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30話 バトルフェス6

「っと、戻ってきましたね」


 光が収まると、そこはもう待機室でした。もう終わりも近いので、今ここにいるのは私と、次の準決勝で試合を行うカムイさんとジェーンさんを含めた三人だけでした。


『B会場の準決勝を始めます』


 周囲を確認していると、そんなアナウンスが聞こえ、カムイさんとジェーンさんの二人が転移に包まれてこの場から消えました。


「私の相手が決まるので、しっかりと見ておかないとですね…!」




 そしてそこまでの時間はかからず、カムイさんが勝ち上がり決勝へ上がってきました。


 この準決勝では、前と同じで白い霧を出して撹乱した後に喉を切ろうとした瞬間、カムイさんの雷を纏った剣で逆に切り裂かれて終わりました。なので、そこまでの時間はかかっておらず、あまり戦闘を見ることは出来ませんでした。


 よくわかるのは兄様との戦闘時のみで、そこを見るに雷のパワーとスピード、あの兄様をも上回る程の剣の腕前を持っているのはわかりました。


「やっぱり、決勝では動きを加速させる〈第一の時(アイン)〉が重要になりそうですね…」


 そう呟きつつ見ていると、カムイさんがこの待機室へと戻ってきました。最強のプレイヤーと言われるだけはあり、実力はかなりのもののようです。


『ただいまの試合により、決勝へと進出したプレイヤーが決まりました。残り十分後に決勝を開始いたします。決勝に出るプレイヤーの方は、それまでに待機室で待機するようにしてください』


 チラリとカムイさんを視認していると、そんなアナウンスが聞こえてきました。ついに、決勝ですね…!相手は最強ですし、今の私の実力でいけるかどうか……挑戦しがいがありますね!


「装備は……問題ないですし、アイテムは使う暇はなさそうですね…」


 よしっと軽く確認を済ませ、試合が始まるのを待ちます。カムイさんは先程戦ってきたばかりにも関わらず常に自然体で、心の余裕さが窺えます。


『プレイヤーの皆さんにお知らせします。時間になりましたので、ただいまより決勝を始めさせてもらいます』


 そうして待機していると、開始のアナウンスが流れました。よし、これで最後ですし、精一杯頑張りましょう!


 私とカムイさんを光が包むように展開して、転移が起こります。




 準決勝の時と同じように、気づいたらすでにバトルフィールドに立っていました。


「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いする」

「カムイさん、でしたっけ?この決勝は勝たせてもらいますよ!」

「ここまで上がってきたんだ、お前もあのゼロと同じように強いのだろう。だが、勝つのは俺だ」


 そう会話を終わらせ、お互いに武器を取り出して構えます。


『それでは、バトルフェス決勝戦、開始です!』


 その合図とともに私たちは動き始めます。最初から全力でいきますっ!


「〈第一の時(アイン)〉!」

「〈走り去る雷光(エクレール・ラン)〉!」


 私は自身にユニークスキルの武技を撃ち動きを加速させます。対してカムイさんは今までと同じく様子見ではなく、雷を纏いつつ斬りかかってきます。


「〈第二の時(ツヴァイ)〉!」


 私は後ろにステップして回避し、動きを遅くする弾丸を放ちますが、それは身体を逸らされて回避されます。ソフィアさんもそうでしたが、ネタがバレてると殆ど当てれないですね…


「〈纏う雷光エンチャント・サンダー〉!」


 カムイさんはさらに雷を纏って加速しながら、剣を振るって私を切り裂こうとしてきます。


 無数の銃弾を撃ちながら後退し続けて回避をしますが、このままでは壁に追い詰められますね。


 それに弾幕の中に〈第二の時(ツヴァイ)〉も混ぜて撃ってますが、その武技は他と違って魔力があるからか、それだけは回避し、他の普通の弾丸は切り捨ててと前進してきます。


