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200話 モンスターの群れ

「さて、今日は何をしましょうか」


 そうして悠斗との誕生日パーティも無事に終わり、その後は勉強をしていたくらいで特に何かが起きることもなく時は進み、次の日である土曜日になりました。


 今の時刻は八時くらいであり、いつも通りやることを済ませてゲーム世界へと少しだけ久しぶりにログインしましたが、特にやらなくてはいけないことはないですけど……そうですね、前に出会ったメイジーさんのことが気になるのでシスター服姿で南大陸の港町に行ってみますか。


 まあそう簡単に出会えるとは思っていませんけど、行動に移さなくては出会えるものも出会えませんしね。なので、今の時間は港町に向かうことにします。


 あの時は何かが起きる前兆らしきユニーククエストをクリアしましたし、もしかしたらなんらかの事件が起きている可能性もあるため、少しだけ心配になってしまいます。


 だとしても、行くのには変わりはありませんけどね。


「では、まずは装備を変えて……よし、行きますか!」


 そう決めた私は、早速今着ているワンピースと赤色のケープからシスター服である服装へとチェンジした後、そこから歩き出してから、まずは今いる雪原都市ノースの広場から港町へと転移で向かいます。


 そして港町へと到着した私でしたが、何やらベールによって強化されている感覚に無数の人の反応を感知しました。…なんだかザワザワとしているように感じますけど、何かあったのでしょうか…?


 ひとまず、私の近くにいる住人の方に直接聞いてみますか。ここに住んでいる住人の方なら流石に今の状況も知っている可能性がありますし、聞いて損はないですしね。


「すみません、これはどういう状況なのですか?」

「あ、シスター様ですか!実は、この街にモンスターの群れが襲ってくるところのようで、腕に自信がある者は参加を要請しているらしいのです」


 ふむふむ、モンスターの群れが襲ってくるところ、ですか。これはメイジーさんから受けたユニーククエストとの関係性はわかりませんけど、まったく関わりがないということでもないですよね?


 それに加えて、もしかしたらなんらかの事件が起きている可能性もあると思ってましたけど、どうやらその予想も間違っていなかった、ということですね。まあ私の予想であるメイジーさんとの関係はわかりませんが。


 それはともかく、そんな状況ということなら私も防衛戦に加わらせてもらうことにしますか。これでも実力にはある程度の自信はありますし、足は引っ張らないはずです…!


「なら、私も参加させてもらいますか。どこに行けばよいですかね?」

「し、シスター様がですか!?大丈夫なんですか…?」

「ふふ、こう見えても腕には自信があるのですよ!それで、参加するにはどこに行けば良いかわかります?」


 私が声をかけた住人のお兄さんはそのように心配してくれますけど、そんなに心配されるほどではありませんよ!


 私の見た目はまさしくロリッ娘と言っても過言ではないくらい小さいですけど、これまでに得た経験やスキルなどで十分育っているため腕前も大丈夫なのです!それに港町にのピンチを放置するなんてこと、私には出来ないものあるので!


「そうなんですね?なら、この街の冒険者ギルドに行けばいいと思います。そこで人を集めているらしいので」

「冒険者ギルドですか。わかりました、教えていただきありがとうございます」

「いえ!シスター様も気をつけてくださいね!」


 そうお兄さんに別れを告げた後、私はすれ違う人に冒険者ギルドの場所について聞きながら歩き続けていると、いつのまにか冒険者ギルドの前は到着していました。…少しだけ緊張してしまいますが、ここで立っているだけなのも邪魔になるのでさっさと入りますか。それに参加をするなら早めに伝えておくほうがいいですしね。


 そう考えた私はそのまま冒険者ギルドの中へと足を踏み入れたのですが、冒険者ギルドの中はなんというか、緊急事態だからなのか明らかに人が多いようで、たくさんの人が会話をしているのが聞こえてきました。


