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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
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第78話 激突!女王様

 文化祭当日、開会式が終わり、各企画が店を開けた。


 二年二組でも開店し、来客を迎えた。直江が全体を指揮し、成績その他のポイントを集計するパソコンは八木が担当した。

 恋愛イベントで誰某をゲット・・・などでゲームは盛り上がり、中には間違って男子キャラを落としてBLカップルになってしまうというハプニングも連発した。

 ルーレットの数字が出ずに留年する人、友達付き合いに全振りして人望値で女子キャラを次々と落としたものの、留年して人望値ゼロから再スタートする者などが周囲の笑いを誘った。

 そうした中で、村上が気になる中条の様子を見た直江は「中条さんは村上の活躍見てきなよ。こっちは大丈夫だから」


 漫研では三名の一年生の作品が加わり、部員が交代で売り子を務めた。田中の当番が回ってくると、彼は特攻制服と剃り込み頭のツッパリルックで売り場に座ろうとした。

「それは客が怖がるから止めてくれ」と鈴木が苦情。

田中は「このスタイルは自分の漫画のポリシーっス」

 (自分のポリシーじゃないのな)と周囲は苦笑したが、客が寄り付かないのでは笑い事ではない。

 その時、藤河が言った。

「そういえば、近所の暴走族が、ここの文化祭で売ってる漫画が面白いって言ってたそうよ。そのうち買いに来るんじゃない?」

 田中は慌てて普通の制服に着替えてカツラをかぶった。


 写真部では吉江と鈴村の写真展になっていた。

 ご丁寧にも二人のモデルのプロフィールが貼ってあり、鈴村のプロフィールには「彼氏募集中」。

 ボードの一画が不自然に空白になっている。実は篠崎が別の作品を貼ろうとしたのだが、それがパンチラ写真である事が解って却下されたのだ。

 奥は今年も撮影サービスのコーナー。暗幕で窓側から教室奥にかけて覆う。光を調整するため・・・というのが名目だ。


 園芸部の企画は、様々な野菜を使った小料理屋となった。

 渋谷が育てた様々な野菜を材料に、と手を広げた結果、屋台でおさまらなくなったのだ。

 当初は生物教室の予定だったが、ミミズ等の標本の並ぶ部屋で食べ物屋はあんまりだ、という事で、化学教室に変更してもらった。

「去年あれだけ黒字だったから、さぞ儲かるだろうね」と、切り盛りしている片桐に薙沢が聞く。

「いや、赤字が大きいよ。肥料代や農業機材代が嵩んだからね」と片桐が苦笑した。



 体育館では開会式後、少し間をおいて美人コンテストが開幕。

 司会のトークとともに候補者の名を読み上げる。

「エントリー番号1番、水上千夏さん」

 エスコート役の鹿島に手を引かれてドレス姿の水上の凛とした風情。鹿島のスーツ姿も板についている。

 司会から一言を求められた水上の「優勝は頂くわよ」に続いて、エスコート役の鹿島も一言を求められると、鹿島は「本人、ああ言ってるんで」


「エントリー番号2番、米沢弥生さん」

 エスコート役の矢吹に手を引かれて豪華なドレス姿の米沢のあでやかな美貌。矢吹の美形ぶりも際立つ。

 司会から一言を求められた米沢の「女は競ってこそ華よ」と、どこかで聞いたような台詞に続いて、エスコート役の一言は「おい渡辺、見てるかよ」


「エントリー番号3番、岸本潤子さん」

 エスコート役の村上に手を引かれて妖艶なドレス姿の岸本の大人な雰囲気。いまいちスーツの似合わない村上。

 司会から一言求められた岸本の「本物ってものを見せてあげるわ」と挑発的な台詞に続いて、エスコート役は「挑発的ですいません」と言いながら村上は頭を掻く。


「エントリー番号4番、水沢小依さん」

「やっほー」とはしゃぎながら、エスコート役の小島に手を引かれる。子供用の丈の短いドレス姿の水沢の能天気ぶりと対照的に、小島は緊張し、右手と右足を同時に出して歩く。