「〈第一の時(アイン)〉」


 効果時間が短いので、効果が終わるのを把握すると、即座に自身に武技を撃ち込んで常にかかっている状態にします。


 この武技のMP消費はかなり少ないので、こうしてずっとかけてても自動回復スキルで間に合うので問題はありません。


「〈第七の時(ズィーベン)〉!」


 追い込まれる前に、分身を生み出す武技をを自身に撃ち、私が二人に増えます。


 そして分身と右と左の二手に分かれ、走りながら銃弾を撃ちまくります。それにカムイさんは後ろに下り、様子見をしています。


「分身か、なら…〈拡散する雷(シンティラ)〉!」


 カムイさんは無数の雷を周囲に放つ武技を使用しますが、私と分身は互いに〈第三の時(ドライ)〉を撃ち、それを相殺します。


「〈第六の時(ゼクス)〉!」

「〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

「それは…確かバフデバフの時間を伸ばす効果、だったか」


 私は分身の出ている時間を伸ばし、分身の方は遅延効果のある弾丸を撃ちますが、そちらは易々と回避されます。


 そしてカムイさんの周囲を高速で移動しながら、分身と共に無数の弾丸を放ちます。そしてその間に、一つの武技も自身に撃ち込みます。


「「〈第五の時(フュンフ)〉!」」

「それは、まだ見たことがない武技だな」


 この武技の効果は、次使うスキルをMP消費二倍にして強化する、というものです。そしてそれを生かして次に使うのは、〈第一の時(アイン)〉です。


 先程よりもさらに速くなった状態で、分身と共に弾丸を撃ちます。速くなっているおかげで、大体の弾丸は切っていますが、反応がほんの少しだけ間に合っていないようで少しずつ傷を負ってHPが減っていってます。ですが、決定打には些か欠けますね…


「これはなかなか、動きづらいな」

「「そのまま倒れてもいいんですよ?」」

「ふっ、それでは面白くないだろ?今から切りに行くから、覚悟しろ!〈走り去る雷光(エクレール・ラン)〉!」


 そう言って、弾丸を極力は回避し切りながら無理矢理前進してきて、雷を纏った斬撃で分身のお腹を真っ二つにして消してきました。くっ、分身だからまだ良かったですが、やはり攻撃力はかなりのものですね…!


「こちらは分身だったか。なら、次はお前だ!〈纏う雷光エンチャント・サンダー〉!」


 さらに雷を纏い、今度は本体であるこちらへと先程よりも速い速度で踏み込み斬りかかってきます。それを私は、身体を薄く切られつつもなんとか右に左にとステップを踏んで回避し、お返しに両手の銃で無数の弾丸を放ちます。カムイさんは弾丸を弾いたり避けたりとダメージを最小限に抑えてはいますが、次々と飛んでくる銃弾を躱しきれずに無数の小さな傷を負って徐々にHPが減っていってます。


 そうした攻防をして、読まれないようにしてはいましたが、遂に私の回避先を読まれ、その手に持つ白色の片手剣で回避しようとした私の右腕を切り飛ばします。


「ぐっ…!〈第一の時(アイン)〉!」


 残っている左手の短銃で自身に武技を撃って動きを加速させ、追撃をしてこようとしてきたところへ蹴りを入れますが、それを後ろに跳んで回避するカムイさん。切り飛ばされた右腕はすでにポリゴンとなって消えています。制限されているゲーム世界とはいえ、腕を切り飛ばされるのは結構痛いですね…


「…〈第十の時(ツェーン)〉」


 そこに私は、左腕の短銃でとあるユニークスキルの武技を自身に撃ち込みます。


 すると私の右腕にポリゴンが集まったと思ったら、それが弾けて右腕が元通りになり、HPも切られる前に戻ります。右手に持っていた長銃はインベントリに戻っていたので、そこから取り出します。


「…これは流石に驚いた。まさか再生するとはな」

「MP消費が激しいので、多用は出来ませんけどね」


 今の武技とこれまでに使った武技たちによって、今残っているMPは大体七割近くです。思ったよりも残っていると思いますが、称号効果で消費を減らされていてこれなので、意外に使われている方なのです。


 それと巻き戻したとはいえ、いままでの攻撃で私のHPも七割まで削られています。


「なら、今度はその首を切り落としてやるぞ」

「今度こそ、その頭を撃ち抜いて上げます…!」


 そう言い合った後、カムイさんは再びこちらへと向かってきます。それに対して私は、自身に〈第一の時(アイン)〉を撃った後、再生した右手の長銃と左手の短銃の両方で無数の弾丸を放ちます。


