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27話 バトルフェス3

「クオン、負けちゃいました…」

「だが、善戦はしたな」

「クオンさんもあそこまで動けるなんて、凄いのです!」


 私たちはそんな感想を言い合っています。観戦した感じ、負けはしましたが兄様の言ったようにそこそこは喰らいつけてましたね。


 それと負けた場合はこの待機室ではなく、イベントエリアのところへ飛ばされるようです。なので今ここにクオンは居ないので、試合お疲れでした、とフレンドメッセージを送っておきます。


「あの血の男性は二回戦に進みましたし、私が一回戦を勝てたなら次は私の相手ですね」

「レアならいけるさ」

「ありがとうございます。まあ、まだ一回戦がありますし、気が早いですけど」


 私は苦笑しつつそう返します。


『A会場の第二回戦を開始いたします』


 そんな会話をしていると、そのようなアナウンスがなりました。どうやら私の番がきたようです。


「では、行ってきます」

「頑張れよ」

「レアさん、頑張ってくださいです!」

「はい」


 そうして言葉を交わすと、転移の光が私を包み込みます。




 視界が戻ると、もうバトルフィールドにいました。私の相手は槍使いのケンさんですね。ケンさんは茶色の髪をした人間のチャラ男って感じの見た目です。


「よろしくお願いします」

「よろしくでーす」


 私たちは挨拶を交わした後、戦闘開始の合図を待ちます。


『それでは、A会場第二回戦、開始です!』


 リブラさんのその言葉で、私たちは同時に動き始めます。私は右手の長銃で弾丸を撃ちますが、ケンさんはそれを最小限の動きで回避してこちらへ向かってきます。


「はぁ!」


 そしてそう声を上げ、私へ槍を突き出してくるケンさん。それを私は後方に跳んで回避し、お返しにと今度は左手の短銃で弾丸を放ちますが、ケンさんはそれを難なく手に持った槍で弾きます。私は両手の銃を撃ちますが、それらを最小限に躱し、逸らして弾きと、なかなかダメージを与えられません。


 やはり本戦に出ているように、そこそこ強そうです。なら、ここらでユニークスキルも使わせてもらいますか!


「〈第一の時(アイン)〉」


 私は自身のこめかみに短銃を突きつけ、引き金を引きます。それに相手は驚いて、一瞬だけ硬直しています。


 そこに自身の動きを加速させた私はそんなケンさんの懐に自ら向かい、その無防備なお腹へと蹴りを食らわせます。ケンさんはそれを回避できなかったようで、そのまま背後の壁にぶつかっています。見た感じ、今の蹴りと衝撃でHPの三割は削れているようです。


 さらに追撃として、両手の銃で弾丸を撃ちまくります。ケンさんは先程のダメージのせいか動きが悪くなっており、少しずつ弾丸を受けて徐々にHPが削れていきます。その途中で〈第一の時(アイン)〉が切れたので再びその武技を自身に撃ち込み、ケンさんへは弾丸を撃ちまくります。


「くっ……なら、うおお!」


 ケンさんは分が悪いと見たのか、そんな雄叫びを上げながら無理やりこちらに突っ込んできます。ケンさんは飛んできている弾丸を、頭や胸などに当たる物だけ弾きつつ強引に向かってきています。


「〈パワースラスト〉!」


 そしてケンさんは武技らしき赤い光を纏った槍の突きを放ってきました。

 私はそれを地面スレスレまで身体を下げて回避し、そのまま足払いをします。そのタイミングで自身に付与していた〈第一の時(アイン)〉の加速が再び切れますが、もうこれで終わりです。


「なっ…!?」

「止めです。〈第三の時(ドライ)〉」


 最後の一撃として、私は倒れているケンさんの頭へ照準を向け、ユニークスキルの武技を放ちます。それは寸分違わず頭部へ命中し、ケンさんの残っていたHPを削り切り、勝敗がつきました。


