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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
79/343

第79話 帝冠問答

文化祭。生徒会が企画した美人コンテスト。


 課題パフォーマンスが終わると、いよいよ討論会だ。

 司会の「ではクィーンの帝冠に相応しいのは誰か、クィーンの資格とは何か、パートナーとともに各自の知力を尽くして語り合って頂きます。題して帝冠問答」の宣言とともに、討論開始。



 口火を切った米沢は「これって女性の魅力って事よね?」

「魅力と言うなら、もちろん"可愛いは正義"」と小島は断言。 

「いや、魅力っていっても、いろいろだから」と鹿島。

「結局は、恋愛対象として魅力があるか、でしょ?」と米沢。 

「それなら、誰かを一途に思う気持ちは、恋愛という文化の価値そのものだ」と矢吹は主張した。


 それに異議を唱える水上は「女性にとっての女性の価値こそ大事じゃないかしら?」

 鹿島は「友達は何人居るかってのは大きいよ」と援護する。

 それに対して岸本は「男性が居て女性が居る、って事を忘れてないかしら」

「いろんな男と寝るのが価値だとでも?」と水上が反撃。

「確かに、そういうのって恋愛対象としてはどうなのかな?」と鹿島が援護。 


 ここで村上が「男と女の関係って恋愛だけ?」と反撃。

「男性を理解するのが基本よね?」と岸本がそれを受ける。

「それって、男を甘やかすって事じゃないの?」と水上が反論。

 ここで水沢が口を開いて「駄目なの? 小依、いっぱい甘やかして貰ってるよ」



「そうだね。男性と女性が敵対関係だっていう発想をする人が、一番問題だと思うよ」と村上。

「そう言うけどね、男は女性にいっぱい酷い事してるのよ」と宮下が噛み付く。

「それってヤリチンのヤリ捨てとか? 奴等が何であんな事するかって問題じゃないのかな?」と村上。 

「あいつらが、っていうより男がゲスだからでしょ?」と宮下が男性嫌悪を吐く。


「恋愛ってそういうものだと、彼等が思ってるからじゃないの?」と村上。

 続けて岸本が「結局、女性って恋愛で元々強い立場、ってみんな思ってるからじゃないのかしら。それを機嫌とって拝み倒してモノにして惚れさせて、立場が逆転するのを夢見るのよね。つまり恋愛を下克上だと思ってるから、落とした後はやりたい放題で、風俗に落としたとか自慢する。そうなる前の段階があって、そうなるのよ」

 更に村上が続けて「だからさ、それがいいとか悪いとかじゃなくて、そういう恋愛しか知らない事が問題だと思うよ。男も女も」 


「そうは言うけど、女性は好きになると一途になって、どんな犠牲も厭わないものよ」と米沢。

「渡辺はそんな犠牲を望まないと思うけどね」と鹿島が釘を刺す。

「だから好きになれる、一途になれるんじゃないのかな? そんな相手を選んで、ちゃんとした関係を作れるって事が大事だと思うけどね」と矢吹

「だから相手をコロコロ変えるのは不誠実なのよ」と水上が岸本に矛先を向ける。

「生涯一人の男性に、ってのは全ての女性の願いなのよ」と米沢もこれに乗る。


 だが村上が反論して「そうかな? 生涯の間何人とセックスするのが理想か・・・ってアンケートがあるんだけど、女性だと平均五人だそうだよ」

「それは男性でしょ?」と宮下が疑問を呈する。

 村上は「男性は19人だそうだよ」

「村上君はそんなにしたいと思う?」と水上は苦笑しながら言う。 

「さすがに19人ってのは、千人切りとか言っちゃう人含めての平均だからね。けど女性だって、生涯一人とか清い体でとか言ってる人含めての平均なんだよね。要は女性だって本当は一人なんて思ってない人が多いって事さ」と村上は説明。



 水上は「一人とか何人とか言っても、要は自分にとって最高の男を得るのが理想って事でしょ?」

「その最高って何? って話でね、顔とかお金とか腕力とか、いろいろよね? それが自分にとって何なのか、みんな知らないのよ。それを知るために恋愛経験を積むのが必要なんじゃないかしら?」と岸本が反論。

