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14話 黒鷹

「では、まずは挨拶といきましょう!」


 私は両手に持った銃でブラックホーク目掛け、魔力の弾丸を乱射します。


 ブラックホークはそれを機敏な動きで易々と回避します。そして回避後に翼を羽ばたかせたと思ったら、先ほどの羽根と同じように黒色の羽根を飛ばしてきます。その羽根を私は後ろにステップを踏んで回避し、お返しとばかりに両手の銃を撃ちますが、またもや悠々と回避されます。


「相手は空を自由に動けますし、なかなか当てれないですね…」


 しかしこちらは動ける範囲が決まっているので、このまま続けていると、慣れられて回避が出来なくなりそうです。木の生えている方に行った場合も、木が邪魔になる気がするのでここで戦うしかないですね…


「なら、先読みが大事ですね。この武器なら弾丸に制限はないですし、色々と試してみますか」


 そう考え、私は時間差を置いたりして逃げ場をなくすように無数の弾丸を放ちます。


 しかしそれでもブラックホークは回避を続けます。ブラックホークは無数の弾丸を回避した後、またもや翼から羽根を飛ばしてきたので、それを私は左右にステップを踏み続け回避します。


「クゥッ!」


 そしてその隙を狙ったのか、今度は翼を畳んで高速でこちらへ突進してきます。カウンターとしてその胴体に蹴りを放とうとしましたが、嫌な予感がしたので、直前でカウンターをやめて回避に切り替えます。


 直前に切り替えましたが、ブラックホークの突進はなんとか回避できました。突進してきた時の体を見ると羽毛が硬くなっているようだったので、もし蹴っていたら足がその羽毛で切られていたかもしれませんね。危なかったです…


 そのまま空へと上がっていくブラックホーク。その間にも無数の弾丸を撃ち続けていますが、掠りもしません。明らかにこの前倒したステルススネークとは格が違いますね。


 空中を円を描くように飛行しているブラックホークに、どうすれば弾丸が当てられるかを考えます。おそらく、突進してくる時にギリギリで躱して弾丸を撃ったとしても、硬質化しているであろう羽毛に逸らされて通常弾ではダメージは余り通らなそうです。


 ならば、やはり飛行中に武技かなにかで地面に落とすしかありませんね。私は空を飛びつつこちらを見て羽根を飛ばしてくるブラックホークの攻撃を回避しつつ、集中します。時間も結構遅くなってきてますし、早めに倒さないと暗くなって、黒い姿なので見えづらくなりそうです。


 さっきも思いましたが、やはり先読みが必要ですね。


 そう思考しつつ、ブラックホークの動きを観察します。ブラックホークは飛行してますが、一定の間隔でこちらへと突進を繰り返してきています。それを避けて地面に近づく瞬間が最大のチャンスでしょう。


 そう決めて、羽根を回避しつつ弾丸を撃ち続けて、次の突進を待ちます。すると、ブラックホークが待ち望んでいた突進モーションをします。


「きますっ!」


 私もブラックホークへ突撃し、当たる直前で上空に跳んで回避します。それに驚いたのか、ブラックホークは一瞬思考が硬直します。そしてその隙に私は硬質化したブラックホークの上から銃を撃ちます。正面ではなくここからなら、ダメージは入りづらくても衝撃は入りますからね!


 ブラックホークは、受けると衝撃で地面に叩きつけられるのを悟ったのか、それをなんとか回避しますが、咄嗟の動きの為に姿勢が安定しません。さらにその間に硬質化も解けました。


 これならいけます…!


