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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
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第194話 二十歳の芝田君

10月に芝田の誕生日がある。盛大に祝おう、と仲間たちが盛り上がる中・・・。

「やらなくていいよ、面倒くさい」と芝田本人は抵抗した。


対策を相談する仲間たち。

「俺の時、誕生日を口実に散々いじられたよなぁ」と村上が笑った。

「で、今度は自分がいじる番だと、真言君が手ぐすね引いてる訳よね」と秋葉も笑う。

「ドラマの倍沢直紀さんも言ってるものね、倍返しって・・・」と戸田が笑う。

すると村上が「ってか俺の時、一番先頭に立っていじってたのは睦月さんだったよね?」

「そういうの、止めようよ」と中条。

村上は「俺らが止めたって言って芝田が信用するかな?」



村上と中条が芝田を見つけて誕生日について話す。

「拓真君、誕生日を口実に拓真君をいじったりしないから」と中条。

すると芝田は「俺は単に、年取ったってだけの誕生日が空しいから止めようと言ってるだけなんだが、もしかして実は睦月とか、俺をいじる気満々だったりする?」

「だから、そういう事はしないと」と村上。

「そう本人が言ってる訳だろ? 言葉の裏を読めって話じゃ・・・」と芝田。



村上と中条は秋葉に結果報告。

「どうやら藪蛇だったらしい」と村上。

「拓真君が信頼していて、絶対いう事を聞く人に説得して貰うってのはどうかな?」と中条。

「信頼していて、絶対いう事を聞く人って誰?」と秋葉。


村上が「やっぱり彼女でしょ」

二人、秋葉を見る。

「一番駄目だと思う」と村上と中条が口を揃える。

秋葉が「どういう意味よ」と口を尖らす。


すると中条が「やっぱり長い付き合いの親友とか」

二人、村上を見る。

「駄目だよね」と秋葉と中条が口を揃える。

「家族はどうかな? お兄さんなら絶対信用するかと・・・」と村上が提案した。



秋葉と中条で芝田を遊びに連れ出している間、村上が芝田家に出向いた。

芝田の兄の哲真とその恋人の早苗に相談事があると連絡したのだ。


村上が「友達として誕生日を祝ってあげたいんですけど、本人が遠慮して拒否するんですよ」と切り出す。

「なるほどね、そういえば、あいつの誕生日とか、やった事無いな」と芝田兄。

「きっと寂しかったと思うわよ」と市川。

「村上君も祝ってもらった事無いんだろ? 寂しかったかい?」と芝田兄。

「いや、全然。そんな面倒くさいイベント・・・」

芝田兄カップルの疑問の視線に気付いて慌てる村上。

「いや、心の底では誰かに祝って貰えたらいいなぁ・・・なんて思わなくも無かったような気がしないでも無いというか、あは、あはははは」


芝田兄が村上に「直近で誰かの誕生日って、あった?」と尋ねる。

「俺がやってもらいました」と村上。

「どんな事をして貰ったの?」と芝田兄。

村上は「両手拘束されてケーキをあーんとか、小芝居で妻と愛人の修羅場とか」

「思いっきりいじられてるじゃん」と芝田兄が笑う。

「秋葉さんなら、やりそう」と市川も笑う。

「拓真もそういう事をされると警戒してる訳か」と芝田兄。

村上は「俺、友達として信用されてないんでしょうか?」

「普通、警戒されると思うよ」と芝田兄。



そんな村上を見て市川は「ねぇ、哲真君、私たちで祝ってあげない?」と芝田兄に言う。

「家族だものな。君等も参加するかい?」と芝田兄。

村上は「是非、お願いします」


「ところで、誕生日で何をするんだい?」と芝田兄が村上に訊ねる。

「お兄さんは市川さんの誕生日とか、どうしてます?」と村上。

「ホテルに行ってディナーを食べて、プレゼントにアクセサリーを・・・とか」と芝田兄。

「まあ、大人カップルはそうですよね」と村上。

「それで、君等の誕生日は?」と芝田兄。

「村上君と拓真君が夜のホテルで向かい合ってディナーとか?」と市川。

村上は「怖い図想像しないで下さいよ。ケーキに蝋燭立ててハッピーバースデー歌って、プレゼント渡して樅の木を飾って夜は枕元に靴下を・・・って、あれ?」

「それはクリスマスだから」と笑う市川と芝田兄。



村上は秋葉と中条に、芝田の兄が芝田家で誕生日を主催すると伝る。

芝田もその話を聞いて納得した。


当日、秋葉は芝田家に赴き、市川と一緒にご馳走作り。芝田兄はケーキと七面鳥を買ってくると、部屋を飾り付ける。

準備ができるまで、村上と中条で芝田を街に連れ出してゲームセンターで遊んだ。



打ち合わせの時間となり、芝田達三人が家に戻る。


壁に横一列に紙を貼って「芝田拓真君お誕生日おめでとう」と大きく書かれている。

芝田はそれを見て「小学校の学級会でやる誕生日のノリだな。飾り付けをやったのは・・・兄貴かよ」

「けど、真言君の誕生日も、こんなだったよ」と秋葉。

「あれは誰がやったんだっけ?」と芝田。

「拓真君だったよね?」と中条。


「このツリーの飾り付けは自信作だぞ」と芝田兄。

「クリスマスツリーじゃん」と芝田。


秋葉と市川が協力しただけあって、ご馳走は豪華だ。

市川が「特にこの七面鳥は凄いでしょ?」

村上はそれを見て「市川さん、問題は無いと思いますが一応言いますと、七面鳥もクリスマスですから」

「そうなの?」と市川。



ケーキに蝋燭を20本。芝田が吹き消し、みんなでハッピーバースデーを歌う。


村上が「それじゃ、プレゼントタイムだな」

芝田は「プレゼントってまさか」

秋葉・村上・中条がそれぞれ包装された小箱を差し出す。

「マグカップだよな? これ」と芝田。

楽しそうに頷く三人を見て、芝田は残念そうな顔をする。


すると芝田兄が「拓真、俺達からもプレゼントだ」

芝田兄と市川が包装された小箱を差し出す。


「兄貴も早苗さんもマグカップかよ」と芝田。

すると芝田兄は「男にプレゼントするのにアクセサリーは無いと思って村上君に聞いたんだよ。そしたらマグカップが定番だって」

「村上、お前なぁ」と芝田。



シャンパンを開け、六人でケーキを食べ、ご馳走を食べてわいわいやる。


シャンパンが無くなるとビールを開け、ウイスキーを開け、酔った芝田兄はやたら弟の頭を撫でる。

そのうち弟に抱き付き、村上に抱き付き、秋葉に、中条に抱き付く。そして市川は彼の後頭部をハリセンで思い切り叩いた。

市川は笑って村上に言った。

「哲真君って、宴会で酔うと抱き付き魔になるのよね。男女かまわずだから、本気で怒る気にれなくてね」



宴が終わり、芝田とその仲間たちは、畳敷の客間で四人で寝た。

酔った芝田兄は男手二人でベットに担ぎ込まれる。

真夜中、市川の横で酔いの醒めた哲真は、ぽつりと言った。

「家族って、いいな」

「私たちも、ちゃんとした家族にならない?」と市川が言う。

「そうだな」と芝田兄は言って、市川の頬に手を当てた。

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