「〈第七の時(ズィーベン)〉!」

「〈雷光の剣(スパーク・ソード)〉!」


 再び分身を私の横に生み出した後、さらに銃弾を撃ちまくります。それをカムイさんは雷を纏った剣でこちらへの道を一気に切り開き、前進してきます。


「くっ、〈第十一の時(エルフ)〉!」

「〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

「それは、確か当たると危ない弾丸だったな」


 もうすぐそばまで寄ってきたカムイさんへ、本体である私は足を縛りつける弾丸を、分身は動きを遅くする弾丸を放ちますが、それをギリギリで回避してさらに踏み込んできます。


「〈第十二の時(ツヴォルフ)〉!」

「〈第三の時(ドライ)〉!」


 踏み込んできたその瞬間に、今度は私の切り札である対象の時を止める弾丸と、攻撃系の弾丸を分身が撃ちますが、それは身体を深く地に落として回避され、そのままその反動を生かして剣を切り上げてきます。


 それを私は身体を横に逸らして回避した後に、カムイさんから離れた空へと高く跳躍し、元いた地面とカムイさんに〈スプリットバレット〉を撃ちます。カムイさんは余裕そうに回避しますが、地面に当たった武技の衝撃で辺りに土煙が立ち込めます。


 そして無事に着地した後、再び〈第一の時(アイン)〉を自身に撃って動きを加速して、カムイさんの周囲を分身と共に走りながら位置を特定されない様に気をつけつつ無数の銃弾を放ちます。


「土煙のせいもあるが、移動しているからか上手く位置を特定出来ないな…」


 カムイさんはそう呟きつつも、時折斬撃を飛ばす〈オーラスラッシュ〉や周囲に雷を放つ〈拡散する雷(シンティラ)〉を使ってくるので一瞬の油断も出来ません。


 そして隠れながら死角から〈第二の時(ツヴァイ)〉を撃つと、カムイさんは土煙のせいで気づかなかったのか、ついそれを切ってしまい、動きが急激に遅くなります。


「ちっ、遅延効果の弾丸だったか」


 遅くなっている今がチャンスですね…!そう一瞬だけ思考し、即座に下級MPポーションを取り出して飲んでMPを回復した後、様々な弾丸を撃ち始めます。【銃】の武技の〈パワーショット〉に〈クイックバレット〉、【双銃】の武技の〈ツインシュート〉やユニークスキルの〈第三の時(ドライ)〉などなど、実に多種多様な攻撃です。


 それらの攻撃で軽い傷は無数に負わせていますが、動きが格段に遅くなっているはずなのに致命的な攻撃のみは必ず弾いたり回避したりしています。しかも、効果時間を伸ばす〈第六の時(ゼクス)〉や〈第二の時(ツヴァイ)〉などは必ず回避して、同じ状態にはならないように意識しているのがわかります。


 ちなみに、なぜ私が土煙の中で相手の位置などがわかるかというと、【気配感知】と【魔力察知】のスキルに音や空気の流れなどのおかげで把握出来ているのです。なので隠蔽系を持っていた場合はここまではわからないとは思いますが、どうやらカムイさんは持っていない様なので、視界に映さなくても余裕でわかります。それと私自身は隠蔽系の効果を多く持っているおかげで場所などはバレていません。


 そうしてある程度のダメージを与えた後、土煙が晴れるのと同時に遅延の効果時間が切れてしまいます。それより少し前に分身も消えてしまっており、リキャストタイムがまだ一分もあります。普段はすぐですが、この場合では一分がとても長く感じますね…


「遅延効果は終わったな。なら、今度こそその首を切らせてもらうぞ!」

「くっ…!」


 動きが戻ったのち、再びこちらへと向かってきます。私は切れていた〈第一の時(アイン)〉を自身に撃ち込み、それに対応します。


 無数の銃弾を放ちますが、分身がいた時とは違い弾幕を厚く出来ていないせいで、なかなか前進を防げません。


「〈纏う雷光エンチャント・サンダー〉!」


 そして雷を纏ってさらに加速し、一瞬の内に剣の間合いに踏み込んできて、片手剣を振るってきます。それをまたもや後退して回避しながら弾丸を撃ちますが、やはり先程よりも動きを読まれているからか弾丸はスレスレで回避され、フェイントを混ぜた剣による斬撃や刺突の攻撃で徐々に傷をつけられて追い詰められます。


