12話 変換と湿地
私はインベントリからさっきの蛇のアイテムを取り出します。
「ん?どうしたんだ?」
「アイテムを鑑定すれば、いまの蛇の情報がわかるかなと思いまして」
私はクオンにそう返した後、ドロップアイテムの皮と牙、そしてお肉を鑑定してみます。
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ステルススネークの皮 ランク F レア度 一般品 品質 C
ステルススネークの迷彩色の皮。ステルススネークが生前持っていた隠蔽スキルの効果が残っている。
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ステルススネークの牙 ランク F レア度 一般品 品質 C
ステルススネークの鋭い牙。毒を与える効果がある。
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ステルススネークの肉 ランク F レア度 一般品 品質 C
ステルススネークの上質な肉。あまり動かないため脂が乗っていて上品な味がする。
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鑑定結果にはこう出ました。なるほど、ステルスですか…
「どうだったんだ?」
クオンがソワソワしながら聞いてきます。
「さっきの蛇はステルススネークといって、クオンの言った通り、隠蔽効果を持っていたみたいです」
私がそう言うとクオンは、やっぱりな、と納得しています。まあ出会った時に見たように、効果に関しては簡単にわかりましたしね。
「まさか初期の街の近くに、こんなモンスターがいるとは思いませんでしたね」
「多分レアモンスターかなんかだったんだろうな」
つまり、珍しい敵だったということですか。それならたくさんは狩れなさそうですね。
「結構レアそうな素材も出ましたから、もう少し欲しかったのですけど…」
「まあ、また見つけたら狩ればいいだろ」
「それもそうですね」
クオンのその言葉に私は頷きます。よし、確認は済みましたし、また狩りへと戻りますか。
そうしてそこからも様々なモンスターを狩り続けて、気づいたら六時近くになっていました。
「そろそろ良い時間だし、街に戻るか」
「確かにもう結構な時間だもんね〜」
クオンの言葉にメアさんが同意します。それに続いて私たちも頷き、そのまま歩いて森の入り口まで向かいます。その道中で遭遇した狼や鹿、レアモンスターではない普通の蛇などを狩りつつ歩いていると、森の入り口に着きました。
「よし、ここまで来ればもう襲ってくるモンスターはいないな」
「ふー、少し疲れたねー…」
「そうですね…」
森の中ではあまり分かりませんでしたが、外はもう結構暗くなっていました。メアさんとライトさんが吐息を漏らしつつ、そう発します。
私とヴァンさん、そしてクオンはそこまで疲れている感じはしていません。やっぱり慣れもあるのでしょうね。
「あとは街まで行くだけですね」
「時間も勿体無いし、さっさと行くか」
そう言って私たちは再び、街へ向かって歩き始めます。私はその間に手に入れたアイテムを確認しています。
レアモンスターのステルススネークの素材はさっき確認した時にわかりましたが、三種類一つずつドロップしているようです。
「クオンたちはさっきのステルススネークのアイテムは何がドロップしたのですか?」
「俺は皮と肉だったな」
「わたしは牙だけ〜」
「僕は肉だけでした」
「俺は皮と牙みたいだな」
私が聞くと、皆さんからそう返ってきました。私は三種類でしたし、戦闘への貢献度でドロップアイテムは決まるのですかね?
「不思議そうな顔をしてるが、多分レアが考えている通り、活躍した人ほどドロップアイテムなどは増えるように決まっているんだ」
「なるほど、だからですか」
通りで私はクオンたちよりもアイテムのドロップが多かったのですね。
それと素材的に、お肉はムニルさんへ、皮はレーナさんへ売りにいった方が良さそうですね。それにステルススネークの皮は隠蔽効果がありますし、防具にしたらなかなか良い効果が付きそうです!
