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勇者と元勇者が平和の世を行く  作者: 凪沙一人
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旅之十二 親の仇?

「それはそれは、ご苦労様でした。魔王を倒して頂き、わたくしからも厚く御礼申し上げます。」

 シャナはスカートの裾を持ち、腰を落として軽く頭を下げた。

「お礼? 俺は親の仇だろ? 」

 どうも話しが変だとばかりにゼファーはシャナに問い質した。

「親の仇? 貴方はわたくしの両親を手に掛けたのですか? 」

「だって… 魔王の娘なんだろ? 」

 シャナは不思議そうに首を傾げた。

「わたくしが魔王の娘? どなた様がそのような事を仰ったのですか? 」

 シャナから、そう問われてゼファーは親指で後ろに居たガイストを指差した。

「そのお姿は悪霊騎士ですか? 」

「悪霊じゃなくて死霊騎士だ、死霊っ! 怨念にも因縁にも縛られちゃいないって。」

 どうやら、ガイストは悪霊とは区別して欲しいらしかった。悪霊となれば人に害を為す存在として聖職者が問答無用で浄化、除霊に来る。ましてシスターと同行しているのだから無理もない。

「なぜ、わたくしが魔王の娘などと? 」

「魔王の側近の部下の友人が、魔王が娘のシャナ・B・ナースをナントカって話しをしていたと、俺様の友人がしていたんだ。」

 それを聞いたゴーゼンが呆れていた。

「又聞きもいいところですね。正しくは魔王が人間の娘のシャナを贄として手に入れた、です。ほどなくして魔王は、そこのゼファー様に倒され世話係りをしていた僕と見張り役だったベンはシャナを連れて抜け出しましたが。」

「えっ!? じゃぁ、あの超大物って噂は何だったの? 」

「超… 大物… ですか? 」

 アマンダの問にシャナは首を傾げた。

「おそらく… ボーマン姫と話しが混同されているのではないでしょうか? 」

 ゴーゼンの言葉にシャナだけが納得していた。

「こんな道端では何ですから、村に戻りませんか? もちろん、帰りもゴーゼンに送らせますから。」

「送って貰えるんなら、いいんじゃないですか? 」

 ミントが顔を覗き込むとゼファーは首を横に振った。

「ノワ、アマンダ。二人の依頼は解決なんだろ? 相手が人間なら俺たちの出る幕じゃない。」

「それじゃ、あたしだけ行って来ます。」

「はぁ!? 」

 ミントが行くと言い出してゼファーは呆れた。

「何しに行くんだ? 村を滅ぼすかもしれない魔物ってのは、ただの疑心暗鬼だったんだ。もう行く必要ないだろ? 」

「シャナさんの話しを聞くって言ったじゃないですか。あたしに任せるって。だから、お話しを聞きに行くんです。」

「勝手にしろっ! ガイスト、街に帰るぞっ! 」

「あたし抜きじゃギルドの依頼、受けられないでしょ? 」

「ギルドの依頼は無理でもガイストなら傭兵の仕事くらいある。宿はヴァイトの所にでも泊めてもらうさ。」

 ミントは拳を強く握り締めた。

「… 解散ですね。短い間でしたがお世話になりました。」

「… せいぜい野垂れ死なないよう気をつけるんだな。」

 ゼファーはガイストを引き連れて街へ帰って行ってしまった。

「よろしいのですか? 」

「あ、あたしだって勇者の端くれです。ゼファーが居なくても何とかなります。」

 言っていてミント自身が誰よりも危ぶんでいた。何しろレベル1。救いは、あの場でゼファーが勇者装備を剥いでいかなかった事である。ミントたちが馬車に乗り込むとゴーゼンは出発させた。

「シャナさんは、どちらの方なんですか? 」

 ミントの質問にシャナは俯いてしまった。

「あ、ごめんなさい。無理に話さなくても大丈夫ですっ! 」

「いえ。村に着いてからお話しするつもりでおりましたから。わたくしは、とある国の王の娘でした。」

「え!? お姫様っ! 」

「いえ。国はとうに魔王に滅ぼされてしまったので、今は姫ではありません。修道院に引き取られ、身元が判らないようシャナという名前を頂きました。その修道院も魔王の手の者に襲われ、わたくしは囚われの身となったのです。」

 不意に馬車が止まった。

「着きましたよ。」

 馭者台からゴーゼンの声がした。

「え!? 歩いて5日くらいって… いくら馬車でも早くありません? 」

 ミントはノワの話しを思い出していた。

「いや、女の子でも、道に迷わなければ3日で着くはず。それに、この馬は魔王の所から抜け出す時に拝借した代物だから普通の馬より数倍早いからね。」

 それを聞いてアマンダはノワに詰め寄った。

「やっぱり… 道、間違えたんだよね? 」

「いいじゃない。ちゃんと着いたんだし、勇者の装備もミントさんが着て来たし、シャナさんの問題も解決したし、すべて予定通りじゃないの。」

 ノワの言っている事は間違ってはいないのだが、アマンダには腑に落ちなかった。それは結果的に予定通り勇者の装備が村に来て、勇者が来て、シャナの件を解決してくれる、となっただけで途中経過は全く予定通りではなかった。

「お喜びのところ、申し訳ないけど、シャナ王様の件は解決したかもしれないが、魔王の娘の件は片付いていませんよ? 」

 それを聞いたミントだけでなく、ノワやアマンダも首を傾げた。

「だってシャナ王は魔王の娘じゃないんでしょ? 」

 アマンダが疑問をストレートにぶつけた。

「先にシャナ王はやめて頂けますか。治める国は既に無いのですから。それから、わたくしは魔王の娘ではありませんが、ボーマン姫は魔王の娘ですよ。」

 思わずミントたちは頭を抱えていた。

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