エピソード28
入店してきたのは、オズ、アルド、シルク、アレク、レオン、バオの6人だ。全員、貴族や階級の高い人達。何故、わざわざもふカフェまで来たのだろうか。
私は皿とティーカップを前にやり、俯せになり、自分の姿を知られないように隠れた。
「森子ちゃん」小声でマーフィーさんに囁くように呼ばれる。
「森子ちゃん」二度目だ。
はっと息を飲むと頭を起こし、ぺこりとイケメン達に頭を下げる。
「木林さん、久しぶり」
「お前はあの時の……」
「その方は一度もお会いしてないね。美しい女性だ」
交互に反応された。
「私、このカフェで働く事になったんです」
そう教えると、制服を見遣り、客じゃない事に気づいたのか皆、目を輝かせた。
「頑張ってるね」
「すごいよ」
「お前はその方がいい」
「おい」
「森子ちゃんに失礼」
アレクは他の男性達に怒られた。
「新作のハニーティーは如何ですかぁー只今、すごく人気ですよー。良ければ華族様方、騎士団長様、お飲み下さい~」
マーフィーは宣伝に努める。
「じゃあ、注文しようかな」
続々と席に着く。6人席が丁度空いていたので、そこに座った。
皆、ハニーティーを注文したのだが……
「俺のだけ木林に淹れてもらわないと困る」
「は?」
「何それ、独り占め?」
アレクの乱暴な要望にクレームが入る。
「私は森子ちゃんと間接キスがしたいから、森子ちゃんが飲んだ後でよろしく」
今度はアルドの問題発言だ。
「おいおい」
もうやりたい放題だった。
結局、階級が高い為、逆らえず、森子の淹れた紅茶をアレクだけが飲み、森子の口付けのメグミが淹れた紅茶をアルドが飲むこととなった。
「それより、何でこのカフェにイケメンばかりが来たんですかね?」
「……それは、ここの紅茶が美味しいと噂で癒物で癒される事も出来ると一石二鳥だからっていうのが建前の理由」
「本当の理由は癒物Lvの高い癒物がいると聞いてね。見学に来たんだ」とオズが話した。
それ、私の癒物!心の中で叫んでしまった。
「私の、です……」
え!??
一斉に目を点にさせ、驚かれた。
「癒物Lv499が3体。癒物Lv420が1体」
言いながらメモを取るシルク。
「これは癒物のままでいるか、レプリカと組み合わせて人化するか迷う所だな。成長の見込みがある」
「何でLv500にならないんですか?」
「それは覚醒してないからだよ」
覚醒するには覚醒場所に行って、自分のパワーを念じて与えなければならない。当然、私には出来ない。
「だから僕達が来たんだ」とレオンは言う。レオンは癒物マスターという一人しか持ってない称号を持っており、癒物研究所(会)の会長も務めている。
「その癒物、僕に預からせてくれないかな?」
えっ……一気に悲しさが増した。ここまで頑張って育ててきた癒物と離ればなれになるなんて……
今にも涙が零れ落ちそうだ。
「ちょっと待って下さい!」
「森子ちゃん」マーフィーに肩に手を置かれ、引き寄せられた。
「また戻ってくるから」優しく宥められた。
少しの静寂があって。
「それもそうだけど、森子が頑張って働いてる姿を見たかったから。森子の淹れた美味しい紅茶が飲みたかったから俺達は導かれたんだよ」
アレクの一言にここに居る全員が頷いた。
「そうだよ」とイケメン達。見事なまでにハモった。
それから帰り際。
夕日が射し込み始めるとイケメン達は店のドアを開け、続々と帰ろうとした。
アレクは私に対し、
「さっきの森子の淹れた紅茶、美味かったよ。森子にしか出せない味なんだ。森子の紅茶が好きだ、また飲みに来るからその時は頼む」と耳元で囁いた。
そして、こんなメモも渡した。
“話があるからリソット橋に来い”
少しときめいたが、それだけで終わってしまった。何故、俺のだけ森子に淹れて欲しいと言ったのかにも気付かずに――
アレクの気持ちに触れるのはもう少し後になる。
「ねえねえ、何て森子ちゃんに囁いたの?」
街の歩道は賑やかだ。
オズはもふカフェの方向を振り向き、唇を噛み締めた。
キリが悪い、と思われるかたいらっしゃると思いますが、これ以上ストーリーが思いつかないので、ここで完結とさせて下さい。
カクヨム版もこのエピソードで完結しています。
二年間もこの作品をほったらかしにしてしまって、すみませんでした。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。




