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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
343/343

第343話 おどり場の僕たち

出産を終えて病室のベットに移ると、まもなく中条は泥のように眠った。

そんな中条の寝顔を見て、秋葉は「幸せそうな顔」

「お母さんだものね」と村上。

「俺たちは帰ろうか」と芝田。



三人で中条家に戻る。そして秋葉母に報告。芝田兄夫妻も来て、報告を聞く。

「出産祝いしようよ」と芝田兄が言い出す。

「里子ちゃん抜きで?」と芝田兄嫁。

「主役だもんな」と芝田。

「まだ、しばらく入院だぞ」と村上。

「明日また病院に行けばいいよ」と秋葉母。

「とりあえずご馳走食べて」と秋葉。

「お酒飲んで」と芝田兄。


そして秋葉が芝田と村上の耳元で「エッチして」

三人で額を寄せて、ひそひそ。

「里子ちゃん抜きで?」と村上。

「産後は当分できないぞ」と芝田。

「その間、私が二人とも独占ね」と秋葉。


秋葉と芝田兄嫁がご馳走を作り、みんなでわいわいやる。



翌日、みんなで病院に行く。ベットの上で中条が笑顔で迎えた。

「夕べはよく眠れた?」と秋葉が中条に・・・。

中条は笑顔で「うん」と一言。

「大変だったね」と芝田兄嫁。


中条は「痛かったけど、辛くは無かったよ。何だか幸せな気持ちっていうか」

「変な趣味に目覚めちゃったとか?」と秋葉。

そんな彼女に芝田が「あのなぁ」

秋葉は笑って「オキシトシンでしょ? 真言君にも出てるんだよね?」

「そうだな」と村上。

「ところで赤ちゃんは?」と、対面が待ちきれないという体の秋葉母。

「保育器の中」と中条。



看護婦の案内で赤ん坊の所に行く。アクリルケースの中で眠る赤ん坊。

みんなで赤ん坊を見て、あれこれ言う。


中条が言った。

「この子はどんな子になるのかな?」

「もちろんいい子よ」と秋葉。

「いい子ってどんな?」と芝田。

「元気で優しくて有能で」と秋葉。

「けど逆に頑固だったり我儘だったり怠け者だったり」と村上。

「人に流されやすかったり」と芝田。

中条は「そうするのって親の影響なんだよね?」

「責任重大だな、おい」と芝田が村上に言う。


村上は「けど、幼い時に形成される部分って大きいよね」

「それ以前に脳内ホルモンの分泌とかで気質が決まるってのもあるって」と中条。

「遺伝的な部分って事か」と芝田。

「だったら優しい子になるよね」と秋葉。

「真言君みたいな?」と中条。

「いや、里子ちゃんみたいな、だろ?」と村上。

秋葉が「どっちでもいいじゃん」



村上は言った。

「けど、友達の影響ってのも大きいよ」

「学校に上がるとそれが一番大きくなる」と中条。

「今日びの子供社会なんて同調圧力の鬼ヶ島だもんな」と芝田。

「不良になったらって思うと怖い」と中条。


すると村上が「それはいいんだよ」

「いいのかよ」と芝田。

「いや、良くはないけどさ、不良って周囲の大人やら社会やら親やらを否定する訳だろ? けど、一番まずいのは自分自身を肯定しない事さ。周囲の目を絶対視してそれの奴隷になる。けどその周囲も子供だから調子に乗る」と村上。

