表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/50

23話 皆の心配

「んっ……」


 ふと微睡んでいた意識が戻ってきます。すると、なにやら話し声が聞こえてきました。その声に吸い寄せられるかのように、私は瞼を開けます。


「ここは…?」


 今私がいるのはどうやらベッドの上のようで、そこで寝かせられていたみたいです。


「あ!レアちゃんが起きた!」

「お、ほんとだ!」


 そんな声を聞きながら、私は体を起こして周りを確認します。ここはどこかの私室のような雰囲気で、私の寝かされていたベッドの他にテーブルや椅子もあるようです。その椅子には兄様たちとソロさん、アリさんが座っていました。


「一応傷は治しましたけど、気分はどうですか?」

「大丈夫だとは思います」


 ソロさんが聞いてきたので、私はそう返しました。まあダメージを負いはしましたけど、気絶をしていたようですしあまり大きな怪我を負った実感はありませんけどね。


 私はベッドから降りて身体の確認をします。うん、特に動きなどには問題はなさそうです。


「レアちゃん、無理はしてない?」


 確認をしていると、マーシャさんが聞いてきました。声には出してませんけど、マーシャさん以外の皆さんまでこちらを心配そうな顔で見ています。


「ソロさんが治してくれたからか、全然大丈夫ですよ!」


 私はそう軽く笑って返します。本当に無理はしていないので大丈夫なのですよ!


「それなら、いいのだけど…」

「それと、アリさんがレアちゃんに言いたいことがあるよ!」

「言いたいことですか?」


 私がキョトンとしていると、アリさんが気まずそうな顔でこちらに近づいてきました。そして、近づいたと思ったら、その場で土下座しました。ええっ!?


「レア、つい本気で蹴ってしまってすまなかった!」

「あ、頭を上げてください…!?」

「だが、あたしは手加減をしろと言われていたのに本気でやるなんて、大人として恥ずかしいんだ!」


 ケジメをつけるかの如く、アリさんは頭を地面に擦り付けています。


「わ、わかりました!謝罪は受けますから頭を上げてください…!」


 私が大きな声で言うと、アリさんは納得したのか地面につけていた頭を上げます。


「はぁ、私は別に怒ったりはしてませんよ」

「そ、そうなのか?」


 アリさんが私の言葉に少し驚いています。


「殺された、とかならまだしも、これは模擬戦ですし攻撃されて負けるのには悔しくはあっても、それで怒りはしません」


 それに傷もソロさんが治してくれましたしね、と続けます。


「レアちゃん、大人だな」


 セントさんが思わずといった感じで言葉を漏らします。ふふん、私はもう大人ですしね!


「はー、それならよかった!」


 許されたー!といってアリさんはホッとしています。


「いいタイミングだし、この辺で今日は解散とするか。レアも疲れは残っているだろうしな」


 兄様のその言葉に今の時刻を確認すると、もう五時半になっていました。気絶していたのは少しと思ってましたけど、意外と長かったのですね。


「そうねー、レアちゃんはアリさんと模擬戦もしていて疲れてるわよね」

「もう少し一緒に居たかったけど、仕方ないね〜」


 マーシャさん、サレナさんがそう口にします。


「レアちゃんはゆっくりと休みなよ!」

「無理はしないで、キツくなったらログアウトするといいからな?」


 セントさんとジンさんも二人に続いて声をかけてきますが、そこまで無理はしてないので大丈夫ですよ!