 ふむ、朝早い時間とは言え、どうやらプレイヤーらしき人も結構いるみたいですが、それと同じくらいである住人の冒険者もたくさんいるようですね。まあ自分たちが暮らしている街のピンチなんですし、ここで働いている人なら参加するのは当然ですか。


 それに比べてここに集まっているプレイヤーときたら、住人の方々よりも緊張感がないため、少しだけムッとしてしまいます。


 確かに自分たちにとっては特殊なイベントのように感じるのでしょうけど、見ている側からしたらちょっとだけ嫌な気持ちになりますね。まあそれはともかくとして、私も参加するために受付の人に伝えないとですね。


「すみません、今よろしいですか?」

「はい、なんでしょうか?」


 そんな人たちをチラリと確認しつつも冒険者ギルドの受付のお姉さんへと声をかけた私は、そこから自分も防衛戦に参加する趣旨を伝えます。


「私も防衛戦に参加したいのですけど、よろしいですか?」

「し、シスター様が、ですか…?」


 受付のお姉さんも、さっき広場で会話をしたお兄さんと同じように私の姿を見て動揺してそう言葉を返してきましたが、こればかりは仕方ありませんよね。だって、私はシスター服姿とはいえ完全なお子様ですし、お姉さんが心配してしまうのも無理はありません。


「はい、こう見えて実力はあるんですよ?」

「そ、そうなんですか…?」


 こう言っている通り私の実力は十分あると思いますし、心配されるほどではありませんよ!それに、参加する人の数は少しでも多いほうがいいでしょう?なら、ここで私を控えさせるのももったいないはずです…!


「おいおい、シスターさんよ。そんななりで戦えるのか?」


 そんな会話を受付のお姉さんとしていた私でしたが、ふと背後からそのような声をかけられたのでそちらに振り向くと、そこにはまさに歴戦の傭兵とでも言えるような強面の男性が立っていました。


 言葉は強めではありますが、別に私のことを馬鹿にしているわけではなくて単にこんな女の子が戦うことに心配しているのが、ベールによって強化された私の感覚に伝わってきます。


 ううむ、この人は私のような子供が参加するのに拒否感を覚えているようですけど、私だって戦えるのですよ?なら、ここで引き下がることはせずに反論をさせてもらいます…!


「私は実力もあると思いますし、十分戦えますよ!」

「だがな、俺はお前みたいな子供を参加させるのは嫌いなんだよ。子供はおとなしく家で親の帰りを待ってればいいんだ」


 むう、ただ意地悪しているわけではないというのは伝わってきますけど、それでも私が参加することに難色を示していますし、どうしたら認めてくれるのでしょうか?


 私の実力をこの男性に見せれば、少しは私が参加することに頷いてくれますかね?しかし、こんな緊急事態の時にそんなことをしている時間はありませんし、どうしたものか…


「ん、その子の実力は私が保証する」


 私と男性、受付のお姉さんの三人で悩んでいると、そこに一人の女性の声がかけられました。そのため、そちらに視線を向けると、そこには赤いフード付きケープを羽織った狼人族の女性……つまり、メイジーさんが立っていました。


「メイジーさん!」

「メイジー様!」

「ちっ、【血染め】のメイジーかよ」


 私たち三人はそれぞれの反応をメイジーさんに向けて返しましたが、メイジーさんはその全ての反応をスルーしながら私の元へと歩いてきたと思ったら、そのまま私へ抱きついてきました。


 ちょ、いきなりなんですか…!?いえ、別に抱かれるのが嫌というわけではないですけど、いきなりされてしまえば驚いてしまいますよ…!


「ん、いい匂い。やっぱりプレミアはいい」

「め、メイジーさん、流石にその反応は変態さんですよ…?」


 思わずと言った様子で呟いた私の言葉を聞き、メイジーさんは名残惜しそうな様子で私から離れてくれました。ふぅ、いきなりで驚きましたが、次からはやるなら一声かけてくださいねっ!


