4.フォード辺境伯
4.フォード辺境伯
私には兄が三人と姉が二人いる。上から、
マルク(長男)10才
カイル(次男)8才
ゲイル(三男)6才
エリザベス(長女)4才
ミッシェル(次女)2才
である。
兄と姉の5人とも第一夫人のソフィーネの子であり、私は第二夫人マリアンの子だ。
兄たちはマリアンを「姉さん」と呼んでいる。長女のエリザベスは「お姉さま」とよび、次女のマリスは「姉上」と呼ぶ。マリアンは兄たちに慕われているようだが、慕い方が人それぞれだ。
昨晩の盗賊の騒ぎの翌朝、目が覚めたら窓の外はすでに明るい。ベッドの両側から姉二人が私をのぞき込んでいる。首が動くようになってきて視界が広くなったことが分かる。姉二人が昨晩の盗賊の話をしている。
「村に押し入った盗賊の話を聞きましたかエリザベス姉上」
「私のことはお姉さまと呼びなさいミッシェル」
「盗賊が全員頭を切られて、いや刺されて絶命したそうですな。しかも、熱せられた針のようなもので刺されたかのように頭が焼きただれていたとか。もしや・・」
「ふん、何がもしやなのかしら?」
「あ、いや、その」
「はっきりと言いなさいミッシェル」
ミッシェルがエリザベスに問い詰められているところでソフィーネが部屋に入ってきた。
「ここにいたのねエリザベス」
「ええ、いましたわお母さま。何か用ですか?」
「昨日の盗賊のことなんだけど、あなたの仕業なの?」
「どうして私なんですの?」
「だって、以前マリアンからアドバイスされていたでしょ、貴方の魔法の使い方を」
「確かに私の魔法はごく近くの物にしか効きませんわ。ですからレイピアを魔法で熱して武器にしたらどうかとマリアンお姉さまが教えて下さいましたわ」
「で?」
「で?とは」
「だから、やったの?」
「お母さま、そんなことを勝手にやって今ここでしれーっとケイトをあやしているわけないですわ」
「でも、エリザベスならあるかなと」
「はい?」
「ええ、まあ、違うのね、それじゃあ誰なのかしらねえ」
「母上、ケイトではないでしょかな。なにせ、生まれて間もなく高度な魔法を使うくらいですからな」
「ミッシェル、ケイトの魔法のことは秘密よ。それに、いくらなんでも、まだハイハイもできない子がそんなこと」
「可能性を否定してはいけませんはお母さま。なんなら私がケイトの記憶をだどって・・」
「いけません、精神系の魔法は旦那様の許可なしに使用してはなりませんよエリザベス」
「ふんす」
エリザベスは魔法が使える。しかも多数の魔法が、精神系の魔法まで。ただ、近くの対象にしか魔法が効かない。その使い方をマリアンがアドバイスしていた。
また、他の兄弟にもいろいろとアドバイスをして皆の信頼を得ていたのである。
長男のマルクは器用で何でもこなすが際立って得意なものがない。それを気にしていたのだが、マリアンから「貴方は将来お父様の跡を継いで領主となるのですから、自分がやるのではなく人を動かすことが重要です。そのためにはそれぞれ人の得意なことを理解できる必要があります。ですから、様々なことに器用であることはその助けになりますよ」と励まされていた。
次男のカイルは素早い動きと跳躍力が特徴だか威力にかける。そんなカイルにマリアンは槍を使うことを勧めた。ゲームの竜騎士のごとくである。
三男のゲイルはカイルとは反対に威力が高いが素早さに欠ける。そこで、大きな盾と大きな剣を使いタンクの役目をしつつ一撃必殺を狙うタイプを勧められた。
次女のミッシェルに関してはまだ才能が分かっていない。
マリアンは赤ん坊の時に第一夫人ソフィーネの実家の領主によって森で拾われた。そのままソフィーネの妹のように育てられたが、ソフィーネのメイドのようなこともやってて、ソフィーネがフォード辺境伯に嫁ぐときに連れてこられたのである。その時に得た知識をそのまま話したとマリアンは言っていた。