 私はそのまま移動先へ右手の長銃で〈パワーショット〉を撃ち、さらに回避するだろうと読み、その先へは左手の短銃で弾速の早い〈クイックバレット〉を撃ちます。


「キュッ!?」


 その読みが当たったのか〈パワーショット〉は回避されましたが、回避先に撃っていた〈クイックバレット〉がブラックホークの右翼を正確に撃ち抜きました。


 私は翼を撃たれて墜落していくブラックホークの頭へトドメの一撃を放ち、頭部を撃ち抜かれたブラックホークはそのままHPが零になりポリゴンとなって消えていきます。


「ふう、結構大変でしたね…」


 そう声を漏らし、一息つきます。すると、


『【直感】スキルを獲得しました』

『【跳躍】スキルを獲得しました』


 そのようなシステムの音が聞こえました。確認すると、書いてあった通りのスキルが二つも増えていました。直感は文字通りで、跳躍はジャンプ力が上がるスキルのようです。それとこれらは基本パッシブスキルなので、他に確認することはありませんね。


 ちなみにパッシブスキルとは、発動を意識などせず、常時発生しているスキルのことです。


「では、早速ドロップアイテムの確認といきましょうか!」


 ワクワクしつつ、インベントリからドロップアイテムの羽毛と羽根、そして嘴を【鑑定】スキルで確認します。


 ➖➖➖➖➖

 ブラックホークの羽毛 ランク F レア度 一般品(コモン) 品質 C

 ブラックホークの柔らかな羽毛。とても柔軟で柔らかく、服に使うととても丈夫な装備になる

 ➖➖➖➖➖

 ➖➖➖➖➖

 ブラックホークの羽根 ランク F レア度 一般品(コモン) 品質 C

 ブラックホークの黒色の羽根。暗闇に紛れるために、暗いところでの隠蔽効果がある。

 ➖➖➖➖➖

 ➖➖➖➖➖

 ブラックホークの嘴 ランク F レア度 一般品(コモン) 品質 C

 ブラックホークの嘴。かなり硬く、武器などに使うと弱点特攻効果を持つ。

 ➖➖➖➖➖


 鑑定結果にはそう出ました。このモンスターも、隠蔽効果付きなのですね。私が出会うレアモンスター、そういうのが多すぎませんか…?


 あ、そうそう、今出た羽毛と羽根は一つだけではなく、沢山の束になってドロップしました。なので素材に使うために多くのレアモンスターを狩らなくても装備などは作れるようです。レアモンスターなのにたくさん狩らないといけないのは面倒くさすぎますしね。


 ちなみに、北の平原や山にいた鶏や鷹はレアモンスターではないからか、今みたいに大量にドロップはしません。


 ついでに今の時刻も、腰についてある懐中時計を手に取り確認すると、六時半近くになっていました。


「そろそろ街に戻りますか」


 それと、この素材をレーナさんに渡して今作ってもらっているクロークにも使わせてもらいますか!

 そう考えて、私はレーナさんへフレンドチャットを送ります。


『どうしたの〜?』


 少し待つとそう声が聞こえてきました。なので私は聞きます。


『今大丈夫ですか?』

『大丈夫よ〜、でもまだ装備は出来てないわよ〜?』

『それならちょうど良かったです。実はまた新しいレアモンスターを狩ったんですけど、それから取れた素材が今作ってもらっている装備にも生かせそうなので、それを追加して欲しいのです』

