兵站構築 人って程度に差はあれどどうしても無理な物が一つはあると思う・・・Gとか
感想有難う御座います。
今回は長いですが暇つぶしにでも見てってくれたら幸いです。
高い。余りにも高く太い木々の茂る森に挟まれた大河、全てが大きな世界で小さくない筈の船団が外輪をバシャバシャと鳴らして進んでいた。直上に登る太陽は熱波と共に大河の水面を燦然と輝かせるが木々の葉に覆われた陸の方では薄暗い代わりに日陰な分涼しげだ。
もう常用されている拠点の中で最東端の巨魚の湖のほとりにある小さな見張砦は過ぎている。そこで一泊し早朝に出て昼は過ぎていた。巨魚に襲われな様に水深の浅い岸辺を進んでいるせいだが正直言って暇だ。若干だが気の抜けてきてしまったラキは窓を覗く。
猟団達員が緊迫した表情で見張りしててスゴイ申し訳なくなった。自己嫌悪に陥ってると扉を開けてコォンケがヒョコッと顔を出す。
「魔法使いの方々、船を結界で覆えるだろうか。古地図によるとそろそろ巨魚に襲われ易い地点だ」
「任せときな」
何でもないことの様に言ったマダム・リゴットが指を鳴らすと同時に球体状の薄いガラスの様な物が船を覆った。その結界の周りには円を描く帯状の文が二つ回って交差してる。ラキはなぜかバスケットボールを思い出し、同時に魔法陣や刻印版に使う文が使われていることに気付く。
自身の知ってる星や正角形を重ねた模様を中心に置いた二重円の縁に文字を書くのとは別タイプの魔方陣という事だ。ファンタジーにはメッチャ興味あるラキとしては聞かずにはいられない。
「クルスビー師匠。あの魔方陣って俺、初めて見るタイプです」
「あー帯状魔方陣か。お前の義手とかにも使われてる奴だ。結界なんかだとあっちのが手間が少ないんだが……まぁもうちょっと盤状魔法陣を扱える様になったら教えてやるよ」
「おぉー!お?」
ファンタジーっぽい事を更に知れると喜んだ途端、なんか船体がグワッと真横に揺れた。
「お、昼飯にすっか」
ラキ越しに窓の方へ視線を移したクルスビーがそう言って立ち上がる。クルスビーの視線のを追って、その先を見れば衝角船みたいな頭の船をも超える程デッカい魚が結界に頭突きしてた。
絶句、余りにもデカすぎる。そんで顔半分出してるけど目付き超鋭い。
「バーさん御馳走だぜ」
「マダム・リゴットと呼びな。逃すんじゃ無いよ」
「任せろ」
クルスビーは客船の扉から出て片腕を変化させる。刻印版である盾が幾重にも重ねられた逆立つ鱗の様な鉄の腕だ。この腕は強めの魔法を使う時に愛用していた。
盾を引っ張れば魔法陣から氷の玉が出て、その氷を操って魔法陣を描きながら船外へ出ていく。
「ちょっと邪魔するぜ」
そう言って対空飛槍を乗せた艀の端に立ち幾何学的な大きな円が一つ、二つ、三つと重なっていって七つ程重なると結界が消えた。マダム・リゴットの催促に苦笑いを浮かべて。
「まったく弟子の前でくらい格好つけさせてくれよな」
言葉と共に突貫魚に向け魔法を発動した。白い氷の柱が一直線に伸びて巨大な魚を飲み込んで、そのままラタ大河の対岸まで凍らせて柱は消えた。
ラキならこう言う。何あの極太冷凍ビーム。てか言った。……そりゃぁ言うわこんなん。魔法に慣れてない猟師に至っては言葉失ってるから。
硬そうな衝角船の様な顔を水面に出し甲冑魚の様な頭から背鰭を通り尾びれまで、水面と共に全身を瞬間冷凍された魚の周りの氷が砕ける。
魔法で速攻解凍、絞めて血を抜き臓物を落とす。で、また凍結。
下部の異様に長い尾鰭を無くして尚も圧倒的な全長、海にも川にも外界ならば生息していてシルヴァ・アルターから産出生産される木材と火器の大半が行き着く港では崩船魚とか壊艦魚だの……あと増悪込めてクソ魚とか呼ばれてるヤツだ。そこから来た商人が曰く、海にもモンスターの縄張りな外洋と人類の縄張りな内洋ってのがあって、外洋に近づくとコイツに船の腹に頭突き食らって撃沈させられるという。
でも美味い。メッチャ美味いのだ。なにせその軍港から来る商人もクソ魚の身を乾燥させた物を売りに来てたのである。偶に商人が交易品として持ってくるのだが3日で売り切れる程に人気なのだ。
ただシルヴァ・アルターだと帆船が使えないんで手に入らない。魔法使いが居れば兎も角、手漕ぎ船や自走船だと遅すぎて狩ろうとしたら逆に狩られる。
