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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
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第47話 年越しの夜

 村上達四人は翌日、村上のアパートで改めてクリスマスパーティーをやった。

 売れ残りのケーキと食材を買って、簡単な料理と飲物。

初めて「秘密基地」を訪れる秋葉は、大はしゃぎでエロ本チェックがやりたいと言い出して「それはセクハラ」と嗜められた。

 帰り際に秋葉は「大晦日にはお節を作りに来るから、勝手にいい加減なものを作らないように」と釘を刺した。


 その翌日から、秋葉は家での大掃除やお節作りの準備。

彼女は母親と二人暮らしだが、「夜の仕事」で生活の不規則な母親は生活力も低く、家事の大半は普段から秋葉の仕事だ。

 芝田は兄の紹介でアルバイト。


 中条は、祖父を手伝って大掃除とお節作りをしたが、彼女が我慢しているのではと気遣う祖父が、それとなく遊びに行く事を促し、中条は村上のアパートを訪れた。

 村上は例年なら、いい加減な料理をお節と称して作り置きするのだが、秋葉に釘を刺されているので、大掃除に専念していた。

「松飾りとかはどうするの?」と中条が聞くと「それも自分が計画するから、下手な事はするなと秋葉さんが・・・」

 掃除はもうじき終わるというので、中条も手伝い、終わると炬燵で二人でネット動画を漁った。



 大晦日当日、昼前に芝田と秋葉が食材と飾り付けを買い付けて秘密基地へ。中条は一足先に来て、村上と炬燵を囲んでいた。

 四人は昼食で、炊飯器のご飯と作り置きのおかずの鍋を空にする。

 秋葉がお節作りを始めようと、持参したエプロンを身につけるが、中条のエプロン姿を見た秋葉は、それなら自分は裸エプロンを・・・と冗談を言い出し、スカートを脱ぎ始めたのを村上と芝田が慌てて止めた。


 作り始めると、秋葉はあれこれ指示を出し、先ずはお雑煮。

村上は芋の皮むき係で、薄く剥く事に感心した秋葉に村上は「食べ物は大事に使う主義なんでね」

 秋葉は「でも、刻むのは雑なのよね」と言って、野菜を刻むのを中条に任せた。

 芝田は松飾りや鏡餅などの準備が終わると、煮物の番。

秋葉はその間に蒸海老、煮豆、玉子焼きなどを次々に手掛け、焼鮭を最後に夜になる頃には完成した。


「この量だと四人で三日まで保ちそう」と中条。

 秋葉は「今晩は泊っていいんだよね?」と持参のパジャマを取り出す。

「俺は兄貴と早苗さんの邪魔をしたくない」と芝田。

 中条も「お祖父ちゃんが年越しに泊ってもいいって」

 秋葉が「お祖父さん、一人で寂しくないの?」と聞くと「私に友達が出来たのが嬉しいみたい」

 芝田が「じゃ、明日は初詣のついでにお年始に行こうか」と提案した。



 蕎麦を茹でて、年越し用のおかずとともに、四人で炬燵を囲む。

 食べ終わると、ネット番組をあれこれ見ながら四人で批評する。

 12時が迫り、時計を見ながら四人でカウントダウン。

 「3、2、1、0」と同時に爆発音。何事かと村上ら3人があたりを見回すと、秋葉が空になったクラッカーを手に笑っていた。

 口ぐちに「あけましておめでとう」「あけおめ」



 じゃ、寝ようか・・・という事になり、炬燵を片付けて布団を二つ敷く。一方には芝田と秋葉、もう一方には村上と中条。

 枕元にお菓子とジュース。電灯を小さくして、とりとめのない会話。

 そのうち芝田と村上の間に居た中条が、仰向けに寝ている村上の上で、気持ちよさそうに仰向けになる。

 それを見て秋葉は聞いた。

「中条さんがここに泊まるようになったのって、何時頃から?」

「夏休みの頃から・・・かな?」と村上。


 温泉に泊まって二日目の夜、中条が「お泊り会みたい」と言ったのがきっかけだった。

 女子の仲間内ではよくあるとは聞いていたが、中条はもちろん経験は無い。

 だが芝田が村上のアパートで夜更けまでゲームをして、そのまま泊まる事はしばしばあった。

 布団は二人分の用意がある。一人分は本来、ごく希に帰る父親用のものだ。

 そして旅行から帰ってまもなく三人で泊まろうという事になった。いざ布団を敷く段になって、布団が二人分なのに気付く。


 最初は中条に一人分を・・・という話になったが、芝田が男と二人ではホモみたいだと言うと、中条は「私がどちらかと一緒がいい。もし嫌でなければ・・・」と言い出した。

 村上と芝田は顔を見合わせたが、すぐ芝田が「村上が一緒に寝ればいい。お前の方が幅が狭い」

 村上は遠慮しようとしたが、自分との添い寝を嫌がっていると中条が解釈して悲しい思いをするのを、村上は危惧した。



「それでエッチにはならなかったの?」と話を聞いていた秋葉はいきなり直球。

 村上は「三人で泊まるから、やろうとすると3Pになっちゃうし、さすがにいきなりそれはね」

「けど、したいとは思ったでしょ?」と秋葉が追撃する。

 それに対して中条が「私はそうなってもよかったよ」


「村上君は受け身だし、芝田君はお兄ちゃんだし。っていうより、逆に牽制し合って・・・って事かな? それで三人だと襲われないって安心感とか?(笑)」と秋葉。

「中条さんも俺が居ない時に泊まれば良かったのに」と芝田が言うと、中条は「芝田君がお泊りとか言い出さないと、私が言い出すのってハードル高かったんだよね。それに、いっぱいスキンシップすると安心して、それで満足するの」