『試合終了です!勝者はレアさんです』


 そのアナウンスと共に、私は転移の光に包まれて待機室へと戻りました。どうやら、勝てた場合はまた待機室へ戻るようです。


「レア、お疲れ様」

「レアさん、おめでとうございますです!」


 兄様とアリスさんからそう声をかけられたので、私はありがとうございます、と返します。


「これで、私の次の相手はあの血の男性…ルベルさんに決まりましたね」

「相手はなかなか強そうだが、大丈夫か?」

「はい、まあ出来る限り頑張ってみようとは思います」


 軽く笑いながら、そう発します。


「それにしても、レアさんもユニークスキルを持っていたのですね!」

「そうなのですよ。詳細は省きますが、私のユニークスキルもなかなか使えるので重宝しています」


 そんな会話をしていると、次の試合が始まるようなので三人で観戦をします。


 A会場の三回戦にはユニークスキル持ちらしき氷魔法使いのネーヴェさんと火魔法使いのシアさんが、四回戦にはこちらもユニークスキル持ちであろうソフィアさんとそのお相手の格闘家であるリュウさんが試合をして、ネーヴェさんとソフィアさんのどちらも、ユニークスキルを生かした戦い方で勝ち進んでいます。


「やっぱりユニークスキル持ちは強いですね…」


 私は観戦をしつつ、そう声を漏らします。


「ユニークスキルは他のスキルと比べるとやはり強いしな」

「二回戦に行けているのは、今のところユニークスキル持ちだけなのです」


 それに兄様とアリスさんが続けます。ユニークスキルというだけありますし、持っていない普通のプレイヤーではなかなかの相手をするのは辛いようですね。クオンもあのルベルさんに善戦はしても勝てる見込みはなかったですし。


『では次の試合からはB会場に移ります。第一回戦はあと五分後に開始いたします』


 そう思考していると、そのようなアナウンスが聞こえてきました。確か、B会場の最初はアリスさんでしたっけ。


「アリスさん、相手はあの人のようですが、頑張ってください!」

「はいなのです!出来る限りは頑張ってみるのです!」


 そう気合を入れ直したアリスさん。最強と言われてるだけありますし、アリスさんでは勝つのは厳しそうですが、そこまで気負いはしていなさそうです。


『では、ただいまよりB会場第一回戦を開始します』


 五分が経ったのか、そのようなアナウンスが鳴ります。アリスさんの出番がきたようです。


「では、行ってくるのです!」

「はい、頑張ってくださいね」

「無理はするなよ」


 転移の光に包まれていくアリスさんへ、私と兄様はそう声を掛けました。


「アリスさん、どうなりますかね…」

「負けはするだろうが、さて…」


 私と兄様はそう心配しながら、メニューから見れるアリスさんとカムイさんの試合を観戦します。




 転移が終わり、瞼を開けるとそこはバトルフィールドでした。目の前には人間らしき金色の短髪に青目をした身長170cm半ばあたりの青年が立っていて、腰に自身の武器である剣を携えて自然体にも関わらず隙が見受けられません。


「よろしくです!」

「よろしくお願いする」


 私とカムイさんはそう挨拶をした後、始まるのを待ちます。


『それでは、B会場第一回戦、開始です!』


 その合図が聞こえたのを確認すると、即座に私はユニークスキルを使用します。


「〈人形の呼び声(コール・ドール)〉!」


 短杖を振りながらその武技を発動すると、私のすぐ近くに無数の人形さんたちが現れます。


 私のユニークスキルである【不思議な館の人形群ミリオン・ドールマスター】は、その名の通り無数の人形を作って専用のエリアである館に置いておき、戦闘時には特殊な武技で呼び出して操るスキルなのです。

 そして今使用した〈人形の呼び声(コール・ドール)〉がそのエリアから人形さんたちを呼び出す武技です。


「土や木、鉄の人形に兎や狼の像とは、実に多種多様だな」

「人形さんたち、撃つのです!」


 そして呼び出した無数の人形さんたちから、私の覚えている【無魔法】【火魔法】【水魔法】【土魔法】【風魔法】の魔法を撃ちまくります。


「〈拡散する雷(シンティラ)〉」


 しかし、相手であるカムイさんのユニークスキルの武技が使われたと思ったら、放った無数の魔法が辺りに散らばされた雷によって蹴散らされます。


「くっ… 〈魔壁の人形(マインド・ドール)〉!」


 こちらにも飛んできた雷を、私は人形さんたちの出した複数の魔法壁で防ぎます。


 生み出した魔法の壁は、雷を防いだ後に粒子となって消えました。


「〈オーラスラッシュ〉」


 そして壁がなくなったのと同時に、カムイさんの飛ばしてきた斬撃が私のお腹にヒットします。


「っ…!人形さんたち、突撃です…!」


 それだけで私のHPは四割も削れました。私は後衛の魔法使い的ポジションなので、防御力はあまりないのでかなりのダメージなのです…!