閑話休題。
で、そんな獲物を得て半鐘。
「美味いぜコイツは」
「あー、もしかしてクーウンさんが金甲魚の薫製を食べた時に言ってた魚ってコレかも……」
ちょっと顔を引攣らせたラキが言う。もう怖ェよと言わんばかりの顔だ。
まぁ背中にジンベイザメくらいの大きさのクセして厳つい冷凍甲冑魚が置いてあればしゃーない。ジンベイザメの大きさならヌボーっとした口と円らな瞳くらいは見習ってほしいものだ。てか本当に、デカイならデカイで最低限鯨くらい可愛くなってから出直して来いや。目付きが魚のクセに鋭くってマジ怖いんですけど。
微妙にビビってるラキに気付いて少し揶揄う様に笑うクルスビーとちょっと呆れた感じのマダム・リゴット。
「はっはっはドラゴン殴るやつが、冗談だろラキ!?」
「同感さね。竜に殴り掛かる坊やが魚如きに顔を引攣らせんじゃないよ」
「いや師匠もマダム・リゴットもド正論っちゃそうだけどドラゴンじゃ無くてもこんだけデカいと十分怖いですって。てかあん時は勢いですよ、勢い。自分でもビックリしましたもん」
そんな気の抜けた話をしながら艀の荷台に並んでボロボロの砦を修復する魔法使い三人。一般の狩人達は絶句も絶句ってな、顎外れんじゃ無いかって顔を並べてポカーンと眺めてる。
そりゃあそうだ。ボッロボロに壊れた砦が修復されていく光景、まるで壊れた砦をカメラで取り逆再生した様な光景が広がってるのだから。
樹からの攻撃を防ぐ意味でも周囲の木が切り落とされ、魔法で乾き板に。それらが並び穴を塞いで土が覆い石に変わる。
「魔法猟団の団長と協力した事があるから魔法使いが凄いってのは知ってたけど人数が揃うと尋常じゃないな」
「ああ絵物語見てる気分だぜ」
「一人でいいからウチの猟団に入ってくんねーかなぁ」
歴戦の猟師達が警戒は怠らずとも気の抜けた顔でこんな事を言っても仕方ない。
そう。放置された最初の拠点に到着したのだ。砦の周りには川から水を引いた大きな水堀があり、その堀の川側に船を止められるよう作られていた。荷下ろしが楽になると喜んだものの近づけば砦はボロボロでモンスターから身を守る為の堀や壁に大小問わぬ損傷があり、砦内の確認を第一と第二部隊がしている間にラキ達第三部隊は応急処置を施しているのだ。
因みに第一と第二隊が入った途端、低めの猿っぽい咆哮と悲鳴に猟師の怒号と火薬の破裂音なんかが耳に届く。ラキがやけにビビってんのはこの戦闘音のせいもあったのだった。
「この門と壁とか見ると中砦か要塞ですね。モンスターの大きさ考えたら最低限なんでしょうけど」
「あぁ、てか思った程ボロくはねぇな。百年前って聞いてたから半壊しててもおかしくねぇと思ってたんだが」
「私がガキだったくらい昔は此処も木材採集で使われてたんだよ。地震で突貫魚だの巨魚が住むようになっちまったから放棄したそうだがね」
「バーさんがガキの頃って百年前じゃねぇのか?」
ラキの横から擬音表現すればッッパッァアンってメッチャ良い音がして師匠が崩れ落ちた。
クルスビーは声も出せない。が圧・倒・的、自業自得。
ラキが、苦笑いを浮かべて土を圧縮硬化させていると、蔦の絡まった年季を感じる両扉の門が少し開いて隙間からズンと。
「お、丁度良い。拠点内部の安ぜ……何やってんだクルスビー?」
血に濡れた第二部隊の鉄腕猟団のリートニアが太腿抑えて転がり回る弟を見て言ったのに対しド不機嫌なマダム・リゴットが。
「ポカやっただけさ」
「え、あー、おう。そうだな」
リートニアは結婚して子供もいる男として何となく察した。女性に対して安易に体重と年齢の事を口にすると死ぬ。……死ぬ。
お兄ちゃんとして溜息一つ。
「んこったから幼名のままなんだ。まぁ紛れ込んでたのは処理したから入ってくれ」
「じゃあお邪魔しようかね」
杖で肩をトントンするマダム・リゴットに合わせるように船が煙を出して堀の中を進み門の前で止まる。マダム・リゴットが杖で積荷を軽く叩いていけば第三隊の艀に積まれていた積荷がフワリと浮く。
「ラキ、後はそのバカと分担しとくれ。任せたよ」
そう言うと浮かばせた積荷を率いてリートニアが大きく開けた門を潜りサッサと砦に入って行った。
ラキは足元の己が師を見る。まだゾンビみてーな呻き声を上げてるレベルなんで無理っぽい。しゃーないので溜息一つ、指をサッと上げて残りの積荷を浮かせた。
