勾玉の魔導師 4
「トモエ、ごきげんいかが?」
その声に振り返ると、
背の高い太陽の女神が居た。
「オスカさん、ごきげんよう。」
女神は僕に微笑んだあと、
少し眉を下げて話し始めました。
「最近 地球の様子が変なのよ。
あなたって以前
地球に居たことがあったでしょう?
その頃は確か
こんなことはなかったのよ…
だけどね、
ここ最近になって なんだか
この子たちの元気がないの。」
いつも笑顔のオスカさんも、
今回ばかりは 眉尻を下げ
花の妖精たちのことが心配で
気が気ではないようです。
ここ トワイライトガーデンに咲く花は、
地球の竜島に咲く
花のサイクルや生命力と連動しています。
「リリムさん…アニルさん…
可哀想に。
妖精たちは寒さに
凍えていているようですね。
そろそろ春から夏に向かう頃なのに
未だに 花が開かないなんて…
もしかして・・」
「そろそろあのシーズンなのかしら?」
どうやらオスカさんも、
僕と同じことを予感しているようです。
「‥占ってみましょう。」
そう告げて、
僕は空に向かって魔法陣を描きました。
宇宙の宝物として
預かっている勾玉の杖は、
魔杖 として扱えます。
ここに魔力を集め
魔法陣に向かって放ちました。
ポウッ‥
魔法陣の中心が光り、
全体が動き出しました。
どう?と、
オスカさんが訪ねてきました。
僕も 羅針盤を読み取り答えます。
"大気の神…"
「あら?大気の神?
カノの事かしら。確かスノウの弟君ね?」
僕は頷くしぐさで返答をし、
更にどこにいるのか、
魔法陣で探しました。
フィンフィンフィンフィン・・
ルーレットのように魔法陣が、
ぐるぐると回り
やがて一部分が浮き上がってきました。
"超新星爆発…"
「超新星…?なるほど‥ 第二宇宙内か…」
と 独り言のように呟き、
そして オスカさんに告げました。
「様子を見てまいります。」
「あら、本当?
トモエは頼もしいわね。
じゃあ お言葉に甘えようかしら。」
それからオスカさんは続けて
僕に尋ねます。
「あの子も連れて行くの?」
そうですね。
そう言って僕は "あの子"を呼ぶ。
「アン!」
すると、
いつものように どこからともなく
キャーーーーーーーン
激しい鳴き声が聴こえ
バッサバッサと飛んでくるのは、
大きな鳥の アン。
アンは僕の守護者。
いつから一緒なのかは、
記憶が飛んでいるけれど…
アンは僕に寄り添ってくれる
パートナーのような存在。
オスカさんは、
よしよし、と言いながら
アンを撫でいる。
アンはなぜか
僕以外の男性には懐かない。
この間スノウさんが居合わせた時には、
アンは羽を大きく広げて
酷く威嚇していました。
それがなんだか可笑しくて‥
品のない行いに いけないと思いつつ、
声を出して笑ってしまったのは
まだ記憶に新しい。
あの時の、
僕を見るオスカさんの驚いた顔は
今も脳裏に残っています。
「オスカさん。
暫く留守にしますが、
よろしくお願いします。」
そうして
アンの背に乗って会釈をし、
僕はトワイライトガーデンを後にしました。
「ようやくカガミに逢えるのね。」
これは、オスカの独り言。