そんな確認をしつつも話しながら歩いていると、東門へ到着しました。
「じゃあここらで解散するか」
「ですね。今日はパーティを組んでもらってありがとうございました!」
「こちらこそ、ありがとね!」
「ありがとうございました」
「おう!また遊ぼうな!」
東門から少し中に入り、そこでメアさん、ライトさん、ヴァンさんと続けて言葉を交わします。
「では、私は夜ご飯などを食べるので、もう落ちますね」
「わかった。またやろうな」
「はい」
そう言って私はメニューのログアウトを押し、この世界から一時的に消えました。
視界が戻ると、そこは私の部屋でした。私は起き上がり頭につけていたヘッドギアを外し、ベッドの横のサイドテーブルへと置きます。そのあとに時計を見ると、今は六時半でした。
「まだ七時までには早いですし、少しだけ勉強しておきますか」
そう思い、ローテーブルに教科書とノートを出して勉強し始めます。
そして七時になったので、区切りがいいところで終わらせて教科書などを鞄に仕舞い、リビングへと向かいます。
リビングへ入ると、まだ兄様は来ていないようでしたので、その間に洗濯をしておきます。洗濯機で洗い始めたところで、兄様が扉を開けてリビングへと入ってきました。
「あ、兄様、冷蔵庫から出してレンジで温めてもらってもいいですか?」
「任しとけ」
そうして私が洗濯を始めダイニングテーブルに戻ってきたら、兄様が温めるのを済ませていたようで料理が並んでいました。
「ではいただきますか」
「ああ、いただきます」
そう言葉を交わして料理を食べ始めます。うんうん、生姜焼きもちゃんと美味しいですね。
そして夜ご飯も食べ終わり、皿洗いなどを兄様に頼み、私はお風呂に入りにいきます。
体や頭を洗いお風呂から上がりパジャマに着替え、洗濯物を干すなどの諸々を済ませて部屋へと戻ります。時計を確認すると、今の時刻は七時五十分くらいですね。
「少しだけログインして錬金でもしますか」
そう考え、サイドテーブルに置いてあったヘッドギアを頭に付け、再度ゲーム世界へとログインします。
ログインすると、そこは東門の近くでした。
「とりあえず、また職人ギルドに行ってやりますか」
私はその足で街の東にある職人ギルドへと行きます。そしてその道中でガラス瓶も1,000Gで百個買いました。そのまま少し歩いていると建物が見えて来たので中へと入り、人が多いので100Gで個室を借ります。一時間しか使えませんが、そんなに長くやる予定ではないので大丈夫です。
「では、作っていきますか!」
私はまず初級錬金セットを敷き、まずは三個だけ取れた魔草の一つと水入り瓶を組み合わせて合成をします。すると薄い青色のポーションらしきものが出来ました。
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初級MPポーション ランク F レア度 一般品
MPの回復効果のあるポーション。体にかけても効能は半減するが回復する。
MP20%回復。
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鑑定すると、そのような説明が出ました。体にかけても一応効果はあるのですね。
よし、残りの2枚の魔草もポーションにしちゃいますか。
そこからはそのまま二個のMPポーションを続けて作り、インベントリに仕舞っておきます。
そして前に作ったのと同じく初級ポーションを五十個、それぞれ二十個ずつ微毒ポーションと麻痺ポーションを、残りの七個を解毒ポーションへと作り替えます。
「よし、これで買った分は全て作れましたね」
そうして【錬金】スキルのレベルを上げてLv10を超えると、新しいアーツが増えました。それは変換というアーツです。これは説明を見る感じ、アイテムを上位に変化させたり、逆に下位に変化させたり出来るアーツのようです。
今更ですがアーツとは、職人系スキルが覚える武技と言ったところで、覚えると新しいことが出来るようになるものなのです。
私は使わずに余っていた薬草を取り出してまずは上位変換を試してみます。
「試してみますか、変換!」
すると、初級錬金セットの上に置いた薬草が光り、光が収まるとそこには何もなくなっていました。
「もしかして、失敗ですか?なら今度は下位変換で試してみますか」
もう一度薬草を取り出し、今度は下位変換を使用します。
するとさっきのように薬草が光り、光が収まると今度は何かの種がありました。
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薬草の種 ランク F レア度 一般品 品質 C
薬草の種。育てると薬草が採取出来るようになる。
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鑑定すると、薬草の種が出来たようです。
「下位変換だから、薬草の下である種が出来た、ということですかね…?」
それにしても、種ですか。このゲームではお店だけではなく畑も買うことが出来るようですが、生産職じゃない私には買うことはなさそうです。