「はい、みなさん心配してくれてありがとうございます。もう本当に大丈夫なので、そこまで心配しなくてもいいですよ!では、私は一回落ちますね!ご飯の用意などもしないといけないので」

「わかった、俺たちはもう少し散策でもしているな。それと、七時近くになったら向かうな」

「わかりました」

「じゃあね!また会おうね!」

「はい、またです!」


 皆さんにそう言った後、私はメニューを開いてログアウトをします。




 現実世界に戻ってきた私はまず軽くストレッチをした後、六時半くらいまで少し勉強をし始めます。


 そうして区切りがいいところまで終わらせると、ちょうど時間になっていました。なので勉強道具を片付けて、その後にリビングに降ります。


「うーん、今日はなににしましょうか…」


 冷蔵庫の中身を見つつ考えます。そうですね、卵と鶏肉がありますし、親子丼にでもしますか。


 そう考えて、私は食材を取り出して作り始めます。そして作り終わったので、そのままフライパンの中に置いておきます。


「よし、ご飯は出来ましたし、待ってる間は少しゲームの情報でも見てますか!」


 情報は兄様や悠斗に任せきりで見てませんでしたし、ちょうどいいですね!


 私はスマホを取り出してMSOの情報を見ていきます。


「ふむふむ…」


 ネットに載っている情報は、初期の街とその東西南北のエリア、そして次のエリアのことについてでした。


 私たちが向かった東の街からは北に東、南にと森が多くあるのに対して、西の湿地を超えた先は職人都市があり、その先のエリアは荒地が広がっているようです。


 北側はまだ攻略されていないようで、情報は載ってませんでした。


 そして南についてはかなり広く平原エリアが広がっているようで、住人から聞いたらしき話にはその先には港町があるようです。こちらも北と同じくまだ攻略はされていないようですが。


 そして兄様も言ってましたが、第二の街にある図書館の情報は出てませんでした。


「やっぱり、あの効果が怪しいですね…」


 私の持っている神器(ゴッド)アイテムである時空の瞳(リ・ラウムツァイト)の特殊効果、"時空神の運命"。

 明らかにあのアイテムを得てから、私自身に得があることが多い気がするのですよね。レアモンスターしかりユニーククエストしかり。それに、アリさんと出会えたのとも関係はしそうです。


「美幸、スマホを見てたんだな」


 そうして私がスマホで様々な情報を見てると、兄様が降りてきてそんな風に声をかけてきました。


「あ、兄様。はい、ちょっと待っている間に情報を見てたんですよ」


 時間を確認すると、今は七時より少し前くらいになっていました。


「じゃあ、いまからご飯の準備をしますね」


 そう言って私は、どんぶりにご飯を盛ってフライパンに入れてあった親子丼の具も乗せた後、ダイニングテーブルに並べます。兄様はその間に麦茶を用意していました。


「では、いただきましょうか」

「そうだな。いただきます」


 私も続いていただきますと言って食べ始めます。


「夜はレアもまたやるのか?」

「ん、はい、そう考えていました」


 私は口の中に入れていたお米を飲み込んだ後、そう答えます。


「本当に身体は大丈夫なのか?」

「ふふ、兄様は心配性ですね……全然この通りピンピンですよ!」


 スプーンを置き、むんっと胸を逸らしながら、ふふんとした顔をして元気なのを表します。


「それならいいんだが……ゲームの中だとしても、妹である美幸が蹴り飛ばされるのを見ると、な」

「まあ目の前でそんなことがあれば、そうなりますか」


 苦笑しつつもそれに同意します。私も、目の前で兄様や悠斗が傷つけられているのを見るのは凄く嫌ですしね。


「それと、レアがログアウトしてから少し後に公式からのメッセージがきたんだが、今日の深夜零時から明日の昼の一時までメンテナンスが入るらしいんだ」

「そうなのですか、じゃあ明日は午前中は出来なさそうですね」

「それと、明日の十時から生放送もあるらしいから、その時は悠斗もここに呼んで、三人で見ないか?」

「そうですね、今ちょっと聞いてみます」


 私はご飯を食べるのを一度中断して、スマホで悠斗に『明日の午前に一緒に生放送を見ませんか』とメッセージを送ります。すると、すぐに返信が返ってきました。返ってきた文を読むと、了承の言葉が書いてありました。