猟師達が、以下略。
ラキは砦に入るなりゲンナリした。四つ腕の3mくらいの大きさなゴリラが三匹、どう見てそいつらの親玉だろう4mくらいの大きさのゴリラが一匹倒れてる。
「おぉう……ドドブ◯ンゴォ……」
有名ゲームの敵キャラの名前を思わず呟く。気持ちはわかるが、どっちかって言うとラー◯ャンのが近い。
体毛はテングザルの様な鮮やかな金色と黒がトラか縞馬の様に混ざっている。その体毛、特に背中側はヤマアラシの刺の如く長いのだが、前面は短毛で全身が筋肉の塊である事が明瞭に過ぎる程盛り上がっていた。特に長く太い四つの腕は異常発達した筋肉と骨で形成され堅硬かつ巨大で、それを支える肩も合わせる様に酷く巨大で頑強に膨張していた。
そんな肩に比例して極太く短い首に、細長くのっぺりさせた凶悪なライオンに近い大きな顔。セイウチの様な長い牙が生えて額には一角が伸びている。
特長的な筋肉質の肩はボディービルダーなら三角筋エベレストって声援が来る事は請け合いだ。ただそんなボディービルダーを以ってして褒められるのはそこまで。端的に言って恐ろし過ぎるのだから。
見渡せば周りの地面陥没しまくってる。そのクレーターの中央は拳の後だらけで猿のパンチの痕跡なのだろうが意味ワカンねぇ。厚く作られた城壁が拳の後を中心に亀裂が入ってたりすんのだからたまったもんじゃ無い。
そんな光景を見てラキは。
「あぁ〜コレが外界の普通。最悪、最低限なんだろーな〜」
うん。諦め付いたくさい。目のハイライト消えて口角痙攣らせ煤けたみたいになってる。
ただ諦めの境地っぽいし前向きには言い難い絵図らだが最悪を想像してるあたり良くも悪くも肝が座ったものだ。これならば足手纏いにはならないだろう。
「うへへ〜。ゴリラの牙ヤッべぇ〜」
……ゴメン訂正、なるかもしんない。
「お、竜目潰しの同胞もモンスターに興味があるのかな?」
角ツンツンしてたら魔法猟団団長オグタが弾んだ声をかけてきた。何か異様に声が弾んでるがそれより全身鎧暑くね?って思う、何度でも思う。
「そいつは外陸生、怪猿種、毛獣類、四腕猿クアトア・ブラキウム。密林の樹上に生息する非常に頭の良い猿だよ。あんな見てくれで下手な罠を見抜いたりしてくるんだ。
残っていた文献によると食性は雑食で何でも食べる。クアトロ・コルヌなんかはよく殴り殺されて捕食されてるし飛行系モンスターを石で狩る事もあるんだ。
中層生域の門番でここら辺に出現する生物の中だと水晶蜈蚣くらいしか天敵はいないねぇ」
「ウゲ」
超早口で巻くし立てる様な言葉の羅列に置いていかれていたラキは蜈蚣の言葉を聞いて思わず。勢い余ったオタクみたいに語っていたオグタはその反応に首を、首ってかフルフェイスの兜をガチャって音と共に傾ける。
「竜目潰しの同胞、もしかして蜈蚣は苦手かな?」
能面のような顔でラキは。
「この世で蜚蠊と同じくらい苦手です」
「……蜈蚣、格好良いのに」
ラキはゾッとした。その相容れぬ感性と本心を言わなくてよかった危ねぇ的な意味で。
ラキにとって害虫は切実に滅んでほしい。無論、人の感性や趣味をとやかく言うつもりは無いが無理なモノは無理だ。波打つ足とか見てると殺さねばならぬと本気で思う。
「まぁ虫の様なのは苦手な者の方が多いしね」
そう言っておそらく、おそらくだけど溜息を。オグタは親指で背後を指して言う。
「マダム・リゴットが荷物は全部壊れた倉庫の向こう側の広場に置いてる。魔導師の同胞が土で簡易倉庫を作ってるよ」
「分かりました。運んどきます」
「頼むよ」
そう言ってラキを見送ったオグタは二度見した。鎧だけど何となく表情が分かってしまう様なオーバーリアクション。
「水生、怪魚種、鱗甲魚類、突貫魚アリエテウヌス・ピスキス。水生生物なんてなかなか見れない!……後でよく見聞させてもらおう」
そしていそいそと筆と紙を浮かせて猿を観察し始めた。その表情は、見えねーけどキラキラ輝いていて、ある意味オタクの最終進化系たる学者である。
……何か毛が硬いとか何とか子供見たな目で、しつこい様だがフルフェイス何で分からないが多分そんな顔だろう声で燥ぎ出した。紙へのメモっぷりが凄い。
ラキは「おぉおおおおおお!!」とか「成る程!」とかの叫び声を背に歩いてく。
