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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
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第132話 理学部棟のヴィーナス

湯山研究室に出入りするようになった村上はその日、芦沼・関沢・笹尾・宮田とともに人工子宮実験の当番で実験室に居た。

ケース内の顕微鏡カメラで観察画像を撮影し、生存を確認、いくつかのデータを記録する。


「人工胎盤はまだ機能しているようだね」と村上。

「けど、だいぶ弱ってない?」と関沢。

「明日まで保つかしら」と芦沼が眠そうに声を上げる。

「芦沼さん、寝てないの?」と笹尾。

「人工子宮内の胎児の生存が続かない理由が何なのか、考えてたら眠れなくてね」と芦沼。

「とりあえずこの作業が終われば今日の分は終了だから」と宮田。


記録を取り終え、電子機器を自動監視モードに戻す。



「これで終わりだ。帰ってゆっくり休みなよ」と、宮田は芦沼に言った。

だが芦沼し「それより、疲労とか睡眠不足でハイになって性欲が高まる事って無い?」

「男はオカズ見ながら射精すれば終わりだから」と村上は笑う。

芦沼は「女はそういう訳にはいかないのよ。それに性欲の周期ってあってね」


四人の男子は嫌な予感がして帰り支度を急ぐ。そんな彼等に芦沼は言った。

「これからみんなでエッチしない?」

「いきなり?」と村上は前回の事を思い出す。

だが「ご要望とあれば」と関沢がその気になった。

「笹尾君は童貞でしょ?」と芦沼。

「貰ってくれるなら喜んで」と笹尾がその気になる。

「俺はパス。柏木さんが居るから」と宮田は辞退した。


村上も「俺も里子ちゃんが居るし」と辞退しようとしたが、芦沼は「今更何言ってるのよ村上君、この間やったばかりじゃない」

「そうなのか? 村上」と関沢。

「俺だって色々あるんだよ」と村上。

芦沼は「じゃ、決まりね」



芦沼は服を脱ぎ、作業机に体を横たえ、男子達を誘う。そして時間が流れた。

満足そうに眼を閉じる芦沼と三人の男子。

初体験の笹尾が芦沼の胸に顔を埋めて余韻に浸っている。


「芦沼さんって時々こうなっちゃうの?」と村上。

「女性って性欲に波があって、今そのピークなの。それと今回みたいな事が重なると、ね」と芦沼。

「28日周期で性ホルモンが増えたり減ったりするんだよね」と笹尾。

芦沼は「いくつか種類があって、微量でも生体に影響が大きいからね」


芦沼は人工子宮の実験装置を見る。

ホルモンには機能別に様々な種類があり、成長ホルモンもその一つだ。特に、幼体からの成長過程で大きく作用する。人工子宮内の胎児も同じ筈だ。そのバランスがうまくコントロールされなかったら、当然、生存にも支障を・・・。