「そもそも最高の男を、って要は奪い合いじゃん。それってただのエゴなんじゃね?」と小島が横槍を入れる。 

「エゴって何よ! 悔しいならあんたが最高の男になってみなさいよ」と宮下がキレかかる。

「馬鹿らしいと悔しいの区別のつかない貧脳に藁」と小島が冷笑。


「その最高を・・・ってのが王子様よね? それで自分より格上とくっつこうとするから、自分は男女以前に人間として、相手の前で格下になる。男尊女卑とか言うけど、その関係は自分が望んで作ってる。それでいいの? って私は思うわよ」と岸本が突いた。

「そうだね。対等な相手を求めるのが前提なら、そうならない筈なんだよね」と岩井が同調。


「じゃ、男女間の優位劣位は女の責任? ロリコンは幼い相手で優位に立って言いなりにさせて・・・って人じゃないの?」と宮下。

「リアル子供は我儘だよ。言いなりなんてならない。けどそれがいい」と小島。 

「優位を求めないなら何で小さい子を?」と水上。

 小島は「古人曰く、小さいものはみな美し」と蘊蓄を披露。

「どっちみち大人女子を蔑ろにする訳よね」と水上。

「俺ら、蔑ろにして頂いてる身ですが何か?」と小島は言ってのけた。



 鹿島は話題の転換を試みて「まあ、人口の半分は女性だから、女性にとっての女性も大事な問題だよ」

 宮下はそれに乗って「女をよく知るのは女よ、女の輪の中でこそ、女の価値ははっきりするの」

「昔から井戸端会議とか、女性の集団が社会を動かす部分って、ある意味大きかったってのはあるわよ」と水上もそれに乗る。


「女とか男とかってより、大事なのは人間にとっての価値の問題だと思う。男に対抗して結束するための価値みたいなのは、ちよっとね」と岩井が釘を刺す。

「女の輪って、下手すると悪口で盛り上がったり、誰かをハブったりってのが、ちょっとね。女の間にあるのは友情ではなく結束だって言葉もある」と村上が追い打ちをかけた 

 それを岸本がフォローして「個々の女性の間に友情が無いとは思わないけど、生き残るために孤立しないようって必死に、って人が多いのが、何か痛くない?」 


「だから男に保護されろと? 女同士の関係は対等なの。それを求めるのが同性愛なのよ」と宮下が本音を漏らす。

「それを保護とか言って屈辱だと思っちやうあたりが、どうかと思うんだが」と岩井が反論。

 村上も「それに同性愛だから対等かって言うと、レズってタチとネコ、つまり片方が男役になる。腐女子が妄想するBLにも攻めと受けってのがある。結局は疑似異性愛に戻るんだよね」


 そこに水沢が口を挟んで「小依は、男の子も女の子も仲良くなって欲しいよ」 

「そうよね。小依ちゃんは天使なのよね」と宮下は思わず援護。

「だから、男の子にキモいとか言うのは小依は嫌だな」と水沢は無頓着に切り返す。

「宮下さんは誰のエスコート役だよ」と岩井は苦笑した。 



「じゃ、女性にとってのクィーンって何かな?」と鹿島。

 それを受けて水上が「やっぱり、女性が生き残るため結束するためのリーダーじゃないの?」

「生き残るために・・・ってのは傍から見て痛々しいし、そもそも本人も楽しくないでしょ?」と村上が水を差す。

「男に対抗って発想も、恋愛したい女は支持しないわよね」とそれを受けて岸本。


「結局、男も女もひっくるめて、全体を見るのが上に立つ存在って事なんじゃないかな? クィーンって結局キングの女性形だろ?」と岩井。

「つまり人望なんだよ。友達に支持されるようなね」と鹿島。

「その人望が何から来るか? の問題だね。仲良しゴッコがうまくても、それでボス気取ってるだけじゃ、ただの猿山だよ。上に立つ人は社会を作る立場であって、みんなの居場所をどうするか、に責任を持つ人だよ」と村上が切り返す。