ボロボロの倉庫だっただろう建物、屋根と壁の一部を粉砕されてただの囲いとなったそれには、植物を集めた寝藁らしき物を中心に何かの動物の骨が散らばっていた。多分クアトロ・コルヌの足の骨。
それをちらりと眺めるとまた歩きだす。
「思ったより近かったな」
ラキの視線の先、魔導師が杖を掲げると火薬と矢玉が土に覆われ、その土が家の様な形状を型どり縮めばコンクリートで出来た様に見える堅牢そうな倉庫が出来た。一方、ボロ倉庫側では付き人っぽい二人が酒樽と食料を浮かせてから同じ様に土で覆い倉庫を作る。こっちの倉庫は高床式っぽい。
若い方の付き人がラキに気付いて声をかけてきた。年頃16程の祖人で見た目の印象だけを言えば活発で少々小生意気そうとでも言いたくなる茶色い短髪の青年だ。
「竜目潰し。お疲れ様です」
印象とは裏腹に礼儀正しいようで素人でも察せる様な慣れのある整った礼を。ラキは思わずな礼儀正しさにちょっと焦って変にペコリと頭を下げる。
「どうもお疲れ様、えーと荷物は何処に置いとけば良いかな?」
「倉庫の形状を変えるので食料とそれ以外の物資を分けて置いて下さい。師の作っている倉庫の方に武器や道具、火薬類を。私達の方には食糧をお願いします」
「了解」
ラキは叩きつけられる熟練の礼儀に出来うる限りの返礼を返す。了解とか言っちゃてるけど姿勢は良いと思う。……うん。
倉庫を創っている領主付き魔導師なザ・魔法使いな人と、礼儀正しい少年とどこか似ている二十代くらいに見える光人の合間を抜けて荷物を仕分けていく。
樽に詰められた塩漬け肉や酒に火薬に砥石や弾薬、更に調理器具や寝袋の様なキャンプ道具っぽい物。
「やっぱ食べ物の量が多いな」
自分の仕分けや荷物を見ながら特に理由も無く呟く。水を得る事が出来るか怪しいので大量のラム酒っぽい酒と、医療用にも使える蒸留酒が特に多い。
「・・・・・コレどうしよう」
最後の冷凍突貫魚を見て思わず呟いた。額に掌添えて目を瞑って首を傾け考える。
「・・・・・・・凍れ」
これ以上の思考放棄はなかなか無い。蒼い腕の刻印版を発動させて氷の魔方陣を作り氷の山を作った。魚は氷山の中でカッチコチ。
荷物を置いたら他に何か手伝えないかとラキは周りを見る。機敏の境地マダム・リゴットが井戸を掘ったり猟師達が城壁の確認や周辺を見張っていた。井戸掘りは自発的にやるにはラキの知識は浅く、その自覚がある。
他には城壁の修理などだろうが一応。
「……誰かに聞こ」
無難な考えを思い付くと共にラキは霧か煙に身を変えて猟師達の元へ。適当に眺めれば城壁の上に猟士達が。
「手伝える事は有りますか?」
「おぉ、竜目潰し。なら悪いが飯の準備をしててくれねぇか?腹が減って仕方がねぇ。すぐに手伝いに行くから先に用意とかを頼むぁ」
城壁を観察していた剛人の厳つい髭モジャなオッサン猟師がちょっとビックリした後言った。ラキは頷き。
「わかりました。先に作っておきます」
確かに空腹っぷりは耐え難い。荷物置き場に戻り料理道具と食料を浮かせて出す。ラキが入れそうな程に大きな寸胴鍋と刻印版に樽の塩漬け肉と箱詰めされた麦袋。バウバ家でよく使う玉ねぎっぽいのや赤い大根っぽい食感の根菜類。
「えーと、確か一箱で1日分だったっけ?……多いな」
ズンと重みを感じさせるバターを刻印版で冷やされた箱から取り出して言うと魔法を発動させ火を出す刻印版を並べる。手を添えて刻印版を発動させドデカイ寸胴鍋を置いてバターを三つに分け溶かす。
混ぜながらふと思う。シルヴァ・アルターではバターをそのまま置いていても品質に変化は無いが、外界に出た途端に常温保存ができなくなるのだ。前の世界の常識が根付いているラキにはこんな些細な事でも異世界らしさを感じれたのである。何が面白いのかと問われれば答え難いが少し笑ってしまう。
「さて」
ラキが指を振れば玉ねぎっぽいのが次々と宙に浮き皮が向かれ薄い千切りになって鍋に落ちていく。クルクルと指を回せば鍋底で玉ねぎ擬きが混ざり黄金色になれば続いて塩漬け肉と野菜を投入。魔法使ってる所為でほぼ刻印版と鍋しか使ってねぇ。
独りでに混ぜられる肉と野菜、焦げない様に宙に浮いて鍋を覗くラキ。火が確りと入っているのを確認して。
「そーろそろかなー」