『またレアモンスターを狩ったの〜!?』


 レーナさんは思わずそう声を上げて驚きます。まあ驚きますよね……私だってこんなポンポン出会うなんて思っていませんでしたし。


『まあ、いいわ〜…とりあえず、使うのはその素材を見せてもらってからでいいかしら〜?』

『大丈夫です。では今から行ってもいいですか?』

『勿論よ〜、待ってるわね〜?』

『はい』


 そう言ってフレンドチャットを切ります。では落ちる前にレーナさんのお店は向かいますか。


 そしてお店に着いたので、中へ入ると、カウンターにレーナさんが待っていました。


「きたわね〜!じゃあ早速見せてもらえる〜?」

「はい、これです」


 私はインベントリから先ほどの三つの素材を取り出し、カウンターに並べます。あ、嘴はいらなかったですね。


「おお〜!黒色で、なかなか丈夫そうね〜!」


 レーナさんは【鑑定】スキルで見たのか、そんな感想を述べます。そんな中私は使わなそうな嘴をインベントリに仕舞おうとすると…


「あ、よければこの嘴も使ってみる〜?」

「え?この嘴を防具に出来るのですか?」

「ええ、私の【見分け】スキルで見た感じ、粉末にして布とかに混ぜれば、さらに丈夫な装備に出来るらしいのよ〜」


 そう言われました。なんと、そうなのですか。確か【見分け】スキルはアイザさんも持っていましたよね。そういうのもわかるのですね〜…


「じゃあそれでお願いしてもいいですか?」

「任せてよ〜!あと今使っている蛇の皮と、羽毛に羽根も余りそうだし、ついでに作ったばっかりだけどワンピースも強化しちゃう〜?」

「それはいいですね、ぜひお願いします!」


 ワンピースも強化してもらえるのは、ちょっとお得感がしますね。


「じゃあそれも一緒に預かっておくわね〜」

「わかりました」


 私はレーナさんへとワンピースを渡します。その間は革の胸当てでも着けてますか。


「では私はそろそろ落ちますね」

「わかったわ〜、じゃあ出来たらメッセージを送るわね〜」

「はい、お願いします。では」


 そう言ってお店を出て、そこでメニューを開いてログアウトします。




 現実に戻りヘッドギアを外したあと、部屋の時計を確認します。すると今はもう六時五十分になっていました。


「結構長くやっていたみたいですね」


 おそらく、レアモンスターであるブラックホークとの戦いが少し長かったからでしょうね。

 まあとりあえず、リビングへ行きますか。ヘッドギアをサイドテーブルに置き、リビングへ向かいます。

 リビングへ入ると、兄様はまだ降りてきていないようなので、私は広めのところでストレッチをします。


「美幸はもう降りてきてたんだな」


 ストレッチをしていると、兄様が入ってきたのか声をかけてきました。


「はい、今さっき来たばっかりですけどね」


 私は兄様の言葉にそう返します。よし、ストレッチも済みましたし、ご飯にしますか!


「ではご飯にしましょうか」

「ああ。今日は何を作ったんだ?」

「今日は唐揚げを作りました。まあ揚げたてではなく作り置きですけど」

「それでも美幸の料理は上手いから全然大丈夫だぞ」

「そう言ってくれると嬉しいです」


 会話をしつつ、私たちはご飯の用意をします。そして準備が出来たので、いただきます、と言って食べ始めます。


「今日は何をしていたんだ?」

「北の山に採取に行ってました。あと、またレアモンスターとも戦って素材を手に入れましたね」

「またレアモンスターを見つけたのか…!」


 連日で出会うなんて、そりゃ兄様も驚きますよね。


「で、どんなやつだったんだ?」

「今回出会ったのは、黒色で普通より少し大きめの鷹でした」


 あれは今まで戦った中では一番手強かったですね〜…


 そう思考しつつもご飯をパクパクと食べ進めます。そんな私に対して兄様は驚いているからか、食べるのが止まっています。


「まあ、いいか……そいつは強かったのか?」

「結構強かったですね。それにこのモンスターも【気配察知】には反応しませんでしたから、初撃で倒されていたプレイヤーも多そうと感じました」

「美幸が出会うレアモンスターはそういうのが多いな」

「私も同じことを思いました…」


 ま、まあレアモンスターに出会えるなら良いとは思いますけどね…


 そう会話をしていると食べ終わったので、皿洗いなどは兄様に任せて私は部屋からパジャマなどの着替えを持ってお風呂へ向かいます。


 お風呂や洗濯など、諸々を済ませて部屋に戻った私は時計を見ます。すると、今は七時四十分くらいでした。


「ちょっとだけまたログインして錬金でもしますか」


 私はヘッドギアを頭につけて再度ログインします。




 ログインすると、そこはレーナさんのお店の前でした。とりあえず、職人ギルドに寄る前にまたガラス瓶を買って、満腹度回復の為に屋台でも何か買いますか。あ、そういえば作ったポーション、全然使って無いですし数個は残しておいて売りますか。


