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迷いとは立ち止まらず進んでいる証拠である3

俺の意識は暗闇にあった。


目を瞑っているという感覚で気が付いた。


(俺は今、眠ってるんだ・・・)


と。


「んッ・・・!」


刹那、瞼の裏から大量の光が差し込んだ。


目、思いっきり開いちゃったよ。


太陽が、俺を見下ろしている。


「ふう・・・」


俺は顔に手を被せ、太陽から目を守る。


「・・・意味な」


しかし、全く変わらない光量に俺は直ぐ手を下した。


「痒ぅッ!!」


俺は驚きのあまり上半身を起こした。


「びっくりしたぁ・・・。痒ぃ・・・」


そこで俺は、自分が果てしなく続く草原をベッドに昼寝をしていることに気が付いた。


いつもより少しだけ空が近い気がする。


「おーい!!!」


いや、ここは地面が盛り上がっていたんだ。


声のする方を向くとぶんぶんと左右に振られた手だけが見える。


それは少しずつ近づいてきており、手から頭が見え、胴が見え、全身が見える頃には俺の直ぐ近くに来ていた。


(人だ・・・)


いつも耳を塞ぎたくなるほど騒がしく、其処ら中を我が物顔で闊歩する人間。


(なのになんだこの安心感)


それが今の俺の本心なのだろう。


初めましての顔。なのに俺はその人を知っていた。


「おー」


そういえば、空気が澄んで気持ちがよい。


(呼吸ってこんなに心地良いものだったっけ?)


「おはよう」


見知らぬ知人が満面の笑みで俺に挨拶をした。


(笑顔まで眩しいのかよ)


「・・・おはよう?」


彼と目が合ってふと思う。


(彼が『俺』という存在を捉えている・・・。俺は、俺という存在はここに居るんだなぁ)


「皆がお前を待ってるよ。行こう」


「ああ」


俺は彼の手を取り起き上がった。


(いい笑顔だな)


そして丘を下り彼の言う村に向かった。


知らずのうちに口角が上がっていたのに気付いたのは、村の活気を見て更に口角が上がった時だった。


日も落ちかけているのにも拘らず、村民は燃え盛る火を囲んで楽し気に踊ったり、話したり、食べたりとしている。


(太陽が無くたって、人は人と居るだけで明るくなれるのか)


何も無い草原には彩りが、人には人の心を幸せにする表現や感情が。


(ずっと何も無いって思ってたけど・・・、最初から全部あったんだなぁ・・・)


これ以上を望み過ぎたのだろう。


(傲慢だな、俺・・・)


「俺、幸せなんだ・・・」


ああ、ここに居るだけで幸せだよ。


いや、だから幸せだよ。


彼らは夜が更けるまでどんちゃん騒ぎをしていた。


(あ・・・。あいつらの体力・・・底なし過ぎる・・・!)


昼に寝て回復した体力を全て奪われた。


俺はというと、村の端っこにあるテントハウスの様な作りの寝床が集合している場所に来ていた。


彼らの居る場所から結構距離が離れており、随分閑静な事と、明かりが無い事が相まってとても寂しく感じる。


けれどまたこれがクールダウンには丁度良い気もする。


「夜、だなぁ」


俺は皆のテントハウスを横目に歩く。


そして、俺のテントハウスを見つけた。


乱雑な作り、周りのテントハウスから更にちょっと離れた場所にあった。


(俺、一人好き過ぎかな)


俺は入口の布を潜り、腰を曲げながら中に入った。


さて寝ようか、と思ったが急激に目が覚めてしまった。


「なんだこれ・・・」


部屋には見覚えのない異物が置いてあったからだ。


楕円形で淵には豪華な装飾、少し年季の入ったものっぽい。大きさは俺の伸長と同じくらいで、真ん中には俺がいた。


「鏡・・・?」


(え・・・?こんな場所に、なんでこんなものが・・・)


まじまじと観察をしている間にその鏡から目が離せなくなってしまった。


動きたいのに、村の皆に聞きに行きたいのに体が動かない・・・。


(いや、てか・・・)


「俺・・・なのか?」


鏡に映っているのは俺じゃなかった。


白いローブに金で作られた白鳥のネックレス。両腕には宝石のついたブレスレットが幾つも・・・。


「どこで・・・こんな・・・」


俺は鏡から目が離せることに気付いた。


そして、現実の自分の姿を確認する。


「遅いぞッ!!!」


突如、耳に障る声が届いた。

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