「だよね。自分が幸せです、って自己満アピールとか、主婦としてはアリだと思うが」と小島が同調した。 

「でも、みんなの羨望を集めて目標を示すのも、女王の在り方じゃないの?」と米沢が反論。


「女性と男性では理想の在り方が違うからね」と鹿島。

「男性はより大きくなろうとするのよね。けど女性はより完璧になろうとするのよ」と水上がそれに乗る。

「それで男性は周囲を包み込むけど、女性は自分に全力を注ぐ訳だ。それでどちらがみんなを幸せに出来るか、って問題もあるし、そもそも90%の段階で二倍を目指すのに比べて、100%を目指すのは大変だし、得るものも少ないよね」と村上が切り返す。

「けど、それで女性の支持を得て、友達に囲まれて中心として輝くのね」と水上。

「そういうお友達マフィアな幸せ類型押し付けられて、勝ち組とか言われてもなぁ」と小島が切り返す。 

「勝ち組ってのは誰かが負けるのが前提でしょ? 集団の中で誰かを負かすような世界が魅力的なのかな?」と村上がそれをフォロー。


「女性どうしの支持は、恋愛で充実している事も大きなポイントだって言うけどね。友達の恋愛を祝福するのが女性の連帯だと」と矢吹が言う。

 それに対して小島は「そんなの建前じゃね? 本音では嫉妬が渦巻いてるから、みんなの誰某って掟になると思われ」

 矢吹は「好きな相手が被ればそうなるだろうけど、レベルが高いからって、すぐ好きになる訳じゃないだろ」と続ける。



「女性は恋愛でも完璧を求めるから、自分にとっての完璧な男性を求めて、その人に対して一途になれるのよ」と米沢。

「だから、完璧じゃないと思った男性を対象外にして、恋愛経験を積めないのよね、男性に対して攻撃的になったり、とかもね。それって不幸じゃないかしら」と岸本が突っ込む。

「友達に対しても完璧を求めて、仲間をハブったりいじめたりも出て来るよね。外部に壁作って閉鎖的になったりもする」と村上が補足。

 ここで水沢が「小依はみんなが仲良くできる居場所にしたいな。男の子も女の子もね」


 これに宮下が反応して「そうね。実は私は女性が好きで男が嫌いだったの。所謂レズって奴ね。けど、岩井君の女装を見て、共存できると思った。だからここに連れてきたの」

「俺も、そんな宮下さんが嫌いだったけど、歩み寄って共存しようという姿勢が嬉しかった。だから、ここに来たんだ」と岩井、ようやくパートナーらしい事を言った。


 宮下はそれを受けて「私は男性という存在を否定している訳ではないの。男性としての性質を否定してるだけなの」

「宮下さん、それはイスラム差別の人が、自分はイスラム信仰を否定してるだけで、信者の生存を否定していないから差別ではない、と言って改宗を迫るのと同じだよ」と村上は釘を刺す。

「それは分かる。けど、歩み寄ろうという方向性は嬉しいと思うよ」と岩井が宮下を庇った。

「どっちがエスコート役なんだか」と小島があきれ顔で言う。



「仲良くってんなら、女性として男性を理解しているのが大事だよね。もちろんその反対も・・・だけどね」と村上。

「理解して二又三又かけるとか?」と米沢が皮肉。

「私は浮気されても気にしないわよ」と岸本。

「それは本当の愛じゃないと思うけどね」と矢吹。

「何が本当の愛かなんて、人それぞれだと思うけどね」と村上。

「相手も同じように考えていれば、だけどね」と水上。

「違う事を考えているなら、別れるだけよ」と岸本。


「岸本さんは今、彼氏2人と付き合っているわよね?」と水上が言う。

 鹿島が慌てて「そういうプライベートはちよっと」とブレーキをかけた。 

 だが岸本は「構わないわよ。本当の事だし」 

「その二人は、岸本さんを取り合って喧嘩とか、しないんだよね?」と村上。

 岸本は言った。

「イスラムって、四人まで結婚していい事になってるわよね? けどそれ、実は但し書きがあって、守らなければいけない条件があるの。それはね、結婚相手全員を平等に愛する事よ」

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