28話 バトルフェス4
私の次の相手はあの血の男性、ルベルさんです。ルベルさんはクオンに勝って勝ち上がってきてましたが、見た限り物理だけではなく魔法のような血の波も起こしていたのを確認できてます。
物理だけと油断は禁物です。
そして兄様の相手は、クオンが言っていた最強と呼ばれている雷の男性、カムイさんが相手です。ユニークスキルを持ってたとしても、兄様の方もかなり大変そうですね。
皆さんは自然体でそこまで気負ってはいなさそうです。あ、この待ち時間の間にソフィアさんに声をかけてみますか。
「あの、ソフィアさん…でしたっけ?」
「そうだよ〜、もしかして、前に会った銃を探していた女の子?」
「多分そうです。それと一応自己紹介をしておきますね、私はレアと申します」
「もう知っているみたいだけど、私はソフィアっていうの。よろしくね?」
そう言って私はソフィアさんと挨拶を交わします。そしてそんなソフィアさんの姿は、白色のキャミソールの上に赤い短めの丈のパーカーに、黒いホットパンツを履いて同じく黒い靴を着けた動きやすそうな見た目をしています。
「それと、そっちの男性は?」
「俺はレアの兄のゼロだ、よろしく」
「私はソフィアっていいます。よろしくお願いします」
兄様とも挨拶を交わしたのを確認すると、私は気になることを聞いてみます。
「ソフィアさんも、ユニークスキルを持っているのですか?あ、言えないのであれば大丈夫ですけど…」
「んーん、全然いいよ〜。そう、私もユニークスキルを持ってるんだ!試合前だし詳細は省くけど【狂魂の獣爪】っていうの!」
「やっぱりそうなのですか!クオン……私のフレンドが、そうじゃないかと言っていたのですよね」
「おー、よくわかったね!あまり見てわかるようなものじゃないと思ってたけど」
「なんか、爪系の武技でなかったはずの武技を使ってるからわかったらしいです」
私がそう答えると、そのフレンドもゲーマーだね〜、とソフィアさんは笑って言います。
「私のユニークスキルは似たようなものだからあまりわからないとは思ってたけど、わかる人もいるもんだね〜。あ、それとレアちゃんもユニークスキルを持ってたんだね?」
ソフィアさんは試合見てたよ〜、と続けます。
「はい、私のは【時空の姫】というユニークスキルで、このスキルはなかなか便利なので助かってます!」
「そうなんだ!あ、もしかして、そちらのお兄さんも持ってたり?」
「ああ、俺は【虹光秘剣】というユニークスキルを持っている」
兄妹で持ってるなんて凄いね!とソフィアさんは驚いた顔で話します。ユニークスキルを持っている人はいま知る限りでは八人だけですし、そりゃ驚きますよね。
「それにしても、やっぱりユニークスキル持ちのほとんどは勝ち上がってきてますよね」
「そうだね〜、あのカムイって人の相手をしたアリスさん?が負けたくらいで、他のメンバーは全員残ってるしね」
「兄様はそのカムイさんの相手ですが、大丈夫ですか…?」
「まあ勝つつもりで挑ませてもらうさ」
私が心配そうに聞くと、そう軽く笑いつつ答えてくれました。私から見たら兄様はかなり強いはずですし、勝てると良いのですけど…
『プレイヤーの皆さんにお知らせします。時間になりましたので、ただいまより準々決勝を始めさせてもらいます』
私たちが喋っていると、カプリコーンさんらしき声のアナウンスが聞こえてきました。もう時間なのですね。
『それでは、A会場から準々決勝の第一回戦を始めます』
最初の試合は私でしたっけ。よし、勝てるよう頑張りますか!
