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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
217/343

第217話 真田さんミーツボーイ

真田はサークルでの人間関係で悩んでいた。

留学生のモニカは同国人との付き合いを優先している。そのため真田は、唯一の同学年である中川を気にするようになった。

その週の金曜日、真田は同期の仲間を誘った。

「明日の土曜日、三人で遊びに行かない?」

「私は祖国のみんなと予定があります」とモニカ。

「モニカさんは、そうよね。中川君は?」と真田。

「ごめん。渋谷さんと約束があるんだ」と中川。

真田が「そうなのね。中川君と渋谷さんって?・・・」と尋ねると、中川は・・・。

「一応、俺、あの人の彼氏だから」



翌週、真田は部室で根本に「先輩たちってみんな、誰かしらと付き合ってるんですよね?」

「そうね。村上先輩は中条さんの彼氏だし、芝田先輩は秋葉さんの彼氏。桜木先輩は」と根本が言いかける。

戸田が口を挟んで「駄目よ。彼は私のだから」

真田は「彼女の居ない人って居ないですよね? 聞いてました。ここってカップル率が高いって」

「鈴木君と真鍋君は居ないわよ」と戸田が言った。


真田は思った。

(鈴木先輩って根本さんの彼氏じゃ無かったんだ)



ラウンジで真田が根本を見つけて声をかける。

「根本先輩」

「何かしら」と根本。

「真鍋先輩ってどんな人ですか?」と真田が訊ねる。

「エッチだけどヘタレね。けど、根はいい人で、渋谷さんの事が好きみたい。けど、中川君との関係知ってて、一緒に受験の面倒見てあげてたの。他の女性の誘いを断ったって話もあるわよ」と根本が解説。

「それじゃ、鈴木先輩は?」と真田。

「いい人よ。元々漫画を描くんだけど、ストーリー作りが残念で、みんなの小説を漫画にしてるの。桜木先輩の小説を漫画にした事で、先輩と仲良くなって、私が先輩の事を好きだって事で仲取り持ってくれたんだけど・・・まさか彼に興味が?」と、解説しながら警戒心を匂わせる根本。

「そういう訳では・・・」と真田は怯えた表情で答え、そして思った。

(何か不味かったかな?)



その日の夕方、みんなが帰宅する時間に真田は鈴木に言った。  

「鈴木先輩」

「何かな?」と鈴木。

「このあたりで飲みに行けるいいお店って、あります?」と真田が訊ねる。

「そうだな、"甚兵衛"とか"なおみ"とか」と鈴木。

「一人で入るのって敷居が高いんで、連れて行ってくれません?」と真田。

「いいよ」と鈴木。


その時、根本が言った。

「鈴木君、この後、戸田さんと桜木先輩の部屋に行くんじゃなかった?」

鈴木は「そうだったね。真田さん、ごめんね」



根本ら四人が部屋を出る。廊下で彼らが話す声が聞こえる。

「まさかあの子、本当に鈴木君に興味があるのかな?」と根本の声。

「別に鈴木君があんたのって訳じゃ・・・」と戸田の声。

「そうですけど、新人なんだから、粉つけるんなら、もう少しここの人間関係把握してからじゃないですか?」と話す根本の声に真田は棘を感じた。


真田は思った。

(駄目だったかな? そういえば根本先輩も彼氏が居ないんだよね。桜木先輩が好きみたいだけど戸田先輩が居るし、それで鈴木先輩を控えとしてキープしてるつもりなのかな?)


その次の日の夕方、みんなが帰宅する時間に真田は真鍋に言った。

「真鍋先輩」

「何かな?」と真鍋。

「このあたりで飲みに行けるいいお店って、あります?」と真田が訊ねる。

「そうだな、"甚兵衛"とか"なおみ"とか」と真鍋。

「一人で入るのって敷居が高いんで、連れて行ってくれません?」と真田。

「いいよ」と真鍋。


その時、渋谷が言った。

「真鍋君、今日、授業が終わったら一緒に中川君の家でお泊りだったよね?」

真鍋は「そうだったね、真田さん、ごめんね」

三人で連れ立って帰宅する後ろ姿を見て、真田は思った。

(何なんだろう? ここの人達)