 というか、メイジーさんもここに来ていたのですね。そのうえこの人たちの反応を見る限り、どうやら今回の防衛戦での助っ人のように見えるため、先程まで私の参加を渋っていた男性もメイジーさんの言葉を聞いて少しだけムッとした表情をしています。


 メイジーさんは私の実力を保証すると言ってますし、男性もそんなメイジーさんには反論は出来ない、ということですかね?


「ん、ノール、この子にも参加してもらう」

「…はぁ、童話騎士の一人である【血染め】のメイジーからそう言われちゃ、反論は出来ないか。だが、この子はまだ子供だ。そこんところ、少しは考えろよ?」

「ん、大丈夫。この子は私よりも強い」

「さ、流石にそこまでではないと思いますよ…?」


 メイジーさんのあげた言葉に私は思わふ反論を返してしまいましたが、メイジーさんはこちらをチラリと見ただけで特にそれについては言及しないようです。


 も、もう!少しは周りを気にしてくれても良くないですか…!?全く、メイジーさんとこうして会ったのは二度目ですけど、すでにこの人の性格がマイペースなのがハッキリと感じ取れますよ…!


 ま、まあ悪い人ではないのでいいのかもしれませんけど、そこだけは意識してほしいですね…


「…【血染め】のメイジーが言うのなら事実なんだろうな。なら、お前さんも怪我はしないように気をつけろよ?もし何かあれば、俺かそいつに声をかけるといい」


 メイジーさんの言葉を聞いた男性はそう言葉を発した後、私たちへと手を振りながらこの場から去っていきました。どうやら、メイジーさんの発した言葉を聞いてなんとか納得してくれたみたいですね。ということは、メイジーさんのおかげで参加出来そうなのでよかったです…!


 そんなことを考えつつ私は男性を見送った後、再び受付のお姉さんへと意識を向けてから会話を初め、最終的にメイジーさんと共に防衛戦の参加をすることになりました。よーし、今回の防衛戦はメイジーさんと一緒に行動することになりましたが、気合を入れておきますか!


 というか、先程の男性はメイジーさんのことを童話騎士、【血染め】のメイジーと呼んでいましたが、前に鑑定で見た赤色のケープについていた情報と合致してますし、やはりメイジーさんはグリム幻想国という国の騎士で合っていたようですね?


 なら、今回の防衛戦についても騎士の一人としてそれに参加するのですかね?ちょっとだけ気になりますし、タイミングもいいので聞いてみますか。


「メイジーさん、メイジーさんは童話騎士という組織の一人なんですよね?なら、何故その国と関わりがなさそうなここで防衛戦に参加するのですか?」

「ん、それはね、私の国に攻めてきたモンスターたちだからなの」


 うーん?メイジーさんの国……つまり、グリム幻想国にモンスターが攻めてきた、ですか…?ちょっとそれだけだと良くわかりませんが、要するにそのモンスターたちの逃げた先がここ港町ルーイ、ということですかね…?


 そうだとすると、メイジーさんはそれの尻拭い的な感じで今回の防衛戦に参加する、ということなのでしょうか。そうすると、前にここに案内した時もおそらくはそれが関係していたのかもしれませんね。


 あの時のメイジーさんはおばあちゃんに会いに行くのと同時に届け物をしていたみたいですし、この予想は間違ってないはずです。


「とりあえず、そろそろだから準備しよ?」

「あ、そうですね。ここで待機していればよいですか?」

「ん、そう」


 メイジーさんの言葉からするに、ここで待機していればいいみたいなのでこのまま始まるのを待つとしますか。今回はシスター服姿で防衛戦に参加しますし、やられないように気をつけないとていけませんね…!


 まあここに集まっているのはプレイヤーのみに限らずこの世界の住人の方もたくさんいるので、そこまで苦戦することはないはずです。


 だからといって油断はしませんけどね。

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