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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
255/343

第255話 「可愛い」の法則

泉野はショタキャラを愛好する女子オタクだが、アニメ絵を描くのは得意ではない。

ショタ絵ももっぱらゲームや同人誌、ネットの画像サイトから漁ったものだ。


最初、SNSで親交のあった女子オタ仲間の影響で、昔の子供向けスポコンアニメの主人公たちに夢中になった。

だが、ネットのオタ仲間が中高生年齢のバトルアニメの集団ヒーローたちに関心が移る中、次第に彼女たちとの落差を感じるようになる。

その一方で、乙女ゲームのヒロメンたちの中に一人は居る弟系。


そんなキャラを自分で描いてみようと思い立った事は何度もある。

だが、どうしても不自然になる。顔はともかく全身となると・・・。



作画コンピュータで、刈部がキャラの描き方を説明した時、これなら自分にも描けそうだと思った。

顔なら、ある程度描ける。それをもっと可愛く。

だが、可愛いって何だろう。顔を丸く、目を大きく、口と鼻を小さく、そして頭身を二頭身とか三頭身とかに近く・・・。

極端だとリアルさが失われる。可愛さってリアルと逆なのかな?



仲間たちと学食でお昼を食べる。

泉野も最初は女子どうしでお昼を食べるのが普通・・・という認識はあった。

だが、高校の時に上位ランクの女子にいじめられて引き籠った時代の後遺症は抜けなかった。

それがアルバイトで芝田達と一緒になり、やがて作画コンピュータの構想が始まる。それを話しながら昼食を食べる事が普通になる。


そんな学食での昼食中・・・。

「あのさ、可愛いってどういう事だと思う?」と泉野は仲間たちに訊ねる。

「泉野さんの反対」と榊。

「水沢さんみたいな」と刈部。


泉野は「そういうのはいらないから。例えば作画コンピュータでキャラデザする時、可愛いキャラにするのに、どうする?」

「顔を丸く、目を大きく、口と鼻を小さく、頭身を二頭身とか三頭身とかに近く・・・なんじゃね?」と小島。

「それが極端だとリアルさが失われるのよね。可愛さってリアルと逆なの?」と泉野。

すると芝田が「じゃなくて、赤ん坊に近いって事だろ」

「幼女可愛いよね」と小島。

「萌えだよね」と刈部。


「そういうのは要らないから。赤ん坊って事は、母性本能って事? 男は?」と泉野。

「父性本能って事になるのか?」と芝田。

「母性は自分のお腹を痛めて産んだから・・・だよね?」と泉野。

「とは限らないって芦沼さんが言ってたけど」と園田。


「母親のアレは出産の時にオキシトシンって脳内物質が出る。けど父親も嫁の妊娠を知るとオキシトシンが出るんだよ。元々人間って集団で生きる動物で、集団の中の幼児はみんなで守る本能がある」と芝田。

「保護を求めている存在であるって事か。ペットが可愛いってのも世話をしないと死んじゃう存在だからなんだよね」と榊。



「けど、男はロリに性欲を向けるんだよね?」と泉野。

「あれは愛情が歪んでそうなったって話なんじゃないのかな?」と園田。

「最近はアニメで女のロリコンとか居るよね?」と小島。

「あれは女なら幼女とのベタベタが社会的に容認されるから、幼女を愛でる女に感情移入って事なんじゃ・・・」と芝田。

「まあ、雲の上のモテイケメンに感情移入するハーレム系と同じ構造だね」と刈部。

「ハーレム系がスピンアウトして萌え百合物になったり」と榊。

「何か歪んでね?」と小島。


「まあ、泉野さんの対象はショタだもんな。その意味では健全だよ」と芝田。

「そういうの健全って言うのか?」と刈部。

「ってか、あんたらに言われても嬉しくないんだけど」と泉野。

「いや、これで女のロリコンだったらレズ+ペドの二重奏だぜ」と芝田。


「最近はホモやレズをそういう目で見ちゃアウトだと」と園田。

「そういう政治的正当性は他所でやれって話なんだが」と芝田。

「ってか泉野さんって女だっけ?」と刈部。

「私を何だと思ってるのよ」と泉野。

「いや、泉野さんは生物学的には女だよ」と榊。

「生物学的って何よ」と泉野。



そんな冗談めいた話が一区切りついた所で、泉野は言った。

「ねぇ、可愛いキャラをデザインするAIって出来ないかなぁ」

「AIかぁ」と仲間たち。

「色々と使えそうだよね?」と芝田。

「アニメーションを自然な動きにするAIとか」と刈部。

「昔のフル3Dアニメとか見ると、やたら動きが不自然なのな」と小島。

「だよな。表情にしても歩き方にしても、何かわざとらしいというか」と榊。

「それでキャラデザ・・・」と泉野。

「やってみればいいじゃん。似たような研究ってあると思うよ」と榊が言う。

泉野は「AIってどうやるんだっけ?」


「やる事って基本は機械学習だろ? そのためのツールとライブラリ漁って」と小島が言った。

そして榊が「キャラデザってんなら画像認識系って事になるよね? 可愛いと思うキャラの画像を集めて、目とか口鼻とか顔の輪郭とかの特徴を認識させて、パターン化してモデルを作成させるのさ」



泉野は教授に相談してアドバイスを受ける。

助手や院生に、研究室にあるツールを教えてもらう。

そして、自分のパソコンのフォルダーにある大量のショタ画像を・・・。



「それで、可愛いキャラを、って問題を出して、出た回答がこれかぁ」

研究室備え付けのパソコンを眺める芝田たちが、微妙な反応を示す。

AIがデザインしたというショタキャラを泉野が研究室に持ち込んだのだ。

それについて、仲間たちであれこれ言う。

そして「何かピンと来ないのよね」と泉野。


榊が言った。

「まあ、人工知能って、往々にして変な答えが出るからね。いろんな会話パターン集めて会話するAI作ったら、差別丸出しの会話始めたとか」


芝田が言った。

「あのさ、可愛いって一言で言っても、可愛いの中身って色々だよね? 類型別にやってみたらどう?」

「やたら元気な可愛さとか、おしなしいタイプとか、クールな幼女とか」と園田。

「やたら懐いて来る子とか」と小島。

「変に一生懸命に尽くすとか」と小宮。

「すぐ手首切るって脅すとか」と榊。

「一緒に死んでよとか言って刃物持って迫るとか」と刈部。

「話がどんどん怖い方に行ってないか?」と芝田。


するとと園田が「逆に、そういうのの共通項を探すってのもありじゃない?」

「だったら一つ、決定的な共通項がある」と芝田。

泉野は「何よ」と、彼等の次の言葉を予想して身構える。

男子たちが口を揃えて言った。

「泉野さんと対極って」

「喧嘩売ってる?」と泉野は口を尖らせた。

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