 髪を七三分けにしてサラリーマン風眼鏡のスーツ姿の小島に、観客は一様に(似合わねー)。

 司会から一言求められて「みんなー、よろしくねー」と手を振る水沢に続いて、小島はエスコート役の一言を求められると、途端に冷静になって「可愛いは正義、キリッ」

 そして小島は応援と称してオタ芸を始め、司会に控席まで引っ張っていかれた。


「最後はエントリー番号5番、岩井俊也君」

 観客一同唖然。エスコート役のスーツ姿の宮下に手を引かれて、清楚なドレス姿の女装岩井。観客席から溜息が漏れる。男でさえなければ文句無く優勝では、と誰もが思った。

 司会から一言求められた岩井の「言っときますけど、女装は趣味じゃないんで」に続いて、宮下のエスコート役からの一言「男子でも美人ってアリですよね?」



 全員が控席に座ると、続いて即興パフォーマンスだ。12個の課題が書かれたルーレットを廻して、課題を決める。これを三回。

 司会がルーレットを回す。そして・・・。

「では、客席側に意中の人が居ると想定して、求愛の言葉を・・・」


 先ず水上の「あなた、私の物になりなさい」の上から目線に観客唖然。

 次に米沢は「渡辺君、愛してます」。観客席の渡辺が苦笑した。

 岸本は「ねぇ、エッチしよっか?」。これで客席のあちこちの男子は思わず鼻を押えた。

 水沢は「お兄ちゃんって呼んで、いい?」

 最後に岩井は困り顔で司会に「これ、男が相手って設定ですか?」



 控席のエスコート役達は笑ったり頭を抱えたり、だが所詮自分達は脇役だと気楽だ。

 そして二番目の課題のルーレットが回る。そして・・・。

「では、エスコート役の方の告白に対して答えて頂きます」

 気楽に構えていた五人のエスコート役はいきなりの出番に一斉に吹いた。


 先ず水上。

「千夏さん、俺と結婚して下さい」と鹿島の柄にもない言葉に、水上は「十年男を磨いて出直しなさい!」

 司会が前のめりにコケる。

「あの、水上さん、OKって設定でお願いします」と司会は汗を拭きながら・・・。


 次に米沢の番。

 矢吹は膝まづいて米沢の手をとると「渡辺直人と言います。あなたに心を奪われました」

「ありがとう渡辺君、子供は何人欲しいかしら」と米沢。

 これを聞いて、観客席に居た渡辺が盛大に吹いた。


 次は岸本だ。

 村上は汗だくで「あの、岸本さん、俺・・・」

 続く言葉が出ないでいると、岸本は村上の肩を抱いて「いいのよ。寝室に行きましょう」


 水沢の番になると小島は村上以上に言葉が出ない。

「こ、こここここよ、こより・・た・・・・」・・・、これに(ニワトリかよ)と観客一同思った。

 すると水沢は「小依が欲しいの? いいよ」

 客席に居た小島のオタク仲間二名は思わず鼻を押えた。


 岩井の番では宮下が「私が男って設定でなきゃ駄目ですか?」



 そして三番目の課題のルーレットが回る。そして・・・。

「では、暴漢に襲われたヒロインを守ってエスコート役は啖呵を切って下さい」


 水上を取り巻く三人の暴漢役の前に立ちはだかる鹿島。護身術は探偵の基本だと余裕で身構える。

 だが、彼が何か言う前に水上が「鹿島君、そんな奴等やっつけちゃってよ」

 司会は前のめりでコケると「水上さんは何も言わなくていいですから・・・」


 米沢の番。

 矢吹は無言の瞬足で真ん中の暴漢役の背後に回って左腕で首を押え、シャープペンを喉に突き付ける。

 そして矢吹は「今度、弥生さんの前に姿見せたら、殺す!」

 客席で女子達の歓声が響き、男子達は(シャレにならん)と一様に思った。


 次に岸本。

 村上は暴漢たちの前に立ち塞がると、無言で携帯を出してキーを押して「暴行を受けています。場所は・・・」

 司会は真っ青になってその携帯をひったくると、携帯に向かって「すいません、事件じゃないです。ただのイベントなんで・・・」

 携帯からは「只今おかけになった電話番号は現在使われておりません」の録音アナウンスが流れていた。


 水沢の番では小島が暴漢役の前に立ちはだかると、ヒーロー物のポーズ。

 「紅蓮の炎マホレッド、運命に従い悪を討つ」


 岩井の番では「これ、宮下さんがやるんですか?」と司会に問う岩井を、宮下が押しのけて、暴漢役に「女だからってナメるんじゃないわよ」と啖呵を切った


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