表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

勾玉の魔導師 2

その頃から、

僕の癒しの時間になっていた占星術。



天文学の授業で使用する羅針盤を使い、

応用した呪術と掛け合わせて行う

僕オリジナルの秘密の占い。



占星術といっても、

大したことはしない。



明日は晴れるのか?

花はいつ咲くのか?

父上様のご機嫌はどうか?

城下町は平安なのか?



そんな些細な日常を

当たろうが当たらなかろうが

関係はなく

ただ小さな楽しみとして

占っていただけです。





中でも新月の夜は、

それ以外の日と比べると

的中率が目に見えて高かった。



そう気付いてからは、

母上様と繋がれるような気がして‥

会えるような気がして‥



晴れた日の新月の夜は毎月、

夜明けまでずっと

城の屋上でひとり

占い続けていました。




心を鎮め 目を閉じて深呼吸をする。



ゆっくりと目を開き、

遠い星たちを一つ一つ見渡す。



すると、

宝石が鏤められたような

満天の星たちが、

僕の心の奥で堅く閉ざしている扉を

優しくノックするように

話しかけてくるのです。



「トモエ、あなたは

今を辛く苦しく感じているのね?

でも大丈夫よ、

私はいつもあなたと一緒にいるわ。

いずれ 光があなたを

迎えに行くでしょう。

しっかり生きるのですよ。」




母上様・・






おかあ…さん・・・





一度でいいから、

母という存在に

思い切り甘えてみたかったと思う。



母上様をこの手で抱きしめて

僕はここにいますよ、と

そう伝えたい。



叶わぬ願いだと解っていても、

僕の心はいつまでも

理解したがらないのです。



「母上様、どうか僕の願いを

いつかその光となって

叶えてくださいますか?」




宝石箱のような夜空は、

僕のつぶやきに何も答えないけれど

僕はこうして過ごすことで

少しだけ 心の痛みが

癒されるように感じていました。




例え 声の主が、

母上様のものではなかったとしても‥








あくる日、

父である王より呼び出され

執務室へと向かいました。




「トモエよ、戦が明日開戦される。

今回の指揮はお前が取れ。以上。」



父上様はそのように告げると、

さっさと出て行かれました。




王は何をお考えなのです・・





僕が戦で指揮なんて

取れるわけがないではありませんか。




なぜ そのようなことを・・



呆然と立ち尽くす僕に

王の従者が跪いて話します。


「王子殿下、

この度の戦の作戦はすでに

第三軍部隊に命令が下っております。

殿下には陣営を御守りいただき、

都度我々の報告を受けていただければ

十分でございます。

しかし戦線が危うくなりました場合

その時には、その・・」


動揺しながらも話しは続く



「殿下は大将戦として

敵国の王子と一騎打ちを願います。

・・し、しかし!

それは最後の手段っ!

我々軍は、殿下 及びこの国を守り抜き

必ずや勝利を挙げてまいりますゆえ、

御心配には及びません。

また 明日の作戦に関する内容は、

殿下の近衛に伝達を命じております。」





なるほど。

僕はお飾りというわけですね。






負け戦




勝つ見込みのない戦…


いや




勝つつもりのない戦を

僕の責任としている。





仮に僕が死んでも、第二王子がいる。



それに、

城には戦慣れをした王と

一軍二軍の精鋭騎士団がいる。



作戦の核としては、

敵に勝ったと思わせて

更に城を攻め込むように仕向け

確実な手段で

籠の鳥にするつもりなのだろう。




つまり僕は捨て駒。





「・・・相分かった。下がってよい。」


僕はそれだけの言葉以外に、

他には何も発することは

ありませんでした。





人間同士が資源を奪い合うために、

血を流すなんて馬鹿げている。





嫌だ






その夜は、

僕の心の中を表すかのような

雷と大雨。


昨日見た宝石のような夜空は、

幻のようです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