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百合の花の妖精 1

私は 百合の花の妖精 リリム。

愛の星に流れている

1年 という時の流れを

ここ トワイライトガーデンに

知らせている。



この背の高い女神は、オスカ。

庭園にやって来て

すぐに仲良くなったお友達!






あれは、

私がここに生まれた最初の日。



まぶたの向こう側に、

暖かな光が当たり

眩しい感覚を覚えた。


何だろう?


そう思って

そぉっと目を開くと、

そこには

私を覗き込んでいる

大きな存在があった。



「わっ・・・!」

何かと思って

びっくりして尻もちを付いた。



オスカはクスクス笑いながら、

大きな手のひらで

大切なものに触れるように

私をそっと掬い上げて

体を起こしてくれた。



「ごきげんよう」




オスカは 穏やかな声で

優しく声をかけてくれた。


私も 挨拶をしなきゃ!と

オスカの手を離れて

宙をクルリと回り、

ちょこん とお辞儀をしながら


「初めまして」


と挨拶をした。



すると

思いもよらない返答が

返って来た。



初めてじゃないわよ って。



思わず、

キョトンとした。


だって 私はさっき

この場所に生まれたばかり。



変なの。




それからオスカは、

不思議がる私に

輪廻転生のお話をしてくれた。



私は花



1年で一生




生まれ来ては、

多くの者たちと

出会いと別れを

何度も何度も

繰り返しながら

命の旅をしているんだって。



だから 私たちは

すぐに仲良くなれた。




私は 初めて

ここに来たんじゃないんだ。





「ねぇ、会うのは何回目?」




すると

オスカは肩をすくめて微笑みながら

「もう数えられないくらいよ。」



そう言った。





私は

今より前の記憶は

思い出さない。

忘れているのかもしれない。



でも




もし

オスカのお話が本当なら…




そう感じてみると、




とても





とても





心が温かくなる。





何度 生まれ変わっても

こうして会えるなら、

この別れもきっと一瞬で

また次も

そのまた次も、

オスカに会える。




「いつも一緒にいるみたい!

ねぇ、オスカ」



ニコニコと

オスカに顔を向けた。




…オスカには珍しく、

笑顔が淋しそう。



「あなたは無邪気ね。

そういうところが大好きよ。

私はね、

何度もあなたに出会える度に

嬉しくて感謝で

いっぱいになるわ。

でもね、

その気持ちと同じ…いいえ、

それ以上に

別れの時は

何度でも

胸がキュッて苦しくて

想いがいっぱいになるわ。

確かにあなたと会ったことは

何回もあるけれど、

今のあなたと以前のあなたは

似ていても同じではないわ。」



そう言った後、

オスカは ハッとした。


「そうね…!

私だって あなたのことは

"初めまして"

なのかも知れないわ。」



「そういうものなの?」



「えぇ きっとそうよ!

今ももちろん、

この前の時もその前の時も

そのずーっと前だって

同じだったことはないわ!

あなたは 私の世界に…

トワイライトガーデンに、

時の流れが

永遠ではないことを

全身で教えてくれるわ。

一瞬一瞬が

奇跡の連続であることを

教えてくれている。

あなたとの出会いは、

宇宙の最大の采配よ!」



ありがとう



そう言って、

オスカは胸に手を当てて

目を閉じ

深呼吸をしている。


何かを感じているみたい。




オスカは大げさだなぁ。

私はその様子を見て

ニコニコ笑っていた。



きっと

私が想像する以上に、

オスカに何度も寂しい想いを

させているのかもしれない。



この大切な友達に

この命の短さで

寂しさを教えてしまう。


私にはオスカがいるから、

寂しくないのに。




…なのに。



「ごめんね、オスカ」




オスカは 笑顔のまま

小さく首を横に振った。





きっと

今より古い私も

オスカの中に居る。


オスカの中に居る私は

一つじゃない。




たくさん居る。




そして

私の中にオスカの存在は一つ。




でも





この一つは、一つじゃない。






いくつもの命が

古い時から繋がっていて、

命の連鎖の中で

途切れることなく

今の私まで

辿り着いたんだ。




掛け替えのない

大きな一つだということを

私は全身で理解した…?



わからない、

そんな気がした。





オスカの光は 暖かい。





安らぎ。




太陽の光。






私はまだ

この世界のことを

何も思い出さない。


だけど

オスカは知っている。




オスカの存在は、

私が古くから

存在していたことを

明かしてくれる




《希望》





古い私を知りたい。







「ねえ、オスカ。」


「なあに?」



そうして、

ふと気になったことを

聞いてみる。



「私は 花として生きる以外にも

生きていたことはあるの?」



オスカは 目をまん丸くして、

こちらを見つめている。

そして、

手を開いては口元に当てて

可愛らしい仕草をしている。

「まぁ!?」



とても驚いた様子。

信じられない、

といったような表情。



意外なことを

聞いたのかもしれない。


私も どうして

花以外だなんて

思ったのかわからない。



でも なんだか

無性に聞きたかった。





そうねぇ〜

そういってオスカは、

いたずらな顔をしながら 一言。


「あるわよ!」


それを聞いた私は、

目をキラキラさせている。


「うふふ。

今までで初めての質問ね!

嬉しいわ。」



オスカは本当に嬉しそう。




「あなたの故郷 愛の星。

あの星の竜島で

巫女をしていたわ。」





みこ…?





巫女とは、

体そのものを

宇宙の情報を受信する

依り代として、

その星に必要な情報を降ろし

民に伝える役目を担う者のこと。



…だそうだ。



愛の星は波動が荒く、

宇宙の情報が

入りにくくなっていて

生命の中でも人間は

"自我"という

防衛の膜を纏ったせいで

特別 受信の感度が弱い。



アン という巨大な鳥が、

そのように

作ったのだとか。





そうして

オスカに話されていく中で、

過去の記憶の断片が

私の細胞の中に

残っていることを感じる。





懐かしい気持ち。







名前が 脳裏に浮かんだ。







"ヤマト"


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