モ◯スターハ◯ターで初めて狩りに行く時のワクワク感って異常だと思う
上手く締められず長い上に地図と言えない何かが有ります。
それでも良いよって方は暇つぶしにでも見てってくれたら幸いです。
ログラムの地位に不相応な質素と評すべき屋敷でこの家の主人と変態商人が話し合っていた。因みに変態商人の為にか暖炉の火が轟々と燃やされる。寒いんだから服着ろ。
「頭の痛い話だ。猟師組合の話も看過出来ん。確認を急がねばならん」
目は丸いが鷹の顔に長い首、翼竜の骨格を持った鳥の様な大きな羽、猛禽類の足に長い尾を中心にした鳥の様な尾羽を持つ伝書竜に餌をやりながら家主は溜息を吐いた。
家主の差し出した肉を美味しそうに食べると可愛さにステータス全振りした様なピーという鳴き声をあげる。鳴く伝書竜の顎を撫でてやれば気持ちよさそうに円らな目を細めた。かわいい。
禿げ領相は癒される。もう癒されないとやってられなかった。質の良い羊皮紙をパンイチマントマンが眺めて同感だと言わんばかりに肩を竦めた。
「ぁあログラム殿、金は私が何とでもして見せるよ。外界の地主が動いたと言うのなら人類の危機だし、金欠なんてつまらない事で私の主は殺させないさ」
「ストア殿……」
「戦争の方も資金面は万事任せて貰おう。私の伝手を使って傭兵を雇えば二千は硬くぅ我が主の徳を持ってすれば三千は集めて見せるさ」
「なれば傭兵達の住処と褒賞は私が持たねばなりませんな。その程度は出資させて頂かなければ」
「うぅん、そこはお任せしよう。私は金銭はあるが土地を持たないから」
カイゼル禿げ、じゃねーやカイゼル髭のハゲ領相とオールウェイズ・パンイチ豪商は今後の事で酷く頭を悩ませていた。二人とも笑ってないとやってられないと笑みを浮かべているが苦い感情を隠しようが無く正に苦笑いと言うべき表情だ。
ソレもコレも戦争馬鹿の所為だった。
大将軍バフィウスからの伝書竜によって知らされた情報が余りにアホ極まってて愕然としてるのだ。なにせ一国の王という立場の人物が鼠輩の姦計に気付きながら敢えてそれに乗り、後継問題を理由に騒乱を起こそうとしているのだから。
その意図を全て理解しているとはいえ下策も下策でログラムからしてみれば、いい加減にしろって話だ。幾度目かも分からないが自らの趣味の為に国を巻き込む者を馬鹿と言わずして何と評すべきかと吐き捨てる。
ストアもまたグルム王国に亡命して王に仕えなかった理由、相変わらずの強引っぷりに辟易とした心地だ。今回も奸臣の炙り出しと増え過ぎた軍部の、あくまで王の物差しに於ける無能処理が狙いだろうが仕えるには破天荒すぎる。
「王太子の育成にせよ臣下の整理にせよ強引すぎる。変わらんなぁ全く……」
髪が後退するようなストレスと共に絞り出す様に言う。
宰相だった頃はやれ兵糧が足りない、武器が足りない、金が足りないとハゲ散らかったものだ。ログラムとしては何でもかんでも戦争で始め戦争で終わらす王とか内政どころか色々な面でクソだと思う。
「現王は私の髪を毟るのを好み過ぎだ」
そら禿げるわと言わんばかりの言葉と共に輝く頭頂部を撫でた。
「ヴォッほっ!?ロ、ログラム殿、そ、それはっ、ぷフフフ……」
彫刻の様に整った己の顔を押さえつけたストアは、それでも口角をヒクヒクと震わせながら笑う。割れたシックスパックもプルップルだ。このイケメン禿げネタに対してツボり過ぎじゃね?
