表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者と元勇者が平和の世を行く  作者: 凪沙一人
28/36

旅之二十八 お化け屋敷?

「いいんですか? 」

 ゼファーの言葉にアマンダは不服そうだった。

「まだ、成仏したくなさそうだからな。あの家の守護霊でもやって貰うさ。こちとら死霊と一緒にパーティー組んでんだ。幽霊の1人くらい、どうって事、無ぇよ。」

 ゼファーから、そう言われてしまうとアマンダもノワも返す言葉が無い。

「二人とも、いいよな? 」

「はぁい。」

「お、俺様は別に構わん。罠避け要員がもう1人くらい増えたところで… 」

 レイは即答したがガイストには多少、動揺が感じられた。死霊なので顔色迄は判らないが。

「そいつは無理だな。レイには家の守護霊をして貰うって言ったろ? 外に出て罠に掛かるのはガイストの仕事だ。」

「そ、そうか。そうだったな。」

 ゼファーやミントに罠確認要員にもってこいだと売り込んだのは、他ならぬガイスト自身だ。ともかく、葬儀を執り行わずに埋葬だけなので死塚のゴーゼンが手早く済ませた。

「んじゃ、新居に帰るとするか。」

「えっ? そんな簡単にリフォームって終わらないと思いますけど? 」

 ゼファーの言葉にミントは首を傾げた。中に入ったのはゼファーとゴーゼンだけだが外観からでもリフォームには数ヶ月は掛かりそうに見えた。

「そりゃ人間がやったらな。だが、あの不動産屋は魔物だ。」

「それに、あたいも住むって言ってあるんだから、超特急の最優先事項って事。」

 魔物の中には一晩で城を築く者もいると聞く。民家の一軒家くらい、あっという間なのかもしれない。それも魔王の娘が住むとなれば尚更だ。その気になれば人間の建築業など失業してしまいそうだが、魔王が倒れたからといって、魔物に衣食住を任せるほど、人間は魔物を信用していなかった。ゼファーたちが家に戻ると、前で覚えのある顔が何やら話し込んでいた。

「わぁ、私が買った時よりも立派になってるっ! 」

 家の前の二人よりもレイが気になったは、そっちだった。

「ボーマン様が住まわれるのだ、当たり前だろう。」

「それより、なんでカトルが居るんだ? ホワイトベルにでもフラれたか? 」

「う、うるせぇっ! フラれるとこまで進んでねぇやっ! 」

 不動産屋と話し込んでいたのはR.テミスの伝書妖精となったクォーターエルフのカトルだった。どうやらまだ、ホワイトベルと交際まで漕ぎ着けていないようだが、それを自ら暴露してしまって顔を赤くしていた。

「そ、そんな事よりお前らに客だ。R.テミス様の命令でR.ヴァイトの所に連れて行ったら、なんやかんやで此処に居ると聞いて案内した。あとは本人たちに聞いてくれ。じゃあな。」

 ホワイトベルの件が、余程恥ずかしかったのか、カトルは直ぐに行ってしまった。

「なんやかんやって… なんでしょうね? 」

「なんやかんやは、なんやかんやだ。」

 ミントの疑問にゼファーはそう言って家に向かった。結局、ミントの疑問は晴れずに首を傾げていた。不動産屋も物件の引渡しを終えると逃げるように姿を消した。扉を開けるとゼファーは立ち止まった。

「あんたらが客? 」

 ゼファーの目の前に居たのは身長50センチメートルほどの2体の小太りのミイラだった。

「死霊に魔王の娘に幽霊の次はミイラか? ここはお化け屋敷か? 」

「コホン。今はこのようななりをしておるが、我々は神だ。」

 一匹のミイラがそう語ると、もう一匹のミイラも頷いた。相手が神様だと言って、今さら慌てたり態度を改めるようなゼファーでもない。

「まぁ、残念な女神の知り合いらしいから、そうなんだろうな。どうせギルドに寄ったって事は依頼なんだろ? 人に何か頼もうってんなら、ちゃんと名乗って貰おうか? 」

 普通なら天罰でも下されそうな態度だが、そうもならない。魔王を瞬殺したという肩書きは伊達ではない。

「我は太陽神アモンラー。」

「妾は美と富と豊穣と幸運の女神ラクシュミー。」

 それを聞いて思わずボーマンが吹いた。

「よく自分で美とか幸運の女神とか言ってて恥ずかしくないな? 」

一応・・、神様なんだから失礼だよ。」

 ミントに言われて堪えてはみたが、やはり吹き出しそうなのでボーマンは席を外した。元々、魔族と神では互いに気が合わない。

「んで、そのミーとラーが何の用だ? 」

「ミーと… 」

「ラー? 」

 思わずミイラたちが困惑した声をあげた。

「そのなりで神の威厳も無いもんだろ? 」

「失礼しまぁす。」

 不意にミントがミーの頭にリボンを着けた。

「何をする!? 」

「すいません、見分けがつかなかったものですから。」

 ミントにそう言われてミーとラーは互いに顔を見合せ、全身を見回してから軽く互いに2、3度頷いた。

「た、確かに。それで依頼なのだがカーさんとバーさんを探して欲しい。」

「母さんと婆さん? 」

「いや、生霊カーさんとバーさんだ。」

「なんとなくミイラとラーとカーとバーってのは繋がるが… 何でミーまでミイラ姿なんだ? 」

「魔王が居た頃は貧困、不況、不作、と人間たちは何かにつけて祈りを捧げてくれたものですが、最近は信仰心も薄れ神々同士も手を取り合わざるをえない状況。親睦をはかる為にレクリエーションを開催したのですが… 」

 ここでも「魔王の居た頃は」かとゼファーは溜め息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