 まず私は露店でガラス瓶を百個買い、その後に串焼き肉も買って、食べながらその足で職人ギルドへ向かい、そしてカウンターに行って使わない初級ポーション、微毒と麻痺のポーション、解毒ポーションを売ります。売った数は、初級ポーションは五個残して六十個、微毒と麻痺のポーションも同じく五個残して二十個、解毒ポーションも五個残して七個、一つだけ作っていた麻痺毒ポーションと三個だけ持っている初級MPポーションは売らないでおきます。


 初級ポーションは六十個が一つ200Gで12,000G

 微毒ポーションは二十個が一つ100Gで2,000G

 麻痺ポーションは二十個が一つ150Gで3,000G

 解毒ポーションは七個が一つ175Gで1,225G


 これらを売って合計で18,225Gになりました。量が意外とあったおかげで、そこそこの額になりましたね。では、買ってきたガラス瓶でまたポーションでも作りますか!


 早速100Gを払って個室を借りて、百個のガラス瓶のうちの五十個を初級ポーションに、山に行った時に五個だけ採取出来た魔草を使って初級MPポーションを、毒草と麻痺草をそれぞれ十五個ずつ使いポーションへと変えます。残りの十五個のガラス瓶は、使いたい時に使えるようインベントリにしまっておきます。


 そして使用が終わったので個室から出て、今作ったポーションたちは初級MPポーションのみを残してすべて売り払います。


 それらを売ると、今の所持金は約75,000Gになりました。結構貯まりましたね!いつ何に使うかわからないですし、このまま貯めておきましょう!


 ふと時刻が気になって腰にある懐中時計を手に取り確認すると、もう八時半になっていました。


「もう良い時間ですし、この辺で落ちますか」


 そう呟き、私はメニューを開いてログアウトしました。




 現実に戻ってきたので、私は三十分くらい勉強をします。そして勉強を終わらせた後に軽くストレッチをし、部屋の電気を消して就寝します。




 朝です。木曜日になりました。いつも通りの支度を済ませ、今日も学校へ向かいます。


 そして午前中の授業も終わり、お昼になりました。


「美幸、今日は帰ってからの五時に街の広場に集合でも大丈夫か?」

「良いですよ、その時間なら料理なども終わっているでしょうし」


 お昼ご飯のお弁当を食べている時にそう話しかけられたので、私は了承を返します。


「そういえば、どこに狩りに行くのですか?」

「今日は北の山で採掘でもしつつ狩りをしようと思ってたな」

「北の山ですか…あ、そうそう、昨日私、北の山でレアモンスターを狩ってきたのですよね」


 それを聞いて悠斗は驚いたのか、箸で摘んでいた卵焼きを机の上に落としてしまいます。


「悠斗、卵焼き落ちましたよ」

「あ、ああ、悪い、驚いて手が滑った。それにしても、東の森の次は北の山でか。運がいいな」

「まあ蛇と違って、ちょっと苦戦しましたけどね」


 悠斗は、あの蛇や兎ならまだしも、ソロでレアモンスターを狩れるなんて美幸のようにプレイヤースキルが高くないと普通は無理だ、と言います。そ、そんなにですかね…?


 そうして会話をしているとお昼の時間が終わったので、悠斗は自分の机へと戻ります。私も次の授業へと集中しますか。


 学校の午後の授業も終わったので、帰る準備をして校舎の入り口で兄様と合流し、三人で帰路につきます。


 その道中でいつも通り悠斗と別れ、家に着きました。


「では、私は作り置きをしておきますね」

「了解、俺は部屋にでも戻ってるな」

「わかりました」


 そう言って兄様は階段を登って部屋へと向かいます。私も一度部屋に戻って制服を着替えた後、リビングに戻って夜ご飯の作り置きをしておきます。今日のご飯は麻婆豆腐です。


 作り終わったので、そのままフライパンに乗せて置いておきます。まだ夏ではないので、蓋をしておいておけば大丈夫でしょう。


 そしてリビングの時計を見ると、もう四時五十分でした。


「そろそろですし、ログインしますか」


 私は部屋へと戻り、テーブルに置いてあったヘッドギアを頭につけてゲーム世界へログインします。

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