ログラムは自虐ネタの炸裂っぷりに満足げに頷くと、もう一つの問題に取り掛からねばと己がカイゼル髭を一摘みし言う。
「クルスビー殿とマダム・リゴットには個人的に伝が有るので外界の調査に関しては協力して貰えるでしょう。地主の巣立ちだった場合なら流石の王も戦はしませんでしょうし」
「地主などが向かって来るとすれば災厄にも程がある。300年前に北の断界山脈で巣立ちが起きた時なんて北方帝国が盟主になって十数万の軍と百人近い魔法使いを集めて漸くだったとか?事実だと言うなら勘弁してくれないものかな」
「正確に言えば当時の樹下三天に魔導の円卓を筆頭とした魔法使いや魔導師82人と北方諸国連合18万ですね。外界と接していた国が壊滅し魔法使い34人が死亡して5万の兵が離散などと言う被害と引き換えに地主を討伐です」
「……あぁぁすごく聞きたくなかったよぉログラム殿」
「不幸中の幸いと言って良いのかどうか魔導の円卓とはクルスビー殿やラバレロ魔導師が所属しているので地主などという大災害ともなれば数を揃えられるはずです」
「兵力はグルム王国、ユグドラド帝国、ユグドランド選帝侯連合、オリハルコア王国は兵を出さざるおえないだろうし、まぁ20万は固いかな」
「全く胃と髪に悪い。春には詳しい事もわかるでしょうから猟師達の調査を待ちましょう。何で重ねてくんだよクソが」
「全くだ。一先ず漁師達の報告を待とう」
その猟師達は各猟団長達で集い既に相談を終えていた。
地主とはモンスターの食物連鎖における頂点に存在する生物を指す。この世界は広大な大地を断界山脈に代表される山などが隔てている。その一つ一つが地主の住処ないし住処だった物なのである。
地主とはピュトラション王国記などに代表される天候や気候にさえも影響を与える強力にして強大な生物だ。端的に言って古代どころか神話よりも古い時代から人類滅亡の危機と言えば大概が地主による災害が挙げられた。
その人類存亡の危機、地主が巣から離れ別の地に移るのが巣立ちだ。人類生存圏側であるシルヴァ・アルターに向かって来るのなら数カ国が合同で事に当たる必要があった。その為に遡及に正確かつ大量の外界情報を要するのだ。
だが地主の巣に近付けば近付く程にモンスターは強くなる。猟団達の活動域は中層にも届いておらずモンスターが平時に相手しているものより強力になる事は想像に難くない。
戦闘能力の均衡に優れた鉄腕猟団を率いるギアードロコ・クルスエー・リートニア。
近距離戦を得意とする巨兵猟団を率いるヨルティオ・ヴァディオ。
モンスターに跨り遠距離戦闘を得意とする獣騎猟団を率いるコォンケ・フクス。
圧倒的な柔軟性を持つ魔法猟団を率いるオグタ。
集った各猟団長の話し合いで地主の巣立ちと言う可能性に全猟団が合同で調査する事を議決。更にシルヴァ・アルターに居住する魔法使いへの協力要請が決定されるのは当たり前の話であった。
てな訳で、ラキにも話しは来る訳だ。
眉を寄せ下唇を上唇で包み手紙を読んでいたラキは視線を上げて言う。
「え、こういうのって初めてなんですけど……どうしたら良いんですかね」
狩猟組合からの伝書を渡してきたバウバにラキは困った様に問うた。食器を浮かせ水球にブチ込みながら次々に汚れをこそぎ落としすのは止めないが表情の困惑ぶりは分かり易い過ぎだ。
「ほぁ〜」
子供達と一緒に最近嫁に来たフッシャが独りでに食器棚へ飛んでいく食器達を眺めてる。丁度気の抜けた声出してんのがそうで魔法などそう見る事も無いのだから理解はできるが一番子供っぽい。
バウバは新妻を見てラキを迎えた時は自身もそうだった思いながら。
