15話 エリアボスと第二の街
ログインすると、そこは職人ギルドの前でした。
「レーナさんからのメッセージはまだきてないようですし、今日はこのままクオンのところへ向かいますか」
私はギルド前から、街の中心の広場へと向かいます。ついでに向かっている間にステータスを確認しておきましょう。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【銃Lv24】【鑑定Lv11】【錬金Lv16】【採取Lv15】【気配察知Lv18】【忍び足Lv18】【遠視Lv20】【ATK上昇Lv21】【AGI上昇Lv21】【DEX上昇Lv21】【体術Lv13】【気配隠蔽Lv20】【採掘Lv11】【INT上昇Lv8】【直感Lv2】【跳躍Lv1】
所持SP 18
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確認すると、こんなステータスになっていました。全体のスキルレベルもかなり上がり、【銃】のスキルが二十を超えたことで、また新しい武技の〈スナイプショット〉を覚えました。これはその名の通り、射程を大幅に伸ばして撃つことが出来る武技のようです。
そういえば〈バウンドバレット〉はまだ使ってませんでしたね。まあ効果説明を見る限り、狭いところでないと使いにくいので仕方ないですが。まだ行っているエリアは広いところばかりですしね。
そしてSPもなかなか増えてきましたね。それとどうやらスキルの進化はスキルのレベルが上限になると出来るようなので、このまま貯めておきましょう。
よし、確認は済みましたし、さっさと広場へ向かいますか!
そうして歩いていると、広場のところにクオンとその他のメンバーが揃っていました。
「すみません、お待たせしました」
どうやら皆さんはすでに集まって私を待っていたようなので、私はそう声をかけてクオンたちに近づきます。まだ早い方思いましたが、もうみなさん揃っていたようです。
「いや、俺たちも今来たばかりだから、大丈夫だぞ」
「レアちゃん、また会えたね!」
「こんにちは、メアさん。ライトさんとヴァンさんもこんにちはです」
「はい、こんにちは。今日はまた一緒になれて嬉しいです」
「こんにちは、レア!」
私はクオンたち皆さんとそう言葉を交わして挨拶をします。遅れたかと思いはしましたが、そこまで待たせていたわけではないようなのでよかったですね。
「今日は北の山に行くんでしたっけ?」
「ああ、それなんだが…」
私が今日の目的地についてそう問いかけると、クオンは言葉を濁しつつ話します。
「メアたちと話してたんだが、スキルレベルも上がってきたし、今日は東の森のエリアボスを倒しにいかないか、と思ってな」
「エリアボスですか…」
そうそう、エリアボスとは、そのエリアを抜ける為に戦わないといけないボスのことで、特定の場所から入れるエリアでそのボスを倒すと、次のエリアに行けるようになっているのです。
RPGで言うボス戦と同じようなものなので、基本的にパーティを組んで戦うことが多いといいます。まあVRゲームではない、古めのゲームであるターン制バトルとは違うので、プレイヤーの腕前があればソロでも攻略は出来るかもしれませんけどね。
そしてこのゲームの東の森のボスはクオンからの情報からすると、どうやら強めの狼とその群れらしいです。
群れで来られたら、流石に一人では攻略は難しそうなので、この機会にクオンたちと一緒に倒すのが良さそうですね。
「私はエリアボスでも構いませんよ」
「よし、なら決まりだな!」
そう言ってヴァンさんは自分からの拳を打ち合わせます。やる気マックスのようですね。
「じゃあそうするってことで、行くか」
「はい」
そうして私たちはパーティを組んだ後、東の森へと向かいます。
「そういえば今日は、ワンピースの装備を着ていないんだな」
そんな道中でクオンがそう聞いてきたので、私はそれに対して正直に答えます。
「学校の時に言ってた、レアモンスターから得た素材で装備を強化してもらっているのですよ」
「なるほど、じゃあ今は革装備だが、それでエリアボスは大丈夫か?」
