第112話 最後のクリスマス
高校時代最後のクリスマスパーティが企画された。
相変らず会場は渡辺のマンション。
受験勉強の追い込み中の奴等も居る。東京組の六名と推薦を落ちた二名だ。
彼等に遠慮して中止しようという意見もあったが、むしろ彼等の激励会を・・・という声が反対を押し切った。
受験勉強中の奴等も、自分のせいで企画が中止になる事をよしとせず、むしろ息抜きの口実と捉えて、参加を表明した。
毎度の賞味期限切れ回収品のお菓子が持ち込まれる。
園芸部から分けてもらった野菜と、男子達の買い出し部隊が調達した食材を、女子達が調理。
何パックもの鳥肉がフライドチキンになる。
秋葉・薙沢・坂井・岸本が手焼きのケーキを持参。米沢はひと箱のシャンパンを持ち込んだ。
リビングにいくつものテーブル。受験生の指定席が設けられ、他の面々が彼等を囲む。
中条の隣には、同じ元推薦試験組の佐川が席についた。周囲には篠田や村上達が座った。
「メリークリスマス」
米沢の司会でシャンパンを開け、ケーキを切り分ける。そして歓談が始まる。
篠田が隣に居る佐川に不満を言う
「佐川君、まだ好きな所十個、言ってくれないのよ。酷くない?」
「そもそもあれって、やり出したのは清水と内海だよな」と佐川は迷惑そう。
「きっかけは里子だよ。この人が自信が無くて、自分に価値なんて無いって言ったのを奴等が聞いて、そんな事無いって、里子を褒めたんだよ。そしたらそれを吉江さんと高橋さんが聞いて、褒めるんなら自分の彼女を褒めろって言って、あのノルマを課したのさ」と芝田が解説。
「あの後そのノルマ、拓真君と真言君も課されたのよね」と秋葉が笑う。
「いや、課したのは自分だろ。何他人事みたいに言ってるんだよ」と芝田は口を尖らせた。
「結局、彼女を褒めるって、どんな意味があるんだろう」と津川が言う。
「女は誉めて貰う事で自信がつく。そして嬉しい。だから褒めてくれた男を好きになる。だから男は頑張って褒める・・・って事なんじゃね?」と言ったのは村上だ。
すると杉原が「って事は女を落とすための戦略?」
「ヤリチンにとってはそうだろうけどね、けど、そもそも目の前の女が喜ぶと自分も嬉しい・・・って男の本能みたいなものだろ」と村上が答えた。
「けどさ、それで自信がつく事で調子に乗る女って居るよね。自分は価値が高いんだ・・・ってマウンティング気分で男を見下して小馬鹿にする奴」と言う佐川の言説は毎度辛辣だ。
「子供に手を出すなっていうのも、それだね。求められている自分は価値があるんだって思って、調子に乗って大人を小馬鹿にするんだそうだ」と村上も解説する。
「女性に限らないけどね。男は自分がモテると思うと女を小馬鹿にするそうよ」と杉原。
「マスコミが女子高生を最強ブランド扱いしたせいで、世の中全体残念な事になってる・・・って言う人も居る」と芝田が杉原を見て苦笑。
「自分が女子高生というだけで男を小馬鹿にする残念な奴が居る訳だ」と同調する津川の耳を引っ張る杉原。
「けど自分自身の現実は必ずしもそうじゃない人も多いよね」と秋葉は笑って言った。
「それで自分だけモテないのは嫌だって必死になる人も・・・」と清水も笑うと、何故か吉江が膨れっ面になって清水の耳を引っ張った。
「けど、小馬鹿にされた側は不快な訳だ。それで女を嫌いになる奴も居る」と佐川。
「マスコミ的には、男は性欲があるから、どんな事をされても許してくれる筈だ・・・ってね」と村上が言う。
「いや、男が女の子はどんな事をされても許してくれる女神だと思ってるんじゃないの?」と杉原が言うと男子全員唖然。
「はあ? 誰がそんな事言ってるの?」