水を生み出し投入……牛乳でもあれば小麦粉も有るのでクラムチャウダー擬きにしたかったが、バター用の発冷刻印版を用意するのが精一杯で持ってこれてないので一先ず完成。
正直言って唯の塩漬け肉と野菜煮こみ。出汁は出てるだろうがたかが知れてる。魔法で一口分浮かせ冷まして味見をする。
適当に塩と香辛料をブチ込み。
「うん。まぁ食えないこともない」
まぁここに居る誰が作っても大体こんなモンだ。そもそも戦闘部隊や後方支援部隊が来れるように兵站を整備してる都合上、材料も少なく料理人でもない野郎の料理となるのは必然なのだから。
ただ補足しておきたい事がある。バウバに拾われクーウンの料理をほぼ毎日食ってるラキの舌は結構肥えてる。一般家庭では大体このスープとパンに魚か肉が付く程度の飯、猟師達などは平均的にみれば高給取りな部類だが数日森の中にいたりする事も有るので外界で食べられる食事としては暖かいというだけで十二分な御馳走である。
ふと気付く。
「マダム・リゴットに聞いてみればよかったかも」
あの長い杖持ってる必要性がいまいち分かりにくい月の光人である老女は魔法使いで薬師である。考えてみればアクセントになるだろうキノコとか木の実なんかを知ってただろう。
明日にでも余裕があれば聞いておこうと脳の片隅に置いといて続いてメインディッシュをどうするか考えた。と言っても使うのはあのバケモン魚一択だろう。が、あんなヤベー魚の調理法など想像もできない。て言うか金甲魚を捌くところは見ていたが覚えるには至っておらず甲冑魚の捌き方は知らないのだ。
ラキが悩んでいると何かが寄ってきた。例えるなら目付きの悪い幽鬼とでも言えば近いだろう。あと砦の修復に使った外界の木の残りを浮かせてて持ってきてた。
「お、おう、ラキ。なんか手伝うぜ」
「いや、そんな産まれたての子鹿みたいに震えられた状態で言われても。……じゃああのデカイ魚の捌き方と調理法を教えてください」
「あ?ンなの硬い頭叩き斬って三枚におろせばいい。港湾都市に行った時の話だがアレは塩焼きで十分過ぎる程に美味いぜ。この木で串作って焼こう」
現金なものでクルスビーは美味な記憶を思い起こして今にも涎を垂らしそうな顔をする。
「んじゃ取ってきます」
ラキはスーと氷上を滑らかに滑る様に地に沿って飛び倉庫群の一番奥にある魚入りの氷の山を浮かせて戻る。城壁の確認を終えてラキを手伝おうと戻っていた猟師達を驚かせて調理場(?)に戻った。
「んじゃ師匠、俺が捌いて切り分けるんで串作りと刺すのと焼くのお願いします」
「おう」
魔法使い二人が息を合わせて魔法を行使する。解凍された巨魚の鱗が剥がれていき頭を落とされ一口大の大きさの賽の目なっていく。
一方では木材が瞬く間に細分化されて魚肉に刺さりいつのまにか現れたいくつかの炎の上で回り円を描く。
ひと段落して飯の匂いに釣られた猟師達が以下略。
そんなこんなで太陽が傾いていき夕食と言ってもギリ大丈夫そうな刻限になった。厳密に言うと中刻八鐘くらい。猟師達も加わりガヤガヤと騒がしい。配給係になった猟師達を除いてボウルを握り列を作る。乾パンとスープに串焼きを二本と一杯の酒を受け取って適当な所に座り各々食べだした。
「流石に初日は肉が多く、え、コレ突貫魚!!?」
「美味いな。お前、見たかよ。コレを焼いてる時の魔法」
「ああ見た。スゲェなアレは」
「どうしたんですか団長、スープ冷めますよ?」
「猿を見るのに夢中で魚を見損ねた。やってしまった」
「いやメモ取り過ぎでしょって酒は一杯か。まぁ酔っちゃ仕事にならねぇわな」
ラキの耳には自ずと周囲から聞こえる話し声、テンションたっけーなーと思いながら食べた事の無い乾パンに齧り付く。堅い、そして口の中の水分全部持ってかれた。
総評、味が薄い硬めの……鉄のクッキー。
「……顎が、死ぬ」
小麦粉の甘みは感じない事も無いが取り敢えず固過ぎる。スープをチラッと見て悩んだ末に砕き入れた。
「まぁ、クルトン的な感じにはなんないよなぁ」
元の世界で食べたホワイトシチューとかコーンスープが無性に食べたくなった。
「おうラキ隣座るぜ」
ラキの隣にスープを入れたボウルの上に長い乾パンと串焼きを乗せ、逆の手で酒の入った杯を持つクルスビーが座る。
「あれ?どこ行ってたんです?」
「おう。砦の周りに生えてる木を全部刈っといた」
「ああー猿対策。お疲れ様です」
