表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

不死の魔王の絶望譚

作者: 影茸

数年前、書いていた作品にほんの少し加筆し、投稿させて頂いた作品です。

嫌いな人はご注意ください。

俺、海技佼成は幾ら有能で有ると自他共に認められていてもただの高校生だった。


年前前、そう、俗に言う異世界転移というものを経験するまでは。


そして、俺の才能に惚れ込んだ自称邪神の痛い奴の要請を受け俺は地球を去った。

その時俺がそいつから得た能力は不死身という埒外の能力。

俺はその能力を得て異世界に


ーーー魔王、として降臨した。










魔王、俺はその称号に忌避感も覚えず流せる程のプライドのない豚ではなかった。

だが、そんなことに文句をつける暇などないほどに俺が送られた場所である迷宮はとにかく酷い場所だった。

まず迷宮と名乗っているくせに城のような形状をしている。

どこが迷宮だ、まず俺は怒鳴り散らしたが、不幸はそれだけでなかった。

その城は冒険者と呼ばれる人間達の組織に包囲されており、もう虫の息だったのだ。

そう、凶悪で知られる筈の魔族は余りにも弱かったのだ。

そして、そんな場所に送られた俺には文句、もとい迷宮に対する有益な助言を呈する余裕さえ無かった。


ーーーだが、そこからが俺の本領発揮だった。


俺はその迷宮に住んでいた魔族どもを魔王という立場を最大限利用して働かせた。

その時から迷宮を取り巻く状況は変わっていった。

どんどん仲間を失い、割に合わない仕事だと気づいた冒険者は逃げ出して行き、最終的に冒険者達は総攻撃を決意した。


そして、多数の冒険者逃げてもなお、相手のの方が人数も多く明らかに俺たちの方が不利だったが、ここを乗り越えれば迷宮を守ることが出来る、その一大決戦を


ーーー俺たちはのりこきった。


だがその時の戦闘は余りにギリギリで、俺は不死身でも痛みは消えないことを知って、魔族なんかでも、死んだら目から汗がてることを知った。

でも、俺を目の敵にしていたはずの絶世の美女である、高位魔族カルマがなぜかその時やけに素直になって、泣きながらお礼と謝罪を言われた時は驚いて、不覚にも目を充血するくらい見開いてしまった。

その後、俺が泣いていたなどと言い掛かりでからかわれたのは余りにも屈辱だったが、それでも迷宮を守り切ることができたのがやけに嬉しく感じた。


「ぅぁあ!」


そしてその後、迷宮は静かに和やかな場所になりました、その筈だったのに、


ーーー如何してこうなった?