「逆だろ。女の子が何をしても許してもらえる天使だって、みんな思ってるんじゃないの?」
そう言って男子達は溜息をつく。
「けどさ、だとすると、中条さんが自信を持つ事って、どうなの? まさか自信を持っちゃいけないなんて言わないよね?」と清水が口を挟んだ。
村上はそれを受けて「去年のあの時、前と違ってそれなりに里子ちゃんに自信がある、もう自分に価値は無いなんて思ってない・・・ってのを知って、俺は嬉しかった」
「そもそも、中条さんは、どういう文脈で、自分に価値は無い・・・なんて言ったんだ?」と内海。
「真言君たちとのスキンシップが女の価値を下げるって言われたの。今は自分に価値が無いとは思わないけど、それで価値が下がるとも思わない」と中条が話した。
「そもそも、そんなので下がる価値って、どんな価値だよ。それが女の価値だって言うなら、俺はそんなのいらねーよ」と内海が口を尖らす。
「ってか誰だよ。中条さんにそんな事言ったのは」と清水も同調した。
杉原が真っ赤になって「誰だっていいじゃん。そういう犯人捜し止めようよ」
「あーそーね、はいはい・・・。でさ、中条さんのいい所は、自信がついても調子に乗らない・・・って所なんじゃないかな?」と佐川が笑う。
すると篠田は「私だって自信があるからって調子に乗ったりしないわよ!」
「絶対?」と佐川。
「多分」と篠田。
「本当に調子に乗らない?」と佐川。
「調子に乗らない・・・んじゃないかな?」と篠田。
男子達が溜息をつく
「まあ、自分に価値があるって思いたくても、それを普通は自分で主張しないからね。誰かに言って欲しい。少なくとも自分の彼氏にはね。価値があるから自分の事を好きなんだろ・・・って。でなきゃ本当に自分を好きなのか?・・・って不安になる」と秋葉が解説。
「そうだよ。私、佐川君が本当に好きでいてくれるか、って不安なの。だから私を選んだ理由が必要なの」と篠田が拗ねた声で言う。
「だから言ってるじゃん。お前の好きな所は俺を好きで居てくれるって事だって」と佐川。
「それじゃ、他の女と比べて優れてるって言ってる事にならないじゃん。人は卓越性ってものを求めるの。女として他より上なんだって・・・」と篠田。
「篠田さんはこのクラスで誰より美人でスタイルもいいと?」と言う佐川に対して篠田は意地になる。
「違う? 違わないから私を選んだんでしょ?」
「水上さんよりも?」と佐川。
「水上さんが何よ! あんなの、ちょっとお金持ちの家に生まれたってだけじゃん。そんなのでお嬢様気取ってるけど、そのために母親のお腹から出て来る以外のどんな努力をしたって言うのよ!」と篠田。
「私がどうしたって?」と背後で水上の声。
篠田が青くなって振り向くと、水上が腕組みをして睨んでいた。
「あの・・・千夏ちゃん、これはね・・・・」と焦る篠田を見る水上の目が怖い。
「私、あなたの事は友達だと思ってたけど、篠田さんはそんなふうに私の事見てたのかしら?」
篠田は必死に取り繕い、佐川と周囲の男女も水上を宥めた
「篠田さんは、せめて自分の彼氏にくらい、自分が最高だって認めて欲しいだけだよ。水上さんだって、直江にそう言って欲しいでしょ?」
「私は直江君がそう言おうが言うまいが、事実としてこの学校で最高の女ですからね」と胸を張る水上に、佐川が指摘した。
「けど、この学校でそう思っているのは、確か5%だったよね」
「・・・・・・・・・・」。水上は反論できない。
