百合の花の妖精 5
残された剣。
ヤマトの弔いの意を込めて、
鏡に向かい
天啓に預かった。
"結界を解き、
この地を民に明け渡すべし。
その剣は、いずれ元の場所に戻る。
今は預かっていてほしい。"
私は、
その天啓を受け
すぐさま結界を解き
被災した民のための
避難場所として
神域へと受け入れた。
災害を逃れた民たちは、
互いに身を寄せ合い
数か月の間
私と共に神殿に住まい
ヤマトが拓いた土地の復興に
精を出した。
あれから数十年。
私は弟子を育て上げ、
いよいよ老いて余命僅かとなった。
これが最後の祈りとなろう。
鏡に向かい
天啓の儀式を行った。
"あなたは私の世界に戻る。
後に残る者に伝えよ。
「剣と勾玉の石を3つ、
鏡の前に備え置く。
その鏡に満月を映し、
この者を見送りなさい」。"
若い巫女に そのままを伝え、
私はその3日後の十三夜月の日
静かにこの世界に別れを告げた。
私はこの後のことは知らない。
目が覚めたら、
ここに居た。
トワイライトガーデンに。
「リリム。
そんなに鮮明に
記憶していたなんて驚いたわ!
そうよ、
あなたが思い出した通りよ。
それから・・
鏡の向こうで話していたのは私なの。
うふふ。気づいた?」
えーーーーーー!!!
これはもう笑うしかない。
あれ?そういえば・・
「オスカ?
一つ気になるんだけど。」
なあに?と、
オスカは優雅に耳を傾ける。
「あの剣は、どうなったの?」
すると、
オスカは手をポンポンと叩いて
何者かを呼んだ。
「彼らが持っているわ。」
そうしてやってきたのは、
オスカのお城を守護する
勾玉の騎士団の方々。
その内の一人、
トモエという
きれいな顔をした魔導士が
代表して挨拶をした。
「貴女様がご奉納された剣は、
エネルギーを二分し勾玉の杖に変え
宇宙の宝物として
大切に御守りしております。」
お堅い時間…
嫌いじゃない。
私はあの剣のエネルギーと共に
ここに来たのだと理解した。
隣にいたオスカは、
にっこり笑って
「驚くのはまだ早いわ。
あなたはもっとずっと昔から
私と一緒にこの世界に居るのよ。」
私は目を丸くする。
「まだあるの?」
私は私が思う以上に、
私の事を知らない。
この時、全身でそれを理解した。
今日も変わらず
トワイライトガーデンには、
穏やかな時が流れている。