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勇者と元勇者が平和の世を行く  作者: 凪沙一人
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旅之十四 和解する?

「あ、あんたが魔王おやじを倒した勇者… 」

「元、な。今の勇者はあっちだから。」

 ゼファーが親指で指した先でミントが申し訳なさそうに手を振った。

「おいおい、なんであんたが勇者じゃないんだよ? これじゃ、もし仇を討っても浮浪者狩りしたみたいになっちまうだろ。」

 これを聞いたゼファーは眉を顰めた。

「そいつは… 俺と戦って勝てる… と言ってるのか? 」

 するとボーマンは慌てて首を横に振った。

もし(・・)って言ったろ。魔王おやじを瞬殺するような化け物に勝てるかってんだ。」

「そいつは良かった。弱い者虐めは趣味じゃねぇからな。」

 おそらく、世界広しといえどボーマンを弱い者扱い出来るのはゼファーぐらいなものだろう。

「それで、元勇者。昼寝の邪魔して悪かった。文句ぐらいなら後で聞くから、退いて貰えるかな? 」

 ゼファーがチラリと視線をミントに向けると、ベン・Kもミントに視線を向けた。

「何があったか知らないが、ここは嬢ちゃんが折れるのが早いと思うんだがな? 」

 ベン・Kに言われなくともミントにもわかっている。ゼファーだからこそ、ボーマンの一撃を軽々と弾き上げたが、自分が食らったら、ひとたまりもない。

「そうそう。俺と別れるとなったら、染みの着いた下着残して身ぐるみ剥ぐって約束だったっけな。また質種にすりゃ当面の飯代くらいにゃなるだろう。」

 ここで防具を剥がれたら、それこそ、瞬殺されてしまうだろう。だが、ミントの口を突いたのは懇願の言葉ではなかった。

「だぁかぁらぁ、染みなんか、ありませんっ! 」

「じゃ、見せてみろよ? 」

「誰が見せるかぁっ! 」

 二人のやり取りを見ていたボーマンとベン・Kは首を捻った。

「妖神坊。よく、こんな分からない生き物と一緒に居られるな? 」

 ボーマンが呆れたようにベン・Kに声を掛けた。するとベン・Kも呆れたように答える。

「いや… シャナとゴーゼンは、こんな変じゃない。」

「誰が変だって!? 」

 つい今し方まで言い争っていたかと思えば、今度は異口同音。息ピッタリに同じ事を言う。

「お前ら面白いな。仲間に入れろ。そしたらシャナを狙うのは辞めてやる。」

「悪ぃが、パーティーは解散… 」

「し、してません。」

 思わずミントは全力で否定した。ボーマンの申し出を受け入れるのが一番、平和的解決策である。だが、その為にはミントとゼファーが組んでいなければ成り立たない。もうベン・Kの言うとおりミントが折れるしかない。きっとゼファーは折れなくても困らないのだから。

「けど、魔王おやの仇と組むなんて、いいのかい? 」

「別に親っていっても産んだんじゃなくて造ったんだしね。それに魔物は人間みたいに金だの権力だのじゃない。より強い奴が上に立つ。そういう意味じゃ、魔王おやじを瞬殺するような奴の下についても魔物だれも不思議がりやしないよ。」

 それを聞いて二、三度軽く頷いてからゼファーはミントを見た。

「だそうですよ、勇者殿。」

「意地悪っ。ゼファーさんは、どう思うんですか? 」

 名ばかりの勇者であるミントを今までゼファーは勇者殿などと呼んだ事はない。何しろレベル1なのだから。

「いいと思うぜ。 さっきのお前らの会話からするとシャナ王と同じ顔で魔王の娘。連れてくだけで交渉が早く纏まりそうじゃねぇか。」

「ちょっと待て。あたいにシャナの偽物を演じろと言うのか? 」

 ボーマンとしてはシャナの偽物扱いされるのが嫌でシャナの命を狙っていたのだから、この話しは気に入る訳がなかった。

「違ぇよ。シャナのふりして気づかない人間どもを騙くらかすんだ。人間を化かすなんて簡単だろ? 」

「あ、当たり前だ。人間を騙すくらい容易いものだ。だが、勇者がそんな事を言っていいのか? 」

「だから、俺は元勇者。今はただの無職だから、人様に迷惑掛ける訳じゃなきゃ無問題もうまんたい。」

「・・・やっぱり変な奴だ。だが、あたいには丁度いい。」

 ミントには何が丁度いいのか分からなかったが、とにかもかくにも魔王のの娘ボーマン姫がシャナ・B・ナースの命を狙っている件が解決したので、それでよしとする事にした。

「なるほど。では二度とシャナ様の御命は狙わないというのですね? 」

 まだゴーゼンとしては半信半疑なのだろう。

「あ、あたしが保証します。」

 ミントが保証しても何の効力も無さそうではあるが、それでも一応は勇者である。

大丈夫でぇじょぶだよ、心配すんなって。そんな事したら兄貴に魔王おやじみたいに瞬殺されちまうからな。」

「兄貴? 」

 再びゴーゼンが怪訝そうな顔をした。

「あぁ。魔界一強かった魔王おやじを倒したんだ。魔物の頂点に立つのに人間だからって名前で呼ぶ訳にゃいかねぇ。かといって無職じゃ肩書きも無いから兄貴って呼ぶ事にしたんだ。」

「ゼファーさんは、いいんですか? 」

 思わずミントも聞いてみた。

「あぁ。オヤジとかオッサン呼ばわりされるよりは何百倍もマシだからな。」

 なんとなくではあるが、状況を納得したゴーゼンは再びミントを馬車に乗せ、ノワとアマンダの替わりにゼファーとボーマンを乗せて街へと向かった。

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