真田が学食で村上たちを見かける。

中条が芝田の膝に乗り、村上に甘える。秋葉がふざけて村上と芝田にじゃれる。

佐藤と佐竹が来て彼らの隣の席に座る。芦沼が来て隣の席に座る。

中条が佐藤と佐竹に甘える。芦沼が村上と芝田にじゃれる。


みんなが帰宅する時間に真田は住田に言った。

「住田先輩」

「何かな?」と住田。

「先輩はヤリチンなんですよね?」と真田が訊ねる。

「俺に興味ある?」と住田。

「無いです」と真田はきつぱり。

「はっきり言うね?」と住田は笑う。

「それで、村上先輩たちって、どんな人たちなんですか?」と真田。

「あいつらは四人で付き合ってるみたいなものだからな」と住田。

「体の関係とか含めて、ですか?」と真田と怪訝な顔。

「あいつ等、そういうの、隠そうとしないからな」と住田。

「芦沼先輩とかも? いろんな男性を誘ってるって聞きましたけど」と真田。

住田は「村上とは同じ研究室に居るし、かなり仲はいいよ。そっち方面でもね」



その日、真田はラウンジで村上たちが四人でいる所に出くわした。

「真田さん、空き時間?」と秋葉が声をかけた。

「先輩たちも、ですか? ちょっとお話が・・・」と真田。


鈴木・真鍋と根本・渋谷の関係を聞かれて、村上が答えた。

「なるほどね。鈴木と根本さん、真鍋と渋谷さん、それぞれ付き合ってる訳じゃないけど、仲いいんだよね」

「そうなんですよね。私が入る隙間、無いみたいで。先輩たちは四人で仲良しなんですね?」と真田。

「いろいろあったからね」と村上。

真田は「中条さんは村上先輩とつき合ってるんですよね?」


中条は語った。

「私、以前は人と話せなくて、友達居なかったの。だけど真言君と拓真君が仲良くしてくれて、それで人と関われるようになったの」

「里子は俺の妹みたいなものさ」と芝田がドヤ顔。

「自称兄だけどな」と村上。

真田は「妹ゲームマニアなんですね?」と真顔で言う。

「みんなそういう目で見るのは何でだ?」と芝田は困り顔。


中条は「私、小さいころ、大好きだったお兄ちゃんが死んで、それがショックで殻に閉じ籠っちゃったんだよね。だからその代わりに・・・って」

「そうだったんですか。ごめんなさい。それで秋葉さんは?」と真田。

「私はこの三人に後から割り込んだの」と秋葉。



村上は言った。

「それで真田さん、もしかして、鈴木か真鍋のどっちかと付き合いたいとか?」

「サークルに出会いを求めるって、間違ってませんよね?」と真田。

「よく聞く話ではあるけど、別にそれに拘らなくても・・・」


そう問う芝田に対して、真田は語った。

「高校の時はSNSで相手を探したんです。仲良くなって写真データとか送って貰って、すごくかっこいい人で。けど、好きになっても会えなくて。そのうち、会っても実は写真は本人のじゃないかも? とか、変にヤリチンで騙されてるかも?・・・とか疑心暗鬼になっちゃって。それで、別の人と仲良くなって、けどその人も実は騙すつもりじゃないのか?、とか」

「ネットだと、どういう人か解らないからね。ひどい目に遭ってもそれっきりだから、騙そうと思えばいくらでも騙せちゃう」と秋葉。



そして村上が「高校の時の同級生で、SNSで知り合った女と付き合った奴が居るんだよ。その女に、縋って来る男を弄んでやってるとか、ブログに書かれてさ」と話す。

「どんな人ですか?」と真田。

「軽いタイプ・・・だよな?」と芝田。


真田は軽蔑感丸出しで言った。

「馬鹿ですよね?、そいつ。エッチな事したいだけってのを見透かされて」

すると中条が「私、一時期付き合ってた事のある人なの。その後付き合った恋人が引っ越して、私、助けてあげたくなっちゃって」

「一時期って?」と真田。

「一か月くらいで別れたんだけど」と中条。

「まさか体の関係とか無かったですよね?」と真田。

「あったよ」と、中条は笑顔で答えた。


それを聞くて、真田は感情を露わにして「そいつ最低じゃないですか。男の屑ですよ。どうせ、他の彼女が出来て捨てられたんじゃないですか?」

すると中条は「その新しい彼女って、失恋して引き籠っちゃった人でね。彼が学級委員で、毎日通って立ち直らせたの。それで何でそこまてするんだ?・・・って聞かれて、お前が好きだからって言っちゃって。見捨てられなかったのよね」

