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204話 怨魂

「おいおい、お前ら。こんなやつらにビビっているのか?」


 皆が皆デュラハンとその手下らしき二人に対して警戒を強めていたそのタイミングで、いきなり一人の男性の声が辺りに響きます。


 驚いた私とメイジーさんは同時にそちらへと視線と意識を向けると、そこにはニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら手に持つ片手剣を構えながらデュラハンたちへと近づいて行っているところでした。


 …この人、馬鹿なのですかね?ここまでの威圧感を感じることが出来ていないのか、それともそれだけの実力があるのか。はたまた実力差も把握出来ない馬鹿なのか。というか、このままではあの人、間違いなくやられてしまいますよね?言動が終わってますけど、流石に見殺しにするのは忍びないので助けに行った方がよいとは思いますが…


 すぐさまそう決めて動こうとした私は、メイジーさんから手を掴まれることで引き止められてしまいます。


「あれは、いい」

「ですが、見殺しにするのは…」

「というか、もう間に合わない」


 メイジーさんのあげた言葉を聞いてそれは何故かを聞こうとしたその瞬間、いきなり何かが弾けるかのような音が聞こえたのでそちらに意識を向けると、そこには先程舐め腐った言動をしていた男性の上半身が消し飛んでポリゴンとなっているところでした。


 …え、今の一瞬で倒されたのですか…!?何が起きたのかわからずにデュラハンたちの方に意識を向けると、そこにはいつ出したのかはわかりませんが、自身の背丈くらいはありそうなほどの大きさをしている、鎧と同じ漆黒色をした大剣を振るった後のような姿勢を取っているデュラハンの姿がありました。


 …今の攻撃は、デュラハンの仕業のようですね。ハッキリとは見てないので詳しくはわかりませんが、おそらくは斬撃を飛ばす効果か、もしくは離れた位置を切り裂く効果のいずれかを持っている武技か魔法の何かだと予想が出来ます。


 あの人が倒されたのは仕方ないですけど、こうしてデュラハンのスキルらしきものを最初に見れたのはなかなかありがたいですね。もしこれを先に見れずに戦闘中にいきなり使われれば、回避するのはかなり困難だった可能性がありますしね。


「ふん、雑魚が」

「ですが、まだ雑魚は無数にいるみたいですよ?」

「であれば、ここからは我らが屠るとしようか」

「…っ、きますよっ!」


 先程の攻撃を見た皆さんはその顔に緊張を浮かばせていますけど、そろそろ相手が動くみたいなので気をつけてください!


 この人たちの戦い方はわかりませんが、ボスであるデュラハンがアンデッド系のモンスターなんですし、おそらくはそれの配下である二人も十中八九アンデッド系のはずです。


 そのため、グールのような生命力にリッチのような賢さがあると思われるので、油断はしないで戦わないとですね…!それと、二人が動き出したのを見たデュラハンも手に持っていた漆黒色の大剣を肩に担ぎ、そのまま正面にいた私とメイジーさんに近づくかのようにゆっくりと歩きながら接近してきています。


 どうやら貴族らしき男性とメイド服の女性はデュラハンとは違って二手に分かれ、私たちから離れた位置の前線にいた防衛線に参加している住人とプレイヤーに襲いかかっているみたいです。


 なので、申し訳ないですけどそちらはマリアナさんたちに任せて、私たちはデュラハンの相手をするのが良さそうですかね?


「マリアナさん、あちらは頼んでもいいですか?」

「構わないさ。プレミアとメイジーはあっちを?」

「はい、そうしようと思ってます」


 あの二名はまだしも、どう考えてもこのデュラハンは普通の人では相手をするのは辛そうですし、この防衛線の中でも腕前が特に上である私たちが相手をしなくては壊滅してしまいそうでもありますしね。


 そのため、他のプレイヤーたちのところに向かってしまった貴族らしき男性とメイド服の女性の二人はマリアナさんたちにお願いすることにしました。敵は二人だけなので、他にも前線にいたプレイヤーや住人の方たちだけでも良いかもしれませんけど一応は、ね?