「まぁ俺が一番働いてなかっ……乾パン硬っってぇな」
「硬いですよね。顎が……突貫魚クッソ美味ぇ!?」
そんな感じで夕食を終えると十名程の見張りを残して魔法使いが補強・増設した小屋で寝袋に包まって眠った。正直言って超寝にくい。ガッチガチの床のおかげで明日は体もガチガチになるだろう。
「乾パンでも敷いて寝てんのかな俺」
ラキの呟きに二、三人がブフォって吹いた。
そんな感じで就寝して翌日、予想通りガチガチになった身体を起こしバキボキ言わせる。早起きの猟師達が作ってくれた昨日の夕食とほぼ同じ朝食を取っているとリートニアに呼ばれた。
猟団長達と副団長に魔法使いが集められ、この砦周辺の状況確認と危険排除をすると言う話を伝えられる。猟団の精鋭達と魔法使い三人の編成で、二部隊が周辺確認と可能そうなら周辺モンスターの討伐、最後の一隊は砦の整備と防衛だ。
言うまでもなく前日に先陣を切り船を一人で守った魔法猟団長オグタの疲労が懸念された結果である。尚、当の本人はモンスターが見れないと最後まで反対した。何だったら駄々こねた。
「無茶をするもんじゃ無いよ。その兜の中で魔力酔いになりたいのかい?」
とマダム・リゴットの言葉で即黙ったが引き換えに……説得の為とは言え発言者含めて他の魔法使いのテンションもまぁまぁ下がった。吐瀉物に塗れる記憶なんて黒歴史以外の何でもないし、偏頭痛と二日酔いを合わせてより酷くした症状に苦しむ記憶なんて思い出したく無いに決まってる。
まぁ致し方無い犠牲だ。
で、大体一鐘くらい後。ラキはガチ狐顔の獣騎猟団長フクス率いる第3隊に率いられる形で密林の中にいた。余りにも高い木々が栄養を得る為相応の大きさの根や、巨木に絡まる蔦の所為で歩き難く、その巨体の為に伸びている巨木の枝葉の所為で少し薄暗い。
何より大小の虫がラキにとってはメッチャクチャ辛かった。もし魔法を温存しなくても良いと言われたら嬉々として一匹残らず滅却したい程に。
そして時折、何かヤバそうな鳥か獣のギャァーーーとかホァホァホァーーーとか擬音表現し難く、したらしたでアホみたいな鳴き声が突如として聞こえビックってする。
しかしラキには余裕があった。頼もしいよなぁと周りを見れば自分達魔法使いを中心に円を描く様に猟師が配置されている。彼らは先頭の者が道を作り、ある者は樹上を確認し、ある者はモンスターの足跡を探す。銃を構えながらも緊張を絶やさない。
正に手慣れたと言うべき動き。
そんな頼もしい猟師と違いラキは慣れない密林の行軍に精一杯で額の汗を拭い。
「気温、いや湿度が高いな」
思わず漏らした。背負っていた外界に生えてるデカイ竹を使った水筒の蓋を取って水を飲む。
「ング、ング、ぷハァー」
緩いが身体が欲しているようでやけに美味しく感じる。と言うか足らない。
この水は昨日マダム・リゴットが掘った井戸が、運のいい事に一晩で泥などが沈殿した事で用意できた井戸水である。もし井戸が使えねば大量の燃料と労力を用意するか、魔法使いを一人割いて川の水を煮沸する必要があった。
まぁ最悪はシルヴァ・アルターから真水を運ぶって手もあるが兵站の圧迫っぷりも酷いし水は腐るので運べる距離にも限度がある。現在酒を運んでる事からも分かるように補給線がモンスターに潰される最悪を考えると保存の効く酒類の方が良いのだ。
厳密に言うと保存の効くワインとかラム酒っぽいやつに代表される蒸留酒が良い。大航海時代かよって話だがシルヴァ・アルターと交流の深い造船所を持った港湾都市の船乗りの知識が流入したのである。
つっても本当は酒とか寧ろ利尿作用がるんで脱水症状が悪化する。熱帯地域で酒を水分補給の生命線とする必要が無くなったのは良い事だ。まぁグチャグチャ言ったが井戸が使えなければ今のラキのように水をグビグビ飲むなんて無理だった訳である。
「ラキ、飲み過ぎて腹を壊すなよ?」
クルスビーの言葉にラキは水筒から口を離した。蒸し暑いせいか僅かの清涼感欲しさに飲み過ぎてしまう。
ちょっと横っ腹痛くてグゥの音もでねぇせいでラキは腹を抑えて頷く事しか出来なかった。
身体能力的には自身が最下位だろうなーと珍しく杖を使っているがスイスイ進むマダム・リゴットを見ながらラキは全身を再開する。
「丁度良い場所に出たな」
