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おどり場の中条さん  作者: 只野透四郎
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第104話 戦士の休息

 期末試験が終わり、一学期の成績が出た。

 これが受験先である県立大学に送られる内申書の三年次の成績となる。


 早速担任は一年次・二年次の成績と平均して生徒達の三年間の評定平均を出す。

 結果を聞きに来た芝田に中村担任は言った。

「辛うじて基準クリアって所だな」と、パソコン画面を前に安堵する中村。

 それを聞いて喜ぶ芝田達。


「ネックは日本史と現国と古典だったからね。真言君が得意な科目で良かった」と秋葉が笑う。

「数学は元々得意だし、化学と英語は受験勉強が効いたな」と芝田はドヤ顔。

「試験もだが、授業態度が良くなったと言って、各授業担当の先生方、驚いてたぞ。芝田に何かあったのか・・・って」と中村が言った。

「まあ、授業の大切さを思い知ったといいますか、あは、あはははは」と芝田。

 村上の入れ知恵で、授業中に質問させて、授業態度の点数を良くしようとしたのだ。授業担当達はそれぞれ成績の何割かは、これで出す。


 彼等は連れ立って教室に戻る。

 調子に乗った芝田は「これで万全だ。やっと試験勉強から解放されたんだからな。思いっきり羽を伸ばすぞ」

すると秋葉が「あのね、拓真君、終わったんじゃなくて、これから入試対策を再開するんだからね」

「あ・・・・」


 夏休みに突入した。

 だがそれは入試が近づいた事を意味し、受験圧力は増した。


 中条は自分の部屋で勉強しようとするが、孤立感で長続きしない。

 自然と参考書や問題集を持って、村上のアパートに行った。行くと芝田と秋葉も居て、有耶無耶に勉強会の様相を呈する。

 分かりにくい所は教え合い、村上は秋葉と中条が日本史の流れを理解しやすいよう、何種類か年表を作った。

 芝田が化学の問題で悩むと村上に相談し、村上が数学で詰ると芝田に相談した。

 全員共通の科目である英語は、一緒に勉強した。


「小腹が空いたな」と芝田。

「お菓子が切れてる」と秋葉。

村上は「買ってくるよ。何がいい?」

「それより真言君、あれ作ってよ。水上さん達が来た時の・・・」と中条。

「五平餅か?」

 村上は炊飯ジャーのご飯を一握りづつ取って、練ってラップに包んで形を整え、櫛に刺して・・・


 時々、気分転換のため四人で自転車で街に出る。

 一時間ほど公園で散歩したり喫茶店に入ったり・・・

 勉強中、中条は温もりが欲しくなると、村上の膝の上で参考書を読んだ。

 秋葉は芝田の膝に頭を乗せて単語帳を開いた。



 そんな中、津川から連絡が来る。杉原が精神的に辛くなり、行き詰っているという。

「時々気分転換とか、してる?」と秋葉が心配そうに言う。

「杉原さん、真面目だから、勉強の時間割くのに抵抗あるみたいで・・・」と津川。

「何だかなぁ。夏休みは時間があるんだから、息抜きの時間とか惜しまなくていいのに」と芝田。

「いや、芝田みたいなのが好きにやってると、息抜きの合間に勉強するって事になるぞ」と村上。

「お前、俺を何だと思ってるんだよ」と芝田は憤慨した。

 そんなやり取りを聞いて、中条が笑う。


「とりあえず、津川が杉原さんを気分転換に連れ出したらどーよ」と芝田。

「そう言って連れ出そうとしたんだが、そんな時間は無いって一蹴されて・・・」と津川。

「杉原、融通利かないから・・・」と秋葉。

「だったらさ、息抜きじゃなくて、参考書買いに行くって名目にしたらどーよ」と村上が提案。

「それいい。で、本屋で私達が待ち伏せして、息抜きに連行するの。半日くらいでいいよね」と秋葉も同調。



 時間を決めて電話を切る。四人で指定した書店に行く。

「杉原さん、来るかな」と中条。

秋葉は「素直について来るかどうか判らないからね。遅れはすると思うわよ」


 約束の時間より10分ほど遅れて、津川と杉原が来た。

「杉原、やっほー」と秋葉が気勢を上げた。

杉原は「何であんた達が居るのよ」

「これから半日、気分転換に行くわよ。杉原は根詰め過ぎよ」と秋葉。

 杉原の右側を津川、左側を秋葉が抑え、状況が掴めずおろおろする杉原を連行する。



「着いたわよ。先ずここに入ろうよ」と秋葉。

「市民プールじゃないの。水着持ってきてないよ」と杉原。

秋葉は「そんなのレンタルでいいじゃん」


 入り渋っていた杉原だったが、借りる水着を選ぶ段になると、途端に凝り出した。

 あれがいいこれは駄目だと言い出し、秋葉と口論になる。男子達に意見を強要する。

 女子の水着選びが終わると、男子の海パン選びを仕切る。あきれた表情で見る男子達。

 選び終わった頃には杉原も、完全に息抜きモードに移行した。



 更衣室前で出て来る男子を待ち伏せる女子達

「似合うかしら」と杉原が言う

「あれだけ凝って選んだものな」と津川は笑う

「津川君の大好きなバランスボディだぞ」と杉原。

「健康的とも言ってたよな」と芝田も笑った。

「二年前に言ってた事、よく覚えてるよな」と、あきれる津川。

「ま、女子にバレたのは一年前だけどね」と村上。


