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勇者と元勇者が平和の世を行く  作者: 凪沙一人
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旅之十一 魔王の娘

「そ、それ本当ですか!? 」

 思わずノワも聞き返した。

「まぁ、その娘が本物かどうかだ。何しろ魔物でもシャナ王の顔を知っている魔物は全てゼファーが退治しちまった。」

 つまり真偽の確かめようが無い。

「そのシャナって奴も王って付くくらいだから強いんだろ? 」

 ゼファーの問いに誰も返事をしない。顔を知っている者が居ないのだから、実力も分からないのだ。魔王の娘という事で、親の七光りなだけかもしれない。もしかしたら、魔王を凌ぐ力の持ち主かもしれない。そして魔王の娘は嘘でも実力は本物と云う事もあり得る。まさに未知数である。

「とりあえず、お話しを伺ってみると云うのはどうでしょう? 」

「よし、任せたっ! 」

 何の気なしに言ったミントの一言にゼファーが反応した。

「なにナニ何!? 」

「何って… お前が話しを聞いてみるって言い出したんだから、お前が話しを聞くのが筋だろ? 勇者なんだし。」

「都合のいい時だけ勇者扱いしないでくださいよ。もし父親似の性格で父親譲りの能力だったら、あたし殺されちゃいますよ!? 」

 そんな正体不明な相手にミントは自分には荷が重すぎると感じていた。

「そりゃ残念だな。ミントで相手の出方を伺おうと思ったんだが。」

「それってガイストさんの役目じゃないんですか? 」

 確かに殺されても死なないから、罠チェック要員という名目でパーティーに入れた筈ではある。

「いや、本物だった場合、ゼファーと組んでる時点で裏切り者として消滅させられるだろ? 死霊騎士にとっちゃ、浄化も消滅も、この世に残れないって意味じゃ一緒だから。」

 ガイストが全力で拒否をすると、ゼファーは視線を一旦、ルレ姉妹に向けたが、首を捻ってから横に振った。

「ノワ、シャナは自分たちぐらいの女の子って言ったよな。会ったこと、あるのか? 」

「会ったというか、遠くの物陰から見かけたというか。」

「つまり、ハッキリ見た訳じゃないんだな? 」

 ノワとアマンダは激しく頷いた。

「取り敢えず、村に行ってみるしかねぇな。」

 結局、ノワとアマンダの村にシャナとベンと名乗る正体不明の二人組が居る、というだけだった。

「ヴァイト、今回稼ぎにならないから、帰って来るまでに儲け話用意しとけよっ! 」

「はいはい。どう転んだってゼファーが負けるなんてあり得ないからな。こっちも儲かりそうな案件を探しとくよ。」

 そう言ってゼファーたちを見送ったヴァイトの心配は、ゼファーがどれだけ早く帰って来るかだ。自身の城の奪回するのに想定より、かなり早かった。そもそも魔王を瞬殺するような奴である。どう考えても負けはない。

「それで、村までどのくらいかかるんだ? 」

「そんな遠くないですよ。歩いて5日もすれば着きますから。」

 ゼファーの質問にノワが笑顔で答えたが、ミントとゼファーの足が止まった。

「まさか、歩く気じゃないよな? 」

「え? 歩く以外、ないじゃないですか。馬車なんか高くてとても手が出ませんし。」

 金貨十枚で勇者の装備を買おうとしたルレ姉妹に、そんな余裕がある筈が無かった。

「移動系の魔法とか無いのか? 」

「そんなの、あるわけ無いでしょ? あたしなんか治癒魔法でさえ怪しいのに。」

 あまりに堂々と答えたアマンダだが、シスターとしては威張れる話しではない。かといって、行った事の無い場所に跳ぶようなご都合主義の魔法も存在しない。

「おい、ガイスト。お前も騎士なら馬ぐらい持ってないのか? 」

「俺様のは馬も死霊だから生身の人間は乗れないの。」

 呆れたようにガイストが返した。

「じゃあ、ヴァイトから馬車借りてこい。あいつだって、伯爵の出なんだろ? 」

「そんな資産が残ってたら、ギルドの管理人なんか、やらないって。もう、あの3つの城しか残ってないんじゃないか。」

 そこへ一台の馬車が通り掛かった。

「こうなりゃヒッチハイクだ。」

 言うが早いかゼファーはガイストを突き飛ばした。馭者の男が慌てて馬車を止めた。

「今、この方を突き飛ばしたように見えましたけど? 」

 馭者台からフワリと舞い降りると男はガイストに手を差し伸べた。

「何事ですか? 」

 馬車の窓から顔を出した少女を見て、ノワとアマンダが慌て出した。

「どうしたんだよ? 」

「しゃ、しゃ、シャナ王っ。」

 ゼファーの問いに、なんとかノワが答えた。

「あら、村のシスターじゃないですか。村に帰るところなら、乗って行きませんか? 」

 そう語りかける姿はゼファーの倒した魔王とは似ても似つかぬ、普通の少女だった。

「お前さんがシャナ・B・ナースかい? 」

 ゼファーの問い掛けにシャナは不思議そうに馬車を降りてきた。

「えぇ。わたくしがシャナです。お名前を伺っても宜しいかしら? 」

「俺の名はゼファー。ゼファー・ゼピュロス。お前さんに会いに行くところだったんだ。」

 その名を聞いて馭者の男がスッとシャナの前に出た。

「お前さんがベン? 」

「僕は、あんな屈強じゃありませんよ。妖神坊ベン・Kなら村で留守番です。騒ぎは起こしたくありませんから。僕は死塚のゴーゼン。要するにアンダーテイカーですよ、魔王退治の勇者殿。」

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