「…メイジーさん、あれの相手は協力していきましょうか」

「ん、賛成。私はスピードに自信があるから、ついてきて?」

「ふふ、奇遇ですね。私もスピードには自信があるのですよ。では……行きましょう!」

「ん!」


 そうして私とメイジーさんはあの二人の相手をマリアナさんたちに頼んだ後、同時に地面を蹴ってデュラハンへと接近していきます。見たところ今から戦うデュラハンの武器は先程も使っていた大剣のようですし、ここは懐は潜り込んで近接戦闘に入るのが良いでしょう。


 あんな馬鹿でかい大剣なので、近づいてしまえばそう易々と振るうことは出来ないはずですし、私とメイジーさんは共に近距離スタイルのため、これが最適なはずです!


「〈第一の時(アイン)〉!」

「〈赤狼装(レッド・ウルフ)〉!」


 私たちはそれぞれが自身を強化する武技を使用し、近づいたことで横薙ぎに振るってきた漆黒色の大剣を私は空中に跳び上がることで避け、メイジーさんは獣のように地面に姿勢を沈めることでお互いに回避に成功します。


 攻撃の速度は速いですけど、このくらいならまだ余裕です!回避も出来たので、ここで攻撃に移らせてもらいますか!


「〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉!〈第三の時(ドライ)〉!」

「〈狼咆(ウルフ・カノン)〉!」


 問題なく回避したことで生まれた一瞬の隙を見て、私は靴についているスキルである〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉を使って空中を蹴り、その勢いのままに攻撃系の武技を。対してメイジーさんは地面を這うかのようにしつつ接近しながら爪による刺突の一撃を放ちました。


 が、それらはデュラハンが手に持っていた漆黒色の大剣が素早く差し込まれたことによって防がれ、ダメージにはなりませんでした。流石にそう簡単に攻撃は当てれませんか…!しかも…


「…っ、手に響きます…!?」

「…硬い!」


 大剣に当てた感触が硬すぎて、私たちは思わずそう呟きながら驚いてしまいました。防がれるのは想定していましたが、その大剣、流石に硬すぎませんか…!?まるで木の棒を鉄塊にでもぶつけたかのような感触ですよ…!?


 私の場合は装備している黒転の腕輪のスキルである黒き魔力という、"自身の放つ攻撃全てに対象の耐性を無効化する効果を持たせる"ものがあるため大剣にわずかな傷をつけることは出来ていますけど、メイジーさんの攻撃では傷一つ付けることが出来てないのですよね。


 これを見るに、この人を倒すにはその大剣をどうにかする必要がありそうですね。なら、本体を狙いつつそれに対処していくことにしますか!大剣なんですし、細かい扱いは出来ないでしょうしね!


「…貴様らはなかなかの腕前と見た」

「む、貴方も喋れたのですね!」


 デュラハンはそう言いながら、攻撃に移ったことによって一瞬動きが止まった私たちへと手に持つ漆黒色の大剣を連続して振るってきますが、私は常に使い続けている〈第一の時(アイン)〉のスピードを活かし、それらを紙一重で避けながら高速で反撃を繰り返してダメージを与えていきます。


 そしてメイジーさんも私と同じくスピードタイプであるためか、特に当たったりもせずに躱しながら反撃の攻撃を加えています。しかし、やはり私と同様に大したダメージにはなっていませんね。


 …まあそれはともかくとして、この人も喋れたのですか。さっきまでいた二人の人型モンスターがそばにいた時は一切喋ってなかったので、声を出せないのかと思ってましたけど……それは間違いだったみたいです。


「ふっ、貴様らの強さにおもわず口が動いてな」

「なら、さっさと倒れて」


 デュラハンの言葉を聞く気もないらしく、メイジーさんはそう言いながら自身へと飛んできた攻撃を紙一重で避けた直後、デュラハンの全身へと自身の体をコマにするかの如き動きで立て続けに両手の爪による攻撃を放っていますが、それでも大きなダメージにはなっていません。


 大剣よりかは鎧の方が柔らかいらしく、メイジーさんによる連撃はしっかりと効いているようですけど、それでも鎧の部分への攻撃では効きが悪いみたいですね?…というか、守るものである鎧よりも大剣の方が硬いとは、いったい何で出来ているのでしょうか?


 まあなんにせよ、ダメージの効きが悪いのなら、効きがいいところに攻撃をすればいいわけです。幸いにも、私たちが相手をしているデュラハンが付けている全身鎧には構造上関節を守るものがないので、そこを狙うのが良さそうとわかります。どんなに鎧の部分が硬くても、そこまでは守れないでしょうしね?