「まあ大丈夫じゃないですかね?要するに、当たらなければどうということはない、ですよ」
「そんなに自信があるなら大丈夫そうだな」
そう言ってクオンは軽く笑います。まあ私の腕前を知っていればそういう反応になりますよね。
「…あれが幼馴染パワーなのね」
「お互いに知り尽くしたような関係に見えます」
「相変わらずクオンはあんな可愛い幼馴染がいて羨ましいぜ…」
「そこ、外野はうるさいぞ」
メアさん、ライトさん、ヴァンさんの反応にクオンがそう小言を言いますが、私は周りのその反応に苦笑します。
そう話しながら歩いていると、東の森に辿り着きました。
「ここからはエリアボスに挑むから、道中の敵は出来る限り回避して行こうか」
「わかりました。あ、エリアボスの位置はわかっているのですか?」
「ああ、このままマップを真っ直ぐにいけば着くぞ」
私がそう聞くと、クオンからそのように返ってきました。なるほど、真っ直ぐですね。
「了解しました。なら、敵を察知するのは任せてください」
「頼む」
私たちは東の森へと入っていきます。そしてその道中では、私が察知した敵を回避しつつ移動しているので、どうしても時間が掛かってしまいます。
ですが、その甲斐あって敵と戦うのは最小限でエリアボスのいる広場の手前らしきところまで着きました。
道中でクオンから聞いた話だと、ボス戦は一組ずつしかいけないようで、人がいると入れないようになっているらしいです。なのでもしかしたら人がいるかも、と思いましたが、今はいないようです。
「ボス戦前の確認を済ませるか。皆、HPやMP、武器は大丈夫か?」
「私は問題ありません」
「わたしも大丈夫!」
「僕も大丈夫です」
「俺も問題ないぜ」
クオンのその言葉に、私たちはインベントリから武器を取り出してそう返事を返します。
「なら行くか!」
そしてクオンを先頭に、ボスエリアへと入っていきます。
エリアを少し歩いていると、遠吠えが聞こえたかと思ったら、今いる広場の奥に存在する木々の間から森にいた狼より二回りも大きな灰色の大狼が現れました。さらに、その狼の背後から四体の狼も出現します。
こちらの狼は普通の個体と同じように感じますが、ボスである狼はネットの情報からすると統率力が高いそうなので油断は出来なさそうです。
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ウルフリーダー ランク F
森などに生息している狼たちのボス。
知能が高く、群れを作って敵へ襲いかかる。
状態:正常
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鑑定結果にはそう出ました。クオンの言っていた通り、知能が高いみたいです。
「じゃあ行くぞ!」
「はい!」
クオンは、そう言ってボス狼へ突撃していきます。それに続いて、ヴァンさんも後方にいる狼たちの方へ向かう中、メアさんとライトさんの後衛組はその場から二人のサポートをしつつそれぞれの攻撃を放ちます。それに対して、私は二人の少し前に出ます。
こちらの後方に近づいてくる四体の狼はヴァンさんだけではなく、私も前衛をこなします。一応私も近接武器ではないですが出来るので、回避盾として動く作戦になりました。
ボス狼の相手はクオンに任せて、私たちはまず、周りの雑魚から倒していくことになっています。クオンは片手剣を持ち、魔法などのスキルを持っていない完全前衛のスキル構成なので、このパーティにいないタンクの代わりをお願いしているのです。クオンなら大丈夫だとは思うので、チラチラと確認しつつも私は四体の狼へと意識を向けます。
四体の狼のうち、半分の二体ずつを私とヴァンさんで後衛の方に行かないように攻撃をし、ヘイトを稼いでおきます。
「ガァッ!」
「ガウッ!」
そんな声を発しながら噛みつこうとしてくる二匹の狼をゆらりゆらりと回避し、攻撃モーション後のガラ空きの頭に銃弾を放ちます。撃たれた狼はそのまま後方へ転がってポリゴンとなります。これで一匹は仕留めましたね。
もう一匹の狼は、今度は空中に跳んでしかかるようにしつつ爪で切り裂こうと攻撃してきたので、私は横にステップをして回避し、狼が地面に着地すると同時にお腹へと蹴りを入れます。