暫く歩くとコォンケがそう言って立ち止まった。ここは密林にポッカリと穴が開いて太陽が降り注いでいる。
猟師曰くところクアトロ・コルヌの食事場で、ラキの目算200㍍近く在ろう巨木が密林の中で円状に薙ぎ倒され太陽の降り注ぐ円の中で転がっていた。
倒された巨木には葉が無く、何本かは木の幹にも齧りつかれた痕がある。
昼食を兼ねた一鐘《一時間》の休みとなれば見張り役を除いて猟師達も少々気を抜いた。それぞれ携帯食料を取り出し木の根に腰掛け水を飲んだり駄弁ったり。
「フゥ。騎獣の一匹でも連れて来れりゃぁ楽だったんだがなぁ」
「仕方ねぇよ。見ろよクアトロ・コルヌもいねぇ、相棒達が飢えちまうぜ」
とか。
「猿は居なさそうだな。飛行系モンスターも木の枝が邪魔で入り込めてないらしい」
「こんな場所にモンスターが居ないってのも珍しいな。食い物もあって水場も近いってのに」
「そもそもクアトロ・コルヌが食事場に一匹も居ないなんておかしいぞ」
とか。
ラキもクルスビーとマダム・リゴットと共に座って干し肉と乾パンを食べる。干し肉とかガチンって効果音が出そうだ。
案の定。
「カッてぇ……」
「固い」
クルスビーとラキの泣き言に同意はできると溜息を吐いたマダム・リゴットは周辺を眺めた。口内の水分を全部乾パンに持っていたかれたので水を飲むと立ち上がり、木が倒れた場所に我先にと生える草木の中から、低木に生える黄色い柑橘類の様な実をブチブチ捥ぎ取る。
「どうしたんです?マダム・リゴット」
「あぁ、少し気休めが欲しくてね」
そう言うと水筒の水で身を洗うと二つの布に包んでそれぞれラキとクルスビーに放り投げた。己の手に残った実を潰して干し肉に果汁を垂らす。
「本当に気休めだけど此の実は肉を柔らかくするんだよ。本来は水で煮出して濃縮してからポーションに入れるんだけどね。薬がよく混ざるから」
「へぇ!」
ラキにとって興味深いファンタジートークとお得情報に流石薬師とマダム・リゴットをも真似て実を潰す。
果汁のかかった干し肉を齧れば強い酸味、確かに気持ちだが柔らかくなった。
味についてはで相当に無理矢理だが例えれば唐揚げにレモンかけた感じ。……いやマジで月とスッポンだけども。
総評、酸っぱいが固さに関しては気持ちとは言えマシになったのは確か。
「確かに柔らかくなってますね!」
「流石薬師だな」
「ほら猟士連中にも分けてやりな。私は一服するから」
「はい!」
「おう」
マダム・リゴットは二人が足早にお裾分けに行くに合わせて残りの乾パンを口に放り込んで機嫌良さげに言う。
「ふふ、喉が乾くね」
ふと、密林にポッカリと空いた明るい食事場を眺めながら水筒を傾けた。
リゴットは固まる。
光の向こう、森の奥から長い長い何かが。
マダム・リゴットや猟師達が声を上げる前に陽光に照らされるモンスター。
二対の余りに長い鞭のような触覚と三対のギラファノコギリクワガタの様な大顎が生えた大きな赤い顔、黒く平べったい水晶を乗せた永延と続く様な胴が密林の奥まで。
その身体の左右には連なり波打つ様に蠢く数えるも億劫な橙色の脚、顔の方の八脚はやけに長く鋭かった。
体長は密林の奥へ続いていて見渡す事も出来ないが、身を畝らせた状態でも巨木を平然と超える。余りに長く余りに大きい蜈蚣だ。
そうムカデ。
藤原秀郷にブッ倒された妖怪の大百足の絵巻でも見てもらえれば大きさを想像し易いだろう。誰もが突然の事に動きを止めるがそれも一瞬。
「水晶蜈蚣っ!戦闘回避優先、まず距離を取る。銃を構え後退だ!!」
コォンケの号令で猟士達が動き出す。その判断は正しい。
獣騎猟団も猟団の中で最も戦闘の得意な鉄腕猟団と合同で一度だけ狩った事があるのだが、その時は罠と防壁を張り巡らせ騎獣に乗って誘き出してフルメンバーの一斉十字砲火を幾度も浴びせる事でようやく殺したのだ。
正直、猟士達の経験上今の20人足らずの人数で相手をしようと言うのは無謀だった。
強力な魔法使いはいるが万一を考えれば他の猟団と共にある程度の準備をして戦うべきだ。クルスビーもマダム・リゴットも猟団長の指示を理解してそれぞれ戦闘態勢を取る。
だが蜈蚣の方は戦う気、と言うか食べる気満々の様で第三部隊に向け顎を開きキチキチと身の毛のよだつ音を立てて触覚を畝らせた。
その巨体で残像が残る程の勢いで襲いかかってくる。
