進化したタワーマンションは、〇〇〇〇〇〇〇と区別がつかない その2
俺は念願のタワーマンションの一室を買い、引っ越し当日になった。
「引っ越しだぁ、さぁ行くぞ」
「ねぇ父さん、今度の家には僕の部屋もあるんだよね。」
「ねぇねぇ私の部屋もあるんだよね。」
「そうだよ、1ヶ月前モデルルームを見ただろ、あれと同じ間取りの部屋が今度の家なんだぞー」
「やったぁー」
「わーい」
ちょっと通勤時間が長くなるが、子供たちにも部屋を与えれるし
安くていい買い物だった。
「ねぇあなた?本当に大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ」
「安すぎない?」
「高速エレベータでも1時間かかる階層だからやすいんだろう」
「そう?それならいいけど」
係の人が声をかけてきた
「あーすいませんそろそろ引っ越し用の臨時便の発車になりますので乗っていただけますか?」
「はい、さぁみんな行くぞー」
「本日は、引っ越し専用臨時便にお乗りいただきありがとうございます。私は、本車両の運行を行うAIのあいちゃんです。
どうか短い間ですが、よろしくお願いします。それではみなさん専用のブーツをお履きください。」
「専用のブーツ?ですか?」
「はい、ない場合は、安全のためこの機内に備え付けの簡易金具をおつけください。」
「安全のためならしょうがないな、みんな靴にこの金具をつけて」
ちょっと止め方が厄介なので、少し時間がかかったが取り付けることができた。
「皆様、シートベルトの着用と安全金具の装備を確認し、安全確認ができましたので、今から発車します。
安全のため、到着までベルトはそのままでお待ちください。」
「ぱぱすごーい!!」 「父さんすごいや!!」
高速で上がっていくエレベータの窓からは素晴らしい眺望が見えた。
「これから毎日見えるようになるんだよ」
「「やったー」」
そして眺望を楽しむうちに違和感を覚えてきた。
なにか体が軽い。
「本日は、ご利用ありがとうございました。終点の均衡階層に到着です。」
「均衡階層?」
「はい、ここは本タワーマンションの中で重力と遠心力が均衡し無重力のエリアです。」
「む・・無重力?」
「はい無重力ですが何か? 安全金具の使い方をご存知の場合は、はいを知らない場合は いいえを言ってください。」
「え?」
「いいえと判断し、ご説明します。安全金具は無重力、微重力階層で安全に移動するためのものです。
特にこの階層では、ジャンプすると天井側に吸い寄せられるので必須の装備です。」
「ちょっとまって・・・!!」
「前にずらすと外れ、次の一歩が踏み出せます。垂直方向に引っ張る分には一トンまで耐えれますので安全です。
慣れないうちは手すりに安全帯を結んでの移動を推奨します。」
「・・・」
それから数ヶ月経った。
子供たちは喜んで遊んでおり、安全帯どころか、安全金具不要で自由に遊んでいる。
俺はまだ安全帯が取れない・・・
いつ俺は・・・
「あなた、無重力対応の調理器具や、家電は高いんだから頑張って稼いでもらわないと!!」