「では行ってきます!」
「ああ、頑張れよ」
「レアちゃん、ファイトだよ!」
そんな声を聞きながら、私は転移の光に包まれていきます。
再びの転移の光が収まると、もうバトルフィールドでした。相手は銀髪で青白い肌の吸血鬼、ルベルさんです。この人は血を操るユニークスキル持ちのようなので、見た限り攻守ともに優れていそうです。
「よろしくお願いします」
「よろしくたのむ」
「ルベルさん、あなたもユニークスキルを持っているのですよね?」
「そうだ。そういう貴様もユニークスキル持ちなのだろう?ならば、最初から全力でお相手しよう」
「それなら私は、全力のあなたを倒させてもらいます!」
私たちは挨拶を済ませると、そのまま己の武器を構えて戦闘開始の合図を待ちます。
『それではA会場の準々決勝、第一回戦、開始です!』
私とルベルさんはその合図と同時に動き始めます。
「〈波打つ鮮血〉!」
「〈第一の時〉!」
ルベルさんの放ってきた血の波を視認しつつ、私は自身に〈第一の時〉を撃ち、加速した動きでそれを回り込んで回避します。
「〈第三の時〉!」
「なんの、〈鮮血の魔剣〉!」
お返しにと私が撃った弾丸は、血を纏わせた片手剣で切り捨てられます。そこからさらに加速した動きで高速で移動しつつ銃弾を放ちますが、身体に当たるものだけをしっかりと選別して切り払っています。
やはり、力だけでは押し切れませんか…
それに前に戦ったアリさんや槍使いのケンさんもそうでしたが、銃弾を容易く武器で打ち払えるのには舌を巻いてしまいます。
「ですが、それでも勝たせてはもらいます…!」
私は効果時間が切れていた〈第一の時〉を再び自身に撃ち、一度離れます。
「どうした?もう終わりか?」
「いえいえ、そんなまさか。ここからはさらにギアを上げていきますよ?」
「面白い、やってみせろっ!〈串刺し鮮血〉!」
ルベルさんはそう言いつつ、ユニークスキルの武技を放ってきました。これは初めて見ますね…!
その武技は地面から無数の血の棘が生えてくる技のようで、私は加速した動きで横に移動して回避します。
「ほう、回避したか。空中にジャンプしたのなら追撃を放とうと思ったのがな」
「地面からきてるからとはいえ、下手に空中に跳んでは隙だらけですしね」
私は返事をしつつも、右手の長銃で武技の〈スプリットバレット〉を放ちます。それらは五発に分裂してルベルさんへと向かいますが、それも難なく剣で斬られて背後へと飛んでいきます。
「うむ、銃の相手の仕方はもうわかった。次はこちらから行くぞ?」
ルベルさんはそう言って、様子見の状態からこちらへと向かってきます。
「〈鮮血の魔剣〉!」
振るってきた血の魔剣を後方にステップをしつつ回避して両手の銃で無数の銃弾を放ちます。ルベルさんはこちらへと踏み込んできますが、無数な銃弾を捌きながらなので、少しだけスピードが遅いです。
「〈第二の時〉!」
そんな中に、私はユニークスキルの武技を撃ち込みます。それをルベルさんは他の弾丸と同じように切り捨てようとしましたが、それは触れれば効果のある技です…!
「む……身体が…遅い…?」
「〈第三の時〉!」
その弾丸に触れて動きが遅くなったルベルさんへ、再び攻撃系の武技を放ちます。遅くなっていたからか剣を振るうのは間に合わないと感じたのか、ルベルさんはなんとか体を逸らしてギリギリで回避します。
私はさらにそこへ、武技を撃ちます。
「〈第六の時〉!」
このユニークスキルの武技は、撃ち抜いた対象にかかっているバフとデバフの効果時間を三十秒だけ伸ばす効果なのです。消費MPはそこそこありますが、こういう〈第二の時〉の弾丸を再び当てれなさそうな相手になら、効果時間を伸ばすことが出来るのでなかなか使えます。
まあ、普通に〈第二の時〉を連続して使うのに比べると消費が激しいので、こういう一対一の機会やパーティメンバーなどにしかあまり使わないと思いますが。
その武技の弾丸は正確にルベルさんを捉え、ヒットします。
「〈第一の時〉、〈第三の時〉!」
「くっ…!〈踊り狂う鮮血〉!」
再度切れていた〈第一の時〉を自身に撃ち込み、攻撃系の武技を放ちながら無数の弾丸も追撃として撃ちまくります。しかし〈第三の時〉と通常の弾丸たちはルベルさんが周囲に放った無数の血の刃で迎撃されます。
「ふぅ… 〈縛る鮮血〉!」
動きが遅くなっているのにも関わらず、次々とユニークスキルの武技を放ってきます。今度は血で出来た鎖のようなものを手から飛ばしてきますが、ルベルさんは遅く、私は加速しているのもあり、悠々と回避します。MP消費が激しいのか、ルベルさんの表情に少し疲れが見えます。なら、ここらで終わりにさせてもらいましょうか。
「〈第十一の時〉!」
無数の弾丸を撃ちながら、その武技を弾幕に隠しながら放ちます。ルベルさんは無数の弾丸を必死に躱し、捌いてましたが、隠れた弾丸には気づかなかったようで、しっかりと身体にヒットします。
「な、今度は足が…!?」
「〈第三の時〉!」
〈第十一の時〉で足を硬直させてから撃つと、今度は回避も相殺も出来なかったようで、弾丸が右腕を撃ち抜きます。
「ぐぁ…!」
ルベルさんはその衝撃で、手に持っていた片手剣を飛ばされてしまいます。隙ありです!