「キャゥン!?」
狼は蹴られた衝撃で倒れそうになったので、その隙に再び頭へと弾丸を撃ち、頭蓋を破壊します。そしてポリゴンに変わっていく狼を尻目に、こちらの狼は倒し終わったのでヴァンさんの相手をしている狼へ視線を向けます。
ヴァンさんも、一匹はもう倒し終わっていたようで、今はもう一匹の相手をしています。その戦っている狼の頭へと、不意打ちとして弾速の速い〈クイックバレット〉を放ちます。
ヴァンさんと戦っている狼はこちらを視認していなかったからか、反応も出来ずに頭を撃ち抜かれてポリゴンへと変わっていきます。
「レアか、ありがとう!」
「いえいえ、別に私が手を出さなくても倒せてはいたでしょうし、大丈夫ですよ。それとまだ終わってはいませんよ」
「そうだな、じゃあ俺はボスの方に行ってくる!」
「はい、サポートは任せてください」
そう言ってヴァンさんはクオンが戦っているボス狼の元へ走っていきます。
その間に私はメアさんとライトさんの方へ合流します。
「レアちゃん、凄かったよ!」
「レアさんは動きが手慣れていますね」
「まあ小さい頃からずっとVRゲームはやっていたので、それででしょうね。では、最後の一匹のであるボス狼を倒しますか!」
「そうね!」
「わかりました」
まあさっきから二人はクオンのサポートとして魔法や弓矢を撃っていたのですけどね。そしてその中に私も混ざり、銃弾をボス狼へ撃ちまくります。
クオンはボス狼のHPをそこまで削れてはなさそうですが、その分クオン自身のHPもそこまで減ってはいないようです。おそらく、タンクとしてボス狼のヘイトを稼ぎ自身のHPを減らさないように重視してたのでしょう。
「クオン、雑魚は片付きました」
「わかった!あとはこいつだけか!なら温存はもう良さそうだなっ!」
クオンはそう発し、ボス狼の爪の振り下ろし攻撃を躱して武技らしき赤い光を帯びた片手剣をその右前足へと振るいます。
「ガウゥッ!?」
ボス狼はたまらずそう声を上げ、さっきまでのクオンとは違うのを警戒し、後方へとジャンプして離れます。その間に私たちはクオンとヴァンさんを先頭にし、ある程度固まります。
「クオン、ヴァンさん、HPは大丈夫ですか?」
「ああ、俺はライトからヒールを度々もらっていたからそこまで減ってはいない」
「俺も相手したのは雑魚だったし、問題ないぞ」
「なら、あとはあのボスのみですし、前衛はお願いします」
「まかしておけ」
「俺もいいぞ!」
「ではお願いします、そろそろ痺れを切らしてきますしね」
私がそう発するのとほぼ同時に、ボス狼は私たちへ向かって襲いかかってきます。それに対して、こちらはクオンとヴァンさんがボス狼へと向かっていきます。
そして私とメアさん、ライトさんは最初と同じように後方から攻撃を撃ちます。
ボス狼は右前足が傷ついているのにもかかわらず、クオンとヴァンさんの攻撃を捌きつつこちらの攻撃も最小限に躱しながら前衛の二人へと攻撃を繰り返しています。やはり知能が高いだけあって、ちょっと攻めあぐねていますね…
なら、その動きの要となっている足を狙って動けなくしますか。
そう思考し、私はメアさんやライトさんの攻撃に合わせて【気配隠蔽】を使用して私自身を察知しずらくしつつ、ボス狼の左前足へ〈クイックバレット〉を放ちます。
「ガウアッ!?」
そしてその作戦は成功し、ボス狼の左前脚を正確に撃ち抜きました。
「いまだ!〈スラッシュ〉!」
「うおぉ!〈スマッシュ〉!」
それによって、ボス狼は機動力をかなり失い、その隙をついたクオンとヴァンさんの武技によって首を斬られ頭を潰されて、HPが零になりポリゴンとなって消えていきます。
『東の森のエリアボス〈ウルフリーダー〉を討伐しました』
『東の森のボスを討伐した事により、次のエリアが開放されました』
『称号〈東の森のボスを倒し者〉を獲得しました』
すると、そのようなシステムメッセージが流れました。どうやらエリアボスを倒すとこのようなシステムメッセージが流れ、次のエリアが解放されるようですね。
「よし、倒せたな」
「なかなか強かったね〜…」
「結構疲れました…」
「討伐すると称号ももらえるんだな」