「そうか。確かめなきゃ」

そう叫んで芦沼は実験室を飛び出した。



何か思いついたのかな・・・と思いながら村上は、脱ぎ捨てられた芦沼の衣服を見て叫んだ。

「芦沼さん、裸のままだ」

村上は芦沼の衣服を抱えて実験室を飛び出す。

「芦沼さん、服を着て、服・・・」


そんな村上を見て関沢が叫んだ。

「村上こそ服を着ろ」

関沢は村上の衣服を抱えて研究室を飛び出す。


笹尾は「関沢こそ服を着ろ」と叫んで、関沢の服を抱えて研究室を飛び出した。


芦沼が廊下に出て湯山研究室に向かった所で村上が追いつき、左手を掴んで「芦沼さん、服を着て」

芦沼はようやく自分が全裸である事に気付いた。

周囲には十数名ほどのドン引き状態の学生達。彼等を見て村上以下三名、自分達も裸である事に気付く。


芦沼は赤面しながら、村上に言った。

「どーしよーか、これ」

村上は「とりあえず、服、着ようよ」



湯山研究室で、服を着た四人が教授の前に並んでお説教タイム。

「で、実験作業が一区切りついたという事で、実験室で四人一緒に性行為に及んだ訳ね?」と湯山。

「はい」と四人が口を揃えて・・・。

「誰が言い出したの?」と湯山。

男子三名、ちらっと芦沼を見る。そして「私です」と四人同時に手を上げた。

「仲間を庇いたい気持ちはわかるけどね・・・」と教授は溜息をついた。



その時、研究室の戸口を荒々しく開けて足音高く乗り込んできたのは秋葉だ。

「真言君、実験中にムラムラして芦沼さん襲っちゃったって本当? 私、真言君がそういう事をする人だとは思わなかったわよ」と秋葉。

「いや、睦月さん、それ誤解だから」と村上は慌てて言う。

秋葉は「何が誤解よ。私達、そんなになるまで真言君に我慢させた憶えは無いんだけど」

「だから違うんだってば」と村上。


その時、またも研究室の戸口を荒々しく開けて足音高く乗り込んできたのは芝田だ。

「おい村上、いくら芦沼さんだって、公衆の面前で輸姦は無いぞ」と芝田。

「おいおい、変な尾鰭がついてるぞ」と村上は慌てた。

芝田は「お前は内に抱え込むタイプだろ。そういうのが危ないんだよ。そんなになるまで溜まってたんなら、俺が風俗にでも連れて行ってやったのに」

「いや、だから違うんだよ芝田」と村上。

「何が違うってんだよ」と芝田。


その時、秋葉が芝田の肩を掴んで言った。

「ちょっと、拓真君」

「あ、睦月、居たの?」と芝田。

秋葉は声を荒げて「居たのじゃ無いわよ。近くにこんなにいい女が二人も居るのに、風俗って何よ。私達に隠れて真言君連れて、そんな所に通ってた訳?」

「いや、風俗ってのは物の例えって言うかさ」と、慌て顔の芝田。


その時、戸口で「あの、真言君」と思い詰めたような声。

戸口に立っていたのは中条だ。頬が紅潮している。息が荒い。潤んだ目で村上を見つめて、中条は言った

「真言君が芦沼さん裸にして首輪つけて引き回してたって聞いたの。そういうの、羞恥プレイって言うんだよね? 真言君がそういうのに興味があるって、私、知らなくて。もし真言君がそういうのがやりたいなら、私が・・・みんなの前で脱ぐから」

そう言って中条は服を脱ぎ始めた。三人が慌てて止める。

そして村上は叫んだ。

「あーもう、お前等、俺を何だと思ってんだ!」



騒ぎを見ながら芦沼は溜息をついて、言った。

「はいはい、もう、はっきりさせましょう。私がこの三人を誘いました。オッケー?」

「公衆の面前で?」と芝田が聞く。

「いや、実験室でよ」と芦沼。

「首輪つけて?」と中条が聞く。

「誰がそんな尾鰭付けたのよ。ごく普通のセックスだから」と芦沼。

「4Pはごく普通じゃないと思うけど」と、その場に居合わせた学生の一人が言った。

「まあ、それはそれとして・・・」

芦沼は赤面して言葉を濁した。

村上達4人も目を見合わせ、赤面する。


「けど、何で3人も」と湯山があきれ顔で尋ねた。

「たまたまその場に居たのがこの3人で、生理周期とか寝不足とか色々重なって、そんな気分になっちゃったんです。それに、相手が3人居ると気持ちいいじゃないですか。一人にやってもらいながら、残りの二人に乳首舐めて貰うとか。秋葉さん達だってそうでしょ?」

そう芦沼が秋葉に話を振ったのを聞いて、関沢が言った。

「村上達ってそうなの?」

「人の下半身事情に首突っ込まないでくれ。頼むから」と困り顔の村上。


湯山教授は溜息をついて、言った。

「話は分かった まあ大学生はもう大人なんだし、性行動は人に迷惑をかけないよう、自己責任の範囲でやる分には、うるさい事を言うつもりは無い。4Pでも5Pでも6Pでもいいから、節度を持って行動してくれ」

(6Pは節度を持った行動なのかな?)とその場に居た面々は一様に思った。



そして湯山は訊ねた。

「で、裸で飛び出したのは何で?」

芦沼は「いろいろ考えて気付いたんです」

「何を?」と湯山。

「性欲の波って性ホルモンのバランスの問題ですよね? 生体には他にいろんなホルモンがあって、幼体が成長する過程で成長ホルモンが大きな働きをします。人工子宮の中の胎児も同じですよね? そのホルモンバランスが崩れたら、生存が阻害される事になるんじゃないでしょうか。もしかして胎児の成長が続かない事に関係しているとしたら、それをコントロールする仕組みが必要なんじゃないでしょうか」


湯山は立ち上がって「なるほど、やってみよう。君達、手伝ってくれ」

研究室に数人居た学生達に指示を出す教授。一気に場が活気に満ちた。

芦沼も張り切って作業に向かった。


そんな芦沼に村上は「芦沼さん、寝不足なんでしょ?」

「こんな時に寝てなんかいられないわ」と芦沼。

「また寝不足でムラムラってのは止めようね」と村上。

「当分は自重するわよ」と芦沼。


中条はそんな芦沼を見て、笑顔で言った。

「芦沼さん、楽しそうだね」

芦沼は言った。

「楽しいわよ。知ってる? 今まで解らなかった事が解った時って、すっごく気持ちいいの。セックスでイク時と同じくらいにね」

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