 制限されているとはいえ、受けたダメージで少しだけお腹に痛みが残りますが、私は今度は武器を持っている人形さんたちをカムイさんへ向かわせます。


 カムイさんは向かわせた無数の人形さんたちを鎧袖一触の如く一太刀で倒していってます。そこで私は、一つの武技を使用します。


「〈破裂する人形(バースト・ドール)〉です!」

「むっ…!」


 私の使用した武技で、カムイさんの周囲にいた人形さんたちを全員自爆させます。この武技は人形の種類によって違う効果のある爆発を起こす技で、今の爆発は普通の攻撃なのです。それと人形さんたちが無くなってしまうのであまり使いたくはないのですが、そうもいってられないのです!


 しかし、これで簡単に倒せたとは思いません。なので、再び人形さんたちを自身の周囲に呼び出し、爆発で起こった土煙の中にいるだろうカムイさんを警戒します。そしてその間に、下級のHPとMPのポーションの両方を飲んで回復しておきます。


「〈雷光の剣(スパーク・ソード)〉」


 そうしていると、そんな声と共に煙が横に斬られ、カムイさんが現れます。


「やはり倒せてはいませんでしたか」

「だが、少しは驚いたぞ?」

「少し、だけなのですね」

「ふ、このくらいはな」


 会話を終わらせて、再び私は周囲の人形たちを操って様々な魔法を放ちます。その中に私も混じって魔法を撃ちますが、やはり当たりません。クールタイムが残っているからか先程の武技を使って相殺してはきませんが、余裕綽々と回避して徐々にこちらへ迫ってきてます。


「くっ…〈マジック…」

「遅い!」


 私は無属性の魔法を放とうとすると、弾幕が薄い場所があったのか、そこから一気に飛び込んできて手に持つ片手剣を振るってきます。


「… 〈身代わり人形(トレース・ドール)〉!」

「む…」


 私はとある武技をギリギリで発動し、私と周囲にいた人形の一体と位置が入れ替わってなんとか攻撃を回避します。


「今のは、身代わりか?」

「はぁ、はぁ…そ、そうなのです」


 しかし、初めて使ったからか、殺される瞬間だったからか、精神的にも肉体的にも疲れてきています。このままじゃ、ジリ貧なのです…


「なら… 〈人形たちの行進(ドール・クリーク)〉!人形さんたち、行くのですっ!」


 私の切り札である武技を使い、無数の人形さんたちの全ステータスを一時的に強化し、カムイさんへ突撃させます。


「先程よりも、硬く、重くなっているな」

「私の切り札なのです!さあ、そのまま倒れるのです!」


 無数の人形さんを操って攻撃をしますが、なかなかダメージを与えられず、強化をしたのに徐々にこちらが押されています。


「確かに強くなっている…が、問題はない。〈雷光の剣(スパーク・ソード)〉」


 そしてカムイさんは再び使った武技で人形さんたちを纏めて切り捨て、こちらへと向かってきます。


「な…ま、〈魔壁の人形(マインド・ドール)〉!」

「それはもう見たぞ、〈パワースラッシュ》」


 私は咄嗟に防御をしますが、カムイさんは易々と跳んで回避して、そのまま武技を放ってきました。


「っあ…!」


 私はそれを回避できず、攻撃をその身に受けてHPが零になりました。


『試合終了!勝者はカムイさんです!』


 そんな審判の声を聞きながら、私は光に包まれて元のエリアに転移します。やっぱり強かったのです…




「アリスさんも負けちゃいましたね…」

「見た感じ、相性も悪かったようだな」


 あの雷を操るカムイさんは、かなり強力な攻撃を出せるようで、アリスさんの人形たちが簡単に斬り倒されていましたしね。


「んー…私ならどうしましょうか…」


 雷は速いですが、私のユニークスキルで遅くするのと加速をすればなんとか喰らいつけそうですかね…?