「何も難しい事は無い。自分の意思に沿って返書を認めればいい」
自身の感情が出ない様に努めて言った。事が事、故に魔法使いの助力は重要だが、荒事が苦手だろうラキの意思を尊重すべきだと思ったからである。
ラキはバウバの言葉を反芻すると二、三頷き指を鳴らす。パッと現れるペンと紙、ラキの指に合わせてペンが動き固定された紙にツラツラと文字が。
フッシャはそろそろ慣れていいんじゃなかろうか。もう三日は見続けてるのに相変わらず子供達より子供っぽくラキの魔法を眺めてる。
「返書か。今日、丁度会合がある。私が届けさせておこう」
「お願いします」
ラキがそう言って頭を下げるとバウバはフッシャと共に仕事場へ向かった。
ラキが粗方の家事を済ませてしまうので最近はクーウンやミャニャも出稼ぎに行く。
無論、子供達が寺子屋的や私塾、いや領主の建てた学院と言ったほうが近い処に行く日で世話が必要無い時に限るが。
なんかクーウンは古巣の猟団の手伝いで四つ角狩って来たし、ミャニャは父の商館を手伝い南方の交易を纏めて珍し果物を貰って帰って来た。才能と人脈がエグい。
というわけでラキは子供達と共に弁当を受け取り二人と共に宙を舞った。燥ぐ子供達を私塾へ送り届ける。
「二人とも頑張ってな」
「おう!」
「うん!」
二人の頭を撫で挨拶をしてくれた学徒の子供達にも手を振ってから自身は工房へ向かう。
振り返ったラキの瞳は決意に燃えていた。ラキは今の生活を殊更、そう殊更気に入っている。
頼れるバウバに優しいクーウンやミャニャにフッシャ。子供達は言わずもがなだ。
いつかはバウバ一家とも離れる事になるだろうが外的要因でこの生活を崩される事に耐えられないと自覚できる程である。
だからこそ。
「絵物語の化け物が何だってんだ。こちとら魔法使いだぞ」
分不相応な能力をフル活用してでも、この生活を守る気であった。バウバ一家だけでは無い。
工場の師匠達に兄弟姉妹弟子は勿論、本屋の巨人に代表される町の人々も。ラキにとってシルヴァ・アルターは失うには大きくなり過ぎた。
ドラゴンに相対し外界にてクアトロ・コルヌの討伐を助けたラキは自分から危険に飛び込むと言う決断ができる程度には勇ましさを持ち合わせるに至っていたのだ。
いやラキの状態を正確に言うと危険がどの程度か理解できてないし、情報も無い状態で勢いで決めちゃったってのが正しいけども、まぁ座して待ち後悔するよりは余程良いことだ。
決意を持ったラキはそのキメ顔のまま冷や汗をツーと垂らした。
「あ、ヤベ」
勢いで手伝うとの返書を書いてしまった。即ち師匠に伝えてない事に気づいて、恐る恐るクルスビーに猟団の調査を手伝う事を伝える羽目に。まぁ、クルスビーも事が事なので自分も行くつもりだったので問題なかったが。
さて話しはトントン拍子で進む。当たり前だ。人類の危機だもの。
ラキは翌々日にはシルヴァ・アルターの港で巨大なガレー船に乗っていた。魔法使いであるクルスビーにマダム・リゴット、領主の横にいたザ魔法使いなオッさんと彼に侍る2名、更に陽の光人の女性が一名乗り込んでいる。
このまま外界に行けば魔法猟団に所属する一名を加えてシルヴァ・アルターに居る魔法使いが全員揃う事になる。
魔法使い総勢8名、外界とつながる場所故に研究材料が豊富なので当たり前と言えばそうだが下手な国が保有する魔法使いという戦力より多い。
自身の研究に没頭するクチの人間が多い魔法使いという存在が国に自由を制限される事を好まないってのも大きいが。
話が逸れた。
