第91話 希望と絶望と
それから数カ月、パレットは紫色部隊を訓練した。
訓練は相変わらず厳しかったが、ハーフエルフたちはよく耐えた。元々苦労しているし、ここから逃げて行くところもないからだ。
それにハーフエルフたちは、まともに教育を受けていなかったが、パレットはしっかりと教えた。文字はもちろん、文学や数学、科学や社会など。
そう言ったものを学べば、様々な事に役に立つ。ハーフエルフたちは希望を取り戻し、週末にはカヤの街で遊ぶほどになった。
「ねえねえ。コーヒー飲みに行こうよ!」
「いくいく~♪」
そんな感じでカフェを楽しむ感じにもなってきた少女達。少年たちも食べ歩きやスポーツを楽しむようになってきた。
「みんな余裕が出てきたみたいだね」
アマリアは言った。
「良い事だよ。希望が無いほど悲しいことは無いからね」
クリスはそう言った。
「お前らだって遊んで来れば良いじゃん」
タバサはそう言った。
「私は別に……。クリスは?」
アマリアは聞いた。
「たまにあいつらと遊びに行くこともあるけどね。そんな言うほど嫌われても居ないしな」
クリスはそう言った。
カヤの街の人たちはそれほどハーフエルフを差別しているわけでもないようだ。もちろんそういう人も居るが、物を売らなかったり店に入れないなんて人は少数だ。金払いも抜群に良いのであまり気にしていない人が多い。むしろ結構歓迎されているようだ。
その時、ハンナが酒場に飛び込んできた。
「お前たち、パレット様を知らないか?」
ハンナは言った。
「ん? 知らんけど。お前と一緒じゃなかったの?」
タバサは言った。
「緊急事態だ。アルカディアがカヤ城に呼んでいる。すぐさまパレット様を呼ばなければ」
ハンナはそう言って、駆けて行った。
タバサたちは城へと戻った。城の広場に、部隊が集結しつつある。
「赤色1番隊、集結しました」
「紫色4番隊、準備完了しています」
「うん……」
部隊を集め、アルカディアがつぶやいた。
「アルカディア様、ここはもはや行動すべきでは」
ハーフエルフの一人が言った。
「いやいや。パレットもいないのに何も出来んだろう」
アルカディアはそう言った。
「一体どうしたんだ?」
タバサがやってきて、聞いた。
「何かドラゴンが出たらしいぞ。アイジールが危険だ」
アルカディアは言った。
「マジかよ。冗談じゃないな」
驚くタバサ。
「ドラゴン!?」「ドラゴンですか!?」
驚くクリス、アマリア。
「ドラゴンの大きさは?」
アルカディアは聞いた。
「通常クラスだ。大したことは無い」
アルカディアは言った。
「へえ、色は?」
クリスが聞いた。
「赤だ」
アルカディアが答えた。
「うはあ! レッドドラゴンじゃん!」
テンションが上がるクリス。
「クリス、喜んでる場合じゃないと思うんだけど……」
苦笑するアマリア。
その時、ハーフエルフたちを連れてパレットが戻ってきた。
「すまない、遅くなった。状況を知らせよ」
パレットは言った。
「レッドドラゴンです。アイジールが危険です」
アルカディアは言った。
「すぐさま出撃しよう。全軍で行く」
パレットは言った。
この部隊は、すぐさま即応できるように日々訓練されている。パレットとハーフエルフたちが街で遊んでいたのでちょっと遅れを取ったが、出撃した。
パレット達は行軍を開始した。急ぎはしない。長い旅になる。目標はアイジール。
カヤからアイジールまでは50kmほどはある。もっとも、普段の訓練でもその距離を目指しており、アイジールまで訓練で行くこともあるから、慣れた道ではある。
中間点の川に差し掛かった。その時、矢が飛んできた。
「!?」
パレットが気付いた。ハーフエルフたちも気付く。
「うああ!」
赤色の一人が矢に撃たれ、倒れた。ぞろぞろと汚い身なりの連中が出てきた。
「おとなしくしろ! 金目の物を出せ!」
どうやら、盗賊団のようだ。見えているだけでも数人、数は居そうだ。
「なめられたものだ。殲滅しろ!」
叫ぶパレット。
「了解!」「了解!」「了解!」
すぐさま銃を構え、放つ兵士たち。
ダダダダダダキューン!
「ぐわあああああ!」「ぎゃあああああ!」「何だあああああ!?」
凄まじい銃撃を浴び、次々と血を噴き出して倒れる盗賊たち。
『敵感知』
パレットは能力を使った。
やはり相当な敵がいる。とはいえ、あと7人程か。
「この程度の兵力でとはな。損害は出したくないし、殺すか」
パレットは森の中へと入る。
『隠密』
パレットは能力を使い、隠れた。魔剣を抜く。
ズシャア! と斬りつけ、隠れていた盗賊を仕留めた。
「ぐああああああ!」
叫び、倒れる盗賊。
一人、また一人とパレットは殺していく。容赦はない。
「ひいい! 何なんだ!?」
混乱する盗賊たち。その首を刎ねるパレット。
「ま、待ってくれ! 俺が悪かっ」
その言葉が終わる前に、パレットはそれを仕留めた。
盗賊は死んでいき、残ったのは少年の盗賊のみ。恐怖で震えている。
「お前も殺すが、何か言い残すことでも?」
パレットは言った。
「ま、待ってよ! 僕には、妹が……」
「関係ないね」
多分嘘だろうな、とか思ってパレットはその少年も首を刎ね、殺した。




