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勇者と元勇者が平和の世を行く  作者: 凪沙一人
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旅之十 救世主は誰だ?

「はぁ… 伝書妖精から話しは聞きましたけど。今回は城を取り戻してな… 」

 街に帰ってきた一行に減額交渉をしようとしたヴァイトだったが相手が悪い。魔物の天敵ゼファーがシスターを二人も引き連れている。下手に逆らおうものなら命がいくつ有っても足りやしない。

「はいはい。払いますよ。逆らったら灰も残らないよう始末する気だろ? 」

「いや、灰に異物混入実験とか、虫の体液でも蘇生するか実験とか、研究素材として売れるかもしれないだろ? 」

「やめんかぁっ! 想像しただけで鳥肌が立つ。お嬢ちゃんたち、悪い事は言わないから、こんな魔王より性質たちの悪いのとは早く別れた方がいいよ。」

「よく飯の種って呼ばれてますけど、ゼファーさんもあたしにとっては飯の種なんで。」

 ゼファーとミントが組んだ最大の理由は“二人とも飯が食える”と云う事だった。だからミントの言っている事も間違いではない。しかしヴァイトは腑に落ちない。

「でも、これじゃいつまでたってもレベル上がらないだろ? 」

 言われてみればミントはレベル1のままだ。無理もない、ゼファーが倒したのは討伐依頼のオークだけなので、その後は報償金は出ているが、経験値が入ってきていない。

「で、でも穏便に事が片付いていると思えば。勇者なんてレベル上げても魔王がいないとニーズが薄いですから。」

 確かにミントの言うとおり、魔王以外の魔物なら勇者に拘る必要は無かった。魔王を倒すのに必要な装備が勇者しか装備出来ない。そんな防具をレベル1の勇者が装備して剣はいまだに質屋にあるのだが。

「これで、私たちの村に来てくださいますね。」

「あ、思い出したっ! 」

 にこやかなルレ姉妹を見てヴァイトが声を挙げた。

「ギルドに金貨十枚で依頼させろって言ってきた貧乏シスターっ! まさか、依頼、受けたのかっ!? 」

 あのゼファーが、こんな金にもならない依頼を請けるとは思えなかった。

「そう不思議がるな。引き受けたのは現役勇者様だ。」

 頭を掻くミントの姿にヴァイトも納得した。

「あぁ、なるほどね。時代遅れの真っ当な勇者っぽいよね。」

「な、何ですか。その時代遅れの真っ当な勇者って!? 」

 呆れたようにヴァイトは溜め息を吐いた。

「魔王が生きていた時代なら、ともかくだな。皆、自分がいきるので精一杯なんだ。他人の為に何とかしてやろうなんてのは流行らないご時世なんだよ。」

 するとミントがチラリとゼファーを見た。

「あ、こいつは真っ当な勇者じゃなくて極悪な勇者だから。」

「ヴァ~イ~ト~。」

「あ、いや、魔物から見たらだ。刃向かう者には一切、容赦しない最凶の勇者って。魔物からしたらゼファーの方が魔物だったって話。」

 ゼファーに声を掛けられて、ヴァイトは慌てて言い繕った。

「そのわりに、今は話し合いで解決するんですね? 」

 プランタンとのやり取りを直接聞いていたアマンダが不思議そうに尋ねた。

「今、こいつも言ったろ。刃向かう奴に容赦しなかったって。人間と見りゃ誰彼構わず襲って来やがるから捩じ伏せただけで、そうでなけりゃ、こいつらみたいに生き延びてんだろ。」

 そう言って指されたガイストもR.ヴァイトも、それにプランタンも生き延びた。ノワやアマンダは知らないが一つ目の城の魔物も二つ目の城の蜂たちも、なんだかんだで生き延びている。

「本当は優しいんですね。」

 ノワに声を掛けられてゼファーは笑い出した。

「いや、レベルも上がらないような小者相手してても時間の無駄だったから、すっ飛ばしただけだ。そんな事より、そつちの依頼だ。勇者に来てもらおうなんて言うくらいなんだから大物か? 」

 するとノワとアマンダは顔を見合わせた。

「それが… 自称、超大物らしいんですが、本当なのか、ハッタリなのか。その本人は私たちくらいの女の子で。」

「女の子? その子を退治しろと? 」

 ゼファーが訝しそうに首を捻った。行ってみたら、ただの女の子だった日には、それこそ時間の無駄である。

「その子に仕えてる従者がいかにも強そうで。」

「その自称とか、強そうとか、誰か確認した奴は居ねぇのか? 」

「それを確認していただきたく。その、自称が本当だったり、従者が本当に強かったら、あんな小さな村なんか全滅してしまいます。」

 ノワの言うことも、もっともだが自ら確認しようとする気概のある者が居ないのも現実であった。引き受けたミントも、本当の話しだったら、自分なんか一溜まりもないだろうなと漠然と思っていた。ゼファーは、本当の話しだったら、金貨十枚じゃ割りに合わないなと思っていた。

「女の子はシャナ・B・ナース。従者はベン・Kと名乗っていました。」

 二人の名前を聞いて、明らかにヴァイトとガイストが動揺を見せた。

「なんだ、二人とも。そんなに超大物だってぇのか? 」

 ゼファーには、とんと覚えのない名前だった。

「超大物って言うか、超大物の御息女って言うか… 。」

「煮えきらねぇなぁ。ハッキリ言えよ。」

「シャナ王は、あの魔王の娘だ。」

 ヴァイトの答えにルレ姉妹が固まった。

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