「終わりです!〈ツインシュート〉!」
止めとして私は両手の銃から武技を放ち、それは正確にルベルさんの頭部へ命中しました。HPも零になっていますし、これは勝ちですね!
『試合終了です!勝者はレアさんに決まりました!』
そんなアナウンスを聞きながら、私は一息つきます。
「はぁー…結構疲れましたね…」
今回は常に自身のペースに持ち込めたからか思ったよりも楽に勝てましたけど、これを観戦している他のプレイヤーとの試合からは、ここまで上手く刺さりはしなさそうですよね。
そう息を整えていると、来た時と同じように転移の光に包まれます。
「レア、お疲れ様だ」
「見てたよー、レアちゃん!お疲れ様!」
光が収まり待機室へと戻るや否や、そう声をかけられました。
「お二人とも、ありがとうございます」
私はそう返事を返しました。
「レアちゃん、やっぱり強いんだ!銃を使うプレイヤーの中に限らず、全プレイヤーの中でもかなり上位にいきそうだよね!」
このまま優勝も出来そうだよね!と興奮して続けるソフィアさん。
「確かにそうだな。レアはVRゲームの中ではかなり強いし行けそうだな!」
ソフィアさんの言葉に対してドヤ顔でそう言う兄様。兄様が自慢することではないですよ…?それに優勝までは厳しいと思いますが……あと、ソフィアさんが勝てば、ソフィアさんと私の対戦になるのを忘れてませんか?
「そういえばゼロさん。VRゲームの中では、て言ってましたけど、もしかしてレアちゃんはテレビゲームとかは弱いのですか?」
「ああ、それはな…」
「に、兄様!それは言わなくても良いですよ!」
「はは、わかった。というわけで話せない。すまんな」
「ふふ、良いですよ、その反応でもう大体わかった気がしますし」
クスクスと笑うソフィアさん。しかし嘲笑っているわけではなく、微笑ましいものを見るかのように笑っています。うぅ、恥ずかしいです…!
『それではA会場の第二回戦を始めます』
そう三人で会話をしていると、そんなアナウンスが聞こえてきました。もう次なのですね。次はソフィアさんと、氷魔法使いのネーヴェさんですね。
「次はソフィアさんですし、頑張ってください」
「俺も応援してるぞ」
「二人とも、ありがとう!じゃあ行ってくる!」
ソフィアさんはそう言って、転移の光に包まれてバトルフィールドへと向かって行きました。
「相手は魔法使いのようですし、ソフィアさんは近づければ勝ち、離れてしまえば負け、という風になりそうですね」
「だな、この二人のユニークスキルの武技はあまり知れていないから、どうなるかはまだわからんな」
光が収まったので瞼を開けると、目の前には腰まで伸ばしたプラチナブロンドの髪に蒼い瞳で身長160cm前半くらいのエルフの女魔法使い、ネーヴェが立っていた。
氷魔法を扱うだけあって、氷を思わせる青白い色のドレスを着ていて白い杖を持った、まさに氷の美女、といった見た目だね。
「よろしく!」
「どうせすぐに終わるから、わざわざ挨拶は交わさないわ」
「む、なら、挨拶をしたくなるくらい本気にさせてあげる!」
私たちは軽く言葉を交わした後、自身の武器である爪と杖をそれぞれ構えて合図を待つ。
『では、A会場の準々決勝、第二回戦を開始です』
その声と同時に、私は相手へと突撃する。私は爪と格闘スキルを伸ばしてる超近接特化だから、魔法使いであろう相手から離れては対抗手段がないからね。
「〈狂気の獣装〉!」
今までの試合では温存していた、自身の腕や口元、背中に魔力で出来た大きめの獣の爪と牙、翼をを顕現させ、尻尾は元からあるので、そこにはそれに纏うように赤い光を生み出す武技を使用する。ユニークスキル持ち相手では手加減なんてしてられないしね!