「ッオヴォロロロロロロロロロッッ!!」
「どうしたラキ!?」
突如ラキが吐いた。その長身は小刻みに震え、上げた白い筈の顔は土気色だ。皆が何事かと横目であったり振り返ったり。
クルスビーが蜈蚣に魔法陣を向けたまま慌てて駆け寄れば恐怖か怒りか分からぬ瞳はグルグル回って肌が粟立っていた。
「ムリィ……」
「あ?」
近づいたクルスビーにさえも気付かずラキは目の前の完全に受け付けない生物から目を離せない。
長い8本足がワシャワシャと、合わせてラキの背はゾワゾワと。
次の瞬間には青い義手の刻印版から火の玉が生み出され魔法陣に。それは異様な速さで郁枝も重なり油が火を走る様に広がっていく。
その光景を猟士達が固唾を飲んで見守る。
「何してる!撃てッ!!!」
コォンケが引き金を引き号砲となった一撃に遅れて猟士達が続く。コォンケの弾丸が顎の一つを砕き猟団の弾丸が甲殻にめり込んだ。
怒ったのだろうか、一度動きを止めた蜈蚣が悍ましい音を奏でて、それに呼応するかのように蜈蚣の背負う水晶が薄く光った。
しかし途端。
「無理ィィィィイイイイイイイイイ!!」
ラキの語彙力失った咆哮、悲鳴の様で怒号の様なそれに魔法陣が赤く赫、発動する魔法。
世界が熱波と共に赤く染まり、一条の黒く焦げ臭い道と半ばが消失した木々に炭化した蜈蚣の死骸を残して消えた。
唖然とした猟士達と驚いた魔法使いに副団長の視線の先には二重の意味で体調の悪そうなラキ。
「マジ……ウップ」
魔力酔いの兆候に手を口に。そんなラキにクルスビーは。
「え、おま、え?いきなりんな魔法発動してどうしちゃったんだオメー」
ラキは魔力酔いの兆候、気持ち悪さを抑えながら。
「あの大きさはムリ……本当に無理ッス。ちゃんと倒せてます?死んでますよね?」
「いや、死んでるってか炭化してんぞ」
……ラキは特筆して蜚蠊とか蜈蚣ってモノが苦手なのだ。言い連ねれば機動力とか触覚とか脚の動きとかが特筆して気持ち悪いのだが、しつこい話だが見つけたら確実に殺さないと気が済まない。
もっと言えばもし夜中に見つけて仕舞えば死んだのを確認しないと寝れ無い。
でだ、そんなのが見上げる程に大きくなって己に向かってくるのだ。キチキチと音を鳴らしワサワサ脚と触覚を動かして。
そりゃぁぁもぉ無理、絶っ対無理、確実に吐くわ。キツイってモンじゃねぇからこんなん。論ずるでも無く出せるならビーム出して滅殺する。
まぁ、苦手なモノが巨大ビルくらいに大きくなって、最も気色悪い挙動で自分に迫って来るのを想像して貰えれば、理解は出来なくても納得はできるだろう。
マダム・リゴットはため息を。
「ラキ、アンタどれだけ蜈蚣が苦手なんだい?」
「いや、いくら苦手ってってもコレ……程度が、徹底的過ぎて怖ぇよ」
マダム・リゴットの言葉にクルスビーは炭の死骸と道を指差して。どう見ても弟子が実力以上の魔法の発動してるだろう状況にリアクションに困る。てか寧ろよく倒れなかったものだ。
「マジで、マジで無理です。すんません」
ラキは謝るしか出来なかった。初見であんなモン見せられたら冷静ではいられねーよとは思うが、これでは拠点に戻るにも足手纏いで万全を喫するという猟士達の方針からは程遠い。
色々起こり過ぎて茫然としてる猟士の中から長大な銃を三梃背負った目が大きく肌の白い若々しい貴公子然とした男が真顔で迫る。
「竜目潰し。移動はできるか?」
一瞬誰か分からなかったが声と服装でコォンケだと察して。
「ウップ……すみません。魔力酔いになりかけてるんで、出来れば休憩をお願いします」
どちらかって言えば手柄なんだけど危険な密林で行動制限させるってのは戴け無さ過ぎる。ここまで居た堪れ無い事はそうそう無いだろう。
「弟子の不始末だ。サッサと帰るなら俺が浮かせようか?」
コォンケは少し考えてから。
「……いや水晶蜈蚣は繁殖期以外だと縄張り内で単独行動をするモンスターだ。
凶暴な肉食で縄張りは広く、脅威になる様なモンスターも蜈蚣の縄張りに入るのは極稀、竜目潰しが回復するまで五隊を三部隊作り偵察をさせておこうと思う」
ラキはマダ・ムリゴットに薬を貰い休む事になった。そりゃぁもう休憩中メッチャ居た堪れなかったよね。慰めと言って良いのかこの戦闘のおかげで安全確保が出来たと言うくらいだろうか。




