表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最も嫌われている最凶の悪役に転生《コミカライズ連載》  作者: 灰色の鼠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/194

第49話 君の味方であり続ける



 船内にも待ち構えている敵どもがいた。

 やはりそのほとんどが精霊教団の連中だ。


 俺を見た瞬間、顔色を変えて逃げ出す者もいれば、「神の恩恵を持つ我々なら勝てる!」と躍起になって襲いかかってくる者もいた。

 だが、片っ端から殺し回った。


 主に上級の光属性魔術で攻撃してくるが、魔力障壁を貫通するほどの威力はない。

 硬質化した皮膚にも届かない、火力不足の攻撃だ。


「……ああ、神よ」


 戦うことを諦め、神に祈り始める者もいた。だが、何の罪もない人間を殺すことを正当化する連中が信仰する神など、どうせろくでもない神だ。


 命乞いをしようが、家族がいると口にしようが、若かろうが、手を緩める気は一切ない。

 泣きついて慈悲を求めても、踏みにじるだけだ。


 殺戮、破壊、殲滅、破滅、死。

 精霊教団と英傑の騎士団に相応しい、苦しませながら殺す方法で、次々と命を奪う。

 いつしか、俺の通った道は死体の海と化していた。


「……」


 それでも足りない。

 理想郷で流された血は、こんなものではない。


 死にゆく人々や子供たちの絶望を想像するだけで、憎しみが膨れ上がる。

 初めて大切なものを失い、ようやく「必要犠牲」の意味を見出せた。


 邪魔な芽は、摘むしかない。


「……?」


 ある部屋にたどり着く。

 そこには家具一つなく、何もない空間だった。なのに、人の気配がする。

 隠れているのか?


「はあああ!」


 振り返ると、船の修理に使うような木の板を振り上げ、突進してくる少女の姿があった。


 魔力を込めて魔術を放とうとした瞬間、その少女が連れ去られたエリーシャだと気づき、手を下ろした。


「えっ、ロベリア……!」


 エリーシャもこちらに気づいたのか、動きが止まる。

 木の板で殴ったところで魔力障壁に弾かれるだけだが、彼女が怪我でもしたら大変だ。


 ようやくエリーシャを見つけ出した。

 俺は深く息を吐き、安堵する。

 だが、両手が血で汚れていることに気づき、言葉に詰まった。


 この戦いは、理想郷を襲った者たちへの報復のためだ。

 だが何よりも、エリーシャを取り戻すための戦いだった。


 エリーシャは震えていた。

 殺戮の限りを尽くした俺を見て、震えていたのだ。


「……」


「……」


 沈黙が訪れる。


「人を大量に殺し、救いに来た」と告げたら、拒絶されるかもしれない。


 振り返ると、数えきれないほどの死体が転がっている。

 俺が奪った、命の海だ。


 エリーシャはどんな目に遭おうと、復讐を望むような子ではない。

 だからこそ、失望されたのかもしれない。

 こんな悪役に、助けられたくはないだろう。


「……来てくれるって……信じてた……」


「エリーシャ……?」


 エリーシャの瞳から涙がこぼれ落ちていた。

 何度拭っても止まらない、溢れる涙。

 それを見て、ようやく気づかされた。


「……きっと、来てくれるって、信じてたよ……ぐすっ」


 彼女に近づき、そっと抱きしめる。

 怖い思いをしたから震えていたのかもしれない。

 俺は何を勘違いしていたんだ。


 子供のよう に泣きじゃくるエリーシャの背中を、そっと撫でる。


「すまない……待たせてしまった」


 どうしても口下手になってしまう。

 この世界の俺は、いつだってロベリアだからな。

 それでも、どんなときでもエリーシャの味方でいることを誓う。


 たとえ世界を敵に回したとしても――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