意味を持たない声を漏らす俺の目の前には血の海が広がっていた。


それは魔族の血。


俺が守りきった、その筈だった者の血。


そしてそれを蹂躙するのは王国騎士の所属を示すマークが肩についた鎧を纏った人間だった。


「ふざけるな!王国は手を出さない筈じゃ無かったのか!」


それに俺は叫ぶ。

いや、叫ぶことしかできない。

そして、そんなことしかできない俺の声が魔族を虐殺する人間の動きを止めれるはずがなかった。


「はは、何をいっている?俺たちは冒険者の大元のギルドの騎士だ。王国なんて知らない」


「っ!」


それは嘘だった。

簡単なことだ。最初から王国は俺たちを見逃すつもりなど無かったのだ。

そして俺は、そんな簡単なことさえ見抜くことが出来なかった。

全てが終わったと、そう浮かれていた俺は簡単にわかるはずだった矛盾から目を逸らした。

それが今の現状で、


ーーー全ては俺の責任だった。


「巫山戯るな!」


俺はそう叫んで騎士に殴りかかる。

だが、おれの鍛えていない拳など騎士に当たることもなかった。

そして、おれは切られおれを守ろうとした魔族も切られる。


魔族は死ぬ。


だが、おれは死なない。


「おれは不死身だ!」


そうおれは叫ぶのに魔族はおれなんかを守ろうと身を投げ出してくる。


そしてまた魔族が死ぬ。


なのに、それなのに、


ーーー俺は死なない。


「っ!やめろ!やめてくれ!」


おれはそう叫ぶ。なのにその叫びはどこにも届かない。

魔族はおれを救おうと身を投げ出し、騎士はそれを笑いながら切り捨てる。


ーーーなのに、俺は死なない。


そして最後に残った魔族はカルマだけだった。

だが、その姿を見た時俺は何処からか力が湧いてくるような錯覚に陥った。

だから、彼女だけでも守ろうと再生した足で踏ん張って立ち上がって、次の瞬間カルマに抱えられていた。


「っ!放せ!」


俺はそう叫ぶ。

なのにカルマは離さない。

冒険者を追い払ったあの時から、やけに俺に素直になっていたはずなのに、彼女が俺の言葉に従うことはなかった。


「っ!」


ーーーそして、近づいてくる窓に俺は彼女の思惑を悟った。


カルマは窓から俺を自分ごと突き落とすことで、王国から逃がそうとしていることを。


「っ!やめろ!」


だが、そんなことをしてはカルマの命の保証はなかった。

いや、その窓から落ちると下は100メートル以上ある崖で、カルマが生き残れるはずがなかった。


「頼むから、やめてくれ……」


だから俺はカルマに懇願する。

なのに、彼女は足を止めない。

唯一の望みである騎士達は、カルマの行動に反応できず、呆然と立ち尽くすのみ。


ーーーそして等々、俺たちは窓から宙に投げ出された。


「っ!」


俺は必死に手を伸ばして、なんとか崖に生えた枝に手を掛けた。

だが、それはあくまで落ちるまでの時間を引き延ばしただけだった。


「これで、いいんです」


そしてそのことを理解しているカルマは俺にそう笑いかける。

諦めたような、達観した表情で。

だが、俺はアルマの言葉を無視する。

せめてカルマだけでも崖の上に戻そうと腕に力を込める。

だが、魔族でもましてや少し戦闘訓練を受けただけの俺が片腕で女性1人を持ち上げれるはずなかった。


「うぐっ!」


それから俺は何度も挑むが、カルマを持ち上げることなど出来るはずもなかった。


「不死身なんて、巫山戯るな!何がチートだ!」


おれは叫ぶ。

自分の無力を、不死身という誰も助けることのできない能力を呪って叫ぶ。


「おれを殺していいから、カルマを助けろよ!」


おれは目から涙をこぼしながら、おれをこの世界に送り込んだ神へと叫ぶ。

だが、そんなことはなんの意味もなかった。


「うぐっ!」


俺はまた腕に力を入れて、カルマを持ち上げようとする。

だが、もう限界が近いことはすでに悟っていた。

指が痙攣し、ほぼ感覚がない。

いつ枝を握っている手が離れてもおかしくない。


「おい!あいつら何処いった!」


ーーー王国騎士達の声が聞こえてきたのはそんな時だった。


「っ!」


その近くから聞こえてきた声に俺は騎士達が俺を探していることを悟る。


「おい!俺はここにいる!」


そしてそのことを悟った瞬間、俺は声を張り上げていた。

騎士達に見つかれば俺は引き上げられ、捕らえられてしまうだろう。

だが、カルマは高位魔族である上に、戦士としても魔族の五本の指に入る実力を有している。

騎士達を倒すことはできなくとも、逃げ切ることはできる、それが俺の目論見だった。


ーーー自分がどうなってもカルマを救う為。


そしてその俺の本心をカルマが分からないはずがなかった。


「えっ?」


俺はカルマの手に魔法で生み出された火球を見てそう呆然と呟いた。

だか直ぐに悟る。

カルマが俺を逃すために、腕を焼きはらおうとしていることを。


「っ!」


そのことを悟った俺はその火球をなんとしてでも避けよう、そう頭を叩かせるが、枝にぶら下がった今の状態でそんなことができるはずがなかった。

だがこの腕を焼き払われ、崖に転落したら確実にカルマは死ぬ。

そんなことを許せるはずがなかった。


「やめろカルマ!王命だ!」


それは絶対に逆らえない命令を魔王が部下に出すときの言葉。

なのに、それでもカルマは止まらなかった。


「っ!」


王命、それは魔族の中で最も重い規律で、使う方さえも使いどころを考えないとならない命令。

それを無視されると思わず俺は言葉を失う。


「やめてくれ!俺は、」


そして、奥の手を封じられた俺にできたのはただそう嘆願することだけだった。


「ーーーお前らを救いたかったのに!」


「っ!」


それはカルマにいつか教える、そういってごまかしていた俺の望みだった。

余りにも小っ恥ずかしくて、今ではなかなかの醜態を晒してしまった仲だというに言えなかった本心。

それは魔族の王、魔王としてこの先を過ごしていくという、それだけだった。

その俺の望みに、カルマはいつもはあれだけ大言を吐いているのに、というふうに顔を緩めた。


ーーーだが、それだけだった。


「ぐがっ!」


俺は枝をつかんでい腕の肩から先の感覚が消え、カルマが魔法を使ったことを悟る。

だが、俺がそのカルマの行為に疑問をぶつける間も無く、身体は浮遊感に包まれ、落下していく。


「そんなこと気にしないでいいんですよ。もう既に私達は貴方に救ってもらっているんです。だから、




ーーー救っていただいてありがとうございます。大好きですよ。魔王様」





「っ!」


ーーー巫山戯るな!それなら、何でそんなに悲しそうな顔で言うんだよ!


