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最も嫌われている最凶の悪役に転生《コミカライズ連載》  作者: 灰色の鼠


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第193話 最終決戦へ


 目を覚ますと、目の前にはボロボロになったジークが倒れていた。俺も、体中が切り刻まれて大量に出血したせいで気を失っていたらしい。


「……っ」


 痛みを堪えながら回復薬を取り出して飲んだ。

 もう一本、倒れたジークにかける。


 さっきまで城の中で戦っていたはずだ。

 どうして彼が、俺のすぐ近くに倒れていたんだ。


「おい、ジーク……」

「……くっ」


 俺が呼びかけると、ジークの瞼がゆっくりと開かれる。


「戦いはどうした? 何故、お前がこんなところに……?」

「ロベリアか……すまない、フウカにとどめを刺した瞬間に、アカタニの奴の不意打ちを喰らって気付いたらここに……」


 フウカ? 誰のことだ?

 それはさておき、だとしたら早く戻らなければ。


 ジークに手を貸して、立ち上がらせる。


 ドゴォン!!!!



 すると、すぐ横に誰かが降ってきた。

 かなりハデに城から落下してきたので驚いてしまう。


「いやぁ、いやぁ、失敬」


 槍を持った少女、ミクマリだ。

 なぜかボロボロになったアルスと知らない女の人を背負っていた。


「おい……どうしたんだ」

「此奴、この女と対峙したときに自身の妖力で暴走したみたいでな。偶然通りかかった拙僧にも襲いかかったので返り討ちにしてやったのだ」


 やれやれと呆れた顔でミクマリは言った。


 アルスめ、あれほど黒魔力を行使するなと注意したのに、また無理をして。


「師匠ぉ!」


 聞き覚えのある声が上からしてくる。

 上を見上げると、城から顔を出したジェシカがこちらに手を振っていた。


「「「ジェシカ!?」」」


「これ、パス!」


 ジェシカは何かを投げてきた。

 とりあえずキャッチする。


 それは、布でグルグル巻きにされた何かだった。


 中身を確認すると、大きくて白い鱗ようなものが三つ入っていた。


「何なんだ……これは?」

「……これは"八岐の白鱗首"!?」


 ジークが、驚いていた。

 さっきまで性格が落ち着いていたので、いつもの大きな声を出すと安心する。


「ジェシカ! これをどこで見つけた!?」

「えーとね! なんか、城の中にいる偉い人たちを片っ端からぶっ飛ばしたら渡してくれた!」


 俺達とはぐれている間に城内の人間を片っ端からぶっ飛ばしていたのか、あの子は。

 可愛らしい笑顔を浮かべてるけど恐ろしい子。


「和の大国は、この鱗のために三百年前から三領間で戦争をしていたんだ。各領が一つずつ保持していて、四つ集めることで"白き神霊”が現世に現れ、武力と豊穣をもたらすと言われている……」


 ジークは鱗を見つめながら、淡々と説明する。

 この小さな鱗に、それほどの力が宿っているというのか。


「武の領頭領アマネに仕えていた男アカタニは和の大国を手中に収めるために、これを集めようとしていたんだ……これさえあれば、国にいるすべての人を死者として操ることも夢じゃない」


 にわかに信じ難い話だが、三つの領が戦争をするほどということは本当だろう。

 しかも、各領が一つずつ保管しているか。


 つまり、ここに三つあるということは、すでに契の領と鬼の領から奪い取ったということか。


「……待て、ならばあと一つは何処に?」


 武の領、契の領、鬼の領で三つ。

 それでは足りない、四つ集めなければ白き神霊は現れない。


「ふむ、ふむふむ」


 ミクマリが俺とジークの間に入って、鱗をまじまじと観察した。


 そして、何かを思い出したかのように上着を広げて、胸元を見せつけてきた。

 痴女か、と思った俺とジークはとっさに目を逸らす。


「そういう意味ではない、これだ、これ」


 ミクマリが呆れた顔を浮かべながら、首輪をはずして見せてきた。


 首輪には、八岐の白鱗首と似ている白い鱗が付いていた。いや、完全に同じだ。


「拙僧の住み着く寺の地中に、それは大事に保管されていたが、いやはやそこまで希少な代物だったとは。じっちゃんは何も教えてはくれなかった」


 そう言いながら、彼女は首輪を渡してきた。


「いいのか?」

「当然だろう。和の大国の命運に比べたら、惜しくもない」

「……貰おう」


 これがアカタニの手に渡ったら和の大国は終わりだ、いやアズベル大陸全体が危険にさらされる。

 そうなればリアン姫救出どころではなくなる。


「ジーク、まだ動けるか?」

「ああ……」

「よし、行くぞ」


 サカツマに斬られたところが治っていない。

 あの刀、ラインハルの聖剣と同じ治癒力を低下する効果があるのかもしれない。


 魔王は竜の血によって高い治癒力を持つ、それに対抗するために作られたのが聖剣だ。

 噂でしかないが、聖剣を打った鍛冶師は和の大国出身だとか。


「あっ、師匠ー!」


 上からジェシカの声が。

 慌てた顔でこちらを見ている。


「シャレムさんを送り届けたツンデレちゃんとの感覚共有で分かっちゃった!」

「何がだ?」

「サカツマさんの軍と死者の軍がぶつかった!」


 くっ、戦争が始まってしまった。




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