例の左右を断界山脈の絶壁に囲まれたラタ大河の辺りで一挙に熱くなりコートを脱いだラキは布集めの時と同じ様に軍港の如き様相を呈した港へ降りる。
屈強な人々の怒号と間違う様な掛け声が交差し、火薬や砲に食料や建材などが運び込まれていた。
マジ一定の知識を持つ人物が見れば戦争おっぱじめる事を確信する光景。……いや大砲とか吊るされてる時点で知識も糞もねーか。
「ヤベー……」
だからラキもポカーンと呆けた顔で言う。無論、覚悟はあったが其れは其れ此れは此れだ。百は在ろう火砲の群と鋭利に磨かれた武具の数々。もう矢玉とか食料に至っては数える気にもならないレベル。
「まぁ猟師は全部の猟団合わせて200人くらいだ。戦力相応に大食らいな俺らや巨人獣人も居るし物資としちゃ3ヶ月分くらいか」
クルスビーが目を細めて、いや元から細いが。顎を擦りながら言う。堆く積まれた小麦袋と酒樽はラキからすれば多くない?とツッコミを入れたい。
特に酒樽。樽自体が大きく壁にしか見えねぇけど大丈夫かアレと不安になる。ラキの抱いた疑問に答えるならば昔の航海と同じ形で遠出するのに飲み水として必要なのだ。いやそれにしても多いけど。
「いつになく対応が早いと思ったらアノ野郎ッ……!!」
ラキはクルスビーの怒りを含みながら漏らした言葉で大体は察した。もう一人の師匠である剛人のグレヴァが関わっているのだろうと。
てか、何だったらここに居るんじゃね?とか思いながら。
「こ、困るぜ旦那ァ!!帳簿と合わなくなっちまう!!」
「ハッハッハなんじゃァ、どうせ水の無い拠点に山の様に運び入れるんじゃから一つや二つバレやせんわ!!
それに太っ腹な商人殿と領相殿が金なんぞ何ぼでも出してくれる。景気付けじゃ、景気付け!!」
うん。居たね、早いね、秒だね。
港で酒樽開けようとしてる剛人、般若顔で両腕鉄拳に変える機人。2秒後、剛人の後頭部からゴチンつって火花が飛んだ。
「やりおったなポンコツゥ!!」
「何やってンだクソヒゲッ!!」
見えなてない筈なのに殴られ慣れ過ぎて誰に殴られたか判るグレヴァはそろそろ自重すべきだと思う。マジで、いや本当にマジで。
ほっそい目をカッ開いてクルスビーは怒鳴った。
「テメッ工場ほっぽり出して出てったと思ったらタダ酒飲む気だったな!?
つーか確認前の物資に手ェ付けるとか何考えてんだアホォッ!!さすがに女将さんにチクっかんな!!」
なんて事ない話だ。物資等の出費は領主や国が持つ。てな訳で兵器や武器防具の点検をする技師代表として名乗りを上げたグレヴァの狙いが、必要経費として気持ち酒を多めに注文しタダ酒を飲もうというアホな野望だった訳だ。
燥ぎ過ぎである。
勿論、一番の理由は嫁さんやクルスビーに文句を言われ難い場所で好き勝手に兵器とかを魔改造したいってクソ傍迷惑なモンだが。
「オラ、言い付けられたく無かったら変な事しねぇで武器でも研いでろよバカ」
「ぜ、絶対言うなよ!?絶対だぞ!!」
キョドりまくってるグレヴァを放置して歩を進める。いや、焦りまくってラキにまで助けてくれと言わんばかりの表情をしてるけども如何しようもない。
まぁ、この感じだと余計な事などせずに確りと技術相応の優れた仕事をこなすだろう。……三日くらいは。
「ん?……霧?」
グレヴァを無視して邪魔にならないところへ進んでいると、ラキが漂う白いものに気付く。
「よく来てくれたねぇ同輩。おっと初めましての同胞も居るねぇ宜しく」
周囲を漂っていたモコモコの白雲みたいなのから、おっとりとした若い男の声が発される。気体か液体か判別しにくい其れは一箇所に集まり人型を作って霧散する様に人へ変わった。