そして俺は喉元まで出てきていた言葉を口にすることすら出ず、衝撃に意識が消えた。













俺が意識を取り戻しとき、カルマの姿は隣にはなかった。

ただ、彼女の髪と同じ真紅の魔石、魔族が死んだ後残る鉱石だけが落ちていた。

俺の頭は現実を否定して、彼女の姿を探して周囲を見回す。

だが、カルマの姿があるはずなかった。

それでも信じられず、俺はもっと遠くを探そうとして、


ーーー救っていただいてありがとうございます。大好きですよ。魔王様。


「っ!」


カルマの最後の言葉を思い出した。

そして、ようやく頭が動き始めて悟る。


「うぉおおおおおお!」


ーーーカルマが死んだ、その事実を。




俺は雄叫びをあげながら頭を地面にぶつけた。

何度も、何度も。


なのに、俺は死なない。


そして、頭の中に繰り返し流れるカルマの声も止まない。


カルマが最後に叫んだあの言葉は、俺が切望した最高の言葉で、


ーーーそれを最悪の言葉にしたのは、他ならぬ俺自身だった。


頭の中で何度も悲しみに、恐怖に、そして絶望に歪むカルマの顔がフラッシュバックする。

そう、俺が切望していたはずの感謝の言葉は、情けなく、何もすることができなかった俺を慰めるだけの言葉にと変わっていた。


ーーーあの時、カルマは救いを待っていた。


ーーーなのに俺はどうした?


ーーー責任を逃れる方法を、他ならぬカルマに要求していた。


「うぉおおおおおお!」


おれは叫ぶ。

叫ぶことしかできない。


「あはははははは!」


そして、その雄叫びは時を経るごとにいつの間にか笑いに変わっていた。

俺は狂ったように笑う。


絶望を、


憎悪を、


憤怒を、


そして、後悔を。


崖の下、ただただ笑い続ける俺は、ただの狂人にしか見えなかった……












「分かっただろう?彼奴らを殺すことがお前の使命だ」


カルマが死んだ日の深夜。

俺が根城とする、他の迷宮に現れたのは、俺を召喚した神だった。

神は俺の耳元で囁く。


「人間を殺せ」


だが、俺はその言葉に全く反応しない。


「はは、無反応か。まぁいい。今はその反応が普通か。


ーーーだが、お前は人間と殺しあう命運にあることだけは忘れるな」


そういって、神は消えた。

カルマを救ってくれ、そう祈った時には現れず、魔族が死んでから人間を殺せと、嬉々として告げにきた不死身の神。

俺は、その神が消えた場所をじっと見つめる。

そして、そこに何の気配もないことを確かめ、ポツリと呟いた。


「ただ死なないだけの能力で人間全てを殺せ?そんなことできるはずがないだろうが。


──だが、たった一人しかいない神なら、この手も届くとは思わないか?」


そう呟いた俺の目の中では、憎悪の炎がらんらんと燃えさかっていた……











これは異世界で全てを手に入れ、そして失った男の物語。

彼の行く末は神でさえも悟ることはできない……。

前書きでも言いましたが、かなり前に書いていた作品を改めて見直し、衝動的に投稿したものです。

最後はハッピーエンドを目指していた気がするのですが、我ながらよくこんな設定を考えていたものだと思います。

……今の作品も、設定では大分やばかったりはしますが。

続きに関しては、今は書くつもりはないです。

設定なら古いものはあったのですが、今書くと絶対にクォリティが下がってしまう気がするので。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 某不死人「どことなく感じるシンパスィー。気に入った、手を貸そう(8週目、闇の王経験済み)」 某探究者「やっぱ神様ってクソだわ。手を貸そう(8週目、隠しボス討滅済み)」 某灰の人「神様って…
[気になる点] 相手のの方が 俺たちはのりこきった 汗がてることを 目を充血するくらい見開いて そして等々、 誤字?が多いので読みにくかったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