それと上位変換も使って調べたところ、どうやら上位に変換するのには同じ素材を十個揃えないと変換出来ないようです。九個でも十一個でもダメでしたしね。そして上位に変換して出来たものはこれでした。
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上薬草 ランク F レア度 一般品 品質 C
薬草の上位。薬草よりも高い回復効果がある。
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薬草の上らしき上薬草が出来たのです。ただ、薬草十個でこれが一つなので、かなりコスパは悪そうです。鑑定の説明を読む限り、薬草よりも高い回復効果のあるポーションを作れるらしいですけど。
それから私は、様々な素材を上位や下位に変換してみます。
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上毒草 ランク F レア度 一般品 品質 C
毒草の上位。毒草よりも高い毒効果がある。
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ウルフの大皮 ランク F レア度 一般品 品質 C
大きめな狼の皮。
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ウルフの大牙 ランク F レア度 一般品 品質 C
太くて丈夫で大きめな狼の牙。
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フォレストスネークの大皮 ランク F レア度 一般品 品質 C
丈夫で大きめな蛇の皮。
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フォレストスネークの大牙 ランク F レア度 一般品 品質 C
太くて丈夫で大きめな蛇の牙。僅かな毒効果を持つ。
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すると、このような物が作れました。大皮は普通のよりもかなり大きめになっていて、縫い目などもないので意外と丈夫なようです。
それとどちらの大牙も私の手に収まるくらいの大きさから、私の手よりやや大きめなサイズまで大きくなっています。なので短剣などにも使用できそうです。
新しく覚えた変換を色々と検証していると、ピピピッと音がなりました。どうやらもう一時間経ったようです。
「やりたいことは大体終わらせましたし、そろそろ落ちますか」
私は出していた道具などを片付けてから職人ギルドを出て少し歩き、広場に行ってそこでメニューを開いてログアウトをします。
現実世界に戻ってきました。時刻はちょうど九時のようです。結構長くやっていたようですね。明日も学校がありますし、軽くストレッチをして寝ますか。
そうしてストレッチを済ませた後、部屋の明かりを消して就寝します。
朝になりました。今日は火曜日です。私は朝の諸々の支度を済ませ、兄様と悠斗と一緒に学校へと向かいます。
「今日は美幸はどうするんだ?」
「最近はパーティを組んで攻略することが多かったので、今日はソロで狩りでもしようかなと思ってました」
午前中の授業も終わり、お昼の時に悠斗から今日の予定を聞かれたので、私はお弁当を食べながらそう答えます。ワイワイしながら攻略もいいですが、ソロの方が私には合っているのですよね。
「オッケー、それならまたいつでも言ってくれ。その時はパーティメンバーも呼ぶからな」
「わかりました。その時はお願いします」
お昼ご飯も食べ、その後も会話をしていると、教師が来て授業が始まるので、悠斗は自分の席に戻っていきます。
そして学業も終わり、帰路につきます。途中で悠斗と別れ、家に着いたので一人で入ります。
そうそう、今日の帰り道では兄様は一緒ではないのです。なんだか部活の助っ人に呼ばれたみたいで、一緒には帰れなくて帰るのも少し遅くなる、とスマホにメッセージを受けたのでそれに了承を返して帰ったので、私は一人なのです。
部屋に鞄などを置いて着替えた後、今日の夜ご飯も先に作り置きしておきます。そうしたやることを済ませて時計を確認すると、時刻は五時くらいになっていました。
「兄様はまだ帰ってこないようですし、少しだけゲームをしちゃいますか」
私は自分の部屋に向かい、サイドテーブルに置いてあったヘッドギアを頭に着けてゲーム世界へとログインします。
ログインして気づくと、そこは街の中央の広場でした。
「次はどこに行きましょうか……北と東、それと南には行きましたし、まだ行っていない西に行ってみますか!」
そう決めて私は西門へと向かいます。西門に行くまでの道中では、ほとんど人には会いませんでした。おそらく、西は人気がないからでしょう。
実は前に学校で、街から西には何があるかを悠斗に聞いていたのです。悠斗が言うには、西は湿地になっていて、泥などがあって装備が汚れたりするのと、そこに出てくるモンスターのドロップもあまり良いものではないらしいのです。
そしてその情報通り、西門あたりから周りを見渡しても、一切人の姿が見えません。
「とりあえず、私も汚れてもいい初期装備に戻しますか…」