「いいみたいです」

「よし、なら決まりだな」


 兄様は残っていたお米を掻き込み、ご馳走様でした、と言って食器を流しに持っていきます。それを見て慌てて私も食べ始めます。


 そして兄様が自分の使った食器を洗い終わったタイミングで私も食べ終わったので、洗うのは兄様へお願いし、私は洗濯を始めます。そしてそれを待っている間にお風呂も済ませてきます。お風呂から上がったのと同じタイミングで洗濯の完了の音がしたので、それを回収して洗濯を干しに向かいます。兄様はそのまま入れ違いでお風呂へと入りにいっています。


 干すのも終わり、スキンケアやストレッチなどの諸々も済ませた後、お風呂に入っている兄様に、先に行っています、と言って私は部屋へと戻ります。


「今は……八時半くらいですね」


 少しだけログインして、図書館の本でも読んでみましょうかね。


 そう考えサイドテーブルの上に置いてあったヘッドギアを手に取り頭につけ、再びゲーム世界にログインします。




 ログインしてまず視界に映ったのは、先程ログアウトした場所であろうソロさんの私室でした。ちょうど私の目の前に、こちらに背を向けて椅子に座りながら本を読んでいるソロさんも見受けられます。


「ん?ああ、レアですか。具合は大丈夫ですか?」

「はい、もう一切悪くないので問題ないです」


 こちらに気づいたのか、そう声をかけてきたので、私は返答を返しました。


 というか兄様もそうですが、ソロさんからもそんなに心配されてます……やはりこんな小さい身体ですし、ソロさんには幼児のように感じられているのですかね?明らかに、私の歳が兄様の一つ下とは思われてはいなさそうですね…


「今日はもうこの世界へ来ないと思ってました」


 他の人たちもそう思っていたように感じましたしね、と続けます。


「あはは、まあそんな長くはいませんよ。ちょっとまた本を少し読みにきただけです」

「そうなのですね。ああ、ここからはあそこの扉を開けて少し歩けば、図書館に続いていますよ」


 ソロさんは向こう側にあった扉を指さします。確かに私は気絶していましたし、ここはどこから続いているか知らないですもんね。


「あそこですね、わかりました!」


 では読んできますね、と言ってその扉を潜って図書館に向かいます。ソロさんは手を振って見送っているのが気配でわかります。


「そういえば、ステータスの確認もしてませんでしたね」


 しばらく確認してなかったですし、ちょうどタイミングが良いので確認をしますか。


 ➖➖➖➖➖

 名前 レア

 種族 狼人族

 性別 女

 スキル

【双銃Lv3】【鑑定Lv22】【錬金Lv16】【採取Lv28】【気配察知Lv30MAX】【忍び足Lv30MAX】【遠視Lv30MAX】【ATK上昇Lv30MAX】【AGI上昇Lv30MAX】【DEX上昇Lv30MAX】【体術Lv25】【気配隠蔽Lv30MAX】【採掘Lv11】【INT上昇Lv26】【直感Lv17】【跳躍Lv6】【夜目Lv9】【言語学Lv15】【魔力操作Lv10】【魔力察知Lv7】【魔力隠蔽Lv6】

 ユニークスキル

時空の姫(クロノス・プリンセス)

 所持SP 33

 称号

 〈東の森のボスを倒し者〉

 〈時空神の加護〉

 ➖➖➖➖➖


 MAXまで上がっているスキルもなかなか増えていますね!とりあえず、確認の前にスキルの進化をしておきますか。そして、色々と弄ったり進化したりを済ませた後のステータスが、こうなりました。


 ➖➖➖➖➖

 名前 レア

 種族 狼人族

 性別 女

 スキル

【双銃Lv3】【鑑定Lv22】【錬金Lv16】【採取Lv28】【気配感知Lv1】【隠密Lv1】【鷹の目Lv1】【ATK上昇+Lv1】【AGI上昇+Lv1】【DEX上昇+Lv1】【体術Lv25】【気配希釈Lv1】【採掘Lv11】【INT上昇Lv26】【直感Lv17】【跳躍Lv6】【夜目Lv9】【言語学Lv15】【魔力操作Lv10】【魔力察知Lv7】【魔力隠蔽Lv6】【MP上昇Lv1】【HP自動回復Lv1】【MP自動回復Lv1】