「何かいい人っぽい話なんですけど」と戸惑い顔の真田。

中条は「私、今でもその人の事、大好きだよ」



それを聞いて、真田はおろおろ顔で中条に「ご・・・ごめんなさい」

「気にしなくていいから」と中条。

真田は涙目で「私、何も知らなくて、酷い事いっぱい言っちゃって、私なんて生きてる価値無いですよね?」

中条もおろおろ顔で「どうしよう、真言君。何だか大変な事になっちゃった」


村上は溜息をついて「真田さん、反省し過ぎだよ。知らないで誤解してすれ違ってなんて、人生山ほどあるよ」

「けど、中条さんが好きだった人に、あんなひどい事」と真田。

「里子ちゃんって、こういう人だから、嫌な事言われたとか思ってないよ」と村上。

真田は「そうでしょうか? 村上先輩はその人の事・・・」

「あいつはいい奴だし、それに、誰かを助けたいって思うのはいい事だよ。あいつも里子ちゃんもね。俺はそういう里子ちゃんだから好きなんだ」と村上は笑って言った。


黙って聞いていた芝田は「村上、話が途中から、のろけになってるぞ」

「これは芝田の話でもあるだろーがよ」と村上。

中条は「真言君も拓真君も大好き」

「里子ちゃん、私は?」と秋葉。

「睦月さんも大好き。レズじゃないけど」と中条。



その後、文学部の廊下で真田は中条を見かけて声をかけた。

「中条先輩は村上さんを独占したいとか、思わないんですか?」と真田。

「真言君は真言君のものだもの」と中条。

「先輩だけのものになってくれないって、寂しくありません?」と真田。


中条は言った。

「真言君は私のことを真言君自身の頭で考えてくれるもの。それって、真言君が彼自身ものだからこそ出来る事じゃないかな?」

「けど、村上さんは秋葉さんや芦沼さんともエッチしてるんですよね?」

そう問う真田に、中条はさらに語った。

「一度、真言君、私と二人っきりになってくれた事があったの。睦月さんが拓真君と付き合うからって、私たちと距離置いて。二人っきりも楽しかったけど、拓真君と三人で居た時も楽しくて、その後、睦月さんと四人いる居ると、もっと楽しくて、それでね」

「芦沼さんは?」と真田。

「あの人は真言君を独占させろ、なんて言わないから」と中条。



文芸部室で村上たち四人、真田について話した。

「それで、要するに真田さん、近くに居る人と付き合いたい訳だよな?」と芝田。

「けど、ここがカップル率が高いって聞いてたって言ってた。何でわざわざ、空いてる人が少ない所に?」と中条。

「というより、自然と付き合える雰囲気を期待したんじゃないのかな?」と村上。


「どうする?」と芝田。

「要は、本人どうしが"その気"になるか・・・でしょ?」と秋葉。

「だったら、あそこだろ」と村上。



村上と中条が真田と真鍋を連れて農学部棟へ。

「どこに行くんですか?」と真鍋。

「来れば解る」と村上。

「勿体ぶらないで下さいよ」と真鍋。

「勿体ぶるも何も、行き先はお前のホームグラウンドだ」と村上。


畜産部門の繁殖棟に着く。

村上は笑って真鍋に行った。

「女の子が来たなら、先ず、こういう所を見せるのがセオリーだろ?」


兎に子豚に子ヤギに・・・。生後まもなくから数か月まで。

様々な小さい生き物を見て、真田は目を輝かせて言った。

「可愛い」


「家畜の子供を見るのは初めて?」と真鍋は真田に・・・。

「テレビでは見た事あるけど、こんなに小さいんだ」と真田。

「うちは酪農家だから見慣れてるけど」と真鍋。

「そうなんですか?」と真田。

「子豚はこんなふうに抱くんだよ」と言いながら、真鍋は子豚を抱いてみせる。

真田は子ヤギを撫でながら「こっちは子ヤギですか? もふもふだぁ」


そんな後輩たちの様子を見ながら、中条は顔をほころばせて村上の手を握る。そして言った。

「これなら大丈夫だね?」



その後、真鍋は部室に来て、深刻そうな顔で村上に言った。

「あの、村上先輩」

「どうした? 真鍋」と村上。

「何だかあれから真田さんに避けられてるみたいで」と心配顔の真鍋。


「変な事したのか?」と村上。

真鍋は「してませんよ。あれからすごく会話が盛り上がって、何か懐かれたかな?・・・と思ったら」

「会話って、どんな話をしたんだ?」と隣に居た芝田が問う。

真鍋は「どんなって、畜産の話ですよ。家畜の餌とか病気とか繁殖とか」


「まさか種付けとか交尾とか?」と村上。

「駄目だったでしようか?」と真鍋。

「それ下ネタだから。普通の女子は引くわ」と村上はあきれ顔で言った。

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