「ま、卓越性っ言うけどさ、男がそれに拘って他人と競争して争って戦争の基になる、攻撃的な男の欠陥で、女はそんなもの求めず、愛をもってみんなと仲良くする平和的存在だから、男なんか消えて女の時代になるべき、なんて言ってる危ない人って居るけど、真っ赤な嘘だったんだね(笑)」と話題を変えようとする佐川。
「そういうカルトな人の妄想はいいって(笑)」と内海。
「けど、そういう事言う人って、下手すると大学教授や国会議員だったりするよ。怖いよね」と村上は佐川に同調。
そこに岸本が口を挟んだ。
「女性は優秀な子孫を残すために最高の遺伝子を求めて相手を選別するからね。相手の男性も自分を選別して求める筈だって思い込みがあるのよね。必ずしもそうでない男性は、いろんな女を渡り歩いて、数撃って当たりに期待してる人なんじゃないか・・・なんて話になるわよ」
「子孫残すとか俺達考えてないから、遺伝子を選別する本能とか言われても困るんだけどな」と内海が言う。
「それに生殖って、もうすぐ人工子宮ってのが実用化して、恋愛とか結婚とか無関係に子供作れるようになるから、世の中大きく変わると思うよ」と言ったのは村上だ。
「今でも人工授精で映画俳優の精子を買って自分の子供を、って技術的に可能だし。けど子供作るのに女が不要って、画期的だよね」と清水が言う。
それを聞くと吉江は「清水君は私みたいな女性が不要になる時代だったらいいとか思ってる?」と膨れっ面。
清水は慌てて「いや、吉江さんには日常生活で癒して欲しいと思うよ。子供とかは別の話だから」
「それに生殖とか抜きでセックスの相手は欲しいだろ?」と大谷が言った。
「大谷って最低」と松本がきつい視線を向ける。
岸本は笑って「大谷君はそれがいいのよ」
「それに子供産むって痛いだろ。出来れば吉江さんには、そんな思いして欲しくない」と清水が言う。
すると吉江は「私は痛くても清水君の子供、産みたい。出来れば今すぐ」
「それは勘弁してよ」と清水は焦り顔で言った。
ここで杉原が口を開いて「人工子宮の話は知ってるけど、神の摂理に反するって規制されると思うわよ。不妊体質の人の救済に限定すべき、とか」
「誰がそんな事言ってるんだよ」と大谷が声を荒げる。
「女性の権利・・・とか言ってる人達だろ? あの人達って、女性は子供を産む機械じゃないぞ・・・とか言ってるくせに、出産の役割独占が崩れるってなると反対するんだよね。矛盾し過ぎだよ」と佐川が解説した。
男子一同声を揃えて「無いわぁ」
岸本は笑って「まあ、子供を産む負担の問題もあるけど、子供を産みたいのは女の本能なのよ。それも、自分が納得できるレベルの遺伝子をね。善悪の問題じゃないのよ。でしょ? 篠田さん」
「そもそも、佐川と篠田さんって、傍から見て釣り合いとれてないとも思わないし」と言った小島に対して岸本が続ける。
「女性の本能はエゴイズムそのものだもの。だからこそ、それを克服して佐川君を選んだ篠田さんに感謝すべきじゃないかしら?」
「いや、俺は篠田さんの好きな所はそれだけで十分だって言ってるんだが。ってか篠田さん、妥協して俺を選んだ?」と佐川。
「違うわよ。それに本能なんて知らないし。佐川君の優しさが嬉しかっただけよ。けど、女は付き合っていくうちに欲が出るの。もっと愛されたいって思うの」と篠田。
「そうやって、果てしなく重くなっていくのよね」と笑ったのは秋葉だ。
「秋葉さんはいいわよね。村上君と芝田君が二人がかりで愛してくれるものね。中条さんと一緒にだけど」と篠田が口を尖らせる。
「何? お前、もう一人男が欲しいのか?」と佐川が突っ込んだ。
「違うわよ。まさか佐川君、俺は浮気とか気にしないぞ・・・なんて言わないわよね?」と篠田。
「言わないよ。独占欲の無い愛情の薄い男だ・・・なんて言われたら敵わんものな」と佐川。