 ユニークスキル

時空の姫(クロノス・プリンセス)

 所持SP 16

 称号

 〈東の森のボスを倒し者〉

 〈時空神の加護〉

 ➖➖➖➖➖


 進化などにSPを使ったので、かなり減りました。


 それと、さっきスマホで見た情報から【MP上昇】と【HP自動回復】、そして【MP自動回復】をSPを消費して獲得しました。これらがなくても戦闘外と街の中でなら少しずつ自動で回復してくれるらしいのですが、これらを持っていれば戦闘中は勿論、その他の時にも普通よりも遥かに早く回復してくれるらしいので、【鑑定】スキルと同じくらい早めに習得しておくのが良いそうです。

 私はちょっと取るのが遅くなってしまいましたが、これでポーションのみに頼らなくても少し休むだけで良くなります!


 そして進化したスキルたちも特に変化はないようで、効果などはそのままに強くなっています。


 よし、確認は済みましたね!ではさっさと図書館に向かいますか。


 そうしてテクテク歩いていると、再び扉が見えてきました。おそらく、この先が図書館なのでしょうね。私はその扉に近づいて開けようとすると、突然向こう側から扉が迫ってきました。


「ふぎゅっ!?」


 そのままの勢いで顔にぶつかって、その痛みから思わずそんな声が漏れます。そしてその衝撃で後方に尻餅をついてしまいました。


「いつつっ……な、何が起きたのですか…?」


 涙目を浮かべながら扉の奥を見てみると、そこにはアリさんが驚いた顔をして立っていました。


「す、すまん!?」


 涙目を浮かべた私を見てハッと気づいたのか、慌ててこちらに駆け寄ってきます。


「大丈夫か!?」

「少し痛いですが、大丈夫ですよ」


 …今の衝撃でHPが一割減っているのは気にしないことにします。


「さっきといい、何度もすまんっ!」

「い、いえ、本当に大丈夫ですよ。わざとじゃないのは知ってますし」


 …私、今日アリさんから何度ダメージを受けるのでしょうね…


「で、では、私は本を読みに行くので失礼しますね」

「あ、ああ……あ、そうだ!」


 私が向かおうとするとアリさんは何かを閃いたのか、突然声を上げて自身の指輪からなにかアイテムを取り出したと思ったら、こちらへ投げてきました。


「これは…?」


 私が思わず受け取ってしまったそれの見た目は、どうやら黒色をした何らかの宝石のようですね。突然投げ渡されたそれについて聞いてみると、アリさんは言葉を発します。


「これは黒宝石といって、長い時間を得て闇の力が凝縮された宝石なんだ」


 この辺では取れない貴重なアイテムだ、とアリさんは続けます。しかし、何故そんな貴重な物を私に渡したのですか…?


「それはあたしからのお詫びの品だ!」

「え!?そんな、悪いですよ!」

「それと、あたしを一瞬だけだが本気にさせたご褒美でもあるな!」


 それじゃあ、あたしはこれで!と言ってソロさんの方へ走っていきます。…って、はや…!?


 アリさんが動いたと思ったら、その時にはもう奥まで向かっていってました。


「ご、ご褒美と言われても、こんな貴重な物を渡すなんて…」


 飄々としてましたけど、本気で蹴ったのを結構気にしていたのでしょうね。別に私はそんなに気にしていなかったのに…


 まあもらってしまったものは仕方ないですし、また今度にソロさんから使い方を教えてもらいますか。


 そうして今度こそ、扉を潜って図書館へ戻ってきました。


「とりあえず、何の本を読みましょうか…」


 無数の本と棚が並んでいますし、ある程度目安の本を決めてから探すのが良いですね。


「んー……なら、この世界の神様のことは本を読んで知りましたし、次は神様の力に関する本を探しますか!」


 そう決めて、私は神様関係の本を探しつつ、図書館の中を歩いていきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