「普通にセックス抜きで添い寝って、女性には需要あるらしいね」と言ったのは村上。


 芝田は「男としても、性嫌悪を向けてないな・・・って実感で満足してたってのもあると思う」

「いつでも出来るから?」と言う秋葉

 村上が補足した。

「っていうより、最初に求めるのはハードル高いけど、欲求も大きいよね普通。あれって征服欲みたいなのもあるんだろうけど、女性が自分に性嫌悪を向けてないって事を証明したい、みたいなのが大きいんじゃないかな」

 それを受けて芝田は「だから、ちゃんとした関係になった後で、夫が求めなくてセックスレス夫婦みたいになるのが出る訳か」


「セックスって、やろうとしてするもの・・・っていうより、あちこち触りながら気分盛り上げて、自然とそうなるもだと思うよ」と秋葉。

「つまりスキンシップの延長って訳だろ。それでどこまで・・・ってので、女の側にある性欲の波で壁の位置が変わる。女によっては壁じゃなくて地雷になる」

「こりゃ、ますます男は動けないわな」と芝田は、自分の兄とその彼女のひと悶着を思い出しながら、笑って言った。

 秋葉は言った。「その危険を、解り合って仲良くなる事で取り払う訳でしょ? 中条さんが最初に芝田君とした時はどうだったの?」



 それを聞いて芝田の顔色が変わった。

「秋葉さん、何で知ってるんだよ」

 村上は残念そうに言った。

「芝田お前、今、鎌かけられたって解ってる?」

 芝田は唖然。中条は慌てて「違うの秋葉さん、あれは・・・」

「中条さんが求めたって言うんでしょ? 芝田君は悪くないって。解ってるわよ」と秋葉は大笑いしながら言った。


 村上は溜息をつくと「もしかして秋葉さん、また、おあいことか言って何か要求する?」

「そうねぇ、ムッツリスケベな村上君のエロ本チェックがしたいな」と秋葉。

「だからそれ・・・」と村上が言いかけると、秋葉は笑って言った。

「男性がエロいのを期待してるみたいだって言うんでしょ? 私、期待してるよ。村上君のエロいの」


 溜息をつきながら村上は「見たらちゃんと寝なよ」と釘を刺す。そして「あれだよ」とパソコンを指さした。

「俺の、フィルタリングついてないから」と言いながらエロ動画のサイトを開く。

 秋葉と中条は、初めて見る"それら"にはじゃぎながら「こんなにあるんだ」「これなんか藤河さんが喜びそう」「これは宮下さん向けだな」


「ねえ、村上君はSMって見ないの?」と秋葉がいきなり危ない事を聞く。

「そういう危ない事、聞いちゃう?」と村上は拒否権を発動。

「一般的には需要はあるんだよね?」と秋葉は食い下がった。

 すると中条はもじもじしながら「もし・・・村上君が興味があるなら、私、縛られてもいいよ」

 村上は慌てて「だからそういう頑張りはいらないって。それにこういうの、真似する奴は居るみたいだけど、本来はAVならではで、リアルでは必要ないものだし・・・」

 秋葉は笑いながら「怪しい。やっぱり見てるんじゃないの?」



 もうどうとでも言ってくれ・・・と言わんばかりに、村上は説明した。

「セックスって相手が気持ちよくなる事で自分も・・・って言ったよね。AVって、画面の向こうの女性が気持ちよさを演技することで、見てる側も・・・って物だと思う。けど、それを見る事自体で物理的に気持ち良くなる訳じゃない。その分激しい快感で攻められている図を見せる事で不足分を補うのが、その手の物だと思う」

「じゃ、縛るのは何故?」と秋葉。

「快感に耐えられなくて、手で払いのけたりするでしょ? それが出来ない事で限界を越える・・・ってイメージなんじゃないのかな?」と村上。


「じゃ、ムチみたいな痛いだけなのは?」と秋葉。

「俺だったら飛ばす」と村上。

「男性が気持ちよくなるフェラは」と秋葉。

「それも飛ばす」と村上。

「村上君、フェラ苦手だもんね」と中条が補足のつもりで言うと、芝田が声を上げた。

「何でだよ。普通のセックス以上に気持ちいいぞ」と芝田。

 村上は「だからさ、感じ過ぎて耐えられないんだよ」



 それを聞いた途端、秋葉は目を輝かせて言った。

「村上君、さっき気持ちよさの限界を越えるって言ったよね?」

「あ・・・」

「私、見たいなぁ・・・。村上君が限界越える所」。秋葉はいつの間にか、手にロープを持っている。

「それは面白い」と芝田も、そして中条もその気になる。

 村上は青くなった。「ちょ・・・っと待ってよ。秋葉さん・・・」

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