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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
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第150話 嵐の大学祭

大学祭での秋葉たち経済学部と芝田たち工学部のコラボイベント計画。


宣伝用のポスターが二種類作成された。八上ライブのポスターとロボ実演のポスターだ。

一方は、ミリアネスのコスプレ姿の八上の背後にやや小さめにハウンドのアニメ絵。

もう一方は、ハウンドに真似て外装したロボの手前に小さめの柴野あかりのアニメ絵。

構図を似せて作ってあるのは一目瞭然だが、コラボを匂わせる文章は無い。


秋葉は「コラボやりますって言えばいいのに」

「それは避けた方がいいんだよ」と、いつの間にか参謀役を担わされている村上が言った。

「何で?」と秋葉。

「今、向こうは自分達が圧倒的に有利だと安心している。アイドルとしての格の違いがあるからね。けど、こっちが人気アニメとコラボを組んでいると知ったら、警戒して対策とって来る可能性がある。だから、なるべくコラボだと表に出さないに越した事は無いのさ」と村上。

「かつ、お客さんにはコラボ的な事をやるんだって印象を与えようって訳ね?」と秋葉。

「構図の同じポスターを並べたのを見れば一目瞭然だからね」と村上。

秋葉は「けど対策って・・・」

「それが解らないから怖いんだよ」と村上。



イベントの場所はどちらもグランドだ。

ロボットの実演が10:00~10:30。

その後、八上ライブが10:30~11:30。そしてこれは体育館で行うツインピンクスのライブと同じ時間だ。

その後でサッカー教室。内海の会社によるグッズの即売会も行われる。



コンピーター研で動作伝達系のプログラムが完成。ロボットの制御システムに組み込まれる。

メカトロニクス研がロボットを整備し、あちこち改造も加えた。

工業デザイン研に依頼した外装は既に届いている。


ロボットの不具合をチェックした後、芝田が乗り込んで試運転。

パイロットの基本姿勢と同じ姿勢で台座に座るロボットが、芝田の足の動きに合わせて、ゆっくり立ち上がる。野次馬達の歓声が上がった。

自力歩行で倉庫から外に出る。様々な動作を試す。



イベントとしての実演会の構成も進む。

「ミリアネスのイベントって事なら、戦闘シーンの再現とか欲しいね」と刈部が言った。

「シナリオが要るな」と芝田。

「司会は誰にする?」とメカトロニクス研の三年生。

「俺は嫌だ。去年大恥かいたからな」とコンピュータ研の宍戸助手が言った。

「漫才研に友達が居る。奴に頼んでみようか?」とコンピュータ研の三年生。

「けど宍戸さん。システムの説明くらいはやって下さいよ」と別の三年生。

「パイロットが自由に動かせるってアピールしたいですね」と榊が言った。



八上ライブ側でも構成が進む。

吉江が先輩とともに来校。コスプレについて話し合うためだ。

八上と大塚・田畑も来校し、彼らを含めて打ち合わせとなる。


「どんなコスプレにしますか?」と斐川助手が仕切る。

「司会の人も男性クルーのコスプレやらせたいですね」と大塚。

「八上さんは?」

八上はノリノリで「ちょっと迷ってて、パイロットスーツとか、宇宙船クルーとしての制服とか、あと敵方の女幹部の衣装は個人的に好きなんです」

「あの、ぶわっとした奴ですか?」

「ヒロインになり切るなら、パイロットスーツでしょうけどね」と吉江の先輩。

「けどこれ、あくまで八上美園ライブですから」と大塚。


すると秋葉が「だったら全部着ません? 昔の魔法少女物のアニメで、主人公がアイドルになるのがあって、コンサートで歌ってる最中に魔法を使って一瞬で衣装を変えるってシーンがあって、ああいうのをやれたら・・・って」