「御協力感謝するよう同輩達、魔法猟団団長オグタさ」
ラキは他の初見だろう魔法使いや魔導師と共に初めましてと返しながらなんか違うと思う。言うのは堪えたが。
なんかフルプレートメイル出てきた。何スターハンターだろうか。いや、クルスビーのお兄ちゃんも大鎧の様な装束だったんでアレだけど。
こう、ローブも纏わず魔法使いっぽさも毛皮を纏ってもおらず猟師っぽさも無い。
どう見ても騎士、なんならナゼそんな格好で馬に乗ってねーのか。
ただ、鎧に光沢は無く暗い緑色で周囲に溶け込めそうではある。
一際目を引くのは柄を握り肩に寝かせて担ぐグレートソードとも言うべき全長2㍍くらいのド長い大剣で、一般的に想像される様な細長い十字架の様な西洋剣を更に長く伸ばせば凡そ外見の説明は終了する。故にこそ魔法使いが持っていいのか疑問を呈したくなる様な代物だ。
しかしクルスビーの弟子であるラキは鍔と刃、柄の接合部に魔法行使の際に使う補助系の刻印版を見つけて魔法使いなんだなーと納得した。
「作戦会議室まで案内するよ。あと先に言っておくけど長期作戦になるだろうから狭い部屋だが個室も用意したさ」
そう言うと喋り方の割に機敏な動きで無骨な港を抜け砦内に入って行く。砦と言っても外観は断崖に沿う様に造られた城の様にも見え、必要性を理解するには至らない大きめの窓さえもある。ただ2階以降の階には大きな窓に頑丈そうな鉄柵が張り巡らされていた。
ラキは布狩りの時にバウバの言っていたことを思い出す。あまり高所を飛ぶとモンスターに襲われると言う話だ。改めて此処は前線なんだなと気を引き締めた。
そんな砦の一階に入ってすぐ大きな地図を載せた大きな円卓と3人の団長と4人の副団長達が出迎えた。
「おお団長とワイズマン方の御到着だ」
祖人の男が嬉しそうに言う。
クルスビーとリートニアが気軽に挨拶を交わす。例えではなくマジで狐の顔の細身な獣人が地図から離して一礼し、巨人二人がラキに向かってガッツポーズ的な感じで拳を上げた。
融和的な空気が流れたところで領主の横にいたザ・魔法使いが一歩。先端に宝石の埋め込まれた木の杖とトンガリ帽子にローブというラキ的には何か安心する格好。
陽の光人、ソー・アールヴっぽいが耳の長さが微妙で、オールバックの髪と無精髭は黒い。顔は整っているがアールヴという程では無く、年齢は30代後半に見えて歳の割に好奇心旺盛そうな大きな焦茶色の瞳を持っていた。
祖人と光人の半人メデュムである。半人とは巨人に半均なる人と呼ばれる人々だ。違う人種同士が結婚した場合は大概は夫婦どちらかの人種になるが稀に両方の人種的特徴を合わせ持って生まれてくる。そういう人々をこの世界では半人と呼んだ。
「さて猟師方、私などは魔法の一端を覗く程度の者だがアーウルム様の臣下として十二分に働きたい。是非とも綿密な指示をお願いする」
最年長の巨兵猟団団長のヨルティオが頷いて巨人ゆえのデカさでズンと一歩、相変わらず老いて尚ムキムキなのに哲学好きそうな白髭と白眉揺らして。
「魔導師と魔法使いの方々、協力に感謝するわい。早速で悪いが一先ず周辺地図を見てくれい、偵察作戦の説明をする」
ーーーーイジス大要塞周辺地図ーーーーー
ーーーーーーーーー西ーーーーーーーーー
◆◆◆◆◆◆◆◆◎◎◎◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◎◎◎◆◆◆◆◆◆◆◆
ーーー◆◆◆◆◆◆◎◎凹ー△絹蜘蛛の巣
ーーーーーーーーー◎◎△△△△△△△△
△△△△△ーーーー◎◎◎ーーーー△△△
