2.薪の補充
「母上、帰りました」
「おかえりなさい、テン。悪いんだけど、薪の補充しておいてくれる?お隣のアーサーさんがお湯が大量に要るって言ってかなりの量の薪を持っていっちゃったの」
「任されよ。行って参る」
「あ、マルはお母さんと掃除の手伝いしてくれる?」
「はい!がんばります!」
母親からお使いクエストを受けたテンは近くの森に薪を求めて入って行く。
森の木々は等間隔で生えており、管理されている場所なのだとわかる。
テンは今年で五歳になる子ども。
枝を集めるのかと思いきや、不規則に木々が生えている方に足を進ませる。
どんどん進み、野生の動物が襲ってきてもおかしくない程の獣道を歩いていく。
森に入って、三十分程経った。
テンの前には立派な木が力強く根を地面に食い込ませて反り立っている。
「今日はこれと、あれと、それでいいか」
テンは木に小さな手で触れて、深く突き刺す。
子どもの手が幹を貫き肘まで突き刺さり、力任せに木と大地を引き千切る。
とてもあり得ない状況だが、テンにとってはいつものこと。
千切り取った木を適当な広さがある場所まで持っていき、置く。
これを苦もなくやると、先程指定した木も同様の工程で置く。
化け物にしか見えない身体能力はコレだけでは無かった。
根元に近い幹に指で少し穴を空けて、口で吸い付く。
辺りにヂューーーと、吸っている音が走る。
すると、吸われている木の枝先から色が変わっていく。
どんどんと、その変化は進んで吸い終わる頃には木がカサカサに水分が無くなっていた。
テンの口周りはベタベタに汚れており、決して綺麗ではない袖で拭き取っていた。
それを他の木にも行い、カサカサが三本になった。
〔まあまあ、甘い〕
感想は要らないです。巨大昆虫さん。
〔虫やめて。嫌い〕
行動は完全に昆虫の化け物ですよ?
〔こうしないと水分残ってて燃えが悪くなる〕
いや、理由はわかりますが結果が異次元です。
普通、薪にするっていったら落ちた枝(水分が少ない)とか切り倒して水分が抜けるまで放置した木を使います。
そりゃ、切って直ぐに抜けるなら抜いた方が良いでしょうけど、人類には無理です。不可能です。本当に化け物です。
あと、出来るからって、やらないでください。まじ、きしょい。
〔だって、甘味が無いんだぞ!?昔は砂糖は贅沢品って教科書に書いてたけど、マジで無いんだぞ!金はあっても、こんな森の中の村まで行商人は来てくれないよ!売ってる町まで行こうとしても父さんと母さんが止めてくるし!俺の力を何度も見てるのに危ないの一点張りで村から出してくれない!〕
森は村の中、判定なんですね。
〔あぁ~!!!甘いの食べたい!甘味甘味甘味!!!〕
今日も転げ暴れまわり、カサカサになった木を担いで家に戻っていく怪物テンくんでした。
「怪物ちゃうやい!」