 こちらも動きを読んではいますが、軽く傷を負わせるくらいでしっかりと当てられないのは近接戦闘での経験の差でしょう。


「〈瞬く雷剣(ソード・トニトルス)〉!」


 そうして雷を纏った剣を手に一気に踏み込んできて、私自身の動きが加速していても動きを読まれたせいか、スピードはこちらが上なのに今度は回避が出来ずに身体を斜めに深く切り裂かれます。


「っ…!」


 その攻撃で先程よりもダメージを受けて減っていた残りのHPの五割をすべて削り切られ、勝敗が決します。


『決勝が終了しました!勝者はカムイさんです!』


 そんなアナウンスを聞きながら、私の身体はポリゴンとなって転移をしていきます。やはり、経験の差があったせいで勝つのは難しかったですね……でも、少しは出来ましたかね…?




「んっ…ここは……イベントエリアの入り口の広場ですね」


 気がつくとそこはもうバトルフィールドではなく、イベントエリアの入り口付近でした。


「負けてしまいましたね…」


 そう呟きつつも歩き、私は転移ポイントから観戦エリアへと向かいます。


「あ、レアちゃん!負けちゃったみたいだけど、準優勝おめでとう!」

「おめでとうレアちゃん!試合、凄かったよ!」

「準優勝おめでとう!レアちゃん!」

「皆さん、ありがとうございます!」


 転移が完了して移動したのちに、すぐに見つかり、マーシャさんとサレナさん、メアさんからそんな祝いの言葉を送られたので、私は素直に感謝を伝えます。


「あの最強と言われているプレイヤー相手に、あそこまで善戦出来たのは凄いな」

「まあ、私は近接戦闘には慣れていないせいか、近寄られたらキツかったですけどね」


 兄様の言葉に、苦笑しつつも私はそう返します。


『バトルフェスが終了しました!ただいまより、表彰式を始めます!本戦に出た方は今から五分後に転移が起こるので、準備をしてください!』


 そんな会話をしていると、その様なアナウンスが聞こえてきました。


「本戦に出た人ってことは、クオンと兄様も一緒ですね」

「みたいだな。まあ準備することは特にないし、このまま待機だな」


 そのまま待機していると、私とクオン、兄様の足元から転移の光が溢れて転移が起こりました。




 転移の光が収まると、私たちはバトルフィールドの上に立っていました。そしてここには本戦に出た私含め計十六人のプレイヤーがいます。


「それでは、表彰式を始めます!」


 周りを確認していると、同じくフィールドにいたリブラさんとカプリコーンさんがそう言って進行をしています。


「まずは、本戦に出て進出出来なかったプレイヤーの皆さんには、SPが一贈られます」


 リブラさんとカプリコーンさんが交互に言葉を発して続けます。


 つまり本戦に出て勝てなかったプレイヤーということは、私たちの中ではクオンがそれに当てはまりますね。SPは意外と使うので、貰えるのはありがたそうです。あ、あとアリスさんもですね。


「続いて、準々決勝まで進出したプレイヤーの方には、SPが二贈られます!」


 こちらは兄様が合いますね。兄様はSPが二ですか。あのカムイさんと当たらなければもっと上まで行けてたでしょうし、残念でしたね。見た限り、そこまで悔しそうにはしていませんが。


「次に、準決勝に進んだ方には、SPが三贈られます」


 準決勝の方ではソフィアさんがそこに合致しますね。…そういえば、ソフィアさんとフレンドになってませんでしたね。後でお願いしてみますか。


「そして、決勝戦で惜しくも負けてしまった準優勝のレアさんには、SPが四と〈第一回バトルフェス準優勝〉の称号が贈られます!」


 と、私の名前も口にしてそう言われました。進行をしているリブラさんへと視線を向けると、こちらへとウィンクをしてきました。やっぱり、キャラメイクの時を覚えてくれているのでしょうか?


「最後に、見事優勝したカムイさんへは、SPが五と〈第一回バトルフェス優勝〉の称号が贈られます」


 おめでとうございます、とカプリコーンさんは続けるので、私たちもそれに合わせて拍手をします。


「それでは、これにてバトルフェスの表彰式を終了とさせていただきます!この後の三十分後から、バトルフェスと同じ様に転移ポイントから向かえるクラフターフェスの会場でイベントがあるので、よければそちらもぜひお伺いください!」


 そのリブラさんの言葉と共に転移が起こり、私たちは元の観戦エリアへと戻りました。

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