 それとアリスさんへお疲れ様でした、と再びフレンドメッセージを送っておきます。


『B会場の第二回戦を開始いたします』


 そうしているとそのようなアナウンスが聞こえました。確かに次は兄様の番でしたね。


「兄様、頑張ってきてください」

「ああ、行ってくる」


 そう言って兄様は光となって転移をしました。


「兄様の相手はユニークスキル持ちではなさそうですし、大丈夫でしょう」




「勝ってきたぞ」


 そうして問題なく対戦相手であった片手剣使いの男性プレイヤー、シュンさんとの試合に勝ってきてそう発する兄様。


「兄様、お疲れ様です。無事に勝てたようですね」

「ああ。それに本戦に出てくるだけあって少し手強くて、ユニークスキルも使ってしまったな」

「まあ本戦ですしね」


 ここからは手加減しつつ戦うのは難しいので、きちんとユニークスキルなども使わなくてはいけなさそうです。


 そして観戦を続けます。次の本戦は大剣使いの女性、リュートさんと大盾使いの男性、フーガさんの試合のようで、どちらもユニークスキルは持っていませんでしたが、お互いに大きな武器を操るのでなかなか迫力がありました。


 最終的に、大盾の防御を攻撃力が上回り、叩きつけたその大剣で真っ二つにしてリュートさんが勝利しました。


「うーん、大きな武器もなかなかカッコいいですね〜…」

「レアには大きな武器は合わなそうだから、扱い切れなさそうだよな」

「そうなんですよね……私にはやっぱりこの銃が合ってるので、近接系の武器は使わなそうです」


 それに、私のステータス的にスピードが落ちてしまいそうな重量系の武器は厳しいですからね。


「まあ、武器やスキルの相性は人それぞれだしな。っと、次の試合が始まるみたいだぞ」


 兄様のその言葉に、私と兄様は再びメニューを開いて観戦を始めます。


 次の試合では、ユニークスキル持ちらしき暗殺者の男性プレイヤーのジェーンさんと、風魔法使いの男性、レラさんが戦い始めていました。


 ジェーンさんは予選と同じように、白い霧を生み出しますが、それに対してレラさんは風魔法でかき消そうとしています。しかし、霧は消しても消してもすぐに現れるようで、思うように消せていません。


 それに焦ったのか、レラさんは周囲全体に風魔法を放ちますが、もちろんそんなのに当たるほど弱くはないジェーンさん。


 そんな中、風魔法を撃っているレラさんの背後に急に現れたと思ったら、予選と同じようにいつのまにか持っていた短剣で喉を掻き切り、赤いポリゴンが血飛沫のように溢れます。


 レラさんは弱点を深く切り裂かれてHPが零になり、光へと変わっていきます。


『試合終了です!勝者はジェーンさんに決まりました!』


 そんなリブラさんのアナウンスで、勝負がついたのがわかりました。うーん、無限の如く現れる霧ですか…


「あの霧は相手にするのは結構大変そうですね…」

「対戦相手であったあのプレイヤーの魔法でもあまりかき消せてなかったしな」


 それに、最後にレラさんの背後に現れた動き。明らかにあれは霧の中を瞬間移動しているようにも感じました。相手にする場合は、やはり霧をどうにかしないといけなさそうです…


『ただいまの試合によって勝ち上がったプレイヤーが全員決まりました。つきましては、準々決勝に進出したプレイヤー方で再び試合を行わせてもらいます。』


 私たちが話していると、そのようなアナウンスが聞こえてきました。次からは準々決勝ですね、気合を入れ直しましょう!


『それでは、A会場から準々決勝の第一回戦を始めます。開始時間は今から十分後なので、進出が決定した方はそれまでに待機室で待機をお願いします』


 今ここには、血の男性ルベルさん、氷魔法使いネーヴェさん、猫獣人のソフィアさん、雷の人カムイさん、大剣使いのリュートさん、暗殺者のジェーンさん、そして私と兄様の八人がいます。


 ここからさらに試合をして減っていくのでしょう。勝ち上がってきた皆さんは、観戦した限りかなり強そうなので、油断は一切出来ません。まあする気もないですが。

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