「いや、そこは、俺は独占欲が強いんだ・・・って言わなきゃ」と岸本が笑いながら言う。
「岸本さんがそれ、言う?」周囲のみんなが笑った。
「けど、秋葉さんの状況って、独占欲的にどうなの?」と篠田が言うのに対して、秋葉は・・・。
「そうね、例えば美味しそうなショートケーキが二個あったとするわよね。隣に友達もいるけど、お金は二人とも一個分しか持ってない。じゃ、どうするかっていうと、一個づつ買って半分っこするでしょ? それと同じよ」
「そう言えば秋葉は自分でルックスとか女子力とかアピールするわよね?」と杉原が笑いながら秋葉の軽口を暴露。
「秋葉さんって意外と痛い人だったんだ」と内海が笑う。
「いや、あんなの冗談だって解ってるわよね? 真言君も拓真君も・・・」と秋葉が顔を赤くして慌てて言った。
「まあ解ってるけどね。あれで冗談が成立するのは、自分で自分を高いと言うのは痛い事だって合意があるからだわな」と村上は笑った。
芝田も「けど睦月は相手を小馬鹿にはしないんだよね。むしろ自分は可哀想な子だとか自虐ギャグ飛ばしたり」
更に村上が「いや、可哀想な子だから優遇してくれっていう、物欲しギャグだと思うぞ」
「まあ、他の女にマウンティングするってのは、目の前のパートナーの男にマウンティングするより百万倍マシなんだから、褒めてやりゃいいじゃん、とも思うけどね」と鹿島が付け足す。
「ってか、去年の夏に清水達が言ってた十個の好きな所って、膝枕が気持ちいいとか・・・」と村上が言い出す。
「何だよ結局、他の女との競争っていうより、ただののろけじゃん」と佐川があきれる。
「ってかそれ村上、お前が言った事のパクリだから」と芝田が笑った。
「けど、女のいい所って、本来そういう話だろ。癒されるってそういう事じゃん」と津川。
「大体、他より美人とかってのは、友達に自慢できるトロフィー彼女って事だろ。女のアクセサリー彼氏もそうだけど、そんなの空しくね?」と芝田。
「そうよね。そんなの本当の恋愛じゃないわよ」と吉江。
「けど、人には向上心ってのも必要だと思うわよ」と篠田。
「まあ、自分を高く・・・ってのはいいんだけどさ、高く見せるために相手を堕とすってのは、品性下劣な奴の特徴だよね」と佐川が言い出す。
すると小島が「キモ連呼とか・・・」と数人の女子の痛い所を突く。
男子達の視線が大野や宮下に向く。
「私は男子をキモいなんて言った事無いわよ」と秋葉は余裕な表情。すると男子達は・・・。
「秋葉さんは言わないけど、篠田さんは・・・・」
篠田は泣きそうになって佐川の左腕を掴み「少しは庇ってよ。彼氏でしょ?」
佐川は苦笑いすると「まあ、そう篠田さんをいじめるなよ」
「それに、わざと自分はこんなにキモいぞ・・・ってアピールする人、居ない?」と杉原が主張した。
「漫画の中とか自虐ギャグじゃなくて?」と山本。
「まあ、キモいってのは本来は男の性欲に対する性嫌悪の反応だからね。性欲をアピールする奴は居るわな」と鹿島。
「で、キモ連呼してキャッキャ喜ぶ女って、それを期待してる・・・って訳?」と芝田が言うと、村上がフォローして言った。
「期待っていうと女にも性欲があるから・・・ってヤリチンは解釈するけど、むしろ、やらせてやるから言う事聞け・・・とか馬の鼻先にニンジンぶら下げるみたいにして支配できる相手の弱みって優越感の問題じゃないかな?」
「だから、男=性欲って言いたがる訳だわな。一年の時の杉原さんみたいに(笑)」と佐川。
「いい加減に時効にしてよ」と杉原は膨れっ面。
そんな中で思い出したように言ったのは薙沢だった。