そしてそのまま生み出した翼をはためかせ、ネーヴェへと向かう。
「〈アイスニードル〉!〈飛び回る氷柱〉!」
ネーヴェはそんな私へ二つの魔法を唱え、氷の針と無数の氷柱を飛ばしてきた。
「なんの!〈切り裂く爪〉!」
それを私は自身の身体に顕現させた大きめの爪で無数の氷魔法を切り捨て、弾き飛ばす。
「〈落ちる氷河〉!」
ネーヴェは私がすぐ近くまで迫ってきたのを視認すると、そのような魔法を撃ってきた。
その魔法の発動と共にネーヴェの頭上に氷塊が生まれ、私目掛けて氷塊が落ちてきた。やば…!?
私は咄嗟に翼を羽ばたいて後方へと飛び、回避する。
「やっぱりそれはユニークスキル?」
「ええ、そうよ。名前は教えてあげないけどね」
「別に問題ないよ。じゃあ、続きといこうかっ!」
そう言いながら私は上空へと飛び、そのままそこから武技を放つ。
「〈飛び回る翼〉!」
私は翼を羽ばたきながらその武技を使うと、無数の羽根の弾丸がネーヴェへと飛んでいく。
「〈 アイスバリア〉!」
それに対してネーヴェは氷のバリアを張って羽根の弾丸を防いでいる。そこへ私は急降下して、ネーヴェへと突撃する。
「〈穿ち滅する尾〉!」
急降下しつつ回転して勢いをつけながら、私は尻尾でそのバリアごと叩きつけて攻撃をする。
「ちっ…やっぱり魔法のバリアでは強力な近接攻撃には弱いわね…!」
ネーヴェはその攻撃を受ける直前に咄嗟に後ろへ回避していたらしく、攻撃は当たってなかったようだ。
「〈凍える花弁〉、〈飛び回る氷柱〉!」
そして着地した私へ、氷の花吹雪や氷柱を放ってくるネーヴェ。
「ダブルで〈切り裂く爪〉!」
両腕を振り爪の斬撃で飛んでくる花びらたちを吹き飛ばし、同じく飛んでくる無数の氷柱なども弾き飛ばしながら前進する。
「ほらほら、もっと楽しもうよ!」
「くっ…これだから戦闘狂は…!」
そう言いながらネーヴェは再び氷塊を落としてくるが、一度見た手には喰らわないよ!ていうか…
「誰が戦闘狂よ!」
その言葉に思わず飛んできた氷塊に【格闘】スキルの〈ラッシュ〉を発動して氷塊を破壊する。思わず使っちゃったけど、壊せた…!?
でもHPが今ので二割も削れたんだけど……これはコスパが悪いね。
「その戦い方でどこが戦闘狂じゃないっていうのよ!〈凍結した剣〉!」
少し離れて持っている白い杖から伸ばした氷の刃を振るってくるが、魔法使いらしく近接戦闘には苦手らしいから軽く回避できるね。
「私はただ戦闘が楽しいだけだよ!〈切り裂く爪〉!」
「それがそうだって言ってるのよ!〈凍える花弁〉!」
私の振るった爪とネーヴェの放った氷の花吹雪が対面するとその場で小規模な爆発が起こり、そのままお互いのHPが削れて吹っ飛んでしまった。私のHPは、残り五割か……あちらは六割らしく、両者共にそこそこのダメージを食らっているようだね。
「そろそろ終わりにしようか」
「そうね、そうしましょう」
私たちは同じことを考えていたらしく、切り札の使用を意識する。おそらく、次の一撃で最後となるだろう。
「私は【狂魂の獣爪】のソフィア、よろしくね?」
「【氷結の魔女】のネーヴェよ、よろしくしてあげる」
そうして私たちは軽く言葉を交わし、自身の全力を次に込め始める。
「〈狂気の獣装〉収束解放… 〈穿ち滅する尾〉!」
「〈吹雪の夜〉!」
一時的に尻尾のみに〈狂気の獣装〉を使い、私は強化した尻尾での一撃を放つ。
ネーヴェは氷と雪の渦巻く猛吹雪を放ってきている。
お互いのその武技が中心で直撃する。私の尻尾の一撃か、氷の吹雪の一撃か。
「うおぉ!」
「はあぁ!」
そして私の尻尾の一撃の方が重かったのか、その吹雪をかき消してそのままネーヴェのお腹へと一撃が決まる。
ネーヴェはお腹から赤いポリゴンを撒き散らしながら倒れた、光となって消えていった。
『試合終了!勝者はソフィアさんです!』
息を整えていると、そんなアナウンスが聞こえてきた。よし、勝ち進めたね!