「で、村上君が好きな貧乳に、芝田君が好きな・・・」と杉原。

「それぞれの良さって言ったんだよね? って事は、巨乳支持は半分だけって事?」と秋葉は拗ねてみせる。

「いや、そういう訳では・・・」と慌てる芝田。


 その時、津川は真面目な表情で口を挟んだ。

「けどさ、結局村上だって元々貧乳好きっていうより、中条さんがこうだから、その影響で嗜好がそうなった・・・って事じゃないのか?」

「いや、別にそういう訳では・・・」と村上。

「だって、俺の時も、杉原さんがああだからだろ? って言ってただろ。って事は自分が好きになった女に趣味が影響されるって事だよな?」

「そあなのかなぁ」と村上。

「私の好きな部分は胸が大きい所・・・って言ってたものね」と秋葉は言って笑う。

「いや、あれは・・・」


「真言君、そうなの?」中条。

「もしかして里子ちゃん、がっかりした?」

 中条は少し考えると、満面の笑顔で言った。

「むしろ嬉しい。だって真言君が好きなのは巨乳でも貧乳でも無くて、私自身・・・って事なんだもん」



 六人で水に入る。

 水中で村上と芝田にじゃれつき、はしゃぐ中条は言った。

「拓真君、あれ、やって欲しい」

「あれって?」と芝田。

「人間浮袋」

「いいぞ。背中につかまれ」

 中条を背中に乗せて平泳ぎで爆泳する芝田。

すると秋葉は「じゃ、真言君は私の浮袋になってよ」

「それは無理」と村上。

「私が重いから?」と悪戯っぽく拗ねてみせる秋葉。

 村上は冷や汗をかいて「いや、そういう訳では・・・」

 そんな彼等を見ながら、杉原は津川の左腕に抱き付いた。



 昼頃、彼等はプールを出て、昼食にしようとファミレスに入った。

「俺だけ熱いラーメンってのは、勘弁してくれよな」と芝田が牽制

「まあ、冷房が効いてるから、あの時ほどきつくは無いだろうけどね」と村上は笑いながらフォロー。

 すると秋葉は「じゃ、今回は真言君が熱いラーメンにする?」

 村上は思わぬ藪蛇に「勘弁してよ」

 全員がパスタを注文したが、カルボナーラやミートソースなど種類は別々だ。


 注文した品が運ばれてくる。

「里子ちゃん、半分っこする?」と秋葉が言う。

「うん」と中条は嬉しそう。

「津川君、半分っこしようか」と杉原は秋葉を真似る。

「いいよ」と津川。

「なあ、村上・・・」と芝田。

「半分っこはしないぞ」と村上。

芝田は慌てて「するかよ! そうじゃなくてさ、いつまでこんな事が出来るのかな・・・って思ってさ」

「何のために同じ大学行くんだよ」と村上は笑いながら芝田に返して言った。



 食べ終わってファミレスを出た六人。

「次はカラオケに行こうよ」と杉原

既に半日経っている。だが、久しぶりに楽しそうな杉原を見て、みんな「まあいいか」と思った。


「中条さん、あまり行った事、無いんじゃないの?」と杉原。

「うん」

「女子高生必須の嗜みだよ。村上君達、何やってるのよ」と杉原は追及する。

村上と芝田は「だって・・・なぁ」

「秋葉はこいつら誘わないの?」と杉原。

「誘っても、あまり乗り気しなさそうなんだもの。それに行きたい時は杉原や津川君と行くし・・・」と秋葉。

杉原は「そこは強引に引っ張り込まなきゃ、主導権確保できないよ」



 受付を済ませてボックスに入る。

 飲み物を注文し、杉原と秋葉が何曲か歌う。

「もしかして村上君、この曲、知らない?」と杉原が言う。

「こういうの、聞かないからなぁ」と村上。

「芝田君も? 音楽ノータッチとか人生損してるわよ」と杉原。

「いや、音楽聞かないって訳じゃないんだが・・・」と芝田。


 村上と芝田が選んで何曲か歌う。

「知らない曲なんだけど・・・」と杉原

村上は笑って「アニソンだよ。最近はいい曲、多いんだよ」

「全員が知ってる曲が無いって訳か」と芝田。

すると秋葉が「だったら、目をつぶってランダムで曲選んでみない?」

「誰が歌うんだよ」と芝田。

「そりゃ、知ってる人が・・・だよ」と秋葉。


 中条に目隠しをさせて選曲端末を持たせる。タッチパネルに指が触れ、曲が始まる。

 曲開始三秒で中止ボタンが押された。

「外国の曲じゃん」と芝田が笑う

「しかも外国っていっても、あそこの国の曲は無いわよね」と秋葉が思い切り残念そうに言った

「どこの曲なの?」と中条が怪訝そうに聞く

「言わぬが花って奴さ」と村上は笑った



 時間が経ち、六人がカラオケボックスから出る。

「結局、一日遊んじゃったね」と言って杉原は大きく伸びをした。

「杉原さん、ストレス解消出来た?」と村上が聞く。

「うん。また頑張れそう」と杉原。


「しかし、こんなになるまで津川は何やってたんだよ」と芝田が追及。

「津川君は時々、様子を見に来てくれるんだけどね」と杉原。

「杉原さんは、津川君ん家に行かないの?」と中条。

「行っていいの?」と杉原に聞かれた津川は「いや、駄目な訳無いから」

「でもって、津川君の部屋で一緒に勉強してさ」と秋葉。

「秋葉は村上君の部屋で勉強してるの?」と杉原。

秋葉は「そりゃ、ね。だってあそこは秘密基地だもん」

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