「支配って言えば、ある人が言ってたけど、可愛いって支配できる相手だと感じるって事なのかも知れないって。男性が女性の可愛さを求めるのは、支配欲なのかな?」
「そうよね。やっぱり支配欲って、男特有な欲望なのよ」と宮下が勢い付くと、小島がピシャリとやる。
「やたら可愛い連呼してるのは、もっぱら女だけどね」
それを聞いて村上が言った。
「俺が里子ちゃんを可愛いと感じるのは守り甲斐・・・みたいなものじゃないかと思うが、守ると支配は確かに通じているのかも知れない。けど、何からって言うと、寂しさからで、実は俺だって里子ちゃんに寂しさから守ってもらっている。それは支配なのか?・・・って事さ。確かに可愛さと守るのと支配は通じるかも知れない。だけどイコールじゃない。支配じゃない可愛さや守り方はあると思うんだ」
「女性が言う可愛いは、そういう事だと思う。母性愛とか・・・」と篠田が言うと佐川が笑いながら反論した。
「その解釈は御都合過ぎだろ。支配欲全開が子供にとって迷惑な母親なんて掃いて捨てるほど居るぞ」
「まあさ、ゲームとしてのマウンティングを仕掛けるのも大概だけど、褒められているうちに勘違いして本気にしちゃって、自分が持っている価値を搾取されるんじゃないか・・・みたいに被害者意識持つ女って居ない?」と鹿島。
「何だか女が悪いみたいじゃない?」と吉江。
「じゃなくて、ちゃんと自覚しろって事だろ?」と山本。
「そうやって調子に乗った女は、男が離れる事でバランスがとれる筈なんだけどね」と村上。
「けど、ヤリチンが経験値稼ぎの落としゲームで相手にするから、勘違いが続くとか」と芝田。
「マスコミが全男性対全女性の大きな主語で・・・とか」と小島。
「それ、誰が悪いのよ」と篠田が膨れっ面になる。
「実際、恋愛出来ないのが辛いって女性も大勢居るわよね。だから草食男子を批判してる訳で・・・」と秋葉が笑う。
「草食なんて、女性から積極的に誘えば簡単に落とせるのに、自業自得よ」と岸本も笑った。
中条は、隣に居た佐川がいつのまにか席を外している事に気付いた。
そのうちトイレに行きたくなってリビングを出る。佐川はキッチンには居ない。
バスルームを覗くと、バスタブの縁に座って単語帳を見ている佐川が居た。
中条に気付くと佐川は、慌てて単語帳をしまって席を立とうとしたが、中条は隣に座る。
「佐川君、こういうの、苦手?」と中条。
「まあ、ちょっと静かな所に行きたくてな・・・」
「佐川君も試験が心配?」と中条。
「そりゃ受験生だものな」と佐川。
中条は杉原から貰ったお守りの束を出して、ひとつ外した。
「これ、あげるね」
見ると、合格祈願と書いてある。
「これ、杉原の時のだろ? まともな合格祈願のお守りもあったのかよ」と佐川。
「これだけあるんだから、一つくらいはね」と中条。
「けど、いいのかよ。他はぼけ封じや安産祈願で、間抜けな面々が間違って買った中の貴重な当たりだろ?」と佐川。
「私もその間抜けな面々の一人だけどね」と中条。
「あ・・・」
「それに、間抜けかも知れないけど、それでこその私たちだもの。だから私はこれでいいの」と中条。
「そうか。じゃ、遠慮なく貰っとくわ」と佐川。
「そろそろ、みんなの所に戻ろうよ」と中条は言った。
リビングでは相変わらずわいわいやっているクラスメート達。
「どこ行ってたんだよ佐川」と渡辺。
「何で中条さんと一緒に居るのよ」と篠田が口を尖らす。
「たまたまだよ」と佐川。
すると篠田は「それに佐川君、今日はまだ一回も好きって言われてないんだけど。好きな所十個、言ってくれないなら、せめてこっちのノルマは果たしてよね」




