私は部屋から出てリビングへ向かいます。


 リビングの扉を開けて中に入ると、すでに兄様は部屋から降りてきていた様で椅子に座っていました。


「今ご飯の用意をしますね」

「ああ、俺はコップと箸を出すな」

「お願いします」


 私は兄様に声をかけてから、料理を皿などに盛り付けていき、兄様は箸などを出してくれています。


 ちなみに料理は今日の午前中に作り置きをしておいたので、盛り付けるだけで食べられます。作った料理は、買ってある市販の生姜焼きのタレを掛けて焼いた豚肉の生姜焼きです。


「では、いただきます」

「いただきます」


 用意も済んだので、そう言って私たちは皿に盛り付けた生姜焼きを食べ始めます。


「兄様はこの後はどうするんですか?」


 生姜焼きを食べながら、私は兄様にそう聞きます。


「俺はやることを済ませたらまたログインしようかと思っていたが、レアはしないのか?」

「はい、今日は長くやってましたし、今日はもう終わりにしておきます」


 それに明日にもオークションなどのイベントはありますしね、と続けて答えます。


「そうか。じゃあゲーム内で会うのはまた明日だな」

「そうですね」


 そんな会話をしながら料理を食べていると、兄様が思い出したかのように言葉を発します。


「そうだ、近接戦闘の特訓についてだが、それは明後日の月曜日に学校から帰ってきたらやるか?」

「はい!それでお願いします!」

「わかった、じゃあその予定でするか」


 そうして他にもたわいもない会話をしていると、お互いに食べ終わったので食器は流しに置いて洗うのは兄様に任せます。


 なので私は少し早いですが洗濯を始めてからお風呂へと向かいます。


「ふぅ、今日は少し疲れましたね…」


 頭と身体を洗い終わり、私は湯船に浸かりながらそう声を漏らします。


 今日は体感的に長く感じましたし、カムイさんなどの強いプレイヤーの人たちと試合をして精神的に少し疲れている気がしますね。


「っと、そろそろ上がりますか」


 そう呟きつつ私は湯船から上がり、お風呂から出てバスタオルで身体に付いている水分をとっていきます。そしてその次にスキンケアを済ませてパジャマに着替え、リビングに向かってそこに置いてあるドライヤーで髪を乾かしていきます。


 それらのことを全て済ませたら、その間に終わっていた洗濯物も干していきます。


 そうして、これでやることは済みました。時刻を確認すると、今はもう八時二十分になっていました。


「後はもう部屋で勉強でもしてますか」


 そう考えて私は自分の部屋へと戻った後、そこにあるローテーブルの上に勉強道具を広げ、クッションに座りながら勉強を始めます。


 そして勉強をある程度区切りがいいところで終わらせて時刻を確認すると、もう九時二十分近くになってました。


「今日はこのくらいで終わらせて、もう寝ますか」


 私は軽いストレッチをした後、電気を消してからベッドへ横になり就寝します。おやすみなさいです。

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