△△狩場△△△△凸◎◎ー◎◎◎◎◎◎◎
△△△△△△△△ー◎◎ーーーーーーーー
△△△△△△△ーー◎◎ーー△△△△△△
四つ角森林△△ーー◎◎凸△△△△△△△
△△△△△△ーー◎◎◎ー△△△△△△△
△△△△ーーー◎◎◎△△△水晶蜈蚣注意
△△△△凸◎◎◎◎△△△△△△△△△△
△△ーー◎◎◎◎◎◎◎◎△△△△△△△
△ーー◎◎◎◎巨魚の湖◎◎◎ー△△△△
ーーーーーーーーー東ーーーーーーーーー
◆断界山脈
◎ラタ大河水系
△森林
凹イジス大要塞
凸見張拠点
「私等のいるるイジス大要塞からラタを下って行くと要所に見張と休憩用の拠点がある。これは前回の外界調査で使われた拠点でな。
使っておるのは巨魚の湖迄じゃが主の住処に向かって巨魚の湖以東に点々と建ってある筈じゃ」
一度、説明を区切ると巨大な筒に厳重に保存された長く大きな古地図を出す。厚いく長い布である其れを広げながら続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー◎◎ーーーーーーーーー
ーーーーーー◎◎ーーーーー地主の住処ー
ー◎◎◎◎◎ーーーーーーーーーーーーー
西◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ーーーーーーー東
ー◎ー凸ーー凸ー凸ーー◎◎◎◎◎◎◎ー
ー凸ーーーーーーー凸ーーーーー凸ー凸ー
ーーーーーーーーーーー凸ー凸ーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
覗いてみれば厳重な保存と素材の割に雑な地図だ。
「前回の調査、百年程前に建てた拠点の地図でな。このれらは国主導で外界の内側に向かって建てられ当時の魔法使い数十人の助力を得て何とか建てた物、しかし地主の住処に向かって中層域から深部に向かって建てられたからこそ余りに危険じゃ。
無論、保全も出来ず放棄されとる。魔法使い殿達には儂等と共にその拠点の修復に物資と輸送の助力を願いたい。各拠点は最低限物置程度にはなってもらわんと偵察さえままならんでな」
クルスビーは顎に手を添える。地図を見れば基本はラタ大河に沿う様に建てられている事が伺えた。外れている所もあるが其れはモンスターの生息域から逸らすためだと察せられる。
ただ現在の生息域がどうなっているかが不安だ。モンスターの縄張りなど季節毎に変わるのだから百年前と同じ訳が無かった。
「なぁ団長方、拠点を新たに作るのは難しのは分かる。て事はモンスターがいた場合は狩る事になる筈だな?」
「うむ、その通り。明かせる範囲で魔法使い方の戦力を知りたい。作戦も其れによって少々変わってくるでな」
スッと手が上がる。
「私は戦えない。魔法は多少使えるけどあくまでも多少、元王直魔導師長やマダム・リゴットに刻印工房長の様に優れた魔術を行使するなんてのは悔しいけど無理よ。
増して龍目潰しみたいにドラゴンに殴り掛かるなんて絶対に無理」
唐突にラキが勢いでやっちゃった事を思い出して赤面する様な事を、何ら悪気なく寧ろ呆れつつも勇気を讃える様に言ったのは陽の光人だった。
まぁー、ザ・光人って感じの整った顔の少女だ。もうちょっと想像し易く言うとコテコテの勝気そうなスレンダーエルフと言えばその通りである。
陽の光人らしい輝く金髪と美しい瞳、格好は長いマントに一般的な素肌を晒さない長袖の上着に長ズボンに長めのブーツだ。
「でも物を浮かせたりは出来るしマダム・リゴットに薬学を教えて貰ってるから物資整理なんかで少しは力になれると思うわ」