「らしいですね。まあただの記念称号のようですが」
ヴァンさんのその言葉に私も同意します。
このゲームでは称号というものがあり、それはある一定の条件を達成するともらえるものなのです。今回のはただの記念称号ですが、物によってはなにか特別な効果が発生するものもあるそうです。
「じゃあ、次のエリアに行ってみるか!」
「そうですね」
そう言って私たちはゾロゾロとボスエリアの向こうへ歩いていきます。そうしてしばらく歩くと、森を抜けました。その先は草原になっていて、遠くには次の街も見えます。
「とりあえず、あそこの見えている街まで行くか」
「ですね」
そう会話をしつつ歩いていきます。道中では同じような草原ですが、初期の街の周りにいたモンスターとは違う者もおり、子豚であるバトルピッグや、初期の街の方の北にいた鶏の上位、バトルコッコというモブたちがいました。
今は街へ向かっていますし、また今度一人な時に狩りにきますか。
「そういえば、さっきの狼のドロップアイテムは確認したか?」
「あ、してませんでした、今確認してみます」
クオンのその言葉に、私はインベントリを確認します。するとウルフリーダーの牙に爪、そして瞳がドロップしてました。ひ、瞳ですか…
「なんか瞳ってアイテム素材がドロップきていたのですけど…」
「おお、それはレアドロップだな、レアは運がいいな」
レアドロップなのですね。でもちょっとこれは微妙に持っておきたくない感じはしちゃいますね…
「レアちゃんのレアドロップ…」
「…ダジャレですか?」
メアさんのふと呟いたその言葉にライトさんがツッコミます。
「あはは……まあ少し紛らわしい名前ですよね…」
「まあ、こういう風に弄られるのはいつものことだしな」
私の後にクオンはそう笑って続けます。まあ、プレイするゲーム内では基本この名前なので、それで弄られるのは鉄板ネタですしね。
そんな会話をしつつ歩いていると、街の西門が見えてきました。遠くからはあまりわからなかったですが、街の近くには畑がたくさんあり、そこには無数の小麦などが育てられているのを見受けられます。
「小麦とかはここで育てられているのですね」
「見た感じ、住人たちが育てているようだな」
その畑には何名かの住人が鍬などを振るったり収穫したりとしていました。
そうそう、基本プレイヤーはこういうフルダイブ型のゲームでは、NPCのことを住人などと呼ぶようにしています。住人からすると、NPCと呼ばれるのは侮辱と感じるそうで、大体の人はNPCとは呼んでいません。
最近のゲームは昔と違って一定の行動しかしないというのはなく、どの住人もその世界で生きているかのように動くのです。なので、基本的には現実と同じように接するのが推奨されています。
「と、喋っているうちに着いたな」
「ですね、じゃあ広場の噴水で転移ポイントを解放して、解散としますか」
「そうね、わたしはこの後はこの街の散策でもしようかな〜」
そう話しながら、私たちは街の西門を潜って中央にある転移ポイントの元へ向かいます。
少し歩くとすぐに着いたので、転移ポイントの噴水に手をついて登録を完了します。
ちなみに転移ポイントとは、登録したお互いのポイントとポイントを行き交うことが出来るようになるもので、これがあれば移動に時間をかけなくても良くなるのでプレイヤーから見れば必須のシステムなのです。
「よし、今度こそこれでオッケーだな」
「じゃあ今日はこの辺で解散ですね」
「レア、今日はありがとな」
「いえいえ、またぜひ誘ってくれると嬉しいです」
じゃあねー!と言うメアさんたちとも挨拶を交わし、私は今いる第二の街から最初から登録されていた初期の街へと転移します。
「っと、戻ってきましたね」
視界が真っ白になったと思ったら、すぐに晴れて気がつくと初期の街の広場にいました。
転移は一瞬だけフワッと感じるようで、少し面白いですね。
「では、レーナさんのところへ向かいますか」
実は、ボスを倒した少し後にレーナさんからフレンドメッセージが来ていたのです。内容は、新しい装備が出来たからいつでも受け取りに来ていいよー、とのことでした。なので今から向かいます、とメッセージを返してレーナさんのお店へと向かっています。