新しく作ってもらったばっかのワンピースは汚したくはないですからね…
そう思い、私は胴の装備をワンピースから革の胸当てに変更します。
プレイヤーはいないので好きなだけ狩れます。まあ素材に価値はあまりないので、レベル上げが主ですが。
ここの湿地にいるモンスターは大きめなカエルが主で、稀にハエなどもでるようです。カエルには打撃系の攻撃が効きづらいという特性があるらしく、格闘や棍棒を扱うプレイヤーには嫌われていらみたいです。まあ私は一応魔法系に属する気はしますので、そこまで影響はなさそうです。
そしてハエは特に言うことはありません。北の山に居た鷹の劣化ですね。ですが現実よりもデカい虫なので、嫌いな人は全く湿地に寄ることもない気はします。私?私も虫は嫌いなので、見つけ次第撃ち殺します。虫は本当に近づいて欲しくないです。
ま、まあそれはともかく、湿地にある素材も採取していきますか!それと少ないですが採掘ポイントもあるみたいなので、そこも掘り掘りします。
採取や採掘をしていると、早速カエルが【気配察知】に反応します。そちらへと視線を向けて確認すると、周囲に紛れるためか全身緑色の見た目をした全長70cmくらいの大きさのカエルがいました。
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フロッグ ランク F
湿地などに生息している蛙。
皮は防水加工品などに使える。
状態:正常
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鑑定結果にはそう出ました。なるほど、このカエルの皮は防水製品に使えるのですね。ですがまだ水場のエリアもないですし、防水が必要な場所はないので人気がないのも頷けます。
このカエルは自分から襲ってくるタイプではないようで、こちらを発見はしているのでしょうが、その場からほとんど動きません。なので私は先手必勝として、カエルの頭へ照準を向けて発砲します。
「ゲコッ…」
弾丸を受けたカエルはそんな声を出しつつ、ポリゴンへと変わります。カエルのドロップアイテムは説明にあった通りに皮、そして唾液が出ました。
「唾液って……何に使うんですかね…?とりあえず鑑定してみますか」
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フロッグの唾液 ランク F レア度 一般品 品質 C
フロッグが出す唾液。僅かに酸性を持っている。
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ほう。酸性ですか。僅からしいですけど、これは微毒ポーションと組み合わせたら良さそうな効果になりそうですね?
私が確認していると、今度は大きな蝿がこちらに迫ってきてました。私は真顔でその蝿に向かって二丁の魔銃を乱射し、ポリゴンに変えます。今倒した蝿の素材は蝿の血のみでした。は、蝿の血……カエルの唾液よりも使い道に困りそうなものですね…
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ビッグフライの血 ランク F レア度 一般品 品質 C
ビッグフライの血液。僅かに毒性を持っている。
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そういえば即座に倒したので鑑定していなかったですが、あの蝿はビッグフライと言うのですね。それと蝿の血は毒効果持ちですか。またもや使い道に困るものですね。確かにこれらの素材しか取れないなら、普通のプレイヤーは寄ることもないですね。ですが採取した物の中には、森では取れなかった素材も少しあります。
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水の石 ランク F レア度 一般品 品質 C
水属性が僅かに宿った石。
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土の石 ランク F レア度 一般品 品質 C
土属性が僅かに宿った石。
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泥炭 ランク F レア度 一般品 品質 C
泥と植物が固まって出来た天然の燃料。
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土ナス ランク F レア度 一般品 品質 C
土属性が僅かに宿った茄子。焼くとトロトロで美味しい。
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水ミニトマト ランク F レア度 一般品 品質 C
水属性が僅かに宿ったミニトマト。瑞々しく美味しい。
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こんなものが取れました。食材以外はそこまで使える素材ではないので、一応確認程度でたくさんは取っていないですけどね。その代わり食材は多めに取っておきました。