ちょこんと整った鼻をフンスと鳴らし気張って言う彼女を見てラキは思った、何か微笑ましいな、と。
「感謝するわい嬢ちゃん」
ラキだけでなく巨人の団長も頼もしい孫を見る様な笑みを浮かべて言う。てか大体の奴が頑張ろうとしてる妹やら娘ないし孫を見る様な目だ。
若い子が頑張ろうって気張ってるのが微笑ましいのは世の理だけど。なんだコノ状況……。
ともかく彼女以外の魔法使いは戦える様であった。まぁラキと領主付き魔導師に侍ってる若いのは実戦経験的な意味合いで不安があったが戦力としてはなかなかの物だ。
どう見ても騎士な魔法使いが言う。
「なら猟師の私が梅雨払いをするとして魔導師と魔法使いで隊を分けて物資の運搬と護衛という感じだね」
ラキはふと思った。横にいたクルスビーにコソコソ問う。
「そう言えば魔法使いと魔導師ってどう違うんですか?強さ?」
「え?ああ、いや在野か在朝かってだけだな。まー魔を持って導く師で魔導師ってこった」
「へぇ〜」
で、その作戦当日。厳密に言うと明朝早く黒い空の先に世を焼く尽くさんばかりの赤が遠目に見える様な空の下、ラキは欠伸を噛み殺して港前の広場に立っていた。既に猟師や魔法使いもいて大半の人は早起きに慣れているのか眠そうにしていない。
いや、慣れてない魔導師の一番若いのとか不真面目そうな猟師とか欠伸はしてるけども圧倒的に少ないのだ。
『まぁ仕事柄だろうけどスゲーな』
ラキもバウバに合わせて早起きな方だがここまでくると流石に辛くそんな事を考えていると声が。
「魔法使いの方々、本日は世話になる。第三部隊を率いる獣騎猟団団長コォンケ・フクスだ」
ぶっきらぼうだが丁寧に、狐頭の獣人が言った。長砲身で大口径の燧石式らしい銃を三梃と㮶杖を背負い、肩から腰に襷掛けされたベルトには短剣が連なる。腰のベルトには小物入れが付いており厚く太い板の様な剣を一本吊るしている。
肩にかかる短いマントと七分袖の服の上に獣の皮で出来た胸当てを着て手には長い手袋を。下は幅の広い長ズボンをブーツの中に入れている。
「おうコォンケ。こっちも頼むぜ」
「また薬草を頼むよ」
「よろしくお願いします」
モコモコしてて可愛い感じのする狐顏獣人はマダム・リゴットとクルスビーに手を軽く上げて頷くとラキの前に。
「竜目潰し。クーウンの姉御とバウバの旦那の子達を守ってくれた事、感謝する」
そう言って頭を下げた。
ラキはビックリしてしまう。唐突だし身知らずの男に頭を下げられるなんてのはあまり経験のない事だ。
「え、あ、いや。バウバさん達は命の恩人ですし世話にもなっちゃてるんで」
言外に頭上げてマジで!ってな感じでラキは答える。意を汲んで頭を上げたコォンケは言った。
「私にとって姉御は恩人で旦那は尊敬すべき人だ。礼は受け取ってくれ」
「えと、じゃぁ、どういたしまして?」
混乱してるのもあって返答として正しいのか少々疑問に思いながら答えればコォンケは頷いて部下の元へ向かった。
彼の部下は獣人が多く半分近くが大型の火器を背負っている。他の猟団も銃を背負う者は多いが抱え大筒の様な物や燧石式の擲弾発射器っぽい物まであって頼もしい。
なお、ラキは火器についてゲーム程度の知識しかないので、ちっこい大砲と砲身がほぼ無い変なライフルに見える其れらを興味津々眺めていた。
「三番艦ロフトル準備出来ました!!」
「お、俺らの乗る船か。行くぜラキ」
クルスビーに促されて左右に対空飛槍の乗った艀を繋ぎ背に人を乗せるようの客船艀一隻と荷物運搬用の艀二隻を繋いだ自走船に乗り込んだ。




