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第73話 夜襲



 森に蔓延るスナッチャーの群れを全滅させたという報告が妖精王アレンの耳に入ったのは、三日後の事だった。 

 あの手強い連中を、たったの四人で駆除することに成功したのだ。

 それも死人はゼロである。


 無事に帰還を果たしたロベリア達を、妖精の兵士達が出迎えるのだった。





 ――――





 謁見の間にふたたび戻ってきた俺達を、アレンは少しばかり安堵した表情を向けたような気がした。

 一方の、彼の部下であろう周りの妖精達の中にはまだ警戒をする者が複数人いた。

 特に、玉座の隣に立つことが許されている手慣れと妖精が、こちらを敵視するように見ている。


「よくぞ帰ってきた理想郷の勇者たちよ!」


 王様の定番な台詞を吐くアレン。

 勇者じゃないし。


「短期間でスナッチャーを掃討してくれるとは思っていなかったよ。我々、妖精でしか力を発揮できない生物兵器だから、人族の手も借りたい思いだったよ」


 そう言いアレンは手を叩いた。

 すると彼の脇に立っていた、従者たちが前に出てきた。


「遠い場所から来たというのに、ロクなおもてなしも出来ていなかったね。今宵は祝杯にしよう! それまでに各自部屋で休んでくれたまえ!」


 結論を早く出してほしかったけど、正直疲れたのでお言葉に甘えることにした。

 従者に部屋まで案内される。

 かなり豪華な部屋だ。


 何畳あるのかは分からないが、ゴエディアが入ってきたら狭く感じた。

 装備を脱ぎ捨て、そのままベッドに倒れ込む。

 もう風呂に入る気力がない。


「ろべりあ、もう疲れた?」


「……休まず魔力を使い続けたからかもしれん。悪いがゴエディア、あとは……頼んだぞ……」


 まるで溶けるような気分だ。

 こんなに疲れたのはいつぶりなのか。

 もう何でもいいので、眠気に逆らわず寝ることにした。






 ―――――






 何時間経ったのか、目を覚ました俺は周りを見回した。

 毛布を掛けられていたのだが、ゴエディアがやってくれたのだろうか?

 肝心の本人がいないのだが、何処に行ったのか。


「……ゴエディア?」


 ベッドから起き上がり、近くに掛けられていた装備を身に着ける。

 まだ汗の臭いが残っており、このままにしたらヤエに怒られそうだ。

 時間が空いた時に洗うか。


「……んっ」


 違和感を感じた。

 今宵は祝杯のはずだが妙に静かだな。

 開催場所を聞いていないので、此処とは別の場所で行われているかもしれない。


 そう思いながら、部屋から出ようとするが体がムズムズする。

 温泉のぶくぶくするアレに浸かっているかのような感覚だ。


『―――だめっ』


 部屋の中から声が聞こえたような?

 しかし、誰もいないはず。


 ちょっと光っている魔導書ぐらいしか。

 あれ……こいつ光るんだっけ、すげぇ。


 頭がクラクラして深く考えれない。

 それよりエリーシャ達のところに行こう。

 ゴエディアもいないし、彼女たちの部屋に行った可能性が。


「―――死ね」


 殺気。

 鼻の先を、剣身がかすった。

 間一髪、避けることが出来た。


 手に魔力を込めて炎属性魔術をイメージする。

 殺すのではなく無力化する程度だ。

 だが―――



 手元の魔術が四散した。

 しっかりと睡眠をとったので体内の魔力器も回復しているはずだ。

 もう一度魔力を込めてみるが、またもや消えてしまった。


「……なんの真似だ?」


 扉の向こう側にいたのは、妖精達だった。

 武器を手にして、明確な殺意をこちらに向けていた。

 そんな、まさか。


 妖精王国との交渉が、失敗したのか―――


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[気になる点] >特に、玉座の隣に立つことが許されている手慣れと妖精が、こちらを敵視するように見ている。 もしかして、手練れ(てだれ)、でしょうか?
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