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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
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第183話 後輩たちの夏

七月、部室で村上たち四人がわいわいやっている時、秋葉は仲間たちに、久しぶりに温泉巡りをしようと言い出した。


「夏だし、海岸の温泉宿って、どうかしら」と秋葉。

「そうだね」と深く考えず仲間たちが同意。

「それで、瀬場温泉はどうかな、って」と秋葉。

海岸に沿って高くはないが山が連なる。火山性の地質で、陸地側にも山岳神を祀る神社とその参拝客向けの温泉がある。

海岸側にも温泉があって、それが瀬場温泉だ。

「けど、今月は出費がなぁ」と芝田が難色。

秋葉は「彼氏なんだから奢ってよ。バイトやったじゃない?」

「作画パソコン開発の機材費に消えたぞ」と芝田。



そんな中で真鍋が部室に入って来て、彼らを見つけて言った。

「先輩、相談があるんですが」


「金なら貸さないぞ」と芝田が事もなげに言う。

「そうじゃなくて、異性と仲良くするにはどうしたらいいんでしょうか?」と真鍋。

「もしかして渋谷さん? 彼女、彼氏が居るぞ」と芝田。

真鍋は言った。

「付き合うとかいいから仲良くなって女子との接し方を学べって、先輩たち言ったじゃないですか。それで、それなりに仲良くなって、中川を紹介されたんですが、あいつってそれなりにいい奴で、応援したいと思うんですよ。けど俺って、あいつにとって先輩でしょ? 何だか後輩の彼女取ろうとしてるみたいに思えて嫌なんですよね」


「真鍋自身はどうしたい?」と村上。

「先輩達って村上さんと芝田さんで中条さんの面倒見てあげてたんですよね?」と真鍋。

「同じように中川と二人で渋谷さんの面倒見てあげたいと?」と芝田。

真鍋は「じゃなくて、渋谷さんと一緒に中川君の面倒見てあげたいな・・・って。奴、もうすぐここを受験ですから」

「渋谷さん自体をどう思ってるんだ?」と村上が重ねて問う。

「いい人だと思いますよ。話題も合うし可愛いし、彼女にしたい訳じゃないけど、先輩達みたいに大勢でわいわいって楽しそうだな・・・って」と真鍋。

「まあ、そういうのも含めて、理解し合うしか無いわな」と芝田。



真鍋が部室を出た後、渋谷が部室に入って来て、彼らを見つけて言った。

「先輩、相談があるんですが、異性と仲良くするにはどうしたらいいでしょうか?」


「中川君とうまくいってないの?」と秋葉。

「じゃなくて、真鍋君の事なんです」と渋谷。

すると秋葉が「執着の分散戦略ってやつ?」

「何ですか? それ」と渋谷。

「彼氏が一人だと別れた時のダメージが大きいから、二人用意しておこう・・・って話だそうよ」と秋葉が解説。

渋谷は言った。

「そういう訳じゃないんですけど、中川君紹介して、それなりに三人仲良くなったんですよね。一緒に農業会社創れたらいいな、って。けど最近、距離を感じるというか、何だか真鍋君、中川君に遠慮してるみたいで」

「もっと仲良くなりたいと?」と芝田。

「先輩達って村上さんと芝田さんで中条さんの面倒見てあげてたんですよね?」と渋谷。

「同じように中川と真鍋に二人で面倒見て欲しいと?」と村上。

渋谷は「じゃなくて、真鍋君と一緒に中川君の面倒見てあげたいな・・・って。彼、もうすぐここを受験するけど、学部も違うし、私一人でアドバイスって言っても不安だから」


「経済学部の受験なら私がアドバイスするわよ」と秋葉が言った。

「それは鈴木に頼んだ方がいいと思うよ」と村上が口を挟む。

「私が冗談で何かするとでも?」と秋葉が口を尖らす。

「何かする気満々・・・って顔してるんだが」と村上が笑う。

「受験自体は鈴木君に見て貰ってるんですけど、真鍋君ってけっこういい人だし、先輩達みたいに大勢でわいわいって楽しそうだな・・・って」と渋谷。



渋谷が部室を出た後、根本が部室に入って来て、彼らを見つけて言った。

「先輩、相談があるんですが、異性と仲良くするにはどうしたらいいでしょうか?」

「桜木の事? 根本さんがあいつを好きなのは奴も知ってると思うが」と芝田。

根本は言った。

「そうなんですけど、戸田さんが怖いんです。けど、鈴木君が仲立ちになってくれて、一緒に遊べて楽しいんですよ。けど鈴木君、すぐ遠慮して桜木さんとくっつけようとするから、戸田さんの牽制オーラが気になって」

「で、どうしたい?」と村上。


「先輩達って村上さんと芝田さんで中条さんの面倒見てあげてたんですよね?」と根本。

「同じように戸田さんと二人で桜木とイチャラブしたいと? けど鈴木は?」と芝田。

「そこなんですけど、先輩達って四人で付き合ってるんですよね? そんなふうに大勢でわいわいって楽しそうだな・・・って」と根本。

「それに鈴木君を利用したいと?」と秋葉が言って笑う。

すると根本は「そんなふうに聞こえちゃいますよね? けど鈴木君ってけっこういい人なんです。彼とも仲良くしたいです」



根本が部室を出た後、鈴木が部室に入って来て、彼らを見つけて言った。

「先輩、相談があるんですが、異性と仲良くするにはどうしたらいいでしょうか?」


「根本さんの事だね?」と村上。

「そうなんですけど、彼女が桜木先輩と仲良くなるには、どうしたらいいかな・・・って」と鈴木。

「鈴木自身は根本さんと?」と芝田。

「仲良くなりたいですよ。けど彼女、桜木先輩が好きじゃないですか」と鈴木。

「だったら桜木を説得したらいいだけなんじゃ?」と村上。


鈴木は言った。

「戸田さんと別れろと? あの人が泣くのも嫌ですよ。けど、先輩達って村上さんと芝田さんで中条さんの面倒見てあげてたんですよね?」

「同じように根本さんと戸田さんで桜木君とでイチャラブできたらいいと?」と秋葉。

「どうしたらそうなれますか?」と鈴木。

村上が「お前自身の立ち位置はどうなるんだよ?」

「そんなのどうでもいいです」と鈴木。


「お前は根本さんの事をどう思ってるんだ?」と芝田。

鈴木は「好きですよ。性格はあんなだけど、だから放っておけないというか」

それに対して秋葉が言った。

「私は、後からこの三人に割り込んだのよ。そうなる前に拓真君の彼女になってね」



根本が部室を出た後、四人は溜息をついた。

「結局、みんな同じような事を考えてるんだよね?」と秋葉。

「距離を詰められるかどうか・・・って訳か」と村上。


「あいつら、温泉巡りに連れて行く?」と芝田が提案。

「奴らの経済的余裕はどうなんだ?」と村上。

「それ以前に俺達自身の懐の問題もあるが」と芝田。

「あそこはキャンプ場もあるけど、テントでってのはどうかな?」と秋葉。

「テントの方が距離近付けるかも」と村上。

「けど睦月さんは温泉には入らなくていいの?」と中条。

秋葉は言った。

「日帰り温泉があるわ。水着で入る混浴のがね」

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