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ポインセチア・ノート:Φ  作者: 紫音
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プロローグ1:完全なる予言者

オレの名前はアイビー・マリーゴールド。

81歳。獣人は人間よりも老けるのが遅いから見た目は36歳位だ。

アンモビウム王国の外見だけ、ご立派な城『アイリス城』で専属魔術師をしている。

魔術の属性は風、そして――。


おや、説明する前に実践か。

遠くから聞こえてくる足音が死神に気付かず、近付いて来た。



哀れな少年、ニゲラ。年の割には少し小柄だ。髪は黒色の短髪。

種族は何処かから流された人間。


この国の奴らは「黒髪の男ですら呪いの象徴なのに、人間なんて……」と差別をする。

本当に哀れだ。まあ、それだけじゃないが――。


だが、これから起こるのはもっと悲惨だ。


ニゲラは今から一分後にこちらに来る。


『ねぇ、カルミア~!』


ニゲラはカルミアがここに居ると思い込んで、ドアを開ける。そして、開けた拍子にドアが左にある本棚とぶつかってしまう。やんちゃな子だ。


『なんで、あなた――』


本棚の上に有った誰かが置きっぱなしにした箱が揺れた拍子に落ちる。その中には金属片が入っている。

実に悪意的だ。


そして、ニゲラはそれに気づかず――。


『ニゲラっ……!!お願い――』



「な、なんで、あなたが」


「――ここに居るのかだろ?」


オレはニゲラが開ける前に廊下に出て、鉢合わせする形に未来を変えた。

そう、オレは風の魔術だけではなく、予知能力を使う事も出来る。

そして、予知は予知でも、絶対に外れない。

『完全なる予言者』の一人だ。一応、言っとくが、完璧ではない。


まあ、これから五ヶ月後には居なくなるが。


――くだらない話は置いとこう。

ニゲラは不満そうな表情で睨み付けている。ニゲラはオレに嫉妬しているようだ。


『お前なんて、アイビー様とカルミア王女が結婚していたなら拾わなかったのに』


なんて、周りの馬鹿な奴らが嫌味でニゲラに言うから余計にオレが嫌いなのだろう。

馬鹿馬鹿しいな、本当に。

ニゲラはオレより才能がある。カルミアとニゲラこそが結ばれるべきなんだ。


「カルミアが風邪だから、君の授業を担当するのさ。嫌でも仕方なくな」


我ながら余計な一言だ。だが、この一言が無いと駄目なんだ。

ニゲラはそうとは知らず、顔を真っ赤にして睨み付ける。


「なら、しなくていいです!僕はあなた居なくてもやって行けるので……!!」


ニゲラは顔を見せないように走り去る。

オレの予知では、ニゲラは人気の無い所で泣きながら魔術を練習するだろう。そして、それが後に身を結ぶ。


ニゲラには申し訳ないと思っている。だが、未来を変えるべき事は変え、未来を変えないべき事は変えない――それがオレの仕事だ。


全ては古き友人の結末の為に。



7月9日23時56分


オレは城を抜け出し、誰も居ない実家へ向かった。


これから行う実験は誰にも知られてはいけない。

特にカルミアとニゲラは。


「やれやれ、カビ臭いもんだな」


久しぶりの我が家、ドアを開けた途端に香る様々な臭いに涙が出そうだった。そして、何より亡き母がこれからする事を見守ってくれる――そんな気がして。


鏡には緑の長い綺麗な髪をした眼鏡をかけた長身の男が居た。これが普段のオレだ。だが――


「ああ!下らない!バカみたいにキレイなのは落ち着かないんだよ!!」


髪を引っ掻き回し堅苦しい上着を脱ぎ捨てた。

暫くして鏡を見ると、そかにはボサボサの髪をしたオレが居た。


「――よし!これで、完璧だ!ははっ!」


オレは普段しない得意気な笑みを浮かべさせて、秘密の実験の準備を始めた。


さあ、始めようじゃないか。

この世界の理を欺く物語を――!

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