八上は「早着替えは得意だけど、一瞬で・・・って」

「脱ぐだけなら可能じゃないですかね? その下に次のを着込んで・・・って事で」と吉江が言う。

「だとすると、一番下は体にぴったりしたパイロットスーツ。その上に宇宙船クルーの軍服。その上に女幹部のぶわっとした外装服って事なら」と吉江の先輩。

「後は一瞬で脱げる服の構造ですね?」と吉江。



吉江とその先輩がコスプレ服の仕組みを考える。

「これなら万全ですね」と、仕上がった仕様を見て吉江は楽しそう。


だが彼女の先輩は難しい顔を見せて言った。

「けど、この作りだと、実際の制作は私達には難しそう。あそこに頼めば可能だと思うけど・・・」

「あそこって?」と秋葉が聞く。

「坂井さんの就職先よ」と吉江が秋葉に耳打ち。

「春月テキスタイル?」と秋葉。


「なーんだ。そこなら須賀先生が女社長に頼めば、二つ返事じゃないですか」と斐川助手は笑った。斐川は女性だ

須賀教授は慌てて「斐川君、それは駄目だ」

斐川は笑って「大人は人脈を駆使してナンボですよ、先生」


経営技術研究室の斐川助手は春月テキスタイルの福原社長に電話し、協力の約束を取り付ける。

「全面的に協力してくれるそうです。それと先生に伝言。来週のデート、楽しみにしてる、だそうですよ」

秋葉は怪訝顔で「社長さんって、須賀先生とどんな関係なんですか?」と斐川助手に訊ねる。

「教授の不倫相手よ」と斐川。


須賀教授は頭を抱えて「あの女とは別れるって、妻と沙友里に約束したんだ」

「女性から簡単に逃げられるとか甘いですよ」と斐川は笑う。

「沙友里さんって?」と経済学部の寺田が聞く。

「先生の娘さん。まだ保育園児だけど。春月保育専門学校の隣に保育所があるでしょ? あそこに通ってるのよ」と斐川。


そんな話を脇で聞いていた村上は、話がまとまって作業が一段落した時、秋葉にそっと耳打ちした。

「睦月さん。その、教授の娘の沙友里ちゃんって子なんだが、心当たりがあるんだ。あまり可哀想な事にならなきゃいいんだが・・・」



ライブの構成が決まる。

八上のメインの持ち歌から始まり、アニソンメドレーがミリアネスのオープニング曲から始まって数曲の後にミリアネスのエンディング曲。

その後、コントを挟んで、持ち歌を数曲。

「曲と振り付けのデータを貰えますか?」とコンピュータ研の宍戸助手。

「いいですよ」と八上。

秋葉は「コントの台本、桜木君に頼めないかしら。彼の小説、けっこうギャグ要素も面白いのよね」



こうして準備は着々進んだ。

そして当日。


開会式後、まもなくロボットの実演が始まる。

ロボは正門の正面に基本姿勢で台座に座っていて、嫌でも目につく。そこからグランドの会場まで自力歩行で移動する予定だ。

会場では準備担当の学生達が忙しそうに作業しているが、泉野はロボット目当てに来た男子小学生に声かけまくり。

「男女逆だったら絶対職質される図だな」と工学部の学生達はあきれ顔で眺める。



時間が来て芝田が搭乗。メガホンのアナウンスが流れる。

「これから工学部による巨大ロボの実演を始めます。会場まで自力歩行で移動します。事故の無いよう、離れてご声援お願いします。では、機動兵器ハウンド、起動!」


制御機器を立ち上げ、センサーユニットを固定した芝田の両手両足の動きに合わせて、ロボは立ち上がる。

姿勢制御センサーが機体のバランスを維持しているため、動歩行はスムーズだ。芝田は歩きながらロボの腕を動かし、来客に手を振ってアピール。来客たちを引き連れるように会場に入る。


会場では大勢の子供たちが待ち構え、彼らの歓声が上がる。芝田は一旦降りてコスプレテントに入る。



メカトロニクス研の葉山教授の簡単な挨拶。漫才研究会所属の司会によりイベントが始まった。

武器の模型を構えて戦闘シーンを演じるロボの演技となる。


敵組織、黒幣団に掴まったヒロインあかりが一機のハウンドを奪って脱出・・・との設定だ。

司会が状況を解説し、録音されていた台詞と効果音がスピーカーから流れる

敵基地に見立てたコスプレテントから女性用パイロットスーツを着た柴野あかりに扮した芝田登場。


監禁場所から脱出して機動兵器を奪うシーンの小芝居を演じる芝田。

胸にパットを入れ、かつらをかぶり化粧をしているが、筋肉質な体形と股間のもっこりは隠せない。

子供たちは口々に「オカマだ」「オネエキャラだ」。

テントでは、笑いを堪えながら彼に化粧を施した吉江と待機していた八上が、腹を抱えている。


芝田は、ノリノリで小芝居の台本を書く村上の姿を思い出して、呟いた。

「村上の野郎!」



芝田が操縦席に乗り込んでハウンド起動。

パイロットがモニターで姿勢を確認しながら動かすので、あまり早い動作は出来ない。


「上空から飛行兵器二基」とアナウンス。

上に向けてライフル模型を構え、スピーカーから爆音が流れる。ライフル模型の銃口に仕込まれた閃光部品が爆音に合わせて光る。

「前方から機動兵器三基」とアナウンス。

前に向けてライフル模型を構えて爆音と閃光。

グランドの前方向こうでは、敵機に見立てた書割を倒し煙玉が炸裂。


「何かショボいな」と、小芝居を眺める榊。

「けど子供たち、めっちゃ喜んでるよ」と刈部。



戦闘シーンの後はハウンドが来客と、じゃんけんを実演。あっち向いてホイを実演。

さらに、来客の注文に応じた動作を演じてみせる。


司会との対談形式で宍戸助手がシステムの説明。

ロボットは頭を掻いたりガッツポーズをして見せたりして、子供たちの笑いを誘う。


そして操作系を説明。コクピットの前を開いて操作を実演する芝田。

彼が右腕を少し動かすと、ハウンドの右腕が大きく動く。左足を少し動かすと、ハウンドの左足が大きく動く。

そんな彼の柴野あかりコスプレ姿に、また子供たちは口々に「オカマだ」「オネエキャラだ」。

芝田は「これだからガキは嫌いだ」と呟いた。

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