「それがいじめか」と芝田。


「だから、そんなのに負けないよう強い子に」と村上。

「強い子って?」と中条。

「友達なんて要らないとか?」と芝田。

「昔の佐川君みたいに?」と中条。

「それって寂しくない?」と秋葉。

村上は「けど、いじめやるような奴には、きっぱり拒絶しなきゃ」

芝田も「ヘイト向けて来る外国にもね」



村上は言った。

「昔、お一人様力って言葉があってね。友達とかとつるまなくても、自分で生きていけるスキルって」

「知ってる」と中条。

「マスコミで言う"ぼっち"って、上から目線のマウンティング用語だもんね」と秋葉。

「隣に居る奴にマウンティング仕掛けるような友達なんか願い下げだよ。だって、そうでない奴はきっと居るから」と村上。

「とりあえず家族とか」と中条。

「けど、友達は選べるけど家族は選べないんだよなぁ」と芝田。


「友好国は選べるけど隣国は選べない・・・みたいな?」と村上。

「選んで貰えなくても粘着して骨の髄までしゃぶるんだって、兄弟国なんて意味不明な脳内設定で迫って来る国とか」と秋葉。

「俺たちは兄の国だとか言っちゃうとか?」と村上。

「何で俺を見るんだよ」と芝田が口を尖らす。

「隣国だから無理に仲良くしなきゃ・・・なんて言ってるマスゴミは、賄賂でも貰ってるんじゃないの?・・・ってね」と秋葉。


芝田が「話が逸れてるような気がするんだが」

村上が「親の影響だっけ? まあ、親はプロじゃないからね」



中条は言った。

「とにかく、目の前に来てくれたこの子を、幼い時にいっぱい愛してあげて満たしてあげるの」

「逆に変に期待すると重荷になる」と秋葉。

「しつこいとウザがられる」と村上。

「甘やかすと我儘になる」と芝田。

「ちやほやすると調子に乗る」と村上。

「そもそも、満たされるって何に満たされるんだろう」と中条。

「色々でしょ?」と秋葉が中条に・・・。


村上は「まぁ、子供は子供、自分は自分、人はなるようになるのさ」

「それに人は変わる」と芝田。

「何が変えるの?」と中条。

「自分だろ。自分は自分にしか変えられない。意思で変えるのさ」と村上。

「けどそれ、難しいよ。こうなりたくてなれたら苦労は無いよ」と中条。

「他人が変えるのはもっと難しいよ」と秋葉。

「そういうのって里子の専門分野なんだよね?」と芝田。

「だから怖いの」と中条。



出産後の体力の回復を図る。産後の肥立ちは順調だった。

村上たち三人、中条の病室でわいわいやる。

「もうすぐ退院だね」と村上は中条に・・・。

中条は「しばらく育児休暇が続くから」

「私と母があの家で面倒見てあげるわ」と秋葉。



中条は退院し、赤ん坊を連れて中条家に戻る。四人で赤ん坊を抱いて祖父の墓参り。

中条は自分の胸に居る赤ん坊に「お祖父ちゃんとはもう会ってるのよね」

赤ん坊は頷くように笑っていた。


ささやかな出産祝い。芝田兄夫婦も参加してわいわいやる。



宴が終わり、四人と赤ん坊で二階の部屋へ。

赤ん坊を寝かしつけた所で秋葉が言い出した。

「そういえば、あの小説、どうなったかな?」

「だいぶ進んだ」と中条。

「読ませてくれる?」と秋葉。

「いいよ」と中条。


文章データを印刷する。

印刷機から吐き出される紙を見て、芝田が「大量だな」

「八年分あるからね」と村上。

「読むのに時間かかりそう」と秋葉。


みんなで読み進める。ある部分では四人で爆笑。ある部分では四人でしんみり。

時々赤ん坊がぐずり、ミルクを飲ませ、あやし、おしめを代える。


読み終えて秋葉が言った。

「これ、まだ続けるの?」

「そのつもりだよ」と中条。

「この子が大きくなったら、読ませる?」と村上。

「そのつもりだよ」と中条。



芝田が言った。

「この題名のおどり場って、あの、俺たちが出会った階段の上の屋上前だよね?」

秋葉が言った。

「経済でも、おどり場って言葉を使うわよ。経済ってどんどん発展するけど、しばらく停滞する時期があるの。そこを過ぎるとまた発展する」


中条が言った。

「私、お兄ちゃんが死んで、人と話せなくなって、ずっと一人で、まるで時間が止まったみたいだった。真言君たちと出会って、また時間が動き出して」

「あの時間が里子の人生のおどり場って訳だ」と芝田。

そして村上が言った。

「けど、その時間は絶対無駄じゃなかった筈だよ。それに、そんな時間は誰にでもあると思うんだ」

脳内のキャラ達にせっつかれて、ここまで書きました。さすがに中条さんの出産まで漕ぎ着ければ、彼等も満足すると思います。では・・・。

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