「貴様らに誠意を示すため、我が名を語ろうぞ」


 そんな思考を巡らせつつ、飛んでくる攻撃を躱しながら反撃の攻撃を繰り返していた私でしたが、そう言いながらデュラハンは一度大剣を力強く振るうことで私たちから無理やり距離を取った後、自信満々な様子で名乗りを上げ始めます。


「我が名はグラッジ、怨魂のグラッジだ。貴様らを屠る者の名前だ」


 怨魂のグラッジ……メイジーさんが言っていた通りこのデュラハンはユニークモンスターの一体のようで、特殊な名前も持っているのですね。


 ワールドモンスターよりかは流石に落ちるとは思いますけど、それでも特殊な名前があるだけはあり、かなりの強さとわかりますね。怨魂というんですし、おそらくはそれに関係した能力も持っているとは予想出来るので、それについては警戒をしておきますか。


「では、行くぞ?」

「…っ、メイジーさん、きますっ!」

「ん!」


 そうデュラハンもとい、グラッジさんが声にしたと思ったら、漆黒色の大剣を手にして私たちへと踏み込んできました。そのため、私は咄嗟にそのように声に出しながら自身に対して〈第一の時(アイン)〉を再び与えた後、私の声を聞いたメイジーさんと共にこちらからも肉薄していきます。


 ひとまずは加速状態を活かしながら、私はメイジーさんと共に関節狙いで動くことにします。最終的には生物全般の弱点である首を切り落とせば倒せるとは思うので、そこに至るため手始めに機動力や攻撃の手数を減らしていきますよ!…まあ相手はアンデッドなので首を落としても死なないかもしれませんけど、それはそれ、その時に考えます。


「まずは、〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

「ふん、無駄だ!」


 こちらへと振るってきた大剣による袈裟斬りを半歩横にズレることで避け、そのまま攻撃によって生まれた一瞬の隙に遅延効果持ちの武技をその右腕の手首へと振るいますが、それは左手の籠手部分で逸らされることでダメージにはなりません。


 ですが、ユニークスキルによる効果についてはキチンと発揮したのが確認出来ているため、狙い通りですね…!どんなに強い敵だとしても、このようなデバフ効果はしっかりと与えることが出来るようですし、このまま〈第一の時(アイン)〉と組み合わせて翻弄して見せます…!


「〈赤狼爪(ヴォルフ・ネイル)〉!」


 そして動きが遅くなったことで生まれた隙をメイジーさんは当然見逃すはずがなく、私のすぐ横から滑り込むように前に出たと思ったその直後。


 メイジーさんの両手の爪に纏っていた赤い粒子が飛び散るのと同時に、グラッジさんの胸元の鎧部分に傷を与えつつHPを少しだけ削り取りました。


 よし、動きが遅くなっていればやはり攻撃をする隙が生まれますね!これなら、遅延効果も維持しつつ戦えばやりやすくなるはずです…!


「ナイスです!メイジーさん!」

「ん、もっと攻める!」


 メイジーさんの攻撃もしっかりと効いていますし、この調子で攻めていきましょうか!グラッジさんの大剣は硬すぎますけど、身体の鎧部分になら一応は攻撃が通るため、このまま攻撃していてもダメージにはなるようです。ですが鎧部分では効きが悪いですし、首を落とすのも目指しているので、関節などを主に狙っていきます!


「ふん、無駄だ!」


 そう考えている間にもグラッジさんは手に持つ漆黒色の大剣を振るってきますが、攻撃を当ててすぐにメイジーさんは私と立ち位置を変えるように後退しているため、その攻撃を放たれているのは私です。


 そのため、私は常に〈第一の時(アイン)〉をキープしつつ、〈第二の時(ツヴァイ)〉を組み合わせた反撃をして動きを遅くさせながら、次から次に飛んでくる攻撃を躱しつつ反撃を当てています。


 反撃の攻撃は身体中の関節狙いで攻撃を加えていってますが、やはり関節の部位ならば鎧部分よりも効きがよいのでいい感じにダメージを与えることが出来ています。そのうえメイジーさんからの攻撃も放たれており、さらにHPを削ることが出来ていていい感じです!


 しかし、油断は出来ません。何故なら、グラッジさんはユニークモンスターだからです。私が今までに相手をしてきたワールドモンスターよりかは劣るとは思いますが、それでもユニークモンスターというだけはあってなんらかの特殊な能力も持っているとは推測出来ます。ので、その首を取るまでは警戒を強めておきますよ!

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