エピソード11
執務室にて。
「なんで私は貴方と結婚出来ないのー!!なんで……どうして………ずっと待ってるのに……」レノは涙目で婚約者である紺髪の男性・エリッソに訴えかけた。
「それはもう、皇帝様にお許し頂く他無い。こうして付き合ってるだけじゃ物足りないのか。まったくレノは前から知ってるが、男好きだなぁ……」
確かにレノの気持ちも分かる。レノとエリッソは10年以上前から婚姻申請を皇帝に請うている。それなのに一向に拒否されるだけで、進みようが無い。皇帝に結婚を許してもらうにはかなりの道のりがあった。
レノとエリッソの場合はエリッソの地位が爵位は持ってないが、親衛隊長という身分の高い地位にいる為、なかなか一般女性との結婚には程遠いのだ。
「ぐすっ……えん、えーん、わあああーーん……!」
大声で泣くレノにエリッソはそっと寄り添うことしかできなかった。
「レノ、落ち着いて。大丈夫、いつか結婚できる日が来るから。目を閉じて。」そう言うと、言われた通りに目を閉じたレノに誓いのキスをした。唇を交わらせた。
いつか結婚できる日を信じて……
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気付けば夜になっていた。外は暗い。
「レノ、申し訳ないが、帰らなくてはならない」そう言って、エリッソは帝国の独身寮へと向かった。
「ちょっと、待って!待ってよ、ねえ!」叫んでも無意味だった。
レノは小さな家みたいな所に一人で住んでいる。一人ぼっちはすっごく寂しい。
レノが狙おうとしていたのは公爵イケメン3人兄弟の1人、オズウェル(通称オズ)だった。長男・アルフレッド(通称・アルド)、次男・オズウェル(通称・オズ)、三男シルクレ(通称・シルク)は帝国に知らない人はいないと言われるほど、アイドルのような存在だった。アルドは薄い赤茶髪で、オズは金髪、シルクは銀髪だった。全員、瞳の色は青くて光に当たると輝いてみえた。
だが、しきたりがあり、結婚も恋愛も許されないし、敬語を使い、常に慎んだ言動をしなくてはならない。これも皇帝様の指示の下らしい。
でも、狙おうとしたわけではない。体の手当てをされていた森子に嫉妬していただけだ。だけれど、レノの男好きは本当の事だった。町行くイケメンにはきゃーと言うし、浮気をした事だってある。
レノは帰り道、泣いていた。
(殺すつもりは無かったとはいえ、酷い事をしてしまった。森子ちゃんとはもっとお話したかった……なんで私、いつもこうなんだろう……バカだ……)
暗闇の中、街灯に照らされる光に反射するレノの涙だけが綺麗に光って見えた。