表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/42

ゲシュタルト崩壊

 空気が入れ替わり暗闇が晴れた。酒精と臭気で澱んだ醜悪な臭いが薄れるが鼻は馬鹿になり頭が回ったまま急な強い光に目を白一色で塗り潰される。

 瞼を閉じても焼き付いたままの光が数十の時を数え漸く徐々に消えいくと吐瀉物の先にローブから覗く靴先が。

 ようやく迎えが来た安堵と共に嘔吐感を押し潰す程の激情が炸裂した。


おそいお(遅いぞ)!!!」


「酔っている割には元気な様だねラフィラン」


 元グルム王国魔導師長ラバレロの抑揚の無い平坦な言葉に一変する。

 真っ赤だった顔が真っ青に。それはそうだラフィランがラバレロに対して行った諸事を思えば因果応報と言う言葉を踏まえて尚一層に青くなるだろう。


「いやはや懐かしい。初めて会ったのは襤褸切れを纏った君が衛兵を殺そうとしているところを私が止めた時だったかな」


 一度も聞いた事の無い。どこか静かでおどろおどろしいラバレロの声が耳を侵す。


 淡々と戻る視界、映るのは太陽を背にした人影に浮かぶ背筋も凍る様な笑顔。正確に言えば般若の様に笑顔の様にも見えるだけだ。


「全く。身の上を聞いて衣食住を得れば考えを改めるかと思えばこそ王に合わせてみたけど失敗だった。

 魔導師を辞去した時に残した弟子を追放し私の友を王都から追い出した挙句、殿下に在らぬ罪を被せるとは。

 恩を売ろうとした訳では無かったんだが随分な恩、いや怨返しだ」


 ニコニコと孤月の様な口から漏れる怒り。ラフィランは魔導士長を引き継いだ途端に前任者の色を徹底的に排除したのだ。


 組織の再統合も私利私欲に塗れてさえ居なければ不快には思ってもラバレロが怒る事はなかった。ラバレロが整えた組織を無茶苦茶にしたのだ。

 ラバレロの弟子や恩を感じていた魔導士の排除から始まり、魔法具など装備の仕入れ先まで変えた。特に装備面で言えば質を無視して賄賂の有無に重点を置いた辺りクソの極み。


 加えて特に腹に据えかねたのは王都にいた友にまで危害を加えられた事で有る。彼等に関しては政治的な理由さえ無く唯の腹いせであった。


 何より己が全て、凡そ悉くを捧げ仕えるも厭わぬ王太子を貶めた事には激烈な怒りを覚えている。ラバレロにとって自分以上に王太子が悪意に晒される事の方が耐えられないのだ。


 正に積年の恨み、淡々と痛烈に。


「お、|おえを『俺を》、こおしに(殺しに)?」


「フフ、さてね。そろそろ視界は戻っただろう。見たまえよ」


 フワリ漂う質のいい紙がラフィランの目の前に。端的に言えば罪状を連ねた告発状。正直に結果だけ先に言っちゃうとラフィラン王直魔導師長はクビ(物理)。

 特筆すべき罪状は王太子暗殺未遂と内乱誘致による国家転覆を引き起こそうとした大逆罪だ。


 はいアウト、言うまでもなくアウト、魔法使いとか関係無しにアウト、極刑。


 魔導師長と言う立場と才能が為にある程度の罪は見逃されてたが大逆罪まで犯していれば裁かない訳が無い。


 それに、これを機に軽く探りを入れれば悪事出る事山の如し、ラフィランは方々に恨みを買っていた。脅迫や賄賂、脱税などを始め数えるのも億劫になる様な罪過の数々だ。


「随分と好きにやったね。魔法使いなら裁かれないとでも思ったのかな?」


「ま、まろうしあぞ!?」


「だから裁かれない、と?確かに魔法使いは法の外に置かれる事も多いけどね」


 辟易と呆れた様なラバレロ。


 ラフィランは酔いに揺れる頭を捻り魔法使いの相互補助機構的な側面を持つ魔導の円卓と言うものを思い起こした。


「ま、まろうのえんあく、に」


「魔導の円卓、本気で言ってるのかい?境界都市を治めてる王太子に内乱の疑義をでっち上げて国を混乱させておいて」


 いくら魔法使いが重用される世界つっても限度って物がある。しつこい様だが境界都市を含む国の混乱を助長するのは人類の敵というのは国を超えた認識だ。

 それを人外の力を持つ魔法使いが行ったとなれば力を持つ魔法使いだからこそ徹底した排除を望まれる。


 力には相応の責任が伴うのだ。其れを理解出来ない魔法使いはどれ程の才が有れど三流。


 前例主義的に許せる事では無く許して良い事でも無い。国が処理しなければ別の組織が手を出す様な事件と言える訳だ。

 寧ろ魔法使いの立場を良くする為の機関で有る魔導の円卓こそ自浄努力を徹底するだろう。


「魔導の円卓も境界都市の混乱を誘発する事を重罪としている。言うまでもなく世界への叛逆さ。即ちグルム王国としても魔法使いの君を罰さざるおえない訳さ」


 ラフィランはゲロ塗れの口を開けたまま呆然としている。

 魔導の円卓は雑に言えば魔法使いによる国を越えた相互補助機関だ。まぁ国を越えた機関と言って思い浮かべる程に確りした物では無いが、不当な扱いを国から受けたとしても逃げ込める場所とでも考えて貰えれば今はいい。

 何やっても魔法使いだから助けてもらえると勘違いしてた小物が、何も考えずに悪事に手を染めた訳で。アホ面の滑稽さたるや憐れむ事出来ない。


「喜んでくれ。君への罰は魔法使いらしく酒精漬刑だよ」


 酒精漬の刑とは魔法使いに適用された刑罰として最古の物だ。古の時代に魔法使いを酒精水晶で酔わせ酒樽に突き落として溺死させた故事に由来する。

 地味に歴史ある刑で酔って訳わかんない内に死ねる分処刑法としてはマシな部類だ。


 ラバレロの顔が冷酷に歪みラフィランの顔が土気色に。


「ま、まえ」


 酔いによって抵抗出来ないどころか待て言う事さえ出来ないラフィランの首が魔法によって土を固めた筒が覆う。魔法で無理矢理口空いた口に熟れて雫の様になった酒精結晶が放り込まれぐったりと。


「あ、ああ、許——」


 恐怖と後悔に歪んだ顔を土の蓋が覆う。刑を執行し恨みを晴らした少しの清々しさと大きな虚無感に辟易。


「残念だよ。才は認めていたんだがね。最後まで力相応の自制心を持てなかったか」




 グルム王国の北西部、ドラコ地方ラタ・フラーテル州。今ではグルム王国とユグドラド帝国の国境である。


 先代グルム王国オリハルコニス七世の頃は二つの国があり、グルム王国と同盟を結んでいたアーウルム生母の出身国とユグドランドとの従属国が争っていた。

 前者はユグドラド帝国に滅ぼされかけてグルム王国に保護吸収され、後者はアダマティオス四世即位時にユグドラド帝国と共にグルム王国に攻め込んだはいいがボコボコにされ国の程を保てずユグドラドに組み込まれ消滅。


 今では五つの州の内グルム王国が二州、ユグドラド帝国が三州を保有している。

 この地方を囲う断界山脈の海方面は壁状山脈で完全に分断されており、ラタとその支流の内で最も大きな川の二つだけが大軍を移動させられると言う難儀な場所だ。


 で、そのドラコ地方のグルム王国とユグドラド帝国国境に建てられたグルム王国側の要塞を七万のユグドラド帝国軍が包囲していた。


 その要塞近くの丘の上で、赤らんだデカい団子っ鼻の下にボッッサボサの口髭を生やした禿げジジイが、地べたに座って酒瓶を傾けている。

 両の瞳はどこか淀み濁って半開きの口は痴呆の様、服装は異様に凝った装飾だがどう使ったのか想像も出来ない程に縒れ痛んでいた。場末どころか貧民街の酒場に居るべき様な雰囲気、出で立ちのチグハグさが余りに強い。


 貴族の捨てた服を着る酒に溺れた浮浪者の老人とでも言ったところか。しかし一本腰に吊るしたサーベルの手入れだけは見るものが見れば警戒を呼ぶ。


「あー帰りてえ。俺の腰が死にそうだ」


 酒焼けした顔と潰れた声で言う割に背筋は伸びている。しかし剛人と祖人の特徴を持った半人、祖人にしては背が小さく剛人にしては筋肉が無い体は酷く不恰好。


 太っては無いが弛んだ頬を皺まみれの手で挟み撫でながら団子鼻で匂いを嗅ぐ。


「改修したたぁ聞いたが下水道まで掘りやがったのかあの砦は」


 潰れた様な目が面倒臭そうに細められる。最近、と言っても数年前に建てられた目の前の砦を建築直後に攻めた時は同じ場所に城兵の3日程身体を洗えなかった臭いが漂って来たものだ。


 それが無い。


 ヤケ酒を呷る。


「ップハァー……手間だ。グルムにちょっかいかけるなんて思考が出来るバカは気楽なこった。自分が面前に出ねぇから言えるんだろうがよ……全員縄でふん縛って竜翼騎兵の壁にしてやろうか」


 場末の酒場で愚痴る様に吐き捨てる。感情を抜きにしても友の子が死んだ事がつくづく惜しい。


 間抜けな貴族を締め上げるのが後十年早く始められていればグルム王国に対しても有利に立てた筈だった。少なくともユグドラド帝国軍は皇帝軍と貴族の連合的な軍編成による烏合の衆からは脱却できていた筈なのだ。


「ストアさえいれば国の改革も容易だったんだ。奴の財力を借りる事さえ出来れば軍政どころか内政も外政も一気に好転させられた」


 言った所でどうしようもない。だが言わずにはいられなかった。さてこの酔いどれの浮浪者にしか見えない半人の老人が漏らす言葉は少々国家の内情に深い言葉だ。


 というのも彼はユグドラド帝国皇帝軍大元帥グレナリュー・テッフェルレット=ヴォスコンソと言う。

 意味合いとしてはヴォスコンソ領を治めるテッフェルレット家のグレナリュー。


 彼を端的に評するならユグドラド帝国の支柱。


 今は味方だが元敵国の大国エリュシュオンで権勢を誇ったテッフェルレット家の三男で色々あって17の時に出奔。

 祖国との戦いで崩壊しかけていたユグドラド帝国へ士官して活躍し、ユグドランド地方で故国エリュシュオン王国を筆頭としたユグドラド包囲網にて数多活躍して躍進。ユグドラド帝国の領地を広げに広げた老将だ。


 軍歴は既に70年を優に超え今では五人の元帥号を持つ者達を統べている。


 そんな彼はガリガリと乱雑に頭を掻く。地主の脅威があったばかりなのに内戦を起こす者は王に相応しくない。

 そんな大義名分を与えて来たアダマティオス四世の行為は狙ったのかはさておき土地を持たない貴族の欲を刺激した。土地が増えれば統治に人が必要で、閑職の者と言わずとも自身の権勢を求める貴族には垂涎の馳走。


 政治的理由で出兵せざる終えなかった訳だが遣る瀬無い。一度、空を見上げて思考を巡らせ辟易と溜息を。


「閣下」


 彼の背に声がかかる。声をかけた青年は馬に跨っており、老人の衣装の装飾を減らした様な服装だ。ブーツと白い乗馬ズボンを履き、丈の長めでぴっちりした上着……パキスタンかどっかのシャルワニだか何だかっぽいのを腹の部分に巻かれた太いベルトが抑えている。


 青年の肩章を見ればドラコ地方元帥参謀だ。彼は近くまで寄って馬から降り、丘の上に腰を下ろす老将グレナリューに向かって首を垂れ膝をついた。


「此方にいらっしゃっいましたか。」


「おう元帥を待たせちまったか、悪いな。どうも戦場周辺は目に入れとかねぇと落ちつかねぇんだ」


 グレナリューはそう言って立ち上がると尻に付いた土を払う。


「いいえ。寧ろ元帥も閣下が直々に兵を率いて後詰に来て下さった事に感謝しております。閣下の高名あれば敵も戦線を後退させるでしょう」


「いや、自分で言うのは恥ずかしいがな、グルムとの戦いに俺を出すなって話だ。それなりに名の通った敵が来たと知りゃぁあの狂犬が何をしてでも噛み付いてくるぞ」


 狂犬とはアダマティオス四世である。戦歴70年を超える大元帥の言葉に若き参謀は身震いした。


 さて、これまで大元帥グレナリュー公の言動と少々の経歴、アダマティオス四世がどの様な反応をするだろうか。


 答えは簡単だ。


 現在、ラタを登って進軍中。


 うん。


 ユグドラド帝国来襲、その数五万以上。そんな報告が前線要塞から王都を経由してアダマティオス四世の元へ情報が行ったのだが、なんかを感じ取ったっぽい王はその報告が来る前にアーウルムへ伝書を残しドラコ地方へ飛んでった。

 正に飛んでった様な速さ、ラタ大河の流れに逆らいながら来た時間とほぼ同じ時間で王都に着きそのまま進軍だ。


 ちょっと頭おかしい。


 早過ぎるんでややこしいが飛んでったってのは比喩だ。ちょっと実際にやってる事が怪しいけど、魔法じゃない。じゃ無いんだけど飛んでったって言われた方がうなずける速度で行ってしまった。

 そんな訳で戦が終わりそうになったら連絡するからそん時に王城に来いって感じの言付けだけを残して王の軍は消えたのだ。


「なんか、ぶっ飛んでるな……」


 慎ましやかな祝勝会の席で使者から伝えられた内容を聞き思わず呟いたラキの言葉に誰もが思わず頷く。今さっきまで戦争してたのに、もう次の戦争行くんかこの国の王様。的な。


「あの戦ボケは変わらんな」


 あ、いやログラムを除いて。祝勝会は別れて行われ評定の場として使われた部屋は各傭兵団長と領主陣に魔法使い等ある種の上層部のみが呼ばれている。


「それなら一度、シルヴァ・アルターに帰えってゆっくり出来るな。車輪でも買って帰るか」


 ラキは横に座っているバウバの言葉に頷いて。


「そうですね。素揚げ美味しいですし」


「うむ、どうも癖になるな」


 そう言って二人共ロタラーディックという正式名称を持つが、車輪としか呼ばれない此の地の特産品であるデカイ蓮根的な根菜のチップをパリパリ食べる。


「あと俺オリュザも買って帰ろうかなって思います」


「ああ、クルスビー殿の好物か。私も炊いたオリュザを握りアルヴソースを塗って焼いたのは好物だ。是非買って帰ろう」


 ラキは即座に焼きおにぎりを思い浮かべて涎を拭う。この世界における米ことオリュザは水辺に住む水人シレネス発祥の水辺における重要な穀物だ。何故か最も消費量が多いのは機人であるが。

 またアールヴソースはその名の通り光人アールヴ発祥の豆を使った調味料全般の名称であり実直に言ってほぼ醤油や味噌に近い物だった。


 ラキは大きな鯰っぽい魚の香草焼きを切り取り、薬味を混ぜた味噌っぽいアールヴソースを付け頬張りながら賛成だと頷く。


 祝勝会……会食とでも言った方が良い様な食事を終えて帰り支度を始める。ラキの場合は鎖を元に戻したり糧秣や武器の積み入れを手伝う。


 特に船へ大砲を乗せるのは有難られた。


 最後に馬を舟に乗せ撤収が完了すれば来た道、大半がラタ大河なので正確にいうと来た水路をプカプカ戻るだけだ。

 今回は流れに沿って下るため船足も早い。緊張が無い為に牧歌的な農場や村落に小さな桟橋、それから大きな城や港を眺める余裕があった。


「バウバさん。あの城は今まで見た中で一番大きいですね」


 ラキが指差す先にはシルヴァ・アルターに並ぶかそれ以上の規模の都市。館では無く城が建っており城壁の外にまで街が続き港と広大な畑が広がっていた。


「ああ。シルヴァ・アルター一帯を治めていた国の王城だったそうだ。見ての通り船着場として重宝されている交通の要地というやつだな」


「成る程。それで船が」


 並ぶ手漕ぎの巨船を眺める。目を凝らして見てみれば自走船が無い事に気付いた。そして河から水人が飛び出して岸に着地している。デカイ魚を背負っているあたり漁だろう。

 バウバに世話になってこの世界で生活してもう随分と経つがシルヴァ・アルターの城壁を出ればまだまだ知らない事が多いのだと痛感する。


 そんな船旅を終えてシルヴァ・アルターの港に着く。傭兵達は兎も角、ラキやバウバなどの住民の出迎えが揃っていた。


 自走船によって桟橋に着けられた船からバウバに続いて愛馬と共に降り勾配を上がれば人波。バウバが手を振れば住人達が歓声を上げる。特に甲高い女性の歓声が強い。


 だがラキはバウバが一定方向に向かって振る事に気付き、その視線を追えばクーウン達がいた。ともすればラキも満面の笑みで手を振り帰還を知らす。

 すると流石にバウバ程では無いにせよ住民の歓声が響いた。此方は子供中心だ。


 一種のパレードの様である。特にアーウルムとログラムが通った時の歓声はバウバの時と同等かそれ以上だった。

 トゲトゲ鎧のガルグが率いるアーウルムの私兵などは規律が有り、装備も整っている為に余計らしい光景である。


 群衆の列の終わりにクーウン達が回り込んで待っていた。馬の脚を止め降りれば。


「お父さん!!」


 ゴニャとグゥクゥがバウバに力強く抱きつく。この光景である。ラキが全てを捨ててでも守ると決めた光景だ。


 少しの間バウバに撫でられてからラキに向かってニッコリと笑い。


「お帰り!!」


「り!!」


 そう言った。


「ああ、ただいま」


「無事でよかったよラキ」


 バウバと話していたクーウンが代表して言う。ミャニャはラキの身体に傷が無いか確認してフッシャは笑っていた。


 無事の帰還を喜ばれながらラキは帰ってきたと実感する。子供達を両腕に抱いたままバウバが。


「さて公衆浴場(テルマエ)に行くか」


 なんかジンワリとホッとしていたラキはワシっと眉を寄せて自分の匂いを嗅ぐ。ラキは引き締まった顔で。


「・・・・・・急いで行きましょう、ええ急いで」


 戦場に風呂なんてある訳ねーし帰りは急いだので軽く身体を拭く程度、魔法も使えたが領主がいるのもあって自分だけ身綺麗にするのは気が引けたし。


 まぁ、ちょっと香ばしいよね、うん。


 子供達の相手をしていたバウバは笑って。


「ああ、そうだな。傭兵の頃は風呂なんて高いだけだと気にも留めなかったのだが」


 一拍おいて。


「今では1日入らなかっただけで獣皮に虫が湧いた様だ」


 犬顔の口吻を抑えながら言った。因みに獣皮に虫が湧いた様とは獣人が途轍も無く気持ち悪い時に使う言葉だ。バウバらしからぬ過剰な物